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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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いつも傍に 1
こちらは、以前のHPで2002年2月03日にUPしたものです
 ※シリーズ小説はカップリング小説です。
(基本DxAですが、色々複雑です…スミマセン…/苦笑)
4話完結 act.1

拍手[1回]


◇◆◇

 夢を見た。
 青い夢。何もかもが、青く染まっているようだった。その中に走る、黄金色の閃光。
 それは、誰の色だっただろう。どうしても思い出すことが出来ないのは、何故だろう。
 物凄く、傍にいた奴だと言うことはわかる。しかし、それが誰なのかを思い出すことが出来なかった。

 目覚めて初めて、それが夢だったことに気付く。気付いた時には、既に溢れ出る涙を留めることが出来なくて。
 どうして思い出せなかったのだろう。こんなにも大切で、いとおしい存在を。決して忘れはしないと思っていたのに。
 赤く潤んだ瞳が、その想いの深さを語っていた。


 夢を見た。
 赤い夢。全てを燃やし尽くす、赤き炎。その身を焦がす程にまで、激しく、熱い炎。
 その眼差しが、何処かで見ているようだった。
 それが誰の眼差しなのか、良く知っている。しかし…思い出せなかった。それが、誰なのか。

 目覚めた時、枕が濡れていた。零したのは涙。
 何故思い出せなかったのか。それがわからなくて、胸が締めつけられる。
 苦しいのは、誰の所為なのか。
 わかっているはずなのに。
 全て、己の所為だと言うことを。

◇◆◇

「おはよう」
 リビングに現れた姿に、そう声をかける。
「あぁ、おはよう」
 そう返した声の主は、目を伏せていた。
 何処か気まずい。それは、御互いに言えることだった。夢見が悪かった所為だろうか。
 微妙な雰囲気の沈黙が流れる中、遮った声があった。
「エース、ティムが捜してたよ」
「…あぁ、わかった」
 踵を返し、部屋を出て行く背中。心無しか前より線が細くなった気がする。そう思いながら、見送る眼差し。
 魔界に帰って来たあの日から…何かが、変わってしまった気がする。例え、彼が笑いかけてくれたとしても…満たされることのない何かが、そこにあるような気がして。
「……さん…デーさん」
「…ん?」
 声をかけられ、顔を向ける。そこには、微笑む仲魔。
「どうしたの?元気がないみたいだけど」
「…いや、何でもないんだ」
 形ばかりの小さな微笑みを造る。だが、そんな姿にも安堵の溜め息が零れた。
「ずっと元気なかったからさ、心配してたんだ」
「…悪かったな、ルーク」
 その声に微笑んで首を横に振る姿。今までかけた心配などまるで気にする風でもない彼に、思わず胸が痛くなる。
 そっと腕を伸ばし、その姿を抱き締める。
「…デーさん…?」
 その耳許で、囁いた言葉。その声を黙って聞く、静かな存在。
----夢に…躍らされているみたいだ…
 それは果たして、誰の発した言葉だったのか。
 全ては、一筋の不安が招いた夢から始まる。

◇◆◇

 日が高く昇った頃、リビングにエースが現れた。だが、そこには誰の姿もない。
「どうなされたんですか?エース様」
 ぼんやりと立ち尽くしていると、背後から声をかけられて振り返る。そこには、この屋敷で一番の古株である使用魔。
「…デーモンは?」
 そうエースが尋ねると、使用魔…ティムは答えた。
「先程皇太子殿下の所に行かれるからと、御出かけになりましたよ」
「そう…か」
 そうつぶやき、その手で傷の上に触れる。癒え切らず、未だ熱を持った傷が僅かに疼く。
「…ルークも帰ったのか?」
 もう一度、ティムに尋ねる。
「軍事局に顔を出して来るとおっしゃっておりましたよ。直ぐに戻ってらっしゃるようですが」
 その声にエースは溜め息を吐き出す。他の構成員は既に職務に復帰している。
 重傷を負っていたゼノンでさえも。
「…俺だけ、取り残された気分だ…」
 そうつぶやいたエースの声に、ティムは小さく笑った。
「もう直ですよ。もう少しの辛抱です。魔力が御戻りになれば、職務にも戻れますよ」
 彼がこの魔界の屋敷に帰って来た頃、魔力に限らず体力までも回復はしていなかった。だから当然、傷の治りも順調ではなかった。
 だが、あの頃に比べれば今はかなり魔力も戻って来ている。ティムの言う通り、順調に行けば復帰もそう遠い話ではない。
「今は、ゆっくり療養することが大切ですよ」
 ティムにそう言われてしまえば、エースは素直に頷かざるを得ない。溜め息と共にエースは寝室へと足を向けた。


 青い夢。何もかもが、青く染まっているようだった。その中に走る、黄金色の閃光と灰色の影。

 その口元から荒い呼吸が漏れる。何かに縋りたくて、上掛けを握り締めた手。
 切なさに涙が零れる。とめどなく、緩やかに。
 それは、既に己の理性を通り越していた。

「…様…エース様…」
 聞き慣れた声に、現実に戻される。思わず零れた、安堵の溜め息。
「…大丈夫ですか?だいぶ魘されていたようですが…」
 優しく尋ねるティムの声。頭を巡らせ、その姿を視界に入れる。最も、涙でぼやけてはいたが。
「…誰か…帰って来たのか?」
 感じ慣れた気配を遠くで感じ、その腕で顔を覆いながら掠れる声で尋ねる。
「はい、先程ルーク様が…」
 答えたティムの声を遮り、エースは声を発する。
「呼んでくれ、ここに…」
「…かしこまりました」
 ティムが部屋から出て行って暫し。ルークが慌てるように部屋に駆け込んで来た。
「エースっ」
 ベッドに走り寄り、床に跪いてその姿を見つめる。揺れる黒髪に、切なげな黒曜石。その眼差しが、何よりも確かな存在であることを明らかにしていた。
「…大丈夫?あんたが呼んでるって言うから、驚いた…」
「…悪い…」
 まだ呼吸は整わず、声は掠れている。それでも、手を差し出す。
 一瞬躊躇った表情を浮かべたルークであったが、エースの精神状態を察したのか、直ぐにその手を取って握り締める。
「大丈夫だよ、エース。デーさんはいないけど…俺が傍にいるから…」
 黒曜石が、僅かに揺らめく。そこに確証を得たエースは僅かに笑みを零す。
「夢を…見た…」
「…夢を?」
 いつになく、弱々しい口調。今までのエースを感じさせないそれが、ルークを酷く不安にさせていたが。
「…青い…夢だ。でも、それは御前じゃない。なのに、肝心な奴の名前がわからない。姿も思い出せない。どうしてもわからなくて…いつも魘される…」
 瞳を閉じたエース。その表情は、酷く不安げで。
「夢に追い回されて、眠れやしない…ここに戻って来てからずっとだ。まるで、夢に躍らされてるみたいだ…」
 いつか、聞いた言葉。
----夢に…躍らされているみたいだ…
 それは果たして、誰の発した言葉だったのか。
 一筋の不安が、招いた夢。
「…まだ傷が熱を持ってるから…魘されたんだよ。大丈夫だから…ゼノンに…見て貰おう」
 奇妙な不安が…そこにはあった。
 しっくり来ない"何か"。それは…最初はほんの小さな違和感だったはず。けれど…それは、いつの間にか心を…精神を、蝕み始めていた。
 早く、手立てを考えなければ。
 例えそれが、他悪魔に手出し出来るモノではないとしても、僅かにでも残された手段があるのなら、それに頼るしかないことだけは事実なのだ。
 手遅れに、ならないうちに。
「…連絡…入れて来るから、待ってて」
 そう言い放ち、ルークはエースから手を離す。不意に消えた温もりに不安げな表情を浮かべるエース。彼を宥めるかのように小さく笑いかけ、ルークは部屋を後にした。


 夢から覚めなければ、それは一時の安息かも知れない。しかしその反面。己を縛る何よりも強力な想いになる。
 夢から逃れられるのならば、それは孤独と言い換えることが出来るかも知れない。しかしその反面。何物にも捕らわれず、自由になる。
 どちらが良いことなのだろう。
 夢に捕らわれたなら、安息も恐怖に変わる。孤独な心に自由はかえって束縛となる。
 夢は万人が所有するモノであり、また、孤独の世界でもある。それを故意的に阻止することは、眠ると言う習慣を恐怖感として覚えさせることにもなるだろう。

 夢は…見ることによって、価値が出る。そして、夢の恐怖感も然りである。

◇◆◇

 文化局の一室。今まで養療していた時間の長さを意味する程、机の上には山のように書類が積まれていた。
「…何か…手伝おっか…?」
 椅子の背凭れに肘を置き、後ろ向きに座っているその姿は、言わずと知れた雷神界の御曹司。そして、書類の山と一対一で格闘しているかのような彼は、当然ゼノン。ライデンの口調は、重傷からの復帰なのに気の毒な…と言う気持ちを、明白にしていた。
「大丈夫。慣れてるから」
 意外と気丈にそう答える姿。確かに、書類を溜めるのは日常茶飯事のこと。これが初めてではないのだ。
 その時、通信が届く。
「…エースの屋敷から、だ…」
 コンピューターの画面を見てゼノンを振り返ったライデン。
「…繋いで」
 ゼノンの声に、ライデンは通信を繋ぐ。するとそこには、ルークの姿。
「どうした?」
 やって来たゼノンがそう声をかけると、画面の向こうのルークは溜め息を吐き出す。
『エース…ちょっと変だよ…なるべく早く、来てくれない…?あと…デーさんもちょっと…』
 いつになく…その表情は暗い。
「…わかった。御前が変だって言うのなら…多分、そうなんだろうね。デーモンも連れて行くよ。待ってて」
 ゼノンはそう言うと通信を切り、ライデンを振り返る。
「…と言うことだから。俺は、デーモンを連れて行くから、先にエースの屋敷に行っててくれる?」
 そう言ったその表情も、とても暗い。
 彼等の胸に過ぎるのは…奇妙な不安。そして…漠然とした、恐怖。
 そんな思いを振り切るかのように、ライデンはにっこりと笑って見せた。
「大丈夫。それより…あんたも、無理しないでね」
「…有難う」
 ゼノンにとって、その微笑みはほんの少しの安息。
「じゃあ…また後で」
 ゼノンはそう言うと、窓からその身を躍らせて空へと飛び立つ。
 その後姿を見送ったライデンは、大きな溜め息を吐き出す。
「……戻れるのかな…俺たち、みんな……」
 小さな言葉は、誰の耳にも、届かない。

◇◆◇

 触れてはいけない領域がある。
 決して触れないと、己に誓った。それは、一番大事なモノを、護る為に。
 けれど…もしもそれが、間違いだったら…?
 理想と現実の狭間で…本来の道を、踏み誤っていたのだとしたら…?
 それに気付かず、取り返しのつかないところまで進んでしまっているとしたら…?
 それが……歪みを、生んだ。
 小さな歪みは、時間と共に大きな歪みとなる。
 とても甘くて…とても、苦い。
 それが、現実だった。


 嵐が来るのなら。
 その嵐で、不安を吹き飛ばすことが出来たなら。
 その嵐で、哀しみを洗い流すことが出来たなら。
 それが出来るなら、どれだけ良いだろう。この世の全ての不安と哀しみを、消すことが出来るのなら。
 嵐を迎えよう。そして改めて己に誓おう。
 決して領域に触れないと。踏み込まないと。汚しはしないと。
 そう、決して…

◇◆◇

 淡い光が、閉じた瞼の裏に染み込んで来る。
「…いつの間にか、眠っていたか…」
 顔を上げ、小さくつぶやく。
 確か、書類に目を通していたはずだったが。
 そう思いつつ、目を閉じる。あの夢は見なかった。それだけで安堵の溜め息が零れる。
 けれどその代わりに見た夢は、彼が抱えている不安。それは、弱くなり始めた決意。


 一時の快楽に身を委ねれば、どれだけ楽だろう。
 どれだけ、今までの不安が安らぐだろう。
 ただし、その時は失ってしまうだろう。愛して病まない存在を。
 失わない為には踏み留まらなくてはならない。一時の快楽に、惑わされてはいけない。
 しかし、どちらが誠の幸福か。
 どちらを取れば…心の底から満足出来るのか。
 それは…まだ、わからない。

 頭の中で、とめどなく繰り返す言葉。それを振り切るかのように、彼は頭を振る。
 その時、窓が叩かれた。感じ慣れた気がカーテンの向こうにある。
 席を立ち、光を遮っていたカーテンを開けると、そこには。
「…ゼノン」
 驚いた声に、窓の向こうの姿は僅かに笑みを見せた。
「こんな所からどうしたんだ?一体…」
 窓を開けてゼノンを部屋の中に促すと、デーモンはそう問いかける。
「ちょっとね…ルークに頼まれて」
 軽く微笑み、ゼノンはそう告げた。
「…ルークに?」
 怪訝な表情を見せたデーモン。
 ルークからの頼まれ事にこんな形でゼノンが出向くことなど、常ならば決して有り得ないのだ。だからこそ、それが異様に思える。
 それを察したのか、ゼノンは小さく頷いて見せた。
「エースのこと。それと…御前もね」
 内容は、詳しく聞かなくても察することは出来た。だから、敢えて口を噤み、次の言葉を受け入れる準備を整える。
「…様子が変だって。ルークが変だと思うんだもん。俺は、その判断を信じるよ。どうして、俺に言ってくれなかったの?」
「…怪我魔に余計な心配をかけるなと言ったのは、御前だろう。だから吾輩は、御前が完全に回復した時にだな…」
「それは言い訳に過ぎないよ。今更遠慮するだなんて、水臭い。何年来の付き合いだと思ってるの?」
 そう問われ、答えを返せない。
 黙っているつもりではなかったのだが、相談するきっかけが掴めなくて。
 溜め息を吐き出したゼノン。その表情には、医師として案じている色が見えていた。
「気付かない?御前自身、相当魔力が弱まってるって言うのに…」
「…何だと?」
 言われるまで気付かなかったのは、確かにデーモンの失態である。自身の魔力が弱くなっていることにすら、気付かないだなんて…それでは、まるで茶番ではないか。
「…エースの傷…まだ、治らないんでしょ?可笑しいと思わない?エースほどの魔力の持ち主が…未だに、傷を治せないなんて。それがどう言う事か…わかってるでしょ?御前だって…無理しても、何も良い事はないんだよ…?だから…手遅れにならないうちに…」
 その言葉に、デーモンはドキッとして顔を上げる。
 もしも、手遅れになったら…最悪の結末であることは、わかっていた。そうなったら、他悪魔にはどうすることも出来ないのだ。
 ただし、意図的にそれを阻止することが出来れば話は別であるが。
「…デーモン、一緒に来てくれるよね?」
 再びゼノンは口を開く。それは一種、否定を拒むかのようで。だからこそ、小さく頷いた姿には安堵の色を見せた。
「…それよりも…御前、任務はどうしたんだ?」
 不意に尋ねた言葉に、ゼノンは一瞬間を置き…そして、にっこりと微笑んだ。
「いつもの通り」
「…なぁる…」
 その言葉で、ゼノンの行動パターンを察することは出来た。
「それじゃ、吾輩も…同行しようか。御前に」
 そう言って小さく笑い、デーモンは机の上の書類をまとめて、ゼノンと一緒に出発した。
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趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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