聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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Truth
ミサ終了後の控室。まだドアの外では、バタバタとスタッフが動き回る音が聞こえている。
そんな中。まだ着替えも終えず、悪魔の姿のまま椅子に座り、ぼんやりとテーブルに頬杖を付いている姿がある。
「ふぅ…」
大きな溜め息が一つ零れた。
「…なぁに、その溜め息は…」
溜め息を聞きつけて、そう問いかける声。
「いやね、言っちゃって良かったのかなぁと思って」
そう零す声は、ゼノン。その言葉の指す意味は、先程終了したミサにある。
「あぁ、出来てる、ってヤツ?」
小さな笑いと共に、言葉を返したのは、その相手と言われたライデン。
「大丈夫だって。ネタで言うヤツはいるかも知れないけど、本気にするヤツはいないって」
既に世仮への変身も着替えも終え、ぼんやりとしているゼノンを眺めながら、くすくすと笑いを零すライデンとは違い、ゼノンの方は浮かない表情を浮かべたままだった。
「だけどねぇ…信者の妄想と現実を結び付けてしまうって言うのもどうかと思うんだけど…」
溜め息を吐き出しつつ、未だに愚痴を零すゼノンに、ライデンは笑いを零しながら傍へと歩み寄る。
「現実と妄想は別物。ネタだってわかってるさ。だって、デーさんと松崎様が出来てる、なんて、誰も本気にしないでしょ?まぁ、エースとルークは別だろうけど」
「俺たちだって、本気にされるよ?いつも一緒にいるんだし」
「そしたらそれだっても良いじゃん。どうせホントなんだし」
「呑気なんだから…」
溜め息が、また一つ。
「それとも…嫌い?俺のこと」
ゼノンの視線を捕えた、ライデンの眼差し。そこに、今までの笑いは見えなかった。
あるのは、真剣な色。
「…わかってるクセに…」
諦めたように溜め息を吐き出したゼノン。
「じゃ、証拠見せて。今度は間接じゃなくて…ね?」
「…まだスタッフが…」
流石に、ここでは…と、静止をかけようとしたゼノンであるが、ライデンはそんなことはお構いなし。ゼノンの正面に立つと、その首に両腕を絡める。
「外で仕事してる。エースもルークももう出て行ったし、この控室には他に誰もいないじゃん。そんな心配しないの」
「…もぉ…知らないよ?」
「大丈夫、大丈夫。ほれっ」
催促するように軽く顎を突き出し、目を閉じたライデン。ここまでやられてしまったら、最早幾ら言葉で宥めても聞かないだろう。
「…ちょっとだけだよ」
回りの様子を伺いながら、人目がないことを確認して、軽く口付ける。
と、その時。不意に控室のドアが開いた。
「おーい、そろそろ打ち上げに行くぞー……っと、御邪魔だったかな…」
「……わかってるならノックぐらいして…」
現場を目撃したのはデーモン。僅かに頬を赤くし、明後日の方向を向いている。
折角の雰囲気を壊され、不貞腐れたように頬を膨らますライデン。
「何も、こんなところでやらんでも、後でゆっくりやれば良いだろうが…誰が来るともわからんのに…」
「…ノックもしないで入って来たのはデーさんじゃん」
デーモンの言うことは尤もなのだが…邪魔されたことが納得行かなかったのか、口を尖らせるライデン。
「いつもは見せつけるくせに、こう言う時ばっかり嫌がるのか?」
くすくすと笑うデーモンに、ゼノンが溜め息を一つ。
「馬鹿言わないでよ。普段だって他の目のあるところでキスなんかしないでしょうが。それに、こうなった発端は、デーモンなんだからね。わかってるの?」
「何だ、吾輩の所為にするのか?」
思いも寄らない飛び火に、デーモンは目を丸くする。
「ミサ中にあんなこと言うから、ライデンが触発されたんじゃない」
「…あんなこと…?」
自分の言ったことを、もう忘れているのだろうか。きょとんとした表情を浮かべたデーモンに、ゼノンは溜め息を一つ。
「俺がライデンの水飲んだ時、煽ったでしょ?」
「あぁ…あれか」
思い出したように、ぽんと一つ手を叩く。
「でも、『間接キス』って言い出したのはライデンだし、ライデンの水を飲んだのもお前だろう?」
「飲んだだけだよ。差し出したのはライデンだし」
「何だい、俺が悪いっての?だって、ゼノンが暑いって言うから…」
「差し出されたら飲むでしょう?それなのに、出来てるなんて言うから…」
「どうせホントのことだろう?」
「だからって、あんなところで言ったら、信者を煽ってるようなものでしょうよ……」
際限なく続く言い合いに、割り込んだ声が二つ。
「いつまでそうやってるつもりだ?」
「あのさぁ…早く行かない?」
その声に顔を向けると、ドアに寄りかかるように、帰る準備を終えているエースとルークの姿がある。
「ゼノン、ほらいつまでも悪魔の姿してないで、早く着替えろよ。さっさと出て行かないと、出られなくなるぞ」
「…もぉ、わかったから。着替えるから出てって」
諦めたように他の構成員を残らず追い出すと、大きな溜め息を吐き出す。
「…ったく…何回溜め息つけば良いんだか…」
そしてまた一つ、溜め息が零れる。
本当に、幾度溜め息を吐けば報われるのだろうか…
その日の打ち上げ会場となった居酒屋で、当然それは話題として避けられるものであった。
不自然に離されたゼノンとライデンの席。別に、誰が指定した訳でもないが、そこがむしろ不自然なのである。
周囲の他合いのない会話の中、浮かない顔のゼノン。
「…どうした?」
そう尋ねたのは、隣にいたエース。
「別に」
何処か拗ねたような口調に、エースの口元に小さな笑みが浮かぶ。
「なぁんだ。さっきのこと、まだ気にしてるのか」
「エースは良いよね。ルークと出来てるなんて言われたって、どうせネタだって、笑って済まされるんだから」
そっぽを向くゼノン。その様子を伺いながら、酒気を帯びてすっかり上機嫌になったライデンを横目で見る。
「ライデンは機嫌良いじゃないか?何でお前だけ拗ねてるんだよ」
ライデンの姿を眺めながら、エースはそう問いかける。
「拗ねてる訳じゃないけど…あぁ言う場で言われたことがちょっと引っかかるだけ。それがホントだったにしろさぁ…」
「だったら、悪戯に言って欲しくはなかったと、そうデーモンに言えば良いじゃないか。彼奴だって、御前がそんなに気にするとは思ってもいなかったんだろうし、何より普段からイチャイチャしてるんだから、何を気にするんだって思ってるさ」
こちらも上機嫌なデーモンを眺めつつ、エースがつぶやく。
「今更言ったってもう遅いでしょう?一度口を吐いて出た言葉は、もう取り戻せないんだから。それに、言い出しっぺはライデンだしね。実質、デーモンはライデンの話に乗っただけに過ぎないんだから」
ビールの入っているグラスを揺らしながら、溜め息と共に吐き出された言葉。
その困惑している姿を眺め、エースはそっと視線を伏せた。
「ライデンは、むしろ嬉しいんじゃないのか?御前と違って、元々必死に隠そうと思ってる様子でもないしな。ほら、好きなら堂々としてたって良いだろう、って考えだから。これ幸いってとこだろうな」
「そりゃ…ライデンの気持ちはわからないでもないよ。俺だって、御前たちの間で冷やかされるだけなら慣れてるから良いけど…ミサ中に、って言うのはまた別の話だよ。信者の幻想が現実と結び付いてごらんよ。たまたま一緒にいるだけでも喜ばれちゃうんだよ?気の休まる時がないじゃないのさ。エースだって経験あるでしょ?」
「…まぁな。ヨコシマな信者は大喜びだよな」
「プライベートまでおかずにされたら堪らないね」
溜め息がまた一つ。
その溜め息を聞きつけてか、ふとライデンの視線が自分の方に向いたような気がして、ゼノンは顔を上げた。
途端、行き合った眼差し。
すっかり酒も回っているのだろう、その眼差しは座っている。しかし、真っ直に自分を見ていることはわかった。
「…かなり酔ってるな…」
何かを察したエースが、苦笑と共にそう零す。
「…酔ってるね…」
嫌な予感がする……ゼノンがそう感じた瞬間、すくっと立ち上がったライデンが、真っ直に…とは言うものの、その足は縺れているのだが…とにかく、ゼノンに向かって歩いて来る。
「ちょっ……大丈夫か?」
一体何が起こるのかと、茫然と見つめる周囲をモノともせず、よろけながらもゼノンの前にやって来たライデン。
「な…に?」
その異様な雰囲気に圧倒されつつ、そう問いかける声。
「…………」
「…え?」
ライデンが何を言っているのか聞き取れず、再び問い返す声に、ライデンは徐にゼノンの胸倉を掴み上げ、今度は大きな声でそれを口にした。
「わかれるっ!」
「……は?」
一同が目を丸くしたのは言うまでもない…。
「そんなにヤ~なら、わかれてやるからっ!!」
そう捲し立て、居酒屋を飛び出して行ったライデン…
「…良いんですか?」
心配そうにそう問いかけるスタッフに、ゼノンはまた溜め息が零れる。
「…まぁ…良くはないね。全く、短絡思考なんだから…」
「呑気に言ってないで、追いかけたら?どうせその辺で野たれてるよ。はい、これ餞別ね」
別テーブルでそれを眺めていたルークは、頬杖を付きながら冷静にそう零すと、にやりと笑ってペットボトルの水を差し出した。その声にゼノンは渋々腰を上げた。
「…仕方ないな…」
ルークからペットボトルを受け取ると、スタッフたちの心配そうな眼差しに見送られて居酒屋を出て行く。
その口元から、溜め息が零れたのは言うまでもない…
慌てることもなく、居酒屋から出たゼノンは、ゆっくりとその歩みを進めた。
別に、相手は逃げる訳じゃない。酔った上での戯言。ルークの言う通り、どうせ酔いに任せて、その辺りで座り込んでいることだろう。
そう思いながら、気配を追って近くの公園へと進んでいくと、案の定と言わんばかりに、通りに面したフェンスに凭れて座り込んでいるライデンの姿が目に入った。
しかも、無意識にその能力を解放していたのだろう。不用心にも、悪魔の姿で…である。
「ちょっと、ライデン。こんなところで寝ないでよ」
トロンと目を閉じているその姿を周囲から隠すようにしゃがみ込み、肩を揺り動かす。
「ん~…あと5ふん~~」
「寝惚けないでよ。ほら、目ぇ開けて」
「や~~…」
「もぉ…」
しょうがないと溜め息を吐き出しつつ、ここでは余りにも目立ち過ぎる。仕方なく、肩を貸して立ち上がらせると、人目の少ない公園の敷地内へと場所を変えた。
少しでも回りの目を逸らせるかのように公園の奥まった場所のベンチまで連れて行ってライデンを寝かせると、先ほどルークから受け取ったペットボトルをライデンの額へと乗せた。
「ほら、目ぇ覚まして」
「ん~~…わかったからぁ…もぉ~…」
僅かにその目蓋を上げ、未だトロンとした眼差しをゼノンへと向ける。
「あれぇ~?いしかわくんだぁ~…」
「今頃何を…」
溜め息が、また一つ。
「さっきの立ち回り、覚えてる?」
隣へと腰を下ろしたゼノンの声に、ライデンは大きな欠伸を一つ。
「たちまぁりぃ?なぁに、それぇ」
「ったく…みんなを巻き込んだクセに、なぁんにも覚えてないんだから…」
再び溜め息を吐き出しそうになった時、突然ライデンが声を上げて笑い始めた。
「…今度は何?」
酔った時のライデンの思考には、流石のゼノンも付いていけないらしい。だが、ライデンは暫く笑いを零すだけで、ゼノンの言葉に答える気配もない。
「もぉ…」
組んだ膝に頬杖を付き、呆れてそっぽを向いたゼノンを横目に、ライデンはすっとその笑いを納めた。
そして。
「ねぇ…喉渇いた~」
「…水飲めば?ペットボトルあげたでしょ?」
「起き上がれない~。飲ませて」
「………」
ライデンが言わんとしていることを察したゼノンが視線を戻せば、そこにはもう笑っているライデンはいなかった。
その眼差しは真剣で、酔いの破片も見せない。
「あんたから、飲ませて」
「ちょっ…」
「早く」
「……」
それは既に、間接ではなく…口移し。
そして、人通りから逸れたとは言え、公園の中。おまけに、相手は…悪魔の姿のまま。
余りにも…目立つ要素が多過ぎる。
「…じゃあ、俺がする」
答えを返さないゼノンに業を煮やしたライデンは、徐に起き上がると、ペットボトルの水を口に含む。そしてゼノンの首に腕を回すと、強引に唇を押し当ててゼノンの口の中に水を流し込んだ。
お互い、目を閉じる余裕もない。だから、真っ直に見つめ合ったままである。
余りの勢いに押されたゼノンが水を飲み込むと、やっと唇を離したライデンが、小さな溜め息を吐き出した。
「…忘れられる?俺のこと」
「…ライ?」
「デーさんが言ったことを否定するなら、別れるしかないじゃん」
その言葉の意味するところからして、立ち回りを覚えていないと言うライデンの前ほどの言葉は嘘であると理解った。
試していたのだ、ゼノンを。
「…本気で別れたい?」
思わず、そう問いかけたのはゼノン。
「でも、今更そんなこと言っても、誰も信じないと思うよ?」
その口から、さらりと零れた言葉。
思えば、そう言われたのも初めてではなかった。でも、一度たりとも、それは実行されずに、関係は現在まで継続しているのだ。
「だって…」
僅かに頬を膨らませ、拗ねたように下を向くライデン。
本気で悩んだのだろうが、それを実行に移せるほど、ライデンのゼノンという個体への執着が薄れているはずもなく。それをわかっているゼノンとしても、ある意味それは共通点である。
「…そう言えば…あんたから、別れ話されたことはないよね?いつも、俺ばっかり暴走してんのかな…」
多少、冷静になったのだろう。ベンチの背もたれに凭れかかり、そう零したライデン。
「…何でなの?」
思わず問い返したライデンの声に、ゼノンは小さく笑った。
「当たり前でしょ?だって、一回も本気で別れたいと思ったことないもん」
「…そうなんだ…てっきり、俺に振り回されて迷惑してるのかと思った…」
予想外の答えだったのだろう。ちょっと赤くなった横顔。
ただ単に『好き』だとか、『愛している』だとか言う言葉では、とても言い表せない想い。
御互いが御互いを必要として、既にその半身とも言えるほどの絶対的な関係は、そう簡単に断ち切れるものでもない。
ただそこに、同じバンドのメンバーであると言う、一般的な表向きが械なのだが。
「…もう少しだから…」
ふと、ゼノンの口から零れた言葉。その声に、ライデンは僅かに顔を上げる。
「御前だって、この関係が嫌になった訳じゃないだろうし、本気で別れようと思ってる訳でもないでしょ?俺だってそれは同じだよ。俺たちが魔界に帰るまでは、これ以上無茶なことは出来ないんだから。だから…もう少し…我慢してよ。ね?」
ライデンを見つめるゼノンの眼差しはとても優しい。
ホントは誰よりも、その想いをわかっていなければいけなかったのに。
「…もう、拗ねないでくれる?」
「……御免ね…」
謝ることが、ちょっと照れくさかった。
でも、それが何よりの想いだったから。
僅かに頬を染めたライデンに、ゼノンは小さく笑いを零した。
「さ、戻ろうか。早く行かないと、全部食べられちゃうよ」
ベンチから立ち上がったゼノン。だが、そのTシャツの裾が引きつれている。
「……?」
良く見れば、ベンチに座ったままのライデンが引っ張っているではないか。
「…何?」
「………」
「え?」
ライデンは何かをつぶやいているのだが、それが良く聞こえない。
「何?」
改めて問いかけると、ライデンはもう一度その口を開いた。
「…立てない…んだけど……何か、力抜けちゃって…」
そういえば、ライデンにしてはしこたま呑んでいたような記憶がある。
「それに俺、結局水飲んでないし」
「…そう言えばそうだね…」
そうだ。飲んだのは俺、だ…。
ライデンが放り投げたペットボトルは、蓋を開けたまま地面に倒れている…。
「…飲み口は汚れてないみたいだけど…どうする?」
ペットボトルを拾ってみてみると、水は残り少しだけど飲み口は綺麗なまま。一応問いかけてみると、ライデンはくすっと笑った。
「あんたが飲ませてくれるなら飲むけど?」
「…喉渇いてるの…?」
念の為聞いてみる…。
「うん。呑み過ぎたし」
にっこり笑って、そう答えるライデン。これは完全に、期待している訳で…。
「…しょうがないなぁ…」
溜め息を一つ。まぁ、水は綺麗みたいだから…仕方ないか。
飲み口に口をつけないように水を口に含んだゼノン。そして、笑いながら待っているライデンに口付ける。
さっきは勢いで飲み込んでしまったが…口移しで飲ませるのは意外と難しい。
そんなことを考えながら、何とかライデンに水を飲ませる。
ライデンは水を飲み込むと、にんまりと笑った。
「…満足?」
「満足」
「…あ、そう…」
ライデンは上機嫌だが、ゼノンは流石に照れたようだ。
「さ、帰るよ」
そう、声をかけて先に歩き出そうとする。
その背中に、ライデンは一言。
「だから、歩けないんだってば」
「…もぉ…」
呆れた声で溜め息を漏らしたゼノン。だが、ここに置き去りにして行く訳にもいかないのだから…。
「肩貸してあげるよ。その代わり、世仮になってくれない…?」
そうだった。今更ながらに、悪魔の姿であったことを思い出したゼノンの声に、ライデンはくすっと小さく笑いを零す。
そして、すっと悪魔の紋様が顔から消え、髪も黒く戻った。
「おんぶが良いんだけどな」
「…ちょっとぉ…」
「嫌なら良いよぉ。独りで帰るっ……」
そう言って立ち上がろうとしたが、やはり膝がカクンと折れて、地面に跪く姿に、ゼノンは呆れた溜め息を吐き出す。
「目立っても知らないからね」
腕を持って引っ張り上げ、ライデンを背中へと担ぐ。
「このまま、居酒屋へ戻る?それとも…帰る?」
ふと問いかけたゼノンの声に、ライデンはくすっと笑ってゼノンの首に回した腕に、やや力を込めた。
「…帰ろっかな」
「…御駄賃、貰うからね」
「どうぞどうぞ。迷惑かけたし、好きなだけあげちゃう。ただし…次のミサに応えない程度にね」
その意味を察し、くすくすと笑いが零れる。
口を切った方のゼノンはと言うと…照れているのか、その頬がやや赤い。
「あ、荷物…忘れた…」
話を変えるつもりではなかったのだが、財布が辛うじてズボンのポケットに入っているだけで、手荷物全部、居酒屋に置き去りだった。そしてそれはライデンも同じ。いや、ライデンは財布すら、持っていなかったが…。
「取り合えず…取りに戻る?」
「…やだ。恥さらして恥ずかしくて戻れないし…デーさんに責任取って、持って来て貰う。電話してっ」
「…携帯、荷物の中…」
「…駄目じゃん…」
ゼノンの背中から、くすくすと笑いが聞こえた。
「…しょうがない。取り合えず、戻ろう」
これはもうしょうがない。潔く戻るしかないのだ。
「しっかり掴まっててよ」
「OK」
ゆっくりとした歩み。規則正しく揺れる振動、穏やかな鼓動。
いつも知っているはずのその背中の温かさを、とても心地よく思う自分に、ライデンは笑みを押さえることが出来なかった。
その耳に唇を寄せ、小さくつぶやいた声。
「…だ~いすき」
「…もぉ…」
耳まで赤くなったゼノンをくすくすと笑いながら、ライデンはその首筋に顔を埋めていた。
一杯の倖せが、そこにはあった。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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筋金入りのオジコンです…(^^;
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