忍者ブログ

聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

嫉妬 2
こちらは、以前のHPで2001年1月21日にUPしたものです
 ※シリーズ小説はカップリング小説です。(基本DxAです…/笑)
6話完結 act.2

拍手[1回]


◇◆◇

 夕食を終え、俺はシャワーを浴び、自分の部屋へと戻って来た。
 服を着替えてベッドに横になり、読みかけの本を数ページ捲ったところで、ドアがノックされた。
「吾輩、だ。いいか?」
 控え目な声。
「…あぁ」
 起き上がってドアが開くのを待っていると、ゆっくり開かれた隙間から、デーモンが顔を覗かせている。
「…一杯、付き合ってくれないか?」
「別に、構わないが…」
 促されたのは、デーモンの部屋。テーブルの上には、グラスが二つと、ワインのボトルが一本。
 無言でグラスにワインを注ぐデーモンの横顔を見つめながら、腰を降ろす。
 俺の前にグラスを置くと、デーモンはゆっくりとその口を開いた。
「…聞かないのか?」
「何か、聞いて欲しいのか?」
「……」
 何処か、気まずそうな表情。多分、デーモンが俺に問いかけたのは、あの公園でのことだろう。どうして、あんなところで、みすみすずぶ濡れになっていたのか。
「…振られたってのは、ホントなのか?」
 ワインを一口呑んで、そう問いかける。
「……」
「振られた訳じゃないんだろう?ゼノンも、本気にはしてなかったぞ」
「…まぁ、な。だが、振られたかも知れない」
「…どう言うことだ?」
 問いかける俺の声に、デーモンもワインを一口、口に含む。
「…すっぽかしたんだ」
 その声は、酷く重く聞こえて。
「ずっと、あの公園にいた。吾輩を引き留める声が聞こえて…動けなかったんだ」
「声?」
「そう。酷く、哀しそうな声だ」
 言葉を紡ぐデーモンも、哀しそうな顔をしている。多分デーモン自身は、それには気が付いていないだろうが。
「泣いている、みたいだった。吾輩に、行かないでくれと…ここにいてくれと…」
 だから、デーモンはずっとあの場所に座っていたんだ。
 天気が悪かろうが、雨が降ろうが…そんなことは関係なく。ただ、あの場から動けずに。そして、一緒に涙まで零して。
 デーモンにそこまでさせるヤツに、俺の心当たりはたった一名しかない。
 泣いてデーモンを引き留めた彼女は……地球(ガイア)、だ。
「…今日の雨は、涙雨か」
 強く呼びかける声。引き留める声。デーモンがそれを感じたのは、誰よりもこの惑星に愛されているから。
 誰よりも、この惑星を…愛しているから。
 だから、誰に対してよりも、優しくなれる。
 多分…待ち合わせしているのが俺であったとしても、彼女に引き留められたなら、デーモンは俺との約束を放棄してでも彼女の傍にいるんだろう。
 俺が、本当に嫉妬していたのは…単なる恋人なんかに、じゃない。
 誰よりもデーモンを魅きつけて離さない、この惑星に対して、だ。
「…御前は、ガイアには弱いからな。行くなって言われれば、いつまででもいるんだろう?」
 グラスを見つめながらつぶやいた声に、デーモンは俺に視線を向ける。
「俺の声も……聞こえないだろう?」
「…エース…」
 半分程注がれていたワインを一気に呑み干し、大きく息を吐き出す。
 酷く、苦しい。胸が締め付けられるくらいに。
「俺の声は、御前には届かない。幾ら呼んでも、ガイアの声に掻き消される。ガイアが、俺が御前に近付くことを拒むんだ。御前を…俺の手から逃す為に」
 酷く渇いていると思ったのは、その所為だ。
 この惑星にいる限り、ガイアの妨害は入り続ける。俺から、デーモンを護る為に。泣いて、叫んで…デーモンを、引き留める。そうすることが、デーモンを傍に留めさせる最良の手段だと思ってるんだ。
 無性に腹が立って、俺はその場から立ち上がった。
「エース…」
「…頭、冷やして来る」
 このままここにいたら、何をするかわからない状態にまで陥っているようだ。
 踵を返し、ドアに向かうと、デーモンも慌てて立ち上がる。
「吾輩は、そんなつもりじゃ…」
「御前がそんなつもりじゃなくても、ガイアはそのつもりだ。俺がここにいること自体、良く思ってない。どうやって、俺をここから追い出そうかと、思案してるだろうな」
「……」
「良いんだ、それでも」
 背中を向けたまま、俺はデーモンの部屋を出た。追って来る気配はない。
 それで、良いんだ。
 大きな溜め息を吐き出し、俺は階段を下り、リビングを通って、裏庭へと出た。

◇◆◇

 相変わらず、雨は降り注いでいる。
 濡れるのも構わず、俺は、気に入っている巨木の下へとやって来た。
 初めて、デーモンに向け、俺が抱えていた全ての感情を曝け出した場所。怒りも、哀しみも、想いの全てまでも。
 だがその時初めて、ガイアが俺に嫉妬したことを知った。
 ガイアにとって、俺は敵なんだと言うことを。
「…振り回されて、どうするって言うんだよ…ったく」
 木の下に座り込み、その幹に凭れる。身体を濡らす雨の雫が、一際強くなったように思う。
 俺には、ガイアの泣き声なんて聞こえない。例えそれが涙雨だったとしても…俺に弱みを見せる気なんて、ないんだろう。
「御前に…迷惑はかけてないだろう?御前の前では、俺はデーモンに対して、手が出せない。彼奴を抱くことも出来ない…わかってるだろう?」
 ゆっくりと言葉を紡ぐが、返って来る返事など、ありはしない。ただ、雨が降り注ぐだけで。
「…御前が一番、デーモンを独占してるって言うのに…まだ、俺からデーモンを奪うのか…?」
 俺は、御前に嫉妬してるんだ。害獣たちに蝕まれ、この先何年生きられるかわからない、この惑星に。
 溜め息を一つ。
 ガイアからデーモンを奪い返そうとすれば、簡単に奪えるはずだ。だが、それをしないのは、ガイアの為だと言うことを…当事者たちはわかっているんだろうか。
 先の短い御前に、少しの時間を譲ってやってるって言うのに。その全ての時間を、デーモンと共にいないと、気が済まないんだろうか。
 時間が、早く過ぎて欲しい。
 ふとそう思い、溜め息を吐きながら、立てた膝に額を寄せる。
 俺は、馬鹿じゃないか?待っていれば、デーモンは返って来るのに…それが待ち切れなくなって来ているなんて。
「…もう少しくらい…自由にさせてくれ。奪わないでくれ…」
 これ以上、奪わないで欲しい。俺とデーモンの時間を、邪魔しないで欲しい。
 そんな切なる思いでつぶやいた言葉に、返って来た声。
「誰を…?」
「……」
 顔を上げてみれば、目の前にデーモンがいる。傘もささずに、またもやずぶ濡れになった彼奴が。
「…今更聞くな」
 そう返すと、くすっと小さな笑いが零れた。
「聞きたい」
「…言っておくけどな、ガイアの嫉妬を受けるのは、この俺なんだぞ?自分に害が及ばないからって…」
「ガイアは、御前に手出ししない」
 俺の言葉を遮って、デーモンはそう言葉を発した。
「言い切れるのか?」
 断言され、流石に俺もムッとした訳だ。
 だが、問い返した声に返って来たのは、酷く寂しそうな声だった。
「もう…長くないんだ」
 すっと真顔に戻っていたデーモン。その顔は、昼間、公園で見た表情と同じ…何かを耐えるかのような顔。
「今を生きるのが、精一杯のはずだ。ガイアもそれを知っているからこそ…吾輩を呼び留めたのだと思う」
「…そりゃ、都合のいい理由だな」
 ガイアが長くないことは、俺たちにはわかりきっていたはずだ。だから、今更それを改められたところで、俺の立場は変わらない。
 唯一恋悪魔を名乗ることが許されていると言うのに…俺は、デーモンに手出し出来ないのだから。
 思わず眉間に皺を寄せた俺の前に跪き、デーモンは視線の高さを俺に合わせた。
「でも、吾輩が一番大切なのは、御前なんだぞ」
「…聞き飽きたね、そんなセリフは」
「信じて貰えないのか?」
「信じようが信じまいが、結果は同じだ。今の御前に俺は見えてない。ガイアを助けることで、頭は一杯だろう?この惑星が眠りに着くまで、それは続くんだ。俺には、御前を手に入れることが出来ない。それは確かだからな」
「エース…」
 放った言葉は、きつかったかも知れない。でも、事実なんだから仕方がない。デーモンが、気付いていないだけなんだ。
 小さな溜め息を吐き出すデーモン。
「…いい加減、気付けよ。御前が今、何を一番に思っているか。俺は、二の次でもいい。待っていれば、いつか御前が帰って来ると言うのならな。だから…構うなよ、俺に」
 変に優しくされたら…壊れそうだ。
 そう思って口にした言葉に、デーモンはその顔を哀しそうに歪めた。
「…あんまり、馬鹿なこと、言わないでくれ。自分は二の次でいいだなんて…構うなだなんて…言わないでくれ。吾輩は、御前を失うのが一番恐いんだ」
「副大魔王が、随分弱気なセリフだな」
「当然だろう?」
 そう返されてしまうと、言葉が続かないんだが…
 目の前の真剣な顔が、こんなに哀しそうになってしまうと、俺はもう逃げられないじゃないか。
「…わかったから。そんな顔、するなよ…」
 俺の負け、だ。
 溜め息を吐き出すと、デーモンは俺の頭越しに、木の幹に片手を付き、もう片方の手を俺の膝の上に乗せた。
 そして。
「…再現、しようか」
「…は?」
「だから…」
 この木の下で、と言うことだろう。
 すっと顔を寄せ、軽く唇を合わせる。
「…良いのか?ガイアの前で…」
 一旦唇が離れると、思わずそう問いかけてしまった。
「キスぐらい、ずっとやってるだろう?今更、何を…」
「今更だから、言ってるんだよ」
 ガイアが長くないって知っているのなら、もう少し気を遣うべきだろう、と言うつもりだったんだが…そう訴えようとした唇は、彼奴の唇で塞がれた。
 深く、唇を合わせる。いつもよりも、長く。ゆっくりと交わす口付けは、その吐息をも逃さぬように。
 逃れられない。その想いからも…存在からも。
 デーモンの背中に腕を回し、固く抱き締める。それでも唇は離れない。呼吸が苦しくなって僅かに離しても、直ぐにまた塞がれてしまう。
 何が、デーモンにここまで求めさせるのだろう。
 キスの最中に何を考えているのかと怒られそうだが、俺の意識はそこで留まっていた。
 雨の中、泣いていたのは…誰だ?
 何に対して、涙を零していた?
 何を、失うのを恐れていた?
 何を……求めていた?
 何を…?
 駄目だ。思考が、目茶苦茶だ。問いかけるばかりで、その答えは一つも出て来ない。
 やめよう。
 更に進もうとする思考にストップをかけ、考えることを諦めた。
 デーモンの髪に指を絡ませ、引き寄せる。
 嫉妬がなんだ。見せつけてやる。
PR
COMMENT
NAME
TITLE
MAIL (非公開)
URL
EMOJI
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
COMMENT
PASS (コメント編集に必須です)
SECRET
管理人のみ閲覧できます
 
  
プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
バーコード
ブログ内検索
Copyright ©  -- A's ROOM --  All Rights Reserved

Design by CriCri / Material by petit sozai emi / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]