聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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嫉妬 1
天気が悪い。どんよりと重い雲が空を包み込み、太陽の光の一筋も、差し込ませない。
そんな、気も重くなる空を、俺はリビングのソファーに座り、ぼんやりと見つめていた。
「…ねぇ…エース、どしたの?さっきからずっと空ばっかり見てるけど?」
「放っといた方が良いって。エースがあぁしてる時は、滅法機嫌が悪いんだから」
俺の背後で、ルークとライデンのやりとりが聞こえる。ヒソヒソと話してるつもりなんだろう、彼奴等にとっては。でもそう言う内緒話ってのは、大抵耳に入って来るもんだ。
「…何も、こんなに天気の悪い日に出かけなくったって」
放って置けと言ってる割に、思わずつぶやいた俺の声に確かに反応を示す彼奴等。
「なぁに、エース拗てんの?デーさんが出かけたこと」
「じゃない?天気の所為にするってところが、何とも暗い思考だけどね」
ったく…うるさいったらありゃしない。俺が何を言おうと、関係ないだろうが。
とにかく、うるさい外野から逃れ、俺は自室へ戻った。
己の部屋で、ベッドの上に横たわったまま、俺は色々と思いを巡らせ、燻っている胸の内を探っていた。
別に、彼奴の行動にあれやこれやと注文を付ける訳じゃない。勿論、束縛しようと思っている訳でもない。
俺はただ、久し振りのオフを、たまには一緒に過ごしたいと思っただけ。最近はずっと忙しくて、すれ違いばかりだったから、ゆっくりお茶でも(昼間だから、酒じゃないぞ)飲みながら、話でもしていたかっただけなんだ。
そんな些細な欲望さえ、満たされないなんて。
しかし…こんなことばかり考えてると、ホント、思考が暗くなる。滅入ったところで、彼奴が帰って来る訳でもないのだから、何とかしなければならないだろう。
「よし。気晴らし、気晴らしっ」
ベッドから起き上がり、俺は上着を引っかけて、外へと繰り出した。
気晴らしに出たはずなのに、俺は何故か近所の御用達スーパーに来ていた。
何のことはない。出がけにゼノンに捕まって、ついでに買い物を頼まれた訳だ。スーパーなんかに来たのはホントに久し振りだから(…久しく買い物当番が回って来ていなかっただけの話だが…)気晴らしにはなるんだが。
とにかく。俺は今夜の夕食の買い物を終え、買い物袋を両手に外に出た時には、重い雲は更に厚く、今にも雨が降り出しそうだった。
「降り出す前に、帰れるかな…」
濡れ鼠になるのは御免だからな。
両手の袋をしっかりと持ち直し、足を早めた。
スーパーからの帰り道には公園があり、散歩の帰りなんかは良く立ち寄るんだが、流石にこんなに天気の悪い日に…しかも、今にも雨が振り出しそうな時に、遊んでる子供なんか、当然いやしない。
そこを通りかかった時。ベンチに見慣れた姿があった。
うつむいて、じっとしている。
「…おい」
歩み寄って声をかけると、ふと顔を上げる。
「どうした?こんな所で。デートじゃなかったのか?」
「あぁ…ちょっとな」
「…デーモン?」
デートだって言って出て行った割に、何でこんな所にいるんだろうか。買い物に行く時には気が付かなかったが、この様子から察するに…もしかしたら、その時から既にここにいたのかも知れない。
口数の少ないデーモンと言うのも、妙な感じだが…
「どうしたんだ?一体…」
「いや…」
短く答え、デーモンは再び顔を伏せた。とその時、重い色の空から、ポツリポツリと雨の粒が落ち始めて来た。
「いつまでもこんな所にいると、濡れるぞ」
そう、声をかけても、まるで動こうとしない。
「…先に、帰るぞ?」
「…あぁ」
今日はホントに可笑しい。まぁ結局、俺は彼奴を公園に残したまま、屋敷に戻った訳だけれども…
俺が屋敷に戻るや否や、外は本格的に降り始めた雨で、すっかり暗くなっていた。
「エース、機嫌直ったん?」
「ん?」
ゼノンが淹れてくれたコーヒーを飲みながら、リビングでくつろいでいると、興味津々、目を輝かせたライデンが俺の表情を覗き込んで来た。
「だってほら、眉間に皺、寄ってないじゃん」
「あのなぁ…」
こいつって…ほんっとに短絡思考。しかしまぁ、彼奴が彼女の所に行ってなかったことで、多少は機嫌がいいのは確かかも知れないが。
それにしても…俺が帰って来てからもうかなりの時間が経つはずなのに、未だにデーモンは帰って来ない。手ぶらだったから、傘なんて持ってるはずもないだろうし。あのまま公園で雨に濡れているんであれば…
「…デーモン、遅いな…」
思わずつぶやいた声に、傍にいたライデンがしっかり反応していたりする。
「だって、デートでしょ?こんな真っ昼間に帰って来る訳ないじゃん。心配しなくても、明日にゃ帰って来るって」
ったく、何を想像してるんだか…だが、冗談抜きで、ホントに心配になって来た。
風邪ひいて声でも潰されたら、洒落にもならない。
「ちょっと、見て来る」
徐に立ち上がり、俺は上着を羽織って玄関へ向かう。
「ちょっ…エース?」
そう、声は追って来るものの、留める気はないらしい。
「邪魔しちゃ駄目だよ!?」
その声を背中に、俺は玄関のドアを閉めた。
後から後から落ちて来て、傘を叩く雨の音が、酷く耳障りに聞こえた。
先程の公園へ行くと、やはり、デーモンはそこで座り込んだままだった。
濡れたシャツが肌に張り付こうが、髪の毛がずぶ濡れになって顔に張り付こうが、そんなことはまるで気にも止めない。ただ、固く両手を握り締め、じっと足下を見つめている。
まるで、何かに耐えるかのように。
声をかけることに戸惑いさえ覚えたが、そのまま放って置く訳にもいかず…控え目に、声を発した。
「…風邪、ひくぞ」
ハッとしたように、顔を上げる。その頬が、濡れているのは……
「あぁ…エース」
慌てて頬を拭うデーモンに、それは酷く不釣り合いに思えた。
頬さえ拭わなければ、雨に濡れたと思うのに。
だが、それを口にはせず、俺は僅かに視線を背けた。それが、せめてもの心遣いだよな。
「ヴォーカリストの分際で…そんなに声潰したいのか?」
「…そう言う訳じゃ…」
「じゃあ、さっさと帰ろう。温かいコーヒーでも淹れてやるから」
「…ホットミルクが良いな」
「わかったから。ほら、行くぞ」
デーモンの腕を取り、傘の中へと促す。
「これだけ濡れてるんだから、家まで濡れて行っても構わないんだが…」
御前まで、濡れるぞ。
傘を伝って落ちて来る雨の雫を気にしているのか、そう宣うデーモンを無理矢理傘の中に留める。
「馬鹿言うな。これ以上、見過ごしていられるか」
「あ…そう」
くすっと、小さな笑いが、デーモンの口から零れる。
やっと、いつものデーモンだ。
それなのに…酷く渇いているように思うのは、何故だろう。
「…はい、タオル」
「サンキュー」
玄関をくぐったと同時にゼノンから渡されたバスタオルを頭から被り、デーモンは笑いを零している。
「たまには、こんなずぶ濡れになるのも良いな」
「…仕事が控えていない時にしてね」
溜め息を吐き出しながらそう零すゼノンの気持ちは、良くわかる。俺だって同意見だ。
「…それはそうと、デートじゃなかったの?」
それにしては、ずいぶん早いじゃない。
そう続けるゼノンに、デーモンは一度その笑いを納めると、僅かな沈黙の後、再び口を開いた。
「あぁ…っと………振られたんだ、吾輩」
「…は?」
「そう言うこと。エース、先にシャワー借りるぞ」
俺たちと視線を合わせないまま、デーモンはそのままバスルームへと姿を消す。その背中を目で追いつつ、ゼノンは俺へと問いかける。
「あれ…ホント?」
「さぁな。少なくとも、倖せ、って表情はしてなかったけどな」
さ、俺も着替えて来よう。
階段を昇りかけ、まだ階段の下で奇妙な顔をしているゼノンに向け、言葉を送る。
「デーモン、ホットミルクが良いってさ」
「…エースが淹れるって言ったんじゃないの?」
「……わかったよ」
見抜かれてちゃ、しょうがない。
俺は、服を着替えると、諦めてキッチンへと向かった。
バスルームから出て来る時間に合わせて、リクエストのホットミルクを淹れていると、実にタイミング良く出て来るデーモン。
「あれ?バスローブ、なかった?」
リビングにいたゼノンにそう声をかけられ、デーモンは自分が着てるバスローブに視線を落とす。
「あぁ…置き忘れたんだ。これ、誰のだ?」
「誰のって…その大きさ見てわからない?」
くすっと、小さな笑いが零れる。
そう。デーモンの身体には不釣合いにデカイそのバスローブは、当然俺の、だ。
「俺のは後で持って来るから、そのまま着てろ」
別に、減るモンじゃなし。貸してやっても損はない。
ソファーに座ったデーモンの前に、ホットミルクの入ったカップを置くと、俺も向かいに腰を降ろす。
「…ルークとライデンは?」
「一緒に、ゲームやってたぞ。ライデンの部屋で」
「へぇ…ルークも付き合い良いな」
くすくすと笑うデーモン。俺は、傍にあった新聞に手を伸ばし、ページを捲る。
相変わらず、雨は降り続けている。裏の木立ちに打ち付ける雨音は、相当のモノだ。先程より、更に強くなったかも知れない。
「明日は晴れるかな」
別に、特別晴れて欲しい訳でもない。ただ、何か会話が欲しかったんだ。
昼間、あれだけ一緒にいたいと望んでいたのに…いざとなると、会話がまるで続かないなんて。馬鹿みたいだな。
ぼんやりと活字を追ってはいるが、それが言葉として頭に入っていると言う訳でもない。ただ、ぼんやりと見つめたいただけ。
ホットミルクを飲み終えたデーモンが、カップを手に席を立つ。
「さ、暖まったから着替えて来るな」
「あぁ」
背中を向け、今はゼノンが料理をしているキッチンへと向かう。
ふと零れた言葉が、俺が先程、何気なく零した言葉への答えだと気が付いたのは…デーモンが、階段を昇って行く足音を聞いている時だった。
「…晴れて欲しいけどな…」
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
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非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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