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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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いつも傍に 2
こちらは、以前のHPで2002年2月24日にUPしたものです
 ※シリーズ小説はカップリング小説です。
(基本DxAですが、色々複雑です…スミマセン…/苦笑)
4話完結 act.2

拍手[2回]


◇◆◇

 区別すら付かない、沢山の青い色。識別するのは、至難の技だろうか。
 複雑な色たちが、彼を取り巻く。

 夢であるのなら、覚めて欲しい。
 そう、心に願いながら。


「…目ぇ覚めた?」
 覗き込んでいる顔は、懐かしい感じがした。
「…何で…御前が…?」
 屋敷にいるはずのない姿に、思わずそう言葉が零れる。
「ルークから連絡があって。ゼノンも直に来るよ」
 ゆっくりと身体を起こし、視線の高さを彼と合わせる。
「…ルークは?」
「今来ると思う。水差しの水、取り替えに行ったから」
 ベッドの端に座り、そう答えた口調は明るくて。その表情すら悩みを感じさせなかった。
 だからこそ、羨ましくて。胸の奥が、熱くて。
「…エース?どうした??」
 熱い涙で潤んだ瞳を覗き込んだ、心配そうな眼差し。
「…何でも…ない。最近、ちょっと…可笑しい…」
 頭を抱えるように、エースはつぶやいた。
 どうしてしまったんだろう、本当に。自分が自分ではないみたいだ。
 ルークに対して、いなくなってしまうのではないかと不安を抱いたのもつい先程のことである。そして何よりも…夢に魘されて、毎度のように涙を零すなんて。昔のエースなら、信じられない光景だろう。
「…エース…ねぇ、大丈夫…?」
 尚も心配そうな声が、耳に届く。
「…大…丈夫…」
 そうつぶやいたものの、己を制御することが出来ない。
 可笑しいと感じ始めてから、どうにも留められない。気持ちとは裏腹な行動。
 とめどなく流れる涙をどうすることも出来ない。
 その時、暖かな温もりがエースを包み込んだ。
「…ライ…」
「…大丈夫。傍に、いるからね」
 そうつぶやいた声は、優しくて。不思議な程、安らかで。

 安らげる場所は、何処だろう。それすらわからなくて。
 迷子のような心を、どうすることも出来なくて。
 待っていたのは、誰の温もりか。
 わかっているはずなのに、見当らない。
 何処に行ってしまったのだろう。あんなに傍にいたはずなのに。いつも傍にいてくれたはずなのに…一体、何処へ?
 今はここしか…安らげる場所はないのか?
 誰か、答えてくれ。

「…エース…?」
 背中に回された腕に驚きながらも、ライデンはエースの精神状態を案ずるように、声を零す。
 その目は閉じられていて、表情もだいぶ穏やかになって来てはいた。
 彼が求めているモノは、最早明白である。満たされない"それ"が、不安として現れているのだ。
 刹那、ノックの音と共に部屋のドアが開き、水差しとグラスを乗せたトレイを持ったルークが戻って来た。
「ライデン、変わろうか…?」
 小さく尋ねたルークの声に、ライデンは首を横に振る。
「大丈夫。もう、眠ってる。子供みたいだ」
 小さく笑い、答えた声。その証拠に、背中に回された腕に込められた力は、殆ど感じられない。今は寧ろ、ライデンの服に捕まっていると言った方が良いだろうか。
「不安で…仕方がないらしいんだ」
 トレイをサイドテーブルの上に置き、ルークは言葉を紡ぐ。
「あんたの言う通り、これじゃ子供と同じだ。あのエースが…こんなになるなんて」
 そう言った時のルークの表情は、酷く切なげで。ライデンもつい、その表情に引き込まれた。
「どうしちゃったんだろう、エース…地球から戻って来てから、ずっとこの調子で…」
「…やっぱり…」
----無理だったのかな…
 そう言いかけて、ふと口を噤む。
 それは、下手をすれば、デーモンを責める言葉になり兼ねない。勿論、彼等にデーモンを責めるつもりなど毛頭ない。ある意味、彼も被害者なのだから。
 ゆっくりと窓辺に歩み寄ったルークは、その遮光のカーテンを閉める。薄暗い部屋の中、ライデンはそっとエースを寝かし付けた。
「頼りはゼノンだけ…か。ダミ様には報告出来ないし…職務復帰も、まだ先かな…」
 溜め息と共に吐き出された言葉。その時、間合い良くドアが叩かれた。
「デーモン様とゼノン様がいらっしゃってますが…」
 ドアを開けたルークに、使用魔はそう言う。
「あぁ、そう。わかった」
 そう返事を返して、ルークは寝かし付けたエースの手を握っているライデンを振り返った。
「エースのこと、暫く頼むな」
「ん、わかった」
 軽く微笑み、ライデンは言葉を返す。ルークも小さく微笑み返し、部屋を出て行った。

◇◆◇

 リビングのドアを叩き、ルークは軽く声をかける。
「入るよ」
 中には、デーモンとゼノンが、ソファーに座っていた。
「エースは?」
 部屋に入った早々、ゼノンにそう問いかけられる。
「今、眠ってる。ライデンが付いてるから心配はいらない。それよりも…さぁ」
 二名を前にするように腰を降ろし、ルークは大きく一息吐く。そして、デーモンを見つめ、話を切り出した。
「あんた、最近エースとちゃんと話してる?」
「…何だ、藪から棒に…」
 話の主旨が掴めないデーモンは、眉を潜める。
「んだからね、エースの傍にいるかって聞いてんの。時間は山程あったでしょ?」
 改めてそう言葉を放ったルークの声に、デーモンは思わず目を伏せた。それだけで、答えは明確である。
「…やっぱりね。そうじゃないかと思った」
 ルークは小さな溜め息を一つ。
「エース…酷く不安がってる。あのエースが、夢に魘されて涙を零すなんて、信じられる?でも、それが現実。可笑しいと思った時には…もう、俺の手に負えなかった」
「……」
「青い…夢、だって。俺じゃない青。その意味…わかるよね…?」
 それは明らかに、デーモンの色。でも、ルークはそれがデーモンの所為であると責めている訳ではない。ただ、案じているだけで。
「もっと早く…ゼノンに相談すれば良かったのかな…」
 思わず零したルークの本音。
「そんなに…酷いの?」
 思わず問い返した、ゼノンの声。
「…まるで、別魔みたい」
 それに返すように、目を伏せ、つぶやいた声。
 誰が悪い訳ではない。それはわかっているのだけれど…誰も、何も出来ないことが、何よりももどかしい。
「早いうちに、エースの不安の核心を確かめないとね。その理由によって、今後の対処の仕方も考えないと」
 溜め息と共に零した言葉。
「何とかなるのか?」
 問い返したデーモンの声に、ゼノンはふと顔を上げる。
「…正直に言えば、それはわからない。でも、何とかしなくちゃいけないでしょ?御前もエースも、放っては置けないもの」
 先行き不安な一言。だが、既に手遅れだとは思いたくない。
 最低限の、生命を繋ぎ止める手段だけで、終わらせたくないのだ。
「ホントはね、あんまり使いたい手段ではないんだけど…一種の催眠分析を施してみようと思うんだ。催眠を利用して精神分析を行なう、心理療法の一つなんだけどね。心の内面まで探らなきゃいけないから、プライバシーも何もあったモンじゃないんだけど…」
「…仕方がないだろう。御前が良かれと思って選んだ手段だ。吾輩たちが文句を言ったところで無駄、だろう?」
 最早諦めの台詞を吐き出したデーモン。ここまで来てしまったら、反論も何も受け入れられないだろうから。
「それじゃ、エースにも説明して…早速始めるから」
 ゼノンのその言葉の前、誰もが従うしかなかった。


 嵐が来るのなら。
 その嵐で、不安を吹き飛ばすことが出来たなら。
 その嵐で、哀しみを洗い流すことが出来たなら。
 それが出来るなら、どれだけいいだろう。この世の全ての不安と哀しみを、消すことが出来るのなら。
 嵐を迎えよう。

 一筋の不安が招いた夢ならば。


 いつの間にか寝入っていたことに気付く。
 その手にあったのは、確かな温もり。頭を巡らせると、彼の手を握ったまま眠っている姿がある。
「…ライデン?」
 小さくつぶやいた、掠れた声。その声に、ハッと目を覚ます。
「起きた?今度は顔色も少し良いみたいだね」
 にっこりと微笑んでそう言った声に、エースは小さな微笑みを零した。
 その時、ドアがノックされ、ゼノンが顔を出した。
「あぁ、エース。起きたんだね。丁度良かった。御前にね、大事な話があるんだ」
 ゼノンはそう言って、エースの傍にやって来た。
「御前のね、精神面(ココロ)の話なんだ」
 そう切り出したゼノンの声は、心無し低くて。それが真剣な話であることに間違いはないだろう。ライデンの手を握っていた手に、僅かに力が籠もる。
「これから、催眠分析と言うのをやるんだ。御前が夢に魘される原因を追求する為にね。このまま放って置くと、御前の職務復帰が遠くなるどころか、生命に関わることにもなり兼ねない。だから、御前の心の中を探らせて貰うけど…それでも良いかな?」
 その言葉を聞いた直後、エースの表情がすっと変わる。
「生命にって…どう言うことだ?」
 小さく尋ねた声。その声は、僅かに震えている。
 予想もしなかった方向に話が進み始め、訳がわからないままそんなことを言われても、どうにもわからないのは当然だろう。
「大丈夫。今のうちに手を打っておけば、確実に良くなるから。あくまでも、放って置いたらの話だよ。気力と体力の残っているうちに、治してやりたいんだ」
 その声は、暖かくて。不安を残さないように巧妙に隠された、医師が与える言魂。それを察したエースは、小さく溜め息を吐き出す。
 医師に癒しの言魂を使わせるくらいなのだから、自分は既に手に負えなくなっているのかも知れない。それならば、申し出を断るよりは…と、小さな頷きを返したエース。だが、その心の重さは、誰にもわからない。
「良かった。御前が理解してくれて。それで、方法だけど…御前を催眠状態にして、ライデンに御前と同調して貰うから、心配はいらないよ」
「…わかった」
「じゃあ、早速始めたいんだけど…良いかな?」
「あぁ」
 エースが答えると、ゼノンはそっとその額に手を置く。
「ゆっくりと目を閉じて」
 その声に導かれるように、エースはそっと目を閉じた。
「リラックスしていいよ。俺が三つ数えたら、催眠状態に入る。夢も見ないから、ゆっくりと眠れるよ。目が覚めた時、すっきりした気分で起きられるから、安心して。じゃあ、行くよ…」
 ゼノンが数を数え終わる頃、安らかな寝息が聞こえ始めた。
「…眠ったの?」
 ライデンはゼノンを振り仰ぎ、問いかけた。
「そう。もう催眠状態に入っているはずだよ。で、次は御前だけど…エースの意識に同調して、不安の原因を探って来て貰うよ。なるべく、エースに負担をかけないようにね」
 ゼノンはそう言って、ライデンの頭をポンポンと軽く叩いた。
「ん…じゃ、行って来るね」
 そうつぶやき、そっと目を閉じる。同調した意識は、エースの中へと溶け込んで行った。

◇◆◇

 安らげる場所は、何処だろう。それすらわからなくて。
 迷子のような心を、どうすることも出来なくて。
 待っていたのは、誰の温もりか。
 わかっているはずなのに、見当たらない。
 何処に行ってしまったのだろう。あんなに傍にいたはずなのに。いつも傍にいてくれたはずなのに…一体、何処へ?
 一筋の不安が、招いた夢。

 エースの意識の中でライデンが感じたモノは、切ない程の思い詰めた記憶。
 エースが彼に想いを寄せ始めてから、幾つもの不安の種があった。しかしその多くは、彼によって摘み取られて来た。
 彼が傍にいたからこそ、その種は芽を出すことはなかった。
 しかし。地球と言う、青く美しかった惑星に魅せられた彼。それが、エースの心を蝕み始めたのだ。
 だが、選べなかった彼にだけ、責任がある訳ではない。エースとて、彼の倖せと自分を、秤にかけたのだから。
 わかってはいたのだ。どちらか一つを犠牲にする、胸の痛みは。だからこそ、エースも選べなかったのだ。
 誰よりも…愛していたから。誰よりも…必要としていたから。
 けれど、その想いは諸刃の剣。彼と…そして、自分自身をも、傷付けた。
 その先の未来は…全く、見えなかった。
 それが、何を意味するのか。答えは、簡単。
 もう…未来など、そこにはないのだ。

 ライデンは、その切ない程の想いを、身を以って感じていた。


 涙が溢れる。誰の為に?相手への同情心か。それとも、相手の悲痛さを己の身に置き換えてのことか。
「…ライ」
 名前を呼ばれ、意識は戻った。
「…大丈夫?」
 そう尋ねた姿は涙で霞んでいる。それでもその姿が恋しくて、腕を伸ばす。
「…ゼノ…っ」
 しっかりと回された腕を拒むこともなく、受け留めてやる。その凡その予想は付いていたから。
「…話してくれる…?」
 背中をポンポンと軽く叩き、気持ちを落ち着かせる。それは、とても優しい仕種。何とか涙を押さえたライデンは、ゆっくりと言葉を続ける。
「エースは…自分を見失ったんだ…顔には出さなくても、デーさんがガイアに魅せられてから、何かが変わり始めたんだ。そうして…今回のことで、止めを刺された。エースの心は…ぼろぼろだった…もう…どうにもならない…」
 涙ながらに、小さくつぶやいた声。
 誰もが察してはいたのだ。デーモンに負けずと劣らないプライドの持ち主のエースなのだから、そんな不安や愚痴は噫気にも出さない。だからこそ今回のような事態になってしまったのだ。
 ゼノンは、眠っているエースを見つめていた。穏やかな表情の裏に、壊れた心。その悲痛な心を垣間見たライデンは、どれ程の不安を感じたことか。
 ライデンを落ち着かせるように、背中をそっと撫でる。
「…御免ね…辛い思いさせて…ちょっと、休もう」
「…うん…」
 僅かに頷き、ライデンはゼノンの肩口に顔を埋めた。

 いつも、傍に。
 その想いは、どんな時でも消えることはなかった。
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