聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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最後の晩餐 1
夕焼けが、嫌に緋く感じた。そして夕闇に浮かぶ月でさえも、不気味な程緋く染まっていた。
何か不吉なことが起こらなければ良いけれど…
そんな僅かな不安が、数日前から胸に過ぎっていた。それでも何もないことを信じて敢えて口を噤み、ゼノンはライデンに呼ばれるままに雷神界に向かっていた。
預言者は言う。この地の平和は、偽りであると。
統率者は輝きを失い、その地位の失脚を余儀なくされ、その地位から追われる。
教えの言葉は全て忌となし、その声を潰すまで、教えは途絶えることはない。
白き翼の鳥は、その翼をもがれ、悪夢の傀儡となる。
赤き炎を司る瞳は、黒き炎に飲み込まれ、全ての希望と共に燃え尽きる。
全ての癒しは消え失せ、怒りの牙を剥いて吼え続け、雷鳴諸共崩れ落ちる。
危険因子は、全て無に返すべし。新たなる統率者が現れ出づる時、偽りの平和は覆される。
戦いこそが全て。殺し合いこそが全て。憐れみなど、反逆者のなすべき所業。
破壊、殺戮、虐殺。それこそが、生きる証である。
地球に世紀末が訪れ、人類が滅亡したのは、もうどれくらい前のことだっただろう。彼等が愛する惑星を救ったのは、もうどれくらい前になるのだろう。それすらもはっきりとは記憶に残せない歳月を過ごした彼等にとって、それは余りにも唐突な結論だった。
地球任務に関係した者は、全て罪魔とする。滅びかけた惑星を救うことは、神の…天界のすべき行為であり、悪魔がそれを行った事実は、魔界への反逆と見做される。
そんな簡易文書が、皇太子、副大魔王、そして各局の上層部宛に届けられたのは、昨日のことだった。
「デーモンが捕らえられたとは、どう言うことですかっ!?何故、デーモンが罪魔として捕らえられなければならないんですっ!?」
皇太子の執務室に、そんな声が響いた。それは紛れもなく副大魔王の恋悪魔、情報局長官エースの声。そしてそのエースの前で不機嫌そうに眉を寄せるのは、勿論この部屋の主である皇太子ダミアン。
「わたしにも、何がどうなっているのか把握し切れないんだ。今朝になって、デーモンの身柄を拘束したとの連絡が入ってね」
そう言葉を零したダミアンの手には、昨日届けられた簡易文書が握られていた。
「多分、原因はこれだ」
「これだ、じゃないですっ!」
苛立ちを隠し切れないエース。勿論ダミアンはエースとは違って平生を保ってはいるが…。
大魔王陛下が休息の為の眠りに着いたのはどのくらい前だっただろうか。その間の全ての指揮は、ダミアンに一任されているはずだった。しかしそのダミアンが関与していないにも関わらず、ダミアンの次に権力を持つ副大魔王が捕らえられたとあっては、誰でも納得がいかないのは当然である。
「この文書に書かれている通り、地球任務に関係した者が魔界への反逆を企てる者だとされるのならば、まず最初にデーモンを捕らえるのは当然だろう。奴は地球任務の統帥だからな」
「だからと言って、そんな昔のことを今更言う必要はないはずです。デーモンは魔界への反逆を企ててもいないし、今まで忠実に魔界に貢献して来ていたはずです。それを、何故今更…」
「今だから…じゃ、ないのか?エース」
「…っ」
冷静なダミアンの声に、エースは思わず息を飲む。
「大魔王陛下が休息の眠りに着いている今だからこそ、反逆を企てる気になったんだろう。魔界全体が平和に落ち着いてしまっているこの時を待っていたんじゃないのか?」
「……」
確かに、嫌な予感はあった。大魔王陛下が休息に付くとの報告を受けてから、僅かずつだが落ち着かない空気が漂い始めた気配はあったのだから。
「わたしやデーモンを策に填め、己がこの魔界の支配者になろうとしている奴だろう。初めからデーモンが副大魔王に就任することを認めなかった者…そんな奴の心辺りは、御互い一名ではないか?」
「…ターディル…ですか?」
「恐らく…な」
エースはダミアンの一言に、眉を潜めた。
ターディル=ラヴォイ。その名はエースも良く知っていた。分類学上ではダミアンと同じ種族の公孫であるが、中枢は彼を疎外し、その存在を否定していたのだ。
その理由は簡単である。
彼は、危険過ぎたのだ。魔界に対しての心入れも、彼自身の行動も、その全てが危険因子として扱われて来たのだ。その所為もあってか、ダミアンが数多くの魔界貴族の中からデーモンを自分の御付き、そして次期副大魔王にと推薦した時から今まで、ひたすらにデーモンの失脚を望んでいた者である。
「妙に捻くれてるからな、彼奴は…」
溜め息と共に、吐き出されたダミアンの声。
確かに考えてみれば、まず最初にデーモンの失脚を望んだとあらば、それは彼に反発していた者に違いない訳である。だから、ダミアンの言うことは尤もであろう。
「デーモンの行方、確認して来ます」
気持ちを落ち着かせるかのように大きく息を吐き、エースがドアに足を向けたその時。
「失礼します」
ドアがノックされ、開いた隙間から官吏が顔を覗かせた。
遠慮がちにダミアンとエースに頭を下げ、中に入って来た彼の顔は青白く、身体は小刻みに震えている。どう見ても尋常ではない。
「どうした?」
その様子から只事ではないと察したダミアンが、そう声をかける。
「…何か、あったのか?」
彼の手には数枚の書類が握られており、それが報告の為に訪れたのだと言うことは察した。が、彼はなかなかその口を開こうとはしない。
「おい」
エースに声をかけられ、彼はやっとでその震える唇を開いた。
「たっ…只今…デーモン閣下の、副大魔王の御位を剥奪するとの公文書が…」
「何だとっ!?」
「あっ…あの…」
カッとなって声を上げたエースに怯え、彼は戸惑いの表情を浮かべた。
「…落ち着け、エース。話はそれだけじゃなさそうだ」
何とか冷静さを保っているダミアンは、エースを宥めると、再び彼に問いかけた。
「それで?」
彼は、再び口を開く。
「…デーモン閣下は、地球を助けると言う天界の所業とも成せることをされ、それが天界側に寝返った行為だと…その結果、閣下には罪魔としてしかるべき処罰が与えられたと…」
「…どう言うことだ?それは」
僅かに眉を潜め、ダミアンは身を乗り出して彼の言葉を待つ。
「デーモン閣下の御言葉には他を操る呪術がかけられていると言われまして…その呪術で魔界に対する反逆者を出さぬようにと、その御声を…」
「声を、どうした?」
「…御声を……」
----潰されたそうです…
彼のその一言に、一瞬空気が固まった。
「声を潰しただと…っ!?」
声を荒げたダミアンに臆した官吏の彼は、大慌てで執務室を飛び出して行った。バタンと閉まったドアの音を聞きながら、エースは未だ茫然としている。
確かにデーモンは、魔界でも稀少な言魂師でもある。その声に宿ったある種特別な能力は聞く者を引きつける。その能力がデーモンの魔力の源でもあったことをを知っているダミアンとエースは、デーモンに下された処罰がその後にどう影響するか、咄嗟に見当が付いた。
二度と、副大魔王の地位には戻れない。例え、ターディルから政権を奪い返したとしても。
半ば放心状態になってしまったエースをよそに、ダミアンの怒りは頂点である。
「エース!いつまでも惚けてるんじゃない!わかってるのか!?」
「…わかって、います」
ダミアンにけしかけられて、やっと己を取り戻し始めたエースは、戦いの場と同じ表情を浮かべていた。
これは単なる革命では終わらない。それはエースだけでなく、その犠牲になった者ならば誰でも感じるであろう憶測だった。
「ターディルに会って、話を付けてやる」
そう意気込んだダミアンが、ドアの方へと足を向けたその時。
「どちらへ、行かれるおつもりで?ダミアン殿」
状況を全て見透かされたように実に間合い良くそのドアは開き、当事者ターディルが姿を見せた。濃茶色の短い髪と同色の瞳、灰色の軍服に身を纏んだターディルは、ダミアンの行く先に立ち塞がるかのようにしていた。
「…どう言うつもりだ、ターディル。わたしの許可もなくデーモンの副大魔王と言う御位を剥奪し、その身柄を拘束した挙句、奴の声を潰すなど…」
怒りを押さえ、極力感情を見せないようにその言葉を発したダミアンに、ターディルは薄い笑いを浮かべた。
「貴殿の許可は、必要ないのですよ。何故なら…貴殿の、皇太子と言う御位も、最早ないも同然だからです。ダミアン殿」
「何だと!?」
問い返した声に、ターディルは一枚の文書を見せた。それは枢密院から出す公文書と相違のないモノで、法に則った確かな物的証拠であった。
「貴殿も前副大魔王同様、魔界に反逆を企てた罪で、皇太子の御位から除籍する」
「…な…」
ダミアンは目を見開き、ターディルを見つめた。エースも息を飲み、その状況を終始見つめていた。
「貴殿に対する処罰は、未だ検討中だ。故に結論が出るまで、魔封じの塔に幽閉する。無論、文句は言わせない。馬鹿なことを考えるのではないぞ。その時は、その時点で貴殿の大事な"仲魔たち"は即刻処刑する」
「…貴様…」
それが公文書である限り、ダミアンであろうとも反論の余地はない。否応なしに、その処罰を受けなければならないのだ。
「連れて行け」
ターディルは連れて来た兵士たちにダミアンを連れて行くように命じると、エースに向けて不敵な笑みを浮かべた。
「今はまだ自由の身だが、覚悟を決めておくが良い。ダミアン殿が大人しくしている間は安全だと思っているかも知れないが、それも一時のこと。何れ御前も同じ運命を背負うのだから」
「…ターディル…」
不敵な笑い声を残し、ターディルは連れて行かれたダミアンの状況を確認するかのように皇太子の執務室から去って行った。
エースですら、動くことが出来ない。
皇太子であるダミアンまでもが捕らわれの身になるなど、誰が想像していたであろう。
予想外の状況は、容赦なく地球任務に参加していた構成員たちを巻き込んでいた。
主のいなくなった執務室から出たエースが目にしたのは、廊下に立って茫然としているルークだった。
「…ルーク…」
その様子から察するに、ルークはダミアンが捕らえられた場面に遭遇していたのだろう。
「どうして?何で、ダミ様やデーさんが捕らえられなきゃならない訳?何で、地球任務が反逆行為な訳!?俺たちが、何したって言うのさっ!!」
「落ち着け、ルーク」
混乱した表情で訴えるルークを皇太子の執務室に促し、エースはそのドアを閉ざした。
「全てはターディルの策略だ。デーモンを副大魔王の座から引き摺り下ろし、二度と元の地位に戻れないように奴の声を潰した。ダミアン様を捕えたのも、今の現状で魔界一の権力のある彼の君がデーモンの復職に手を貸すのを恐れたんだろう」
それを口にするもの屈辱だった。目の前でダミアンが捕われの身になっても、自分にはどうすることも出来なかったのだから。だが、事実は事実として伝えなければならない。
「地球任務に関係したのは魔界の上層部ばかりで、その結束も堅い。理由を付けてデーモンを捕らえたとしても、俺たちがいる限り、永久に葬るのは無理だ。だから地球任務を利用したんだ。俺たち全員を御位から引き摺り下ろし、権力を無にする為に」
「でも、ライデンには手を出せないでしょう?彼奴は、雷神界の跡取り。今の魔界には関係ないんだから」
「あぁ、多分今はな。だから、要はゼノンも雷神界に留まっていれば、その身は安全な訳だ」
しかしだからと言って、ゼノンもいつまでも雷神界にいる訳にはいかないだろう。もしもこの革命が成功してしまえば…魔界と雷神界…恐らく天界も巻き込んでの、全面戦争になることは目に見えていた。
「早いうちに、なんとかしないと…ダミ様とデーさんを、ずっと牢に閉じ込めて置くなんて…」
----俺には、出来ない。
つぶやいたルークの声。
「勿論、何とかする」
そう、何とかしなければ。エースとて、いつまでも惚けている訳にはいかないのだ。捕われているのは、自身のかけがえのない恋悪魔なのだから。
「とにかく、動けるうちに行動に起こさないとな。俺は、一度デーモンの様子を見て来る。だから御前は雷神界に行って、ゼノンとライデンに今の状況を伝えて来てくれないか?」
「…わかった」
ルークは小さく頷き、再びその悲痛そうな眼差しをエースに向けた。
「俺が帰って来た時…あんたまで捕らわれの身になってるなんてこと、ないよね?」
それは、酷く不安げで。エースはその問いかけに、小さく笑った。
「大丈夫だ。俺は、そう簡単に奴に捕らえられたりはしない。だから…心配するな。必ず戻って来る」
「エース…」
ルークはエースの首に腕を回し、しっかりとその身体を抱き締めた。エースがルークの背中に腕を回してその行為に応えると、ルークは名残惜しそうにその身体を離す。
「行って来る」
「あぁ」
情報局のエースの執務室で落ち合う約束をして、ルークはターディルの手下たちに見付からないように、執務室の窓から空へ向かった。その真白き翼を羽ばたかせて。
エースは、ルークの姿を見送ると、デーモンが捕らわれている北の僻地へと向かった。
薄暗い岩場の牢は日が差し込むことがない所為か、湿った空気が酷く肌寒く感じた。
幾つかある牢の一つに、捕らわれの身となった前副大魔王たるデーモンがいた。両手両足に魔力を封じる金属の械を填められ、岩肌に凭れたままぐったりとしている。
彼の最大の武器である声も、今は反論を訴えるどころか、たった一つの言葉を紡ぐことも出来ないとは。
酷く、喉が痛い。何らかの力で強引に抑え付けられているような、奇妙な違和感がその喉にはあった。だが、それ以外は今のところ取り立てて目立った障害が現れた訳ではない。だがこれから先…自分は、たった一言の言葉すら口には出来ないのだ。
大切な恋悪魔の名を呼ぶことも。
身分を失ったことよりも…生命を狙われたことよりも、大切な恋悪魔の名前すら呼ぶことが出来ない自分が、何よりも惨めで。
一名、暗く沈み始めた頃…感じ慣れた気が近付いて来るのを感じ、デーモンは顔を上げた。
「面会時間は、五分だけだ。良いな」
門番の声が聞こえ、直後にブーツの音が近付いて来た。
「…デーモン」
見慣れた姿、聞き慣れた声。もう二度と名を呼ぶことも出来ないであろうその姿は、鉄格子を握り締めたままゆっくりと跪く。その間、デーモンから視線を逸らすことがない。
「…遅くなって悪かったな。ホントはもっと早く来るつもりだったが…ダミアン様までもがターディルに捕らえられた。そのことで、ルークと相談してたんだ」
その声に、デーモンは目を見開いた。
自分だけでなく、皇太子までもが捕らえられたなど。全ては、自分が捕らえられたことが引き金だったのだろう。
そんな想いを表情に乗せたデーモンを、恋悪魔は僅かに目を細めて見つめていた。
「余り…思い詰めるな。御前の所為じゃない」
そうつぶやいて一旦口を噤み、デーモンを見つめる。それは、とても切なそうな眼差しで。
「今のままでは、俺もルークも何れターディルに捕らわれてしまうだろう。現に俺は、奴にそう宣告されている。だが、そう簡単に捕まるつもりはない。必ず逃げ延びて…何としても、御前とダミアン様を…」
----助け出してやる。
最後の言葉は声にしなくても、デーモンはその想いの丈を、痛い程感じていた。
デーモンは械を填められ、満足に動くことが出来ない身体を無理に動かして這うように鉄格子に近付き、手械で繋がれた両手を恋悪魔の手に重ねた。
『…聞コエルカ、エース』
「…デーモン…」
それは、最後の力とも言える、意識下の声。その声が恋悪魔に届いているのを確信して、精一杯の精神力で恋悪魔に言葉を届ける。
『無茶ダケハスルナ。御前ガ死ンダラ、吾輩ノ生キル意味ガナクナルノダカラ』
「あぁ、わかっている。だが…」
己の手に重ねられているデーモンの両の手をしっかりと包み返し、エースは言葉を続ける。
「御前に死の宣告が下れば、俺は生命に代えても御前を護る。例え俺自身を犠牲にしたとしても…だ」
しかしその言葉に、デーモンは厳しい表情を浮かべる。
『駄目、ダ。死ダケハ、望ムナ。ソレハ、命令ダ』
「…その命は、受けられない」
エースはデーモンの命を拒み、真剣な表情で訴えた。
「俺一名が取り残されて、何になる?御前を失って、俺が一名で生きて行けるとでも?」
『ダガ、御前ノ生命ヲ犠牲ニシテ吾輩ガ生キ残ッテモ、意味ハナイ』
「ならば…」
エースは、デーモンの手を握る力を強める。
「共に生きよう。御前が、望んだ通りに」
『エース…』
困惑した表情のデーモンに、エースは小さな微笑みを与えた。
「必ず、助けに来る。だから、それまで待っていてくれ」
エースはそうつぶやき、鉄格子の隙間から手を差し入れ、デーモンの頬に触れた。
「御前は…必ず、俺が護るから」
『…エース…』
小さく微笑むと、エースは足早に岩牢から立ち去った。そして戦いの態勢を整えるべく、ルークと落ち合う約束をしている、己の執務室へと向かった。
その先にある、新たな悲劇を知らずに。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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