聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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春霞
こちらは、以前のHPでNo8000get記念でリクエストいただき、
2001年04月28日にUPしたものです。リクエスト内容は、本文最終で。
(コメントは当時のままですが、リクエストいただいた方の名前は念の為伏せてあります)
2001年04月28日にUPしたものです。リクエスト内容は、本文最終で。
(コメントは当時のままですが、リクエストいただいた方の名前は念の為伏せてあります)
その名前が出て来たのは、彼にとっては偶然だった。
「大(だい)清水先輩が…」
瞬間、どきっとした。まぁ、それを表情に出す程、彼は理性を捨ててはいなかったが。
それは、某イベントライブの後の出来事だった。
打ち上げでもライブのMCの余波でその話題に花が咲き、大盛上がりとなった。
その後帰宅した彼は、キッチンでグラスの水を飲み干すと、ソファーにぐったりと腰を下ろした。
その口から、大きな溜め息が零れた。
理由は一つ。久し振りに、あの名前を聞いたからだ。
「清水先輩、か…」
大学時代の、彼の先輩。そして、かつての同胞。
「電話…してみるかな」
その思いつきから、始まった。
その日、彼はお台場にいた。
薄闇が落ちて来た海浜公園の傍でぼんやりと海を眺めていると、背後に気配を感じた。
「待たせたな」
「いや。そんなに待ってないから」
振り返った先には、本日の待ち合わせの相手。
「観覧車、乗らないか?」
「…は?」
唐突にそう言われ、当然相手は怪訝そうな表情を浮かべる。
「行こう。料金は吾輩が出すから」
そう言うと、茫然としている相手の腕を取り、徐ろに歩き始めた。
「おい、ちょっ…デー……小暮!?」
されるが儘に、観覧車の元へと引き摺られる。そして、好奇の目で見られる中、彼らは観覧車の中へと消えて行った。
「…一体、どう言うつもりだよ」
無言のまま、窓の外を見つめる彼に、相手は訳もわからずに眉を顰ている。
「…前にも来ただろう?覚えているか?」
視線を窓の向こうに向けたまま、彼はそう口を開いた。
「……あぁ。だがあの時はエースと一緒に、だろう?」
「そう。あの時はな。でも、今は御前と、吾輩だ」
「…だから?俺を誘った理由は?」
そう問いかけられて、言葉に詰まる。
何と答えたら良いだろう。まさか、正直に思いつきだ、なんて言ったら…この相手のことだ、怒り出すかも知れない。
僅かに視線を伏せながら、彼はそっと顔色を伺う。
「その……つまり…な…」
「…思いつき、か?」
「……」
「図星、か」
はぁ~…っと、大きな溜め息が零れる。
「…この前の『邦楽維新』で、俺の話が出たんだって?」
そう、切り出したのは相手。
「…誰から聞いた?」
少なくとも、自分は言っていない。
そんな表情で問いかけた彼の声に、相手の視線が自分の方を向く。
「俺の情報網を舐めんなよ。まぁ…エースならそう言いそうだよな。それはともかく…関係者なんて、大勢いるじゃないか。それがあったから、俺のこと思い出したんだろう?」
「…そう言う訳では…」
「御前の考えそうなことぐらい、簡単に想像は付くってことだ」
そんなことを話している間にも、観覧車は頂上へと近付いていく。
「確か、この観覧車、一周15分って言ってたよな?その割りには、早く感じるよな」
口を噤んでしまった彼の代わりに、そうつぶやいた声。そして、その言葉は更に続く。
「前に…エースと来た時に、御前言ってたよな?この色を、失いたくない、って。でも…確実に、変わってるだろう?照明に照らされた世界で…ホントの色なんて、見えやしない。天使だって、羽根が汚れるからって、地球の上を飛びたがらないって話だぞ?」
「…清水…」
相手が見つめているのは、闇に包まれた空と、ライトアップされた沢山の建物。そして、東京湾。
その色は、見た目は以前とそれ程変化はない。だが、その真実が、彼らには嫌が応にも目に入る。
媒体と言う、特殊な状況に置かれていたと言うだけで。
「普通なら、夜景を見て「綺麗」なんて言うんだろうけどな。所詮俺は、悪魔の媒体だった男だしな。真面なレンズ越しに景色を見ることも出来やしない」
それが愚痴なのか、諦めなのか、彼には良くわからなかったと言うのが正直なところだったのかも知れない。
ただ…そう言ってくれる相手がいるだけで、彼も自分の目が偽りを見ている訳ではないと言うことを裏付けてくれているのだ。
澄んだ色は、もう見えない。けれど、この惑星の残された生命が、精一杯の偽りを写し出しているのだ。
それが、せめてもの、贈り物だと言わんばかりに。
暫しの沈黙の後、彼はゆっくりと言葉を探しながら、その口を開いた。
「…吾輩は…最期まで見届けてやる決意を持って残ったんだ。どんな姿を見せつけられても、悲観はしないつもりで。だから、ここから見える夜景を見て、「綺麗」と言う輩がいたとしても、あからさまに文句は言わない。聖飢魔Ⅱと言う媒体がなくなった今、何を言っても周りには空回りをしているようにしか見えないだろう?ならば、黙って見届けてやる。それが、この世界での順応だろう?」
「まぁ…な。でも…」
大きく息を吐き出すのは、向かい合った相手。
「いつまで、俺たちにこんな想いをさせるんだ?」
その言葉は、とても重たい。
「俺だけじゃない。きっと…媒体だった奴はみんなそう思ってる。悪魔の本体は魔界へ帰っても、俺たち媒体の意識はここにあるんだ。俺たちの目には、偽りは通用しない。傷付いていく地球が、しっかりと映っていると言うのに…その想いを、どうやって留めたら良いんだ?」
真っ直ぐに向けられた眼差しも、とても寂しそうで。その現実に、胸を痛めているのは言うまでもなかった。
しかし彼は、そんな表情を見せる相手へと、小さく笑ってみせた。
「だから、吾輩が"ここ"にいるんじゃないか」
「…デーモン…?」
勿論、面食らったのは相手の方。
彼は、笑っていた。悲痛の眼差しを向けられても、その苦しい胸の内を打ち明けられても。
「御前たちの想いは、吾輩が受け留めてやる。その想いを全部受け留める為に…吾輩は"ここ"に残ったんだ。どんな姿も、どんな想いも、全部この瞳に焼き付けて、胸に仕舞って置く。見届けるとは、そう言うことだ。思い残すことは、全部吾輩が受け留める。だから…心配しなくて良いんだ」
「……」
「いつかきっと…この世に生まれて良かったと思えるようになるさ」
くすっと、彼が笑った。
昔は、こんな表情を見せたことなどなかったのに。いつから、こんなに無邪気に笑えるようになったんだろう。
「…変わったな」
ぽつりとつぶやいた声に、彼は再び笑いを零す。
「そうかもな。一名になって、随分強くなったかも知れないな。昔も、先の未来に不安がない訳じゃなかった。心の何処かで、誰かに頼れることもわかっていたから…表面化しなかっただけだったのかもな。だが、一名になったらそうもいかない。何もかも、自分で受け留めて、消化しなけりゃならないんだ。強くもなるさ」
「……だから、俺たちがいるんだろう?」
「清水…?」
一瞬、聞き間違いかと思った。だが、そうでもないらしい。彼を見つめる姿は、明らかに今口にした言葉が真実だと語っていた。
「一名でいることが辛くなったら…たまには、頼れば良いじゃないか。それが、仲間なんじゃないのか…?」
そんな申し出をするなんて、それも想像の域を離れた姿。
それが、たまらなく嬉しい。
「…あぁ。有り難うな」
素直な気持ち。昔はエースの手前、それを表に出すことが出来なかった。けれど今は、素直になれる自分がいる。
それは全て…残されたこの惑星の時間と共に、彼が選んだ径。
「御前が…いてくれて良かった」
「…デーモン?」
そっと、頬を寄せる。
「おい…もう直に着くぞ?」
「わかってる」
その直後、軽く触れられた唇。
「記念に」
スリリングな雰囲気を楽しみつつ、くすっと、笑いが零れた。それは、お互いに。
そして、彼らが乗った観覧車は一周を巡り終え、再び地上へと彼らを導いた。
「…それにしても、短いよな?これで900円は高いと思うか?」
観覧車から降りて間もなく、前を行く彼がそう問いかける。
「ん~、場所的なことも考えて、妥当なところだろうな」
そう返って来た声に、彼は思わず笑いを零す。
「1000円でお釣りも来るし?」
「そうそう。俺にとっても有意義な時間だったしな。知ってるか?俺らの下のゴンドラのカップル、かなりいちゃついてたぞ?」
「御前…またデバガメしてたのか?」
「馬鹿言え。視線を向けたら見えただけだ。カップルなら観覧車でキスなんて、定番だろう?」
「…ったく…相変わらずだな、御前は」
小さな溜め息を吐きながらも、自身がそれと同じ定番を踏んでしまったことを、この相手はどう思っただろう。
勿論、恋悪魔を忘れた訳ではないし、これ以上深入りするつもりもない。それは、向こうも当然わかっているはずだ。けれど…今は、ほんの少しだけ、この相手と共有したいと思う時間がある。
だから、少しだけ、見逃して欲しい。
そんな想いを抱きながら歩く彼らを、観覧車に乗る為に並んでいる人々は、相も変わらずに好奇の目で見つめていた。
だが、そんな視線など、最早気にはならない。
今は何より…共にいられることが、心強くて。
同じ想いを抱けることが、何よりも頼もしくて。
ただそれだけが、至福の時だった。
今はまだ…微かな夢を、見ていたいから。
その為に、歩き始めたばかりなのだから。
せめてもう少し…生き延びていて欲しいと願う。
彼らにも…この、惑星にも。
それだけが、細やかな欲望。
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※リクエスト内容は「テーマは「邦楽維新の後」ってことで…」
と言うことでした。
確かその当時、少し前にやった「邦楽維新」で、清水先輩の話題が出てきたそうなので…こんな話になっていました。多少加筆修正はしてありますが。(苦笑)
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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