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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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かがやきのつぼみ 水端(後半) 1

第四部"for CHILDREN" (略して第四部"C")

こちらは、以前のHPで2005年09月24日にUPしたものです。
第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
3話(後半) act.1

拍手[1回]


◇◆◇

 ゼフィーがゼノンの屋敷に引き取られてから数ヶ月が過ぎていた。
 未だ、殆ど自分の部屋から出て来ないゼフィー。当然、その表情も暗く、声もまだ戻らない。それでも使用魔たちは根気強くゼフィーを支え続けていた。
 そんなある日の夜遅く。残業を終えたゼノンが屋敷に帰って来て直ぐ、雷神界から通信が入った。
「どうしたの?」
 画面の向こう。いつになくにこやかな相手に、ゼノンは小さく笑いを零しながら問いかける。
『うん。あのね、こっちの仕事もちょっと余裕が出てさ。少し時間が取れそうだから、明日久し振りにそっちに行こうかと思って。ララも連れてさ』
 にっこりと微笑みながらそう言葉を発した伴侶に、ゼノンは僅かに表情を曇らせた。
『…どしたの?都合悪い?』
 問いかける声に、ゼノンは首を横に振る。
「そう言うことじゃないんだけど…」
 ここに至って、ゼノンはまだゼフィーのことを雷神界の伴侶に話してはいなかった。
 余計な心配をかけまいと言う配慮だったのだが、まさかこちらに訪ねて来るとは思ってもいなかったから。
 大きく息を吐き出したゼノン。
「…あのね…」
 ゆっくりと言葉を紡ぎ始め、魔界に引き取った"我が子"の置かれている状況を話し始めた。それを聞きながら、伴侶の表情は徐々に曇って行く。
『…そう。ゼゼが…』
「…御免ね。もっと早く話して置けば良かったんだけど…ライデンも忙しいだろうし、俺もゼゼだけじゃなくて、デーモンのこともあったから…」
 ゼフィーのことだけではなく、大切な仲魔のことも抱えていたゼノン。張り詰めていた気持ちが、最愛の伴侶の前、ほんの少しだけ緩くなった。
 一瞬、苦しげに歪んだ表情。それを見逃さなかったライデンは、小さく溜め息を吐き出した。
『…疲れてるみたいだね。急に無理言って御免ね』
 小さくつぶやいた言葉に、ゼノンはハッとして顔を上げる。そして、小さく笑って見せた。
「大丈夫、今日はもう寝るだけだから。でも、明日は…今のゼゼに、ララを会わせる訳には…」
『そう…だね。残念だけど…また今度にするよ。ゼゼが、良くなった頃…ね』
 微笑んで見せるライデン。その微笑みは、誰よりもゼノンを案じているようで。
「…うん。御免ね。ララにも…謝っておいて」
『わかってる。ララには上手く言っておくから、あんたもゆっくり休んでね』
----御休み。
 微笑みを残して、通信は切れた。
 大きく溜め息を吐き出したゼノン。そのまま服を着替え、ベッドに潜り込むものの、なかなか寝付くことが出来ない。
 忙しい伴侶に、余計な心配を与えてしまっただろうか。そんなことを考え始めると、余計目が冴えてしまう。
 けれど今は休まなければ。自分が参ってしまっては、尚更心配をかけてしまう。
 自己暗示をかけ、ゼノンはやっと眠りに着いていた。

 翌日。
 いつもよりも騒々しいような気がして、ふと意識が戻る。
 目を開けたゼノンは、自分の隣に眠る姿を見つけると、思わず声を上げた。
「…ライっ!?」
「…ん~……おはよ~」
 ゼノンの声に目を開けたのは、最愛の伴侶。目を見張るゼノンを前に、ニヤニヤと笑っている。
「…何でここに…」
「ん~?今日の明け方だったかなぁ…俺だけ来ちゃった~」
「来ちゃった、って…ララは?」
「留守番~」
「…あのねぇ…」
 呆れた溜め息を吐き出したゼノン。けれど、その横に寝転ぶライデンは、相変わらず笑っている。
「だってさぁ、あんたが疲れてるみたいだったから。ちょっとでも気休めになれば良いかな~って思って。それに、ゼゼの様子も見ておきたかったしね。少しは容態も良くなれば良いな~なんて思って」
「…ライ…」
「俺は、あんたの伴侶だもの。あんたが辛い時には、一緒に支え合わなきゃ。少しでも、あんたが安心出来るように…ね」
 にっこりと微笑むライデンに、ゼノンは胸が熱くなるのを感じていた。
「……有難う」
 素直にそう言葉を零し、腕を伸ばしてライデンを抱き寄せる。
「当たり前のことじゃん?俺だってゼゼの親だしね。それに、ゼノンを癒せるのは俺の特権だもん」
 くすくすと笑いながら、ゼノンの胸元に顔を押し付けるライデン。その無邪気な姿は、昔と何ら変わりない。
 昔はとても心配で仕方がなかった。けれど今は、とても頼りになる伴侶。
「…俺は嬉しいけど…帰ってから、ララが怒っても知らないよ?」
「大丈夫、大丈夫。その時はその時だから」
 くすくすと笑うライデン。その笑いが、とても心地良かった。
「…朝から盛るのは流石にどうかと思うけど…ちょっとだけ、ね」
 笑いながらそう言って、そっと頬を寄せるライデン。そして軽く口付けると、にっこりと笑った。
「続きはまた夜に…ってことで、今日はさ…デーさんの様子見に行っても良いかな?」
 問いかける声に、ゼノンは小さく笑いを零す。
「うん、良いんじゃない?最近は体調も良いし、核も順調に育ってるみたいだし」
「そう。楽しみだな~。色々思い出すな~」
 ニヤニヤと笑うライデンは、実に無邪気である。
「あ、そうだ。ゼゼも連れて行こうか?」
「…はい?」
「だから、デーさんのところにゼゼも連れて行くの。気分転換になって良いんじゃない?」
「だからって…そんな急に…」
 そうは言ったものの、そう言う機会があっても良いかも知れない。
 全く、この伴侶は良いタイミングで来てくれたものだ。
 ぼんやりとそんなことを考えていたゼノンは、自然と小さな笑いを零していた。

 その日、ゼフィーが目を覚ますと、いつもよりも賑やかな声が聞こえてきていた。
 いつもとは違う日常。その変化に不安そうな表情を浮かべていたゼフィー。けれど、その不安の表情は直ぐに一変することとなる。
「ゼゼ、おはよ。起きた?」
 軽いノックと共に開かれたドアから顔を覗かせたのは、この場にいるはずのない"父親"。
 思わず目を丸くするゼフィーを前に、後から現れたもう一名の"父親"も、にっこり笑っていた。
「ゼゼおはよう。ライデンがね、御前に会いに来たって。気分転換に、って」
 そう言う父親の顔は、いつもよりもにこやかに見えた。
 ライデンはゼフィーのベッドに腰を下ろすと、その身体をぎゅっと抱き締めた。
「おっきくなったじゃん」
 抱き締めたまま、その頭を撫で回し、その背中を軽くポンポンと叩くと、未だ唖然としているゼフィーの顔を覗き込んだ。
「……辛い思い、したんだってね。御免な、何にも知らなかったから、来るのが遅くなって。でも…ゼノンがついてるし、今はゆっくり休む時なんだと思うよ」
 にっこりと笑うライデンに、ゼフィーの顔をが歪む。そして、溢れ出た涙。
 その涙を指先で拭ってやりながら、ライデンはその額をゼフィーの額にそっと押し当てた。
「…大丈夫。御前には、ゼノンがついてるよ。ちゃんと、御前を見ていてくれる。俺も、遠いけど…何かあれば顔を見に来られるから。だから、何の心配もいらないから。ね?ゼノ?」
「…ライ…」
 顔を上げたライデンは、ゼノンに向け、にっこりと微笑む。
 それは、父としての自信に満ちた笑顔に見えて…ほんの少し、ゼノンの胸が痛んだ。
 父親として…まだまだ自分に足りないもの。それが見えた気がして。それを…ゼフィーに、見透かされているような気がして。
「…大丈夫だよ、ゼノ。ね?」
 僅かに変わったゼノンの表情でそんな気持ちを読み取ったのか、再びにっこりと笑うライデン。
 雷帝である前に…父親である前に…愛しい伴侶である為に。彼らが一番優先して来たそんな想いは、今でもそこに感じられる。子供たちの前では呼ばなかった愛称で呼びかけたのも、そんな想いから。だからこそ…ゼノンは大きく息を吐き出し、にっこりと笑った。
 今日は、ライデンに任せよう。それは、信頼出来る相手であるから。
「今日はみんなで一緒に出かけような~。気晴らし、気晴らしっ」
 にっこりと笑う父親たちを前に、ゼフィーの表情もいつもよりも幾分和らいで見えた。
 ライデンの存在が、ゼフィーにとっても良い影響であったことは、その表情を見てもわかること。そして何よりも、ゼノン自身にとってもほっとする時間。
 無謀のような強行手段を取ったライデンであったが、それはそれでライデンの良い所。その無邪気さにゼノンは救われ、ゼフィーも久し振りの感覚を思い出していた。

◇◆◇

 昼を過ぎた頃。デーモンの屋敷を訪れたのは、ゼノンとライデン。それから、ライデンとしっかりと手を繋いだゼフィー。けれど、ゼフィーは初めての場所、と言うこともあり、緊張と恐怖感の為か、ライデンにしっかりとくっついたまま、離れようとしない。
「大丈夫だよ」
 くすくすと笑いながら、ゼフィーの頭を撫でてやるライデン。その姿を、ゼノンは小さな吐息と共に見つめていた。
 玄関のドアが開き、そこから見慣れた古株の使用魔が顔を出す。
「いらっしゃいませ。ライデン陛下は御久し振りでございますね」
 にっこりと微笑むのは、見慣れた顔。そしてその視線がふっとライデンの背後へと注がれる。
 そこには、ライデンの背後に隠れているゼフィーがいたのだ。
「…いらっしゃいませ、ゼフィー様」
 そう声をかけると、更にライデンの背後へ背後へと隠れてしまうゼフィー。その姿にライデンは苦笑するものの、ゼノンは小さな溜め息を一つ。
「…御免ね、アイラ。ちょっと、不安定なものでね…」
「宜しいのですよ、ゼノン様。慣れない場所でございますから」
 くすくすと笑う使用魔を前に、ゼノンはもう一つ溜め息を吐き出す。
 やはり、ゼフィーを連れ出すのはまだ早かったのではないか。そう思ったものの、ここまで来てしまったのだから、もう後戻りは出来ないのだ。
 促されるままにドアの中へと入ると、屋敷の中はいつもよりも賑わっていた。
「…今日は随分賑やかだね?」
 いつもはデーモンの体調を考えて落ち着いた雰囲気であるものの、今日はそう言った雰囲気ではない。
「えぇ、珍しい御客様がいらしているのですよ」
 使用魔の声に、ゼノンとライデンは顔を見合わせる。
「じゃあ、出直した方が良いかな?デーモンも疲れるだろうし…ねぇ?」
 ライデンがそう口を開いた瞬間。
「別に帰らなくても大丈夫だ。ライデンが折角来てくれたんだ。エースもいるし、デーモンも喜ぶぞ」
「…ダミ様!」
 階段の上から覗くように、大魔王たるダミアンがにっこりと微笑んでいるのが見えた。その姿に、流石にゼノンもライデンも驚いているようである。
「ダミ様がいらしていたんですか?」
 階段を上り、デーモンの寝室に向かいながら問いかけたライデンの声に、ダミアンは再び微笑む。
「あぁ、シリウスの気晴らしにね。今日は一緒に来ているよ。ライデンと…ゼフィーは、初対面だね?」
 ライデンの背後からこっそりとくっついて来るゼフィーに笑いかけるダミアン。けれど、ゼフィーは相変わらず黙ったまま、その視線に気がつくとライデンの背中にぴったりと顔をくっつけて隠れてしまう。
「…どうした?」
 その様子に、思わずゼノンへと視線を向けたダミアン。
「そう言えば、ゼフィーは士官学校へ入っているのではなかったか?」
「…それに関しては、後で…」
 ゼフィーの前。言葉を濁すゼノンに、何かを感じたのだろう。了解の意を小さな頷きで返すと、先に立ってデーモンの寝室へと向かった。
「デーモンは思っていたよりも元気だったね。この調子なら、一安心だな」
「今の所は安定していますからね。このまま順調に行けば良いのですが…」
 ゼノンはそう零しながら後に続く。その後にライデンが続き、ゼフィーは未だライデンにぴったりとくっついたまま。
 ゼフィーは、相変わらず不安げな表情のままだった。

 デーモンの寝室に入ると、そこにはベッドに半身を起こしたデーモンがにこやかに出迎えてくれた。
「あぁ、ライデンも来たのか。久し振りだな。元気だったか?」
 久し振りの仲魔の姿に、ライデンもにっこりと微笑む。
「うん、俺は元気元気。このところ、体調も崩さないしね~。今日は連れて来れなかったけど、ララも元気よ」
「そうか。良かったな」
 くすくすと笑うデーモン。けれど、その視線がライデンの背後で止まる。
「…ん?背中は…?」
 デーモンの位置からは、それが誰なのか判別は出来なかったのだろう。しっかりと顔を隠した小さな姿に、そう問いかける。
「…うん。ゼゼをね…」
「ゼゼ?何でこんな所にいるんだ?」
 ダミアンと同じことを問いかけるデーモン。その声に、ダミアンの視線が再びゼノンへと向けられる。
 その、少しばかり緊張した雰囲気を感じ取ったのだろう。その雰囲気を遮るかのように、ライデンが声を上げた。
「俺、ゼゼ連れて散歩して来るよ。デーさんの検診もあるでしょう?また後で顔出すから」
 ゼフィーには聞かせない方が良い話になるだろう。そう察したライデンが気を利かせてくれたのだ。
「あぁ、それなら書斎にエースとシリウス様がいるはずだから。顔見て来たらどうだ?」
 そう提案したデーモンに、にっこりと微笑みを返したライデンは、ゼフィーを連れて寝室から出て行く。
 その背中を見送ったゼノンは、小さな溜め息を一つ。
「…で、どう言うことだ?」
 その姿がすっかりドアの向こうに消えると、ダミアンが声をかける。
「…実は…」
 そう口を切り、ゆっくりと状況の説明を始めるゼノン。その言葉を、ダミアンとデーモンは黙ったまま聞いていた。
「…そう。悪戯が原因で失声症にね…」
 予期せぬ事情に、ダミアンもデーモンも渋い顔をしている。
「精神的なショックが大きかったのだと思います。だから、まだ声も戻らなくて…ライデンが来てくれたので、それでも少しは安定しているのだと思います。そうでなければ、多分外出も…」
 そう言葉を続けるゼノンの表情も曇っている。
「…だったら、もっと早く言ってくれれば良かったものを…わかっていたら、毎日検診に来なくたって良かったんだぞ?」
 気を使ってそう言ったデーモンの言葉に、ゼノンは首を横に振る。
「駄目だよ。幾ら体調が良いからって、いつ容態が変わるかわからないんだから。ゼゼのことは、レプリカたちも見てくれているから。ゼゼのことを言えば…心配したでしょう?だから、黙っていたんだよ」
「だからってなぁ…」
「ゼゼのことは、俺の責任だから。みんなに、余計な心配をかける必要はないでしょう?」
「…御前は、相変わらずだね」
 頑ななゼノンの姿に、ダミアンは小さな笑いを零す。
「わたしも、シリウスのことではだいぶ苦労したけれど…ルークが教育係として正式に着いてくれたからね。今はやっと、皇太子としての自覚が出て来たようだ。わたしは親として大したことはしてやれていないが…それでも、親の背中は見せているつもりだ。御前も必死になっていることはわかっているけれどね、一名で背負い込むことじゃない。ライデンにも早く言っていれば、もっと早く顔を見に来ただろうしね。勿論、御前の判断が間違っている訳ではないけれど、仲魔を頼ればもっと色々な意見を参考に出来たかも知れない。御前だけでは出来なかったことが、出来るかも知れないだろう?それにもっと、ゼフィーを信じて御覧。彼は、御前の背中をちゃんと見ていると思うよ」
「…ダミアン様…」
 にっこりと微笑むダミアン。その微笑みで、疲れ切った心が少し癒される。
 持つべきものは、大切な仲魔たち。
 ゼフィーに伝えたかったその"絆"に頼らなかった自分は…今は、自信を持って父親だと胸を張ることが出来ない。
 けれど。何よりも信じられる仲魔たちを、今は頼ってみようと思った。
 自分が支えられて来たその"絆"を、ゼフィーにもわかって貰えたら。それを、必要だと思って貰えたら。
 いつか、同じような絆を築いて貰いたい。
 それは、今のゼノンの微やか願いだった。
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