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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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いつも傍に 4 
こちらは、以前のHPで2002年5月03日にUPしたものです
 ※シリーズ小説はカップリング小説です。
(基本DxAですが、色々複雑です…スミマセン…/苦笑)
4話完結 act.4

拍手[2回]


◇◆◇

 デーモンの背中を見送った三名は、ドアが閉まると大きく息を吐き出す。
「…ホントに御免ね、ルーク…」
 改めてそう言うゼノンに、ルークはもう一つ、溜め息を吐き出す。
「…別に…あんたの責任じゃないよ。俺が…割り切れなかっただけだし…ただ…デーさんのこと…ちゃんと見てよ」
「わかってるよ。俺だって…後悔する為に、御前たちを説得した訳じゃないから」
「…わかってる。俺も…御免な」
 ルークはちょっと照れ臭そうに、ゼノンにそう言葉を向ける。
「あんたたちも仲直りしたし…後は…エースがどうなるか…だね…」
 心配そうに、ドアを見つめるライデンの姿。
 その不安が現実にならなければ良い。
 それだけが、願いだった。

◇◆◇

 青い、夢。
 いつもと同じ色。だが、いつもより、その色は暖かかった。

 何処かで優しい声が聞こえる。
 甘い囁きで、自身を呼ぶ声。そして、暖かな温もり。待っていた安らぎ。
 目覚めた時に…彼に、傍にいて欲しい。それだけが、細やかな欲望。


 握られている手の温もりが優しくて、心の中が安らぐのを感じながら、そっと目を開けた。その視界に映ったのは。
「起きたか?」
 くすっと小さな笑いと共に聞こえた声。
 どうしてだろう。その声を聞いた途端、酷く不安になる。不意に背けた顔は、不安をあからさまにしていて。
「…やっぱり…駄目、か?」
 小さなつぶやきと共に、手の温もりが遠ざかる。
「…っ!」
 慌てて手を伸ばし、今失った温もりを追いかける。捕えた温もりに、安堵の息を吐き出すその姿は、子供と何ら変わりない。
「…吾輩は、ここにいる」
「……」
「約束、しただろう?」
 不安げな眼差しのエースに、デーモンは笑いかける。
 まるで、子供をあやすかのように。
「どんなに嫌われても、やっぱり御前を愛してるんだ。だから、そんな顔しないでくれ。吾輩は…何処にも行かないから」
 そう言った柔らかな眼差しは、かつてと同じ。
 エースはベッドから身を起こすと、その腕を伸ばして目の前の確かな存在を抱き締めた。
「…エース…」
 まるで、息が止まるかと思うくらい、強く抱き締めた腕。その強さは、前と何も変わりはしない。ただ、かつてと違うのは…不安げなその表情だけ。その顔に、胸の底が締め付けられる気がした。
「エース」
 やっと力の緩んだその腕の中から、デーモンは手を伸ばしてその頬に触れた。
 その時ふと、甦った記憶。
『…臆病なんだな、俺は。全てが満たされてしまったら…その後は失うだけのような気がする。勿論、御前がどうの、と言う訳じゃない。ただ…俺自身が…変わるのが怖いんだ…』
 そう言ったエースの顔が…今ここにいるエースと重なる。
 あの時は…こんなことになるだなんて、全く想像もしていなかった。時が来れば…御互いに、踏み込めると思っていた。
 それなのに…何かが…変わってしまったのだろうか…?
 交わされた口付けにさえ、その表情は不安のままだった。

 一時の快楽に身を委ねれば、どれだけ楽だろう。
 心の弱さに付け込んで領域に踏み込んでしまったら、彼の表情はどう変わるだろう。
 微笑みか、否か。それは、その時になってみなければわからない。己の弱さが招いた不安ならば、己の意志で、結論を出さなければ。

「…愛してる、エース…」
 理性の箍が外れかかっていることを感じながら、デーモンはその腕でエースを抱き締めていた。
 その意識は、もう自分では留めることが出来ない。
 エースの唇から首筋へ。ゆっくりと、口付けを繰り返す。
「……ぁっ」
 小さな反応を示し、吐息が零れる。
 拒む姿など、そこにはなかった。ただ不意に、エースはその言葉を紡いだ。
「…踏み込めるか…?」
 囁く程の微かな声に、デーモンはハッとして顔を上げる。
 自身を見つめる眼差しにしっかりとした意志が宿ってはいた。だが、何処か哀しそうで。
 息を飲むデーモンの前、エースはゆっくりと言葉を続ける。
「…御免な。気付いてやれなくて。前に俺が言った言葉に…遠慮してたんだろう?でも、御前を…その悩みから、解放してやるから…」
 確かな言葉を紡ぐエースの姿は、決して子供などではない。
 これは…本当に、エースなのだろうか…?
 デーモンのそんな意識が、その欲望に歯止めをかけた。
「…そうじゃない。吾輩の悩みを解決させる為に、御前を利用するんじゃない。吾輩は、御前を助けたかっただけだ」
「…そう…」
 伏せた、エースの眼差し。
 明らかに、エースは何処か可笑しい。酷く不安定な精神であったかと思えば、今まで口にしなかった言葉を紡いだりする。その眼差しの奥にある何処か哀しそうな光も、デーモンの胸に引っかかっているのだ。
 もしかしたら…エースが、自分のことを誰よりも良くわかっているのなら……
 そんな、奇妙な不安がデーモンの意識を過った途端、エースはそれを口にした。
「だったら…俺を…殺してくれよ」
「な…んだと…?」
 想像をしていなかった訳じゃない。ある意味、やはりと思ったその言葉に、デーモンも息を飲んだ。
 エースは真っ直にデーモンを見据えている。
「俺は、御前を殺せる。キスしている時でも、俺の髪を愛撫してくれている時でも…どんな時でも、俺は御前に刃を向けることが出来る」
 その眼差しは、酷く悲観的で。その意味をわかってはいても、素直に受け取ることが出来ない。
「…可笑しいぞ、御前…」
 思わず、口を吐いて出た言葉。
 その言葉に、エースは軽く一笑する。
「そうだな。狂ってる、と自分でも思うよ。だが今は、愛情よりも確かな感情だと思ってる。俺の中の狂気はな」
「……」
「愛しているなら…殺せるだろう?御互いを苦しめる元凶を摘むのなら、それが一番良い方法だ」
 そう、無理矢理結論づけるのは、どうしてだろう。
「馬鹿を言うな。御前が生きていなければ、意味がない。共に生きると…約束しただろう…?」
 諭すような言葉。それが、酷く無機質な言葉に聞こえて、エースは思わず大きな溜め息を吐き出していた。
 何かが、ずれてしまった。
 その想いが胸を過る中、ゆっくりと口を開いたエース。その言葉は、自らを断ち切るようで。
「共にいることが…想いの全てだとでも言うのか?もしそうならば、俺たちはもうおしまいだ。御前は、俺と共にいることに不安を感じてるだろう?俺が、そう言うカタチで御前を求めなかったことが原因だろう?ほら、そこで答えはもう出ているじゃないか。今だって…御前は、自分の欲望に、自分で歯止めをかけた。どうしてだ?こんな俺が相手では…こんな状況で抱かれるのは、不服なんだろう…?だったら、これ以上…今までの関係は、続けられないんだ。俺たちの気持ちは…もう違う方向を向いてしまっているじゃないか」
「エース…何を馬鹿なことを言ってるんだ。違う方向など向いていない!そうだろう?吾輩は、今までと変わりない。そんなに…吾輩が信じられないのか?」
 そう問い質す声にも、エースは首を横に振った。
「信じられない。今は、どんな言葉も。カタチもいらない。だから、俺を殺してくれ。御前だから頼むんだ」
「出来ない。御前を殺すことなんて出来るはずがないだろう?」
 そう言い切った声に、エースは口を噤んだ。
 その眼差しの奥にあるのは、絶望の光だろうか。
「きっと…道はある。だから…結論を急がないでくれ。自分を、追い詰めないでくれ。吾輩は、御前の傍から離れない。だから…きちんと、吾輩を見てくれ」
「……」
 僅かに、眼差しが揺らめいた。大きく息を吸い込んだ肩が、僅かに震える。
「…少し、休んでろ」
 デーモンはそう言うと、エースをベッドの中へと押し込めた。
「隣に、いるからな」
「…あぁ」
 目を閉じて応えたエースの声に、デーモンは小さな溜め息を吐き出す。
 後ろ手にドアを閉め、廊下へと出たデーモン。飲み込んだ言葉は…誰にも届かない。
----心だけじゃない。精神まで壊れている。もう、手遅れかも知れない。

◇◆◇

 もう、戻ることは出来ないのだろうか。
 一度狂った歯車は、もう元へは戻らない。間違えた道を、戻ることも出来ない。
 わかってはいる。誰よりも、自分のことだから。
 どれだけ、相手を傷付けることになったとしても、それしか方法が思い付かない。そうすることが、一番良い決断なのだ。
 もう、彼の隣には立てないだろう。自分の居場所も、なくなるだろう。
 でも、それでも…歩み始めた道を、戻ることは出来ないのだから。
 選んだ道に、後悔は……ない。

 デーモンの足音が聞こえなくなると、エースはそっとベッドから起き上がった。そして、使い慣れた机の前に腰掛ける。
 僅かな時間をかけ、便箋にそれを記した。
 それは、二通。一通は、仲魔に宛て、もう一通は自分の部下に宛てて。
 それが終わると、クローゼットを開けて服を着替えた。御気に入りの、黒の軍服。これは、自分だけじゃない。彼も、気に入っていてくれた戦闘服だった。
 ぐるりと部屋の中を見回し、その溜め息を吐き出す。
 これももう見納めだと言う、想いと共に。
「…御免…」
 悲痛の眼差しを伏せ、エースは窓を開け放った。
 思い残すことは、山程あった。けれど、その全てを切り捨てる覚悟を決めてしまったのだ。
 全ては、自身が招いたこと。ならば、自身の手でケリを着けなければ。
 エースは窓から身を躍らせ、飛び立った。その身は疾風のように消え去ってしまった。

◇◆◇

 悲痛な表情で戻って来たデーモンに、誰も何も問うことが出来なかった。
「…もう少しだけ…時間を、くれ」
「…デーモン…」
 ぐったりとベッドに座り込んだデーモンの隣に腰を下ろしたゼノンは、それ以上何も言わず、黙ってその手を握り締めた。
 冷たいデーモンの手。それだけで、その心がどれだけ追い詰められているかを察することが出来た。
 ルークもライデンも、その姿には言葉が出ない。
 エースは…どうなってしまうのだろう…?
 皆の胸の中に不安が過ぎる。
 そんな重い時間がどれくらい経っただろう。
 カタン、カタン…と、窓がぶつかる音が聞こえる。
「…エースの部屋、だよね…?」
 その奇妙な音に最初に反応したのは、ライデン。
 窓を開け、隣を見てみれば、開け放たれた窓が風に揺れているのが見える。
「…エース、寝てるんだよね?」
 デーさん、窓開けて来た?
 そう問いかける声に、デーモンの表情が強張っていた。
「…吾輩…窓は開けてない」
「……」
 奇妙な不安が、彼等の胸に過った。
「見て来る」
 直ぐに踵を返したのは、ルーク。
「エース!」
 ドア越しに声をかけても、返って来る返事はない。
 まさか、と思った瞬間に、その鼓動は早くなり、不安は益々大きくなる。
「エース!」
 勢い良く、ドアを開け放つ。その視界に最初に映ったのは、開け放たれ、風に揺れる窓とカーテン。
 ぱたぱたと風に煽られる、重石を乗せた机の上の紙と一通の封書。そして…空のベッドに投げ出された、さっきまで着ていたはずの、エースの夜着。
 それは明らかに、この部屋の主の不在を意味していた。
「…エー……」
 言葉が、続かない。
「な…んで……何でだよっ!!」
 悲鳴のような叫びに、他の構成員も集まって来る。そして一様に、主不在の部屋の様子に息を飲む。
「こんなのってないよ!何でだよ!!どうして…っ!!」
 酷く取り乱しているルークを宥めるかのように、ゼノンがその肩を抱いている。だが、かける言葉も見つからない。それはデーモンも同じことだった。
 その中でただ一名。ライデンだけは、驚きながらも風に煽られている、机の上の紙を手に取っていた。
「…エースから…俺たちに、だ…」
 その声に、緊張が走る。


----デーモン、ルーク、ゼノン、ライデンへ

 残される、御前たちの気持ちは、わかっているつもりだ。
 いつでも皆を傷付けるのは、不安にさせるのは、常に俺の行動であったことも。
 俺は、もう長くは持たない。壊れた精神状態は、俺が一番良くわかっていたから。
 これ以上、皆を傷付けたくなかったから…苦しめたくなかったから。だから、身勝手ではあるがそう決断せざるを得なかった。
 俺は死んだものとして、捜さないでくれ。
 身勝手な決断を、許して欲しい。
 俺が言いたいのは、それだけだ。

 追記。
 もう一通は、リエラに渡して欲しい。
 情報局のこれからの処置は、そちらに記してある。----エース


 ライデンの声が途切れた後も、誰もその場から動くことが出来なかった。
 エースは、誰よりも自分を良くわかっていた。だからこそ、出した結論だったのだ。
 殺さなかったのは…殺せなかったのは、デーモンにしてみれば当然の結論だった。
 例え、助けられなかったとしても。
「…もう、そっとして置いてやろう…」
 デーモンのその言葉に、誰も反論はしなかった。
 誰よりも辛いのは、彼だとわかっていたから。

◇◆◇

 翌日、情報局に手紙を届けたのはルークだった。
 もう随分使っていないエースの執務室に通されたルークは、その部屋の中を見回していた。
 前にここに来た時には、彼はここにいたのだ。皮肉げな笑みを浮かべながらも、ルークを歓迎してくれていた。
 しかしそれは、もう過去の栄光なのだろうか。
 あの時の、気位の高いエースは、もうここにはいないのだ。
 ルークの黒曜石から、はらりと一筋落ちた輝き。
 それを拭った頃、リエラが現れた。
「…わたくしに御用と伺いましたが…」
 副官であるリエラは、ルークのこの訪問に、何かを感じていたのだろう。酷く、不安げな表情である。
「…実はね、これを御前にって、エースから…」
 多くを語らず、それだけを告げ、手紙を差し出す。
 リエラはそれを受け取り、神妙な顔で封を解いた。
 暫しの沈黙。読み終わった後、頬を濡らしていたのは涙。
「…あんたも、苦労するね」
 そう零した、ルークの言葉。
 同情か、憐れみか。それとも……
 その深い意味に、リエラは頬を拭って首を横に振った。
「わたくしたちの主は…長官は、エース様だけです。きっと帰って来てくださいます。ですから…その時を、待っています」
「義理堅いね、あんたたちは」
 ルークは小さな微笑みを零した。その黒曜石の奥に、深い哀しみを隠して。
「あんたの意志は、ダミアン様に伝えて置くよ」
「…御願い、致します」
 深く頭を下げるリエラに、ルークはそれを口にすることが出来なかった。
 あの頃のエースは、もう帰って来ないかも知れない、と。

----夢に…躍らされているみたいだ…
 それは果たして、誰が発した言葉だっただろう。
 全ては、一筋の不安が招いた夢。

◇◆◇

 ルークの報告の後、エースが行方を眩ませたことは、その後の警戒体制により厳重に対処された。
 皇太子を始め、構成員、情報局上層部、エースの屋敷の使用魔に伝えられたその事実は、他に漏れることはないはずだった。
 エースの役職は、依然として長官職のままだったが、休任と言うことにされている。
 そしてエースの行方は、彼の意志の通り、誰も捜しはしなかった。

 いつも、傍に。
 その思いは…もう、叶わぬ願いなのか。
 待つだけでは…何も、手には入らない。
 手を離したのは……誰だったのか。
 繋いだ手の温もりは…今は、遠い。
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趣味は妄想のおバカな物書きです。
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