聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
[PR]
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
パンドラの空 前編
こちらは、以前のHPで2004年04月04日にUPしたものです
※シリーズ小説はカップリング小説です。
(勿論DxAですが、ダミアンxルークもあります。
でもこのシリーズのメインはRXです…多分/^^;
※シリーズ小説はカップリング小説です。
(勿論DxAですが、ダミアンxルークもあります。
でもこのシリーズのメインはRXです…多分/^^;
何かが壊れていくような感覚。それを身近に感じたのは、きっと気の所為ではない。
----これが夢であれば良いのに…。
そう、願わずにはいられなかった。
ルークが姿を消してから、一週間ばかり過ぎた頃。副大魔王の執務室では、主のデーモンが大きな溜め息を吐き出していた。
その原因は二つ。一つは行方不明のルークの安否。だがその要因は心配ではあるものの、今のデーモンにはそれ以上に頭を痛める事実の方が大きかった。
もう一つの要因は…皇太子ダミアンと、エースとの事。
ルークが行方を眩ませたその日…ダミアンとエースは衝突した。それをきっかけに、何かが壊れたような気がしてならないのだ。
身分は違えどダミアンとは昔から親友のような付き合いであったし、エースも大切な恋悪魔である。その二名が衝突し、エースが一方的にその絆を断ち切るような姿をみせたものだから……溜め息しか出て来ない。
エースは、デーモンが何も知らないと思っている。だから、敢えて何も言わない。ただ黙々と、溜まっていた仕事を熟している。そんな姿を前に、幾度も問いかけようと思ったデーモンだが、どう切り出して良いのかわからなかった。
誰に非がある訳ではないことは、デーモンには良くわかっていた。けれど…今は、双方を取り成す術が見つからなかった。
溜め息は、未だ続いていた。
何処かぴりぴりと緊張感の漂う王都に戻って来た一名の悪魔。それは、今回の騒動の要因の一つであるゼノン。雷神界での療養を終え、王都へと戻って来ていた。
真っ直ぐに皇太子の執務室へと向かい、帰って来た旨を報告に行った。だが…執務室に入ってみれば、ライデンの心配の通り。その異様な雰囲気は直ぐにわかった。
「あぁ、御帰り。助かって何よりだったね」
「…御騒がせしてしまい…本当に申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げるゼノンに、ダミアンは小さく微笑んで見せる。
「気にしなくても良いよ。御前は被害者なんだから。まぁ、ライデンとのことも元の鞘に収まったようだしね、身分に関してもきちんと戻れるように配慮はしてある。局の方にも顔を出して来ると良いよ。みんな、御前が帰って来るのを待っていたんだから。これからも今まで通り、文化局の局長として宜しく頼むよ」
「はい。色々と有難うございました」
いつも通りの言葉。いつも通りの態度。けれど、明らかにダミアンの様子はいつもとは違うのだ。
奇妙な感覚を覚えつつ、ゼノンは形式通りに挨拶をして皇太子の執務室を後にする。
その途端、大きな溜め息が一つ。
「…凄く空気が重いな…」
暫く留守にしていたとは言え、雰囲気が余りにも変わり過ぎる。ライデンからもはっきりとした話は聞いていないこともあり、その変わり様を怪訝に思いながら、ゼノンは副大魔王の執務室へと足を向けた。
暫しの後、ゼノンは副大魔王の執務室の中いた。だがこちらも、快く迎えてくれた割には奇妙な雰囲気がある。
「…さっき…ダミアン様の執務室に行ったんだけど…その時も思ったんだけどね…何があったの?」
思わず問いかけた声に、デーモンは暫しの沈黙。けれどその表情は酷く苦しそうで…やはりライデンの心配は強ち間違いではなかったと納得せざるを得ない。
「…デーモン…?」
呼びかけた声に返って来たのは、大きな溜め息。
「…デーモン、大丈夫?」
いつものデーモンからは想像もつかないその姿に、思わず声をかける。すると、デーモンの口から零れたのは、またもや溜め息だった。それは、一名では抱えきれなくなった胸の重みだったのだろう。
「ライデンがね、魔界の状況はわからないけど、御前の味方になって欲しいって言ってたんだ。あと、"魔界防衛軍"の事に関しても…ね」
「…そう、か。彼奴にも結局、心配をかけてるな…」
小さく言葉を零したデーモン。ライデンを巻き込みたくないと言う気持ちは良くわかるが、直接危害を加えられてはいないとは言え、既に巻き込まれてしまった以上、もう関わるなと拒絶も出来ない。
「…実はな…」
順を追って、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めたデーモン。それは、ゼノンがいなくなってからの事。ルークの失踪と、ダミアンとエースの確執の事。"魔界防衛軍"の事も含め、全て、包み隠さず。
その話を聞きながら、ゼノンも小さな吐息を吐き出していた。
「まぁ、"魔界防衛軍"に関しては様子見でしかない。御前とライデンを狙っていたのは間違いないだろうが…動き出さない限り、何処に潜んでいるかもわからないから、手を出せないんだ。ライデンには、とにかく軍部の強化は必須だと言うことは伝えてあるんだが…今回の事を考えると、強化だけで済むのかと言うことも不安なんだがな…」
「…そう…」
ゼノンの表情は、かなり思い詰めていた。
全ては、自分が引き起こしたことだったのかも知れない。そんな罪悪感が、再びゼノンの中に生まれつつあったのだ。
それを察したのだろう。デーモンは小さな吐息を吐き出すと、ゼノンを気遣うように口を開いた。
「御前が気にすることじゃない。御前が一番の被害者だし、ルークだって、何か訳があって姿を眩ませただけだろう。きっと戻って来ると、吾輩は信じているから。ただ、ダミアン様とエースのことは…吾輩も、どう言って良いのかわからなくてな…」
ゼノンはその言葉を聞きながら、自分を気遣ってくれるデーモンの気持ちは有難いと思った。けれど、そうやって全てを自分で背負い込んでしまったデーモンは、端から見ればとても辛そうに見えることこの上ないのだ。
再び、溜め息を吐き出すゼノン。そして、考えた末にゆっくりと言葉を放つ。
「…きっと…ダミアン様とエースのことは…当魔たち以外には解決出来ないことだよ。デーモンの所為じゃない。御前がそうやって一悪魔で抱え込んだところで、エースは納得しないでしょう?エースは感情的になると聞く耳を持たないから、時間をかけて気持ちを和らげるしかないんじゃないかな…」
「わかっているさ。だが…ダミアン様もエースも、御互いに意固地だからな…いつになったら和解するか…」
「一度…エースに、俺から話そうか?」
「ゼノン…」
そう口火を切ったゼノンは、多分今のデーモンを見ていられないと思ったのかも知れない。
「きっかけを作ったのは、俺だもの。責任を感じるな、って言われても、そう簡単には気持ちの整理もつかないしね。だったら、俺もきちんと納得出来る答えを見つけたいんだ。このまま…バラバラになっても良いなんてことはないんだから」
そう。今まで、家族のように親身になって来た仲魔たちだから。このまま、バラバラになっていくのを見過ごすことも出来ない。だったら、出来る限りのことはやりたい。それが、ゼノンの出した答えであった。
「…強くなったな」
くすっと、デーモンから笑いが零れる。いつものように、楽しげな笑いではなかったが…ゼノンに話をして、少し気が楽になったのかも知れない。
「まぁね。弱気になっていても仕方のないことだし…折角、御前たちが戻してくれた生命だもの。無駄にしないように、大切に生きないといけないしね。それに………いや、別に今じゃなくて良いんだけど…」
「…何だ?」
奇妙な言い訳の言葉に、デーモンが思わず問い返す。問われたゼノンの頬が、微かに赤く染まったのは…。
「…どうした?」
「いや…その…戻って来た報告に来ただけなのに、こんな時に言うのもどうかと思うし…」
急にしどろもどろになったゼノンに、デーモンもピンと来たようだ。
「…ライデンとのことで、進展があったとか?」
そう問いかけてみると、ゼノンの頬は更に赤くなった。それが、デーモンの確信を得たようだ。
「そうか。御前が嫁に行くことに決まったのか」
くすくすと笑いを零したデーモン。その展開に、当然慌てるゼノン。
「嫁って…俺は嫁の方じゃないんだけど…」
「じゃあ、言い直そう。結婚が決まったのか?」
「…決まったと言うか、何と言うか……」
「はっきりしないヤツだな~」
急に元気になったデーモンに対し、その変わり様に着いて行けなかったゼノンは溜め息を吐き出していた。
「約束…しただけだよ。まだ、俺たちだけの話だもの。ライデンは婚約破棄したばっかりだし…直ぐに話を進める訳にはいかないんだから…」
「そんなこと、関係ないだろう?上皇様は全部わかっているんだし、御前とライデンがそう約束したのなら、もう決定のようなモノじゃないか。そうか、ついに決定か~」
にこにこと笑うデーモン。だが、時が時だけに、居たたまれない気持ちのゼノン。その気持ちもわからないではない。
「…御免ね。こんな時に言う話じゃないって言うのはわかってたんだけど…」
本心から済まなそうにつぶやくゼノンに、デーモンはにっこりと笑ってみせた。
「そんなこと気にするな。吾輩は、素直に嬉しく思っているんだから」
「…デーモン…」
未だ、怪訝そうに眉を寄せるゼノンに、デーモンは微笑んだまま言葉を続けた。
「良いことが一つでもあれば、きっとそれに肖(あやか)れる。御前たちの話が上手く纏まってくれれば…きっと、ダミアン様とエースの事も…ダミアン様とルークの事も、上手く纏まってくれるんじゃないかと思ってな。吾輩も、頑張れる勇気になる」
「…デーモン…」
「エースには、吾輩からちゃんと話をしてみる。だから、心配しなくても良い」
改めて自分に言い聞かせるかのように、固く両手を握り締めたデーモン。その左手の薬指には、昔エースから送られた指輪が静かに煌いていた。
銀の縁に青い波の指輪。それは、約束の証。
まるで、エースとの絆を目に見えるカタチで認識するかのように、デーモンはそれを填めていたのだった。
当然、ゼノンの視界にもその指輪は目に入っている。けれど、それを口にする事はなかった。
「…頑張ってね。エースが言うことを聞かなかったら、俺が説得してあげるから」
「あぁ」
くすっと、デーモンが笑った。それにつられて、ゼノンも小さく微笑む。
今は、全てが上手くいくように祈るしかなかった。
その日のうちに、デーモンとゼノンは連れ立って情報局にある長官の執務室…つまり、エースの執務室の前までやって来ていた。勿論、ゼノンは戻って来た報告の為。デーモンはダミアンとの関係の修復の為…である。
しかし。幾らそのドアをノックしても、相手からの応答はない。
「…可笑しいな…出かけるとは、聞いていなかったんだが…」
どう見ても留守としか思えない静かな執務室。その前で怪訝そうに首を傾げるデーモン。
「リエラに聞いてみる?」
隣の部屋にいるはずの副官の名前を出したゼノン。だがその直後、その二名の気配を感じてか、隣の部屋のドアが開き、今名前を出したばかりの副官リエラが顔を出した。
「…これは、デーモン閣下にゼノン様。ゼノン様は御無沙汰しております。御身体はもう宜しいのですか?」
「あぁ、リエラ。久し振り。身体は大丈夫。心配してくれて有難うね。エースは…出かけているの?」
ゼノンがいる、と言うことに関しては、今まで"休任中"であった理由は聞いていたものの、既に元の役職に戻っていることもあり、安心していたのだろう。怪我をして雷神界で療養していることも聞いていたのだろうから、その問いかけは当然だった。だが、ゼノンから問い返されると、直ぐにその表情は変わる。そこに浮かんだ怪訝そうな色は隠せなかった。
「えぇ、本日は朝登庁して直ぐ…閣下は、御存知ありませんでしたか…?」
「…何も聞いていないが…何処に行ったんだ?」
リエラの言葉からして、その外出は当然デーモンが知っていなければならないことのようである。だが現に、デーモンには何の連絡もなかった。そしてどうやら、この外出は今日に限ったことではないようだった。
問いかけたデーモンの言葉に、一瞬口を噤んだリエラであったが、相手が相手なだけにいつまでも黙っている訳にもいかず…辺りの様子を伺いながら廊下へとやって来ると、彼等の直ぐ近くでその言葉を小さく囁く。
「…ルーク様を御捜ししているようで…わたくしはてっきり、閣下も御存知だと思っていたのですが…」
「……ルークを…」
ルークが行方を眩ませたことに関し、当然公に通知しているはずもない。当面は"休暇"の名目であるはずだった。リエラが辺りを気にして、小声でそれを伝えたと言うことは、どうやらエースはリエラにのみ、それを伝えていたようだ。
「いつ帰って来るかはわかるか?」
その問いかけには、リエラは申し訳なさそうに首を横に振る。
「この頃は終了時間が過ぎても戻られないこともあります。ですから、いつ戻られるかと言うことは、わたくしにはちょっとわかりかねますが…」
「…そうか。なら、出直して来よう。悪かったな」
小さな笑みを零し、デーモンはゼノンを促す。
「エース様が御帰りになられましたら、御伝えしておきましょうか?」
この二名が揃ってやって来たことに対して、只ならぬ何かを感じたのだろうか。そう問いかけたリエラに、デーモンは首を横に降る。
「いや、構わない。急ぐ用事でもないから」
「俺の方も別に急いでいないしね。エースが帰って来たら、宜しく言っておいてくれれば良いよ」
「畏まりました。折角御足労戴いたのに、申し訳ありませんでした」
いかにも忠実な部下らしいリエラの一礼に、デーモンもゼノンもそれ以上何も言うことはなかった。
だがしかし。リエラに見送られ、その廊下を進む度に溜め息が零れるのは仕方のないこと。表面では冷静さを取り繕っていても、心の中は未だ靄がかかったままなのだから。
「…どうする?」
他に誰もいないことを確認しつつ、ゼノンは小さな声でデーモンに問いかける。
「まぁ、出直すしかないだろう。夜にでも、屋敷の方に行ってみるさ。御前は?」
「うん。取り敢えず局の方に顔を出さないとね。翠雨にも今日から戻るって伝えてあるし、今まで迷惑かけてるからね、流石にすっぽかす訳にはいかないしね。それに、屋敷の方でもレプリカが待ってるから。今日は早めに戻ろうと思ってるんだけど…一悪魔で大丈夫?」
デーモンを気遣って放った言葉に、デーモンは小さな笑いを零す。
「そんなに心配するな。子供じゃないんだから」
「…なら、良いけど…何かあったら、必ず連絡して。直ぐに行くからね」
「あぁ、有難う」
親身になってくれる仲魔がいることで、デーモンも朝よりは穏やかな表情になっていた。そのことに僅かばかり安心しながらも、ゼノンは奇妙な不安を抱いていたのだが…それを口にすることなく、二名は情報局の入り口で別れた。
全てが、奇妙な方向へと進んでいる。王都に戻って来たばかりのゼノンにとって、その衝撃は予想外に大きかった。
そしてそれから一週間…エースは、王都に戻っては来なかった。
エースが一週間振りに王都に戻って来た時、既に時刻は真夜中になっていた。
局の方には寄らず直接屋敷に戻って来たエースは、宵闇の中外套に包まり、屋敷の門柱に寄りかかるように座り込んでいる一つの姿を見つける。
「…デーモン…?」
月のない夜だった。だから、その顔をきちんと認識することは難しかった。だが、見間違えるはずなどない恋悪魔。ただ、その姿がいつものデーモンからは想像出来ず、怪訝に思っただけで。
エースの声に、顔を上げたデーモン。その顔は幾分窶れているように見える。
「どうしたんだ、こんなところで」
手を貸して立ち上がらせながら、そう問いかける。
「…待っていたんだ。御前が帰って来るのを」
掠れた声で答えるデーモン。
「局の方に連絡を入れても、一向に捕まらない。連日ともなれば、屋敷で待つのも申し訳ない。ここで待つしかないだろう…?」
「…連絡を入れなかったのは悪かった。でもだからって…こんなところにいたら風邪ひくだろう。そんな遠慮なんてしてないで、屋敷の中にいれば良いものを…ほら、大丈夫か?」
デーモンの体調を案じて、屋敷の中に連れて行こうとするエースの手を振り解き、デーモンは首を横に振る。そして、その金色の眼差しを、真っ直ぐにエースへと向けた。
「…どうして…何も言ってくれなかったんだ?ルークを捜しに行くなら、どうして吾輩にも言ってくれなかったんだ…?」
悲痛げに問いかけられた言葉。そして、思わず口を噤んだエース。
「…ルークを心配しているのは、御前一名じゃないだろう?どうして一言、吾輩にも言ってくれなかったんだ?」
改めて問いかけた声に、エースは小さな溜め息を一つ。
「…御前に言えば…ダミアン様に伝わるだろう…?」
「…だからって…」
ふと、エースの眼差しがデーモンから逸らされる。
「御前には悪いが…俺はもう、ダミアン様には従わない。あの方のやり方は気に喰わないんでな」
明らかに、棘のある言葉。それが、エースのダミアンに対しての怒りの感情であることには間違いない。それを感じ取り、デーモンも溜め息を一つ吐き出す。
「…御前が怒っているのは…ルークのことがあったから、か?」
その問いかけに、暫しの沈黙。そして、意を決したように紡がれた言葉。
「…それがきっかけだったかも知れないが…今回の事に関して言えば全てに於いて。それ以前のことも含めて、な」
エースは、彼とダミアンとのやりとりを、デーモンがまだ知らないと思っているのだろう。再び小さな吐息を吐き出すと、言葉を続けた。
「ダミアン様は、御前があの"錬叛刀"を使うことを躊躇うであろうことを知っていながら、平然と御前に命じた。その剣には出口がないこともわかっていてな。その上、ルークを突き放し、行方不明になることも全部わかっていたんだ。わかっていながらそれを黙認したんだぞ…っ!?それに、あの剣を封印した本魔だろう。俺は、あの剣の中で、ルシフェル参謀長に会った。そして、あの剣を封印した者はルシフェル参謀長を殺した者だと聞いた。だから、それがバレる事を恐れてルークが関わることを拒んだ。だが、それが許されることなのかっ!?皇太子なら、何をやっても良いと言うのかっ!?自分の欲望を満たす為にルークを抱いて、いざばれそうになったらあっさり切り捨てるのか!?裏切られることが彼奴にとって一番辛いことだと知っているクセに、彼奴の想いを裏切っても許されるって言うのか…っ!?」
「それは、御前の誤解だ…っ!ダミアン様は、そんなつもりじゃ…」
慌てて声をあげたデーモン。だが、エースの感情は留まらなかった。
「誤解だと?本魔が全部そう認めたんだぞ!?何が誤解だって言うんだっ!」
「だから…っ……」
胸が痛い。それが、御互いが感じたこと。
言葉に詰まったデーモンに、エースの視線が一瞬戻る。それは、とても冷たくて…どうしても、恋悪魔を見つめる眼差しには思えなかった。
「御前は、ダミアン様に仕える身だからな。否定出来るはずはないよな。だが、俺は違う。俺はそんな仕打ち、絶対に許さない。ずっと信じていた自分が…馬鹿みたいだ」
再び視線を逸らせたエースがそう言った瞬間、デーモンの腕が動いた。そして、その掌で力一杯エースの頬を叩いた。
「デーモン…っ」
思わぬ事態に、咄嗟に頬を押さえたエース。だが、デーモンは顔色一つ変えてはいなかった。
ただ、涙を堪えて真っ赤になったその眼差しは…とても悲しそうで。
「御前には…冷静でいてくれと言ったはずだ。カッとなったまま、話の上澄みだけを聞いて、全てをわかったようなことを言うな。ダミアン様の気持ちを…どうしてわかろうとしない…?御前は今まで…ダミアン様の、何を見て来た…?どんな言葉を聞いて来たんだ…?何が正しくて、何が間違っているのか…もう一度しっかり見つめてくれ。考えてくれ。御前の口から、そんな否定の言葉は聞きたくない」
「…なら、御前は何を知っているって言うんだよっ!」
声を荒げるエースにも、デーモンは表情を変えない。
「吾輩が知っているのは、冷静さを失った御前が見失ったモノだ。御前が誤解したままの、真実だ」
そう言い放つと、デーモンは大きくと息を吐き出す。そして、まるで睨むように自分を見つめるエースを見据えると、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
「御前とダミアン様が言い争っていた時…吾輩は、隣の部屋で全て聞いていた。だから、御前が何を聞いたのかもわかってる。御前がダミアン様に聞いたことは、全部真実だったかも知れない。だが…御前は、ダミアン様の本当の気持ちは何にもわかっていないだろう?その決断がどれだけ苦しかったか…御前には本当にわからないのか…?」
その時再び、エースの脳裏を過った言葉。
----全てを吐き出すことが出来れば、ダミアン様もどれだけ楽だっただろうな。けれど、それを口にすることが出来なかったから…その秘密を明かすことが出来なかったからこそ、苦しかったんじゃないのか?
頭では、あの時からずっとわかっているつもりだった。ただ、それを受け入れるだけの、気持ちの余裕がなかったのだ。
それは、今この時も同じ事。
口を噤んだままのエース。だが、デーモンは言葉を続けた。
「ルシフェル参謀長のことは…あの方が望んだことだ。ダミアン様だって、最初は納得などしていなかった。だが…ルークを護る為にあの方が選んだ道を、拒否することは出来なかったんだ。だから、納得せざるを得なかった。あの方を憎んで殺した訳でもないし、殺そうと思って殺したんじゃない。ダミアン様は、誰よりも苦しかったはずだ。物心付く前から自分を育ててくれた…支えてくれた最愛の悪魔を、どうして簡単に殺せる?ダミアン様はそこまで非情ではないし、冷徹じゃない」
「……」
「今回の"錬叛刀"のことだってそうだ。あの剣にルークが関わることを頑なに拒んだのは…あの剣が、"魂を喰らう"だけの剣ではないから、だ」
「…何だと…?」
"錬叛刀"のことに関しては、流石にエースも問いかけずにはいられなかった。
自分たちが知らなかった真実。それをデーモンは知っていたのだ。
「あの剣は…"錬叛刀"は…一度味わった血の味を忘れない。二度目に味わえば、確実に死に至る。御前は既に一度、あの剣に喰われている。だから、二度目にその血を与えてしまえば、御前は再びあの剣の餌食になり、もう二度と生き返ることは出来ない。ルークだってそうだ。ルーク自身はあの剣を受けていないにしろ、あの剣はルシフェル参謀長の血の味を知っている。ルシフェル参謀長の血を受け継ぐルークとて、危険なことには変わりがないんだ。だから、ダミアン様は帰れないことを知りながらも、吾輩に行かせようとしたんだ。御前たちを、護る為に」
「…だったら…だったらどうして、それを前以って言わなかったんだ!?隠し通そうとしたこと自体、俺たちを信用していなかった証拠だろうっ!?結局、黙っていることで一番安全なのはダミアン様だもんな。ルシフェル参謀長のことだって、誰からも責められずに済むからな。ルークから恨みを買うこともない。自分の身を護る為に、黙っていたんじゃないか…っ」
未だ、感情を留められないエース。それを、デーモンはどんな気持ちで聞いていたのだろう。
悲痛げに歪められた、デーモンの表情。
「…どうして…そう言う言い方しか出来ないんだ…?ダミアン様は、御前たちを信用していなかった訳じゃない。傷付けたくなかったから…心配をかけたくなかったから、言えなかっただけだろう?ルークのことだってそうだ。その想いを言葉にして伝えるまでに…態度にして表すまでに、どれだけ悩んだと思う?立場上、うっかり口走れば、ルークの身の安全を護れない。ウイルスのことがなければ、ダミアン様は多分一生、その想いを口にすることはなかったはずだ。それだけ大事にして来たルークを、娼婦か何かのように扱うはずがないだろう…?大事だから…大切だから、これ以上ルークを傷付けたくなかったんだ。一番苦しんだのはダミアン様じゃないか。それを、どうして…」
「…裏切られたんだぞ…俺たちは、ダミアン様に裏切られたんだぞっ!?どんな思いがそこにあったって、結局は保身の為じゃないかっ!傷付けたくない?心配をかけたくない?だから俺たちに嘘をつくのか?偽りで帳尻を合わせて、それが何になる!裏切ったことには変わりないんだ!今まで信じて着いて来た俺たちを裏切った悪魔を、どうしてまた信じられるって言うんだよ…っ!」
その言葉が、決定打だった。
そんな言葉を吐き出さなければならないエースも、苦しかったのだろう。けれど…それ以上に、デーモンはダミアンを責めるエースの姿を見ていられなかった。
唇を噛み締め、固く握り締めた自分の両手に視線を落とす。その足元に、堪えていた雫が一つ零れ落ちた。
信じていたからこそ…裏切られた痛みは耐えがたい。けれど何より…一番辛いのは、それが恋悪魔が放った言葉だったから。
長年仕えて来たダミアンか、大事な恋悪魔たるエースか。そのどちらかに付かなければならないのだとしたら…天秤にかけたその答えは一つしかなかった。
デーモンは大きく息を吐き出すと、その左薬指に填まっていた指輪を抜き取り、握り締めた。
「…吾輩は…ダミアン様を信じてる。裏切られただなんて、思っていない。だから…幾ら御前でも、その言葉だけは、許せない。それは、吾輩を信じられないと言うことと同じだ。吾輩も…御前に裏切られた。今の御前は…信用出来ない。だったら…こんなもの、もう要らない…っ」
デーモンはその指輪をエースへと投げ付けると、くるりと踵を返して駆け出していた。
「待てよ、デーモンっ!」
呼び留めるエースの声に振り向きもせず、デーモンは闇の中に姿を消してしまう。
エースは足元に落ちた指輪を目にすると、大きく息を吐き出していた。
その真意は如何に。
その場に残されたエースは…何とも言えない後味の悪さを感じていた。
PR
COMMENT
プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
カレンダー
カテゴリー
最新記事
(06/23)
(10/08)
(10/08)
(09/30)
(09/10)
(09/10)
(08/06)
(08/06)
(07/09)
(07/09)
アーカイブ
ブログ内検索