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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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それぞれの想い 4
こちらは、以前のHPで2001年8月12日にUPしたものです
 ※シリーズ小説はカップリング小説です。(基本DxAです…/笑)
5話完結 act.4

拍手[1回]


◇◆◇

 とても、天気が良かった。
 ただ一つ。
 嵐が起きているのは、彼の心の中。

 その勅書が届いたのは、昼食を済ませ、午後からの会議に備えての書類に目を通していた時だった。
「…ったく…こんな時に…」
 とにかく、会議には出席せねばならない。会議の席を外すことは、重要なポストにいる彼には、到底許されまじき行為であるから。それに今回に限っては、副大魔王たる彼が席を外すと、大変なことになり兼ねない。何せ、上層部の…それも、彼と並んで重要な役割を持つ者が数名、欠席として既に名を連ねているのだから。
 本日の欠席者は三名。うち、二名は休暇と言う名目で書かれている。
 まぁ、それは言わずと知れた軍事局参謀。もう一名は、情報局長官。
 そして残る一名。彼の元に届られたその理由は、急を要する仕事が出来たから。
 その理由に、彼が溜め息を吐いたのは言うまでもないだろう。そしてその者とは、脱走の名手、文化局の局長であったのだから、尚溜め息が出る。
 憶測として考えられることは、まず第一に、会議などと言う面倒くさい職務に出たくないと言う、子供じみた理由による脱走。
 第二に、雷神界のライデンに呼ばれてか。
 第三に、無事…とは言い切れない、天界から戻って来たルークの看護。
 第三の憶測の原因は、先程届いた勅書だった。
 それは、天界のミカエルから。
《ルーク参謀は、先程、魔界に帰還されたし》
 彼自身が確かめた訳ではないものの、恐らくは事実であろう。それ故に、彼も呑気に会議に出席している場合ではないのだが…統率者が席を外す訳にもいかず。
 彼の苛立ちは、更に増していたのだった。

◇◆◇

 額の冷たさが心地良かった。
 うっすらと目を開けると、その視界に入ったのは、見慣れた仲魔の姿。
 多分、相手もルークの顔を覗き込んでいたのだろう。すぐに行き合った視線は、安堵感を明らかにしていた。
「気分は?」
「…大丈夫」
「そう」
 穏やかな笑みを浮かべ、相手は答える。
「悪かったね、ゼノン。面倒かけて…どうせ、あんたを呼んだのはエースでしょ?」
「まぁね。でも、会議をさぼる良い口実になったよ」
 くすくすと笑いながら答えた姿に、ルークは僅かに目を細め、目を伏せた。
 相手がどんなに忙しくても、エースなら無理矢理呼び寄せることだろうと、ルークはぼんやりと考えていた。そしてこの相手もまた、ろくに出世欲もないクセに、何故文化局の局長をかなりの任期、熟しているんだろうとも。
 まぁ、その辺のところは、彼の才能を、魔界の悪魔事部も放っては置けないのだろうと言うところではあるが。
「…エースは?」
「ん、ダミアン様のところにね、報告に」
「…そっか…じゃあ、俺が天界に行ったこと、バレてるよね…」
 浮かない表情で溜め息を吐いたその姿に、僅かに笑いが返って来る。
「大丈夫だよ。ダミアン様も、わかってたみたいだから」
「あちゃ…そりゃ、もっと大変じゃないかぁ…」
 改めて溜め息を吐き、ルークは起き上がった。
「顔色は、だいぶ良いね。でも、まだ完全じゃないんだから、暫くはゆっくり休んで、魔力を回復させて。無茶をすると、すぐにベッドに逆戻りだから」
「わかってますって」
「あ、それから、もう一つ…」
 ルークの様子を伺うように、ゼノンは言葉を続ける。
「デーモンとエース、また喧嘩中みたいだよ。しかも、今度は不気味な程冷戦状態のね。俺はダミアン様から聞いたんだけど…御前、何かしたの…?」
「……まぁ…」
 わかってはいた。ルーク自身が、デーモンの機嫌を損ねる原因になりつつあることは。
 ただ、そのことに関し、エースは何も言わなかったから。
「まぁ、これ以上デーモンの気を荒立てない方が、無難だとは思うけどね。でも、俺も今日の会議、すっぽかしてしまったからねぇ。今頃、どうなっていることやら」
「…あのねぇ…」
 呆れる程呑気につぶやくゼノンは、どうやら自分の行動には罪の意識はないらしい。
 と、その時。
「ルーク、起きてるか?」
 その声と共に、ドアを開けて入って来た姿。
「エース、報告御苦労様」
「あぁ」
 エースの表情は、どうもすっきりはしていない。まぁ、デーモンとの事を考えれば当たり前だろうが。
「じゃあ、エースも来たことだしね。俺は、ライデンに呼ばれてるから、もう行くよ」
「あぁ、御苦労様」
「どう致しまして」
 軽く微笑んでルークの髪を一混ぜすると、ゼノンは部屋から出て行った。
「顔色は良いな」
 机と対になっている椅子を引きずり寄せ、エースはそう言葉を発した。
「暫くはゆっくり休めって言われたけどね。それよりも、ダミ様…何か言ってた?」
 不安げに尋ねたルークの声に、エースは苦笑した。
「ゼノン…か。彼奴は全くおしゃべりなんだから…」
「エースっ」
「…御前は、気にしなくて良い。ミカエル総帥が勅書を送りつけて来たから、俺が迎えに行く前にはもうバレてたんだ。まぁ、御前が無事に帰って来さえすれば、ダミアン様は御機嫌なんだから」
「じゃあ、デーさんとは?」
「…そんなことまで…」
 エースは心底呆れたように溜め息を吐いた。
「…大丈夫だ。御前が心配する必要はないって。俺がちゃんと、誤解を解いてだな…」
「でも、冷戦状態なんでしょ?」
「…ったく、あのおしゃべりがっ」
 改めてエースは溜め息を吐く。その姿に、ルークの表情が曇った。
「あー…そんな顔するなっ。大丈夫だから…っ」
「…だって…」
 慌てるエースに、ルークは溜め息を一つ。
 デーモンとエースの喧嘩の凄さは今に始まったことではないとは言え、かつての何万年にも渡る冷戦を知ってるルークにとっては、どうにも安心は出来ないのであった。まぁ、あの頃とは喧嘩の理由が180度、逆向きのベクトルではあるが。
「…御免ね、エース…俺が、天界になんかに行かなければ…」
 うつむき、ルークは言葉を零す。
 その姿にエースは小さく笑いを零した。
「御前を行かせた時点で、俺も御前も同罪だ。御前の責任じゃない。寧ろ、御前の方が…辛かったんじゃないのか…?」
「……まぁ…俺は、感情なんてモンは、抑えようと思えばどうにでもなるからさ。あんたのおかげで、ちょっとだけ…気が楽になったかな」
「…なら良いんだが…」
 エースは、僅かに目を細めた。
 くすっと、笑う声。そして、ルークの頬に差し述べられた手。
「少し…分けてやるよ」
「え…?」
「早く、顔が見たいだろう?」
 そう言われ、やっとその意味を察したルークは、ぱっと頬を赤らめる。
「あんた、知って…」
「そりゃ。俺の目は節穴じゃないからな」
「…もぉっ」
「照れるな、照れるな」
 くすくすと笑うエース。だが、頬に当てられたエースの掌から、心地良い魔力の波動を感じて、ルークも諦めて目を閉じた。
「早くしてよねっ」
「わかってるって」
 ルークの表情が、穏やかになる。その顔を、穏やかな表情で見つめるエース。
 ルークにとって、安らげる場所。それが、今ちゃんとここにある。ミカエルとのやり取りを見たエースにとって、その場所がどれだけ大切か…その想いが、どれだけ大切か、改めて感じていた。
 だから、その想いが報われるように。
 お互い、何も口を開かない。その沈黙も、心地良い。
 けれど、その沈黙を破ったのは、突然の声。
「ルーク、入るぞ?」
 唐突にノックされ、返事を待たずに開け放たれたドア。そして、顔を現したのは。
「…デー……」
「………」
 一瞬にして硬直したのは、誰と、限定する必要もなかった。
 目を見張っている彼の視界に映っている二名は、これからキスでも交わそうかと思っている恋悪魔同士のように見えなくもなかった。
 勿論、彼に妙な懐疑心があったから…であるが。
「…そう言うことか…」
 小さくつぶやき、彼等に向けた眼差しはとても冷たくて。
「いや…ちが…っ」
「邪魔したな」
 ルークの言葉を遮り、彼は踵を返し、そのドアを締めた。
「デーモンっ!」
 焦ってその背中を追いかけたエースであったが、ドアの向こうには残留の気があるだけで、彼の姿は既に残ってはいなかった。
「……ったく…」
 大きく溜め息を吐き、エースは前髪をうっとおしげに掻き上げた。
 部屋に戻って来ると、ベッドの上でルークが心配そうな眼差しを向けていた。
「…デーさんは?」
「気にするな」
 そう、答えが返って来たものの、エースの表情は固い。
----間の悪い時に現れるんだから、彼奴は。
 溜め息と共に吐き出された言葉に、ルークは表情を曇らせた。
「…御免…誤解させちゃって…」
「気にするなって、言っただろ」
 ルークの髪を一混ぜして、小さく苦笑する。
 しかしその優しさが、かえって辛い。
「俺…謝って来るよ。ちゃんと説明すれば、デーさんだってわかってくれるよ。それに…俺には、他に好きなヒトがいるんだし」
「…ルーク…」
 ルークは物言いたげなエースの視線を逃れ、床の上に足を降ろした。しかし魔力がまだ戻っていない為、立ち上がろうとしてもまだ満足に力が入らず、ゼノンから言われた"安静"の言葉を実感してしまった。
「大丈夫か?」
 ふらついたルークの肩を、エースは抱き止める。
 そしてそのまま、寄り添うカタチになる。
「無茶、するな。満足に動けないクセに」
「…大丈夫だってば」
 エースの胸を押し、身体を引き離す。
「もう大丈夫だから、職務に戻って」
 小さく微笑み、ルークはエースの肩を叩いた。
 それは、まるで自分に言い聞かせるかのように。
「…あぁ」
 目を細め、エースは小さく答えた。

◇◆◇

 副大魔王の屋敷の一室。
 薄暗い部屋の中で、電気もつけずに部屋の主は窓からぼんやりと外を見つめていた。
 冗談めかしに皇太子が言った言葉が、脳裏に甦る。
『意外と、浮気してるのかも知れんぞ?案外、近くの奴と…な』
 最近、エースとはゆっくり会っていなかったとは言え、それが真実とは認めたくはなかった。
 しかし。先程の二名の姿は、どう見ても事実であると認識されてしまった。
 大きな溜め息を吐き、デーモンはテラスへ出る窓を開けた。
 するとそこには、その闇に紛れるかのようにテラスの手摺りに背を凭れて座っている悪魔が一名。
「…ルーク…」
 いつからそこにいたんだ?
 そう言いたげなデーモンの表情に、ルークは立ち上がった。
「…あのね、デーさん…俺の話、聞いて貰いたいんだけど…」
「聞く話など、ないはずだ。それとも何か?吾輩に、エースと付き合う許可でも貰いに来たのか?」
 不機嫌そうに視線を逸らしたきつい口調の言葉に、ルークは一瞬、目を丸くする。
「…そんなんじゃ…あれは、デーさんの誤解だよ。ちゃんと話を聞いてよ」
「……」
 無言のデーモン。
 しかし、その眼差しは真っ直にルークに向けられていた。
 その眼差しで、デーモンが話を聞いてくれそうだと悟ったルークは、小さく息を吐いて、胸に溜まっている言葉を、デーモンに向けて放った。
「俺ね…エースのことは好きだよ。今回のことは、あんたに黙って色々やっちゃったから、機嫌が悪いのもわかってる。でも、エースに対してはあんたが思っているような感情の『好き』じゃないんだ。わかってよ」
 懇願するようなルークの声に、デーモンの眼差しが僅かに揺らめいた。
「…じゃあ、どんな意味だ?」
 不意に、そう尋ねられた言葉。
「…仲魔に対しての『好き』、だよ。当然じゃない。エースだけじゃない、デーさんだって、ゼノンだって、ライデンだって…みんな、同じ。だから…あんたが思うようなことは何もないから」
 ルークは小さくつぶやく。
 でも…と、ルークはデーモンを見つめた。
「エースは、あんたを愛してる。それを、疑う必要はないじゃない」
「もう良い、ルーク」
 背後から、声が聞こえた。
 ばさばさと、翼を羽ばたかせる音が聞こえ、そこに一名の赤き悪魔が現れた。
「俺のことは、俺が自分で話をするから」
「エース…っ」
 テラスに降り立ち、デーモンとルークの間に入ると、エースはその両の膝を着くと、頭を低く下げた。
「エース、何を…」
 つぶやきかけたルークの声を遮るかのように、エースはその言葉を放った。
「御免」
「エース…」
「…御前に、ルークの里帰りのことを黙っていたことは謝る。それに関しては、俺が悪い。何も言い訳はしない。だが…その後のことは別だ。御前が俺を信じられないと言うのなら…それまでだ」
「ちょっ…何言ってんのさっ!」
 突然、話が奇妙な方向に行き始めたのを感じたルークは、思わず声を上げる。
「そんなこと言いに来たんじゃないでしょっ!?何考えてんだよっ!」
 ルークの怒濤の声を聞きながらエースは立ち上がると、膝の埃を軽く払って、顔を上げた。
「何年来の付き合いだ?状況も読めないで勝手に怒ってるなら、これ以上どうにもならない。俺はルークに対して、疚しいことは何もしてないからな」
 その眼差しは、とても冷たい。それで、エースが相当怒っていることも察することが出来る。
 そして、それを真っ直に受け留めたデーモンの眼差しにも、明らかに怒りの色が伺えた。
 ただ一名…ルークだけは、間に挟まれて遣り切れない思いで一杯なのだが。
「ちょっ…いい加減にしてよ!何でここで、あんたたちがまた喧嘩しなきゃならないのさっ!原因は俺っ!それだけのことじゃないっ!」
「もう、それだけが原因じゃないんだ」
「エースっ…」
 返す言葉もなく立ち尽くすルークに、デーモンは視線を向けた。
「…そう言うことだそうだ。吾輩も、振り回されるのはもううんざりだ。それで話の結論は付いたな」
「…つ…」
 つぶやきかけた唇は震え、言葉を紡ぎ出すことは出来ない。
----付いてないよ、結論なんて。
 その言葉を紡ぎ出そうとしても、思い通りにはいかない唇。
 デーモンは、それっきり言葉を発することはなかった。踵を返して部屋の中に入り、その窓を締め、遮光のカーテンを閉めた。
 完全に隔離されてしまったテラスで、ルークはどうすることも出来なかった。
「…どうして…?」
 どうして、あんなことを?
 やっとで問いかけた言葉に、エースはルークの腕を取った。
「帰ろう、ルーク。御前はまだ、完全じゃないんだから」
 エースから返された言葉はそれだけで、その後はルークが何を問いかけても、決してその口を開かなかった。
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