聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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長夜の夢を覚ます
その夜は、とても寒い夜だった。
日が変わる前にベッドに入り、少し本を読んで、さて寝るか…と枕元のライトを消し、肩口までしっかり上掛けを引き上げ、目を閉じて………暫し。
『………ぐしゅっ!』
自分のモノではない、くしゃみの音。
「…ん?」
隣家の音ではない。今まで聞こえたことはないので、それは間違いない。
一瞬、空耳か…と思い、改めて寝る方向に意識を向けようとした…瞬間。
『……だーっ!!』
悲鳴のような声と共に、ドスン!とベッドの上に、何かが落ちて来た。
「…っ!???」
途端に感じる重量感に、呼吸が止まるかと思いながら慌てて身体を起こそうとしたが、重くて身動きが取れない。なので腕だけ伸ばし、枕元のライトをつける。
と、ベッドの上…自分の身体の上に、唖然とした顔の悪魔がいた。
「…エース?」
思わず声を零すと、その視線が彼の方を向いた。
『…清水?』
どうやら…正当な理由で訪ねて来た様子ではないようだ。その顔が、そう言っている。
「ちょっ…どうした?……取り敢えず…重い…」
『…あぁ…悪い…』
重さを感じている時点で、実体。いつもなら、意識波での会話だったり、鏡越しの対面だったりなのだが…どう言う訳か、実体がいる。
彼…清水の上から身体を動かし、ベッドの端に腰かける悪魔、エース。漸く清水も身体の上の重しが取れ、身体を起こした。そして、大きな溜め息を吐き出しつつブーツを脱ぎ、項垂れるエースへと視線を向ける。
「…どうした…?」
思いがけない登場に、今度は清水の方が唖然としている。
『いや………ごめ……は…ぐっしゅっ!』
言葉の途中で、くしゃみを一つ。その声で、先ほど空耳か…と思っていたのは、どうやらエースのくしゃみだった、と判明したのだが…やはり、何故彼がここにいるかが未だにわからない。
「取り敢えず…大丈夫?風邪?薬…は駄目だから……ちょっと待って」
人間界の薬は、悪魔には利きが悪いので飲ませてはいけない。昔医師たるゼノンからそう言われていたので、薬を飲ませることは踏み止まった。尤も薬を飲ませたところで、直ぐに利く訳でもないのだが。
ベッドから降りた清水は、エースの恰好を見て、まずクローゼットから上着を取り出しては羽織らせた。
いつものように軍服の上着は着ているものの、前は閉めておらず、羽織った状態のまま。風も入るし、寒い訳だ。
「取り敢えずこれ着て待ってて」
もう一言残し、清水は寝室から出て行く。そして暫し…カップを一つ、持って戻って来た。
「ホットワイン。温まるから」
『…悪い…』
軽く鼻を擦ると、清水が差し出したカップを両手で受け取る。立ち上る湯気が温かい。
「…で、どうしたの?こんな時間に…」
時計に目を向ければ、日が変わってから既に三十分以上経っている。予告もなく、こんな時間に訪れて来たことなどなかったので、ただただ、何をしに来たのかとそれだけが疑問で。
『いや…別に、用があった訳じゃないんだが…』
そう言うと再びくしゃみを一つ。そして手に持っていたカップを思い出して一口啜ると、大きく息を吐き出した。
完全に体調が悪そうだと思いながらティッシュの箱を差し出す。エースはカップをテーブルに置くと、鼻をかんでから、もう一度大きく息を吐き出した。
『悪いな。あ、悪魔の風邪はうつらないから。心配するな』
「あぁ…そうだね…知ってるから」
相槌を打ちながら、ベッドの上に座った清水。
「…デーモンのところにでも、行く途中だった…?もしくは、帰る途中とか…?」
多分…ここは通過点だったのだろう、と察する。その途中でくしゃみをして、バランスが崩れたとか。まぁ、詳しい理屈は良くわからないが…そんなところだったのではないかと。だが、エースは首を横に振った。
『今日は、デーモンは関係ない。まぁ…ちょっと調子が悪かったから、早めに帰ろうと思ったらな…くしゃみの弾みで魔力が暴走してな…ここに飛ばされたと言うか、何と言うか……』
流石に、エースも気まずそうではある。元媒体とは言え、夜中に突然飛び込んで来て良い場所ではない。常識として、流石にそれはどうかと。まぁ…全く見ず知らずの誰かの寝室に落ちて来るよりは、清水で良かった…と言うところだが。その辺りはやはり媒体。引き寄せられたところもあるのだろう。
「こんな時間まで仕事してんの?」
流石に気の毒。そう言わんばかりの清水の顔に、エースは幾度目かのくしゃみ。
『そうでもない。最近ちょっと忙しいぐらいだから。ただ、外回りで運悪く軍服の上着が汚れたんだが、今日に限って着替えがなくて…軽く洗って乾かす間、脱いだまま仕事してたからな。帰りは流石に羽織ったが、多分その所為で冷えたんだろうと思うんだが…』
そう言いつつ、ティッシュの箱を引き寄せる。くしゃみをして鼻をかみ、大きく息を吐き出して、テーブルに置いたカップを手に取る。その一連の様子を眺めながら…慌ただしい、とぼんやり考えていた。
そしてカップ一杯のホットワインを飲み終わる頃、漸くくしゃみも鼻も落ち着いたようだ。身体も温まったようで、その首筋や頬に、ほんのりと赤みがさしている。
『はぁ…』
幾度目かの、大きな溜め息。
『…悪いな。寝てたんだろう?』
一応、気にしていたらしい。そんな言葉に、思わず苦笑する。
「そんな、気にしなくても。あんたらしくない」
いつにない姿。調子が悪い所為もあるのだろうが…何だかそれだけではないような気がして。
「…仕事で何かあった?」
思わずそう問いかけると、ちょっとだけ肩を落とす姿。
『まぁ…なくはない、かな。思ったように上手く仕事が回らない。体調がすっきりしないことも加味して、面倒くせぇ、と半ば放棄しての帰宅中だった訳だ。たまにはそんなこともあるが…明日その分上乗せだからな、気が重い』
珍しく、弱気。滅多に見られないそんな姿に、改めてキュンとしてしまったり…まぁ、今更だが。
「あんたのことだから、いつも余裕で仕事熟してるのかと思ってたよ」
思わず苦笑する清水に、エースは再び溜息を吐き出す。
『ばぁか。俺だっていつも完璧じゃねぇんだよ。長く仕事してりゃ、そんなこともあるだろうが』
「まぁ、な。だからこそ、そこで折れるな、って話だよ」
清水は腕を伸ばし、その身体を抱き寄せる。そして、その背中を軽くトントンと叩く。
「よしよし。頑張った、頑張った」
『子供じゃないんだが…』
「まぁまぁ」
笑いながらも、そのトントンは相変わらず。だが、久し振りに感じる相手の体温と呼吸。そして、心地好いリズムでトントンされる感覚に、不覚にも小さな欠伸が零れた。
「欠伸が出るってことは、少しホッとした?」
くすっと笑いを零す清水に、エースは小さく溜め息を吐き出すと、その肩口に額を乗せる。
『御前に慰められる日が来るとはな…』
「あんたほどじゃないが、俺だってそこそこ人生経験積んでるんだから」
笑いながら、再びその身体を抱き締め、頭を撫でる。
「…大丈夫。あんたは、十分頑張ってるから。明日は上手くいくから大丈夫、大丈夫」
時々背中を擦りながら、再びトントンと背中を叩く。
『…あぁ……サンキュー』
懐かしい匂い。それもまた、心地好い。
一緒に過ごした時間より、離れている時間の方がすっかり長くはなった。今では殆ど会うことがない。それでも平気だと…心も身体も、その時間に慣れた。けれどやっぱり、近くにいればこうして温もりを感じることが出来る。人肌が安心すると思うのは…やはり、寂しかったのだろうか。
「……エース?」
途端に無口になったエースに、清水が少し手を止める。そして、その顔を覗き込む。
『…まだ起きてる』
思わず口をついて出た言葉に、自分自身でも笑ってしまう。
「どんだけ気持ちイイんだよ」
一緒に笑いながら、軽く頬擦りするようにその髪に頬を寄せる。
その姿は…愛しい相手への接し方に他ならない。
思わず弱音を吐いたエースだったが、こうして全力で受け留めてくれる清水の存在は、今でも有難いと思う。
だからこそ…気が抜ける。
『…眠い…』
先ほどのホットワインが利いて来たのか、清水のトントンが利いたのか…大きな欠伸を零したエースに、清水はちょっとだけ考え…そして、一旦エースから離れると、上掛けを捲った。
「悪魔の風邪がうつらないんだったら、寝てくか?どうせ、帰って寝るんだろう?」
『…御前は?』
流石に、冷え込むこの夜にベッドを占領するのは申し訳ない…と思いつつも、半分虚ろな表情で問い返すエース。だがそんな顔を前に、追い返す訳にはいかない。そして自分も風邪をひかない為には……。
「じゃあ…一緒に寝るか。別に他人じゃないんだから、平気だろう?ちょっと狭いけど……ほら」
そう言って自分が先にベッドに戻り、エースを促す。
他人ではない、と言いつつも、悪魔と一緒にベッドに入ったことはない。まぁ…媒体だった頃は、日常生活はほぼほぼ知られているので、今更…と言うところ。勿論、エースもそれに関しては清水と同じく、何も構えるところはない。
『…じゃあ…遠慮しない』
羽織っていた上着と軍服の上着を脱いでテーブルの上に置くと、ベッドへと潜り込んだ。
流石に、良いオトナ二名が収まるにはちょっと狭い。まぁ、二名とも細身なのが幸いだが。それでも温もりを求めるかのように、傍へと擦り寄って来る。
そんな姿がちょっと可愛い…と思いながら上掛けをかけてやると、直ぐにパタンと枕に顔を埋め、瞼を閉じるエース。既に限界だったのだろう。
「ゆっくり寝て良いから」
そう言いながら、上掛けの上から再びトントンとリズムを刻む。多分…もう、そんな声も届いていないだろう…と思うくらい、軽い寝息が直ぐに聞こえた。
思いがけない登場に、かなり驚いたが…それでも、最愛の悪魔。それも実体があり、自分の直ぐ隣に眠っている。そんな奇跡は…多分、二度とない。まぁ…二度目があっても一向に構わないが。
だがしかし。すっかり眠りに落ちたその寝顔を眺めつつ…媒体を使わない実体として、いつまでこの状態でいられるのか。それがわからない。
確か、媒体を使わないで悪魔の姿で人間界に現れることが、かなりの負担になると言っていたはず。今までは、姿を現したと言っても薄っすら透けるヴィジョンのみ。ここまでしっかり触れられる実体が現れたことなど滅多にない。だとすれば、ただでさえ具合が悪いこの状態で…限界が来たら、一体どうなるのか。それが不安でもある。
無条件に魔界へ強制送還されるだけならまだ良い。何処に辿り着くのか、清水にはわからないが…ちゃんと帰れるのなら、まだ安心。だがもしも…このまま…消えてしまったら。
考え始めると、到底眠れるはずがない。既に遅い時間だが…と思いつつ、枕元のスマートフォンへと手を伸ばし…流石に隣で眠っているので電話はかけられないので…不本意ながら、状況を記した一通のメールを投げる。そして、待つこと暫し。返信が来た。
まだ起きていてくれたことに感謝しつつ(本当は、着信音で起きたのかも知れないが、この際それには目を瞑って貰って…)、届いたばかりのメールを開く。
----状況はわかった。魔力の限界で強制送還されるとしたら、基点を置いている自分の屋敷であろうから、そこまで心配しなくても大丈夫。一応、ゼノンには連絡を入れておいたから、もしかしたら魔界から迎えに来るかも知れない。その時は宜しく。取り敢えず、御前もゆっくり休めよ。
簡潔な文面だが、流石に心配はしたのだろう。医師たるゼノンに連絡を入れてくれた、と言うので、何らかのアクションはありそうだった。
返信不要と記した御礼のメールを返し、スマートフォンを所定の場所に戻す。そして、枕元のライトを消す。一応安心出来たのか、清水も大きな欠伸を一つ。
隣には、身体を寄せ、こちらを向いたまま完全に寝入っている悪魔。その寝顔を眺めながら、清水もまた、睡魔が戻って来る。
相手は…どんな夢を、見るのだろうか。そんなことをぼんやりと考えていると…いつの間にか、うとうと…と瞼が閉じる。
久し振りの人肌の温もりに、清水もまた、眠りに落ちていた。
----清水…
遠くで、呼ばれている。聞き覚えのある声。
主たる悪魔でもなく…仲間…?………否。
『…清水』
ハッとして目を開ける。するとその視線の先に久々に見た悪魔。勿論、隣に眠る悪魔とは別体の。
「…ゼノン…?」
『御免ね、起こしちゃって』
申し訳なさそうに声を潜め、そう言葉を放つ。もしかしたらその"声"は、耳ではなく直接頭の中に話しかけているのかも知れないが…まぁ慣れているので、どちらでも構わない。
「…大丈夫…」
薄っすらと夜が明け始めたが、エースは未だ良く眠っている。その彼を起こさないように小さく言葉を放ち、そっと身体を起こす。すると、別体の悪魔…ゼノンが口を開く。
『デーモンから連絡貰ってね。エースが不調で清水のところに飛び込んで来た、って。結構具合悪そう?』
様子を見るように眠る顔を覗き込みながら問いかける声に、清水は小さく首を横に振る。
「いや…薄着で身体が冷えたみたいで、くしゃみ連発して鼻かんでたぐらい。熱もなさそうだし、咳もない。ホットワイン飲ませたらくしゃみも落ち着いて、直ぐに眠って…この始末」
『薬じゃなくホットワインってところが懸命だね。流石、媒体。有難うね』
にっこりと笑う医師たるゼノン。そして、眠るエースの額にそっと手を触れると、何やら小さく呪を唱えた。
『良く眠ってるから…このまま魔界に連れて戻るよ』
そう言うと、エースの身体を抱き上げた。
『直ぐに良くなるから、心配しなくても大丈夫。デーモンにもこっちから連絡するから、気にしなくて良いからね』
「…わかった。エースを…御願いします」
『うん。有難うね』
もう一度御礼を言ったゼノン。にっこりと笑うと、その身体がすっと薄闇に溶けた。
ベッドには、まだ微かに温もりが残っているものの…もう、その姿はない。
まるで夢だったかのような…そんな、嵐のような一夜、だった。
暫くベッドの上でぼんやりしている内に、すっかり明るくなった寝室。
既に残っていた温もりも消え、そこに一名残された清水。いつもと同じはずだが…何処かちょっと寂しい気もする。
そう思いつつベッドを降りると、テーブルの上に残された上着と、その下に置かれたブーツが目に入った。
「…あ…上着とブーツ……」
誰も気づかなかったその忘れ物。自分の上着をクローゼットにしまいつつ、もう一本ハンガーを出すと、残された軍服をハンガーにかけると、じっくりと眺める。
昔、人間界での活動時に着ていたものよりずっとシンプル。普通に軍服だ。それでも…何処か懐かしい気がするのは…微かに感じる残り香の所為、だろうか。
「…そのうち取りに来るかな」
慌てて連絡を入れなくても、具合が良くなったら忘れたことに気付くだろう。それまで、飾っておこうか。
そんなことを考えながら、緩んだ口元。
別に、甘い夜ではなかったが…それでも、今までにない経験をさせて貰った気がする。
残された軍服の上着とブーツを眺めながら、一名でくすくすと笑いを零した清水だった。
数日後。彼の予想通り、すっかり元気になった主たる悪魔が、忘れ物を取りに来た。
ついでに…と、共に晩酌に興ずる。
束の間の嵐。それもまた、良い思い出だった。
※去年のアンケートにて、リクエストを頂きました。
「どんなシチュエーションでも良いのですが、「ちょっと気弱になっている長官を励ますエースさん」をお願いします」とのことでした。いつもありがとうございます。(^^)
さて、何を書こう…と数か月…(苦笑)
このところ、寒かったですからね~。大寒も過ぎた、と言うことで、今年も風邪をひいていただきました…(定期的に風邪をひく、ウチの長官…/笑)
話がまとまれば、数日で書き終わるんですけれどね…遅くなりまして。(ホントはピロートークとか入れたかったんですが…流石にねぇ…/^^;
くすっと笑っていただければ幸いです…(苦笑)
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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ひさびさに人間界に現れた長官にドキドキでした。
どんな軍服かなあとおれこれ想像しています。
読ませていただいてから、毎晩寝る前のおともにホットワインを飲んでます。(笑)
楽しんでいただけて良かったです(^^)