聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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渦 1
見えるものは…全て、暗闇。
けれど…微かに聞こえるのは…誰かの、息遣い。
それは…自分のモノか…それとも、誰か別の存在があるのか。それすらも、わからない。
暗闇に…引きずり込まれて行く感覚。
そこで、ハッと目を覚ます。
薄闇の中、目を凝らせば…うっすらと、周りが見えて来た。そこで、やっと夢だとわかって溜め息を吐き出す。
もう何日…こんな夢を見たのか。
安眠は、まだ遠い。
執務室の椅子は…丁度、日差しが差し込んで来て暖かい。
当然、そんなところで座っていれば…まぁ、眠くはなる。
事に…寝不足であるのなら、尚更。
椅子に凭れたまま…さて、どれくらいの時間が経ったか。
ノックの音に、ふと意識が戻る。
「…はい」
慌てて姿勢を正すと、執務室のドアが開かれる。
「失礼致します」
その声と共に入って来たのは、数日前に補佐に任命されたシェリーと言う悪魔。明るい茶色の癖毛の短い髪と、金色の綺麗な瞳。実に中性的な顔立ちの上に、小柄な種族なので、実に可愛く見える。実力はあるんだろうけど…彼が任命されたのは、多分…誰かの趣味。勿論、俺ではないし。
シェリーは入り口で足を止め、俺の顔をじっと見つめたまま。
「…どうかした?」
「…いえ…御休み中、でしたか…?」
「…何で?」
思わず問い返したのは…そうだ、と言っているようなモノか…。
「…あの…口元に……」
躊躇いがちにそう言われ、思わず自分の口元に触れると…。
「……あぁ、御免…大丈夫…」
慌てて口を拭う。
良い年して…涎垂らして転寝、とは…。
「…で、何?どうした?」
表情を引き締めて、改めて聞き返す。するとシェリーも小さな咳払いを一つすると、改めて俺に向き合った。
「ダミアン様が、御呼びです」
「…あぁ、そう…」
いつもなら直接連絡が入るのに…と思いつつ、椅子から立ち上がる。
「他に何か?」
ドアの前で立ったままのシェリーを振り返り、そう一言問いかけると、シェリーは小さく首を横に振る。
「…いいえ。失礼致します」
その後姿を見送り…思わず溜め息を一つ。
「…補佐って…あんなモン?」
時間が経てば、御互いにもっとスムーズに動けるようになるんだろうか…。補佐じゃないけど、一番良く知っているのは、エースのところの副官のリエラだけど…あそこはまだ別格だよな。有能過ぎるし。
首を傾げながら身支度をして…俺は、皇太子の執務室へと出発した。
皇太子の執務室のドアをノックした俺は、中からの返事を聞くとそのドアを開けた。
「御呼びですか?」
「御呼びだね」
くすくすと笑いながら、俺を出迎えてくれた姿。いつもと変わらないその姿は、何だかホッとする。
「…どうした?」
そう問いかけられ、小さく笑いを返す。
「いえ、別に」
「そうかい?まぁ、ゆっくり休むんだよ」
「……大丈夫ですよ。で、呼び出した用件は?」
「あぁ、その件ね…」
ダミアン様は、にっこり笑って話を続けた。
その話を聞きながら…何処か、奇妙な感覚を覚えていた。
そして、ダミアン様の話が終わると、ふと思い出したこと。
「…そう言えば…今日の呼び出しは、どうして補佐に?」
「ん?あぁ、そう言えば…ウチの側近は、いつも通り御前に連絡を入れたと言っていたんだが、補佐に繋がったと言っていたね。まぁ、補佐としての職務を全うしているから、御前が来たんだろう?困りはしないから良いかとも思うんだが…?」
「…はぁ…」
確かに、それはそうだけど…。
何か……
溜め息を一つ、吐き出した俺を…ダミアン様は、笑って見つめている。
「大丈夫だよ、ルーク。御前がわたしの声が聞きたいのなら、直接連絡するからね」
「………」
何処まで…見透かされているんだろうか。
今日は…ゆっくり眠れると良いな…。
繰り返すのは…闇。引きずり込まれて…抜け出せない。
眠れない夜は、まだ続いている。
シェリーが補佐として来てから、一週間。どうも俺は、まだその距離感に慣れずにいる。
職務中の転寝を見られたことも数回…情けないったら…。
でもシェリーは別に俺を咎める訳でもなく。いつも、ポーカーフェイスを保っている訳で。
でも時々、ふと何かに怯えた表情を見せる。妙に、辺りを警戒したり…。
「…どうした?」
ふと、その背中に問いかけてみる。
一瞬、びくっと震えた背中。そして、振り返ったその表情は、ポーカーフェイスとはかけ離れていて。
「…シェリー?」
「…失礼致しました…」
慌てて表情を引き締めたシェリー。
俺の補佐として着いてから、まだ一週間だし、慣れない環境だろうし…何より、俺たちの距離感がねぇ…。
「…御茶でも、飲んで行ったら?」
執務室を出て行こうとする背中を引き止めたのは…どうしてだったろうか。
足を止めたシェリーの姿を見て、俺はカップを二つ用意して御茶を淹れる。
「…ま、座ったら…?」
御茶の入ったカップを一つ、ソファー前のテーブルの上に置く。もう一つは俺が持ったまま、自分の椅子に座る。まぁ、座るか座らないかは…シェリー次第、だけど。
周りがみんな御節介だからか…俺も、十分御節介だ。突然、親しくもない上司に呼び止められて御茶淹れられたって、落ち着いて飲める訳ないし…と思ってたら、シェリーは控えめにソファーに座った。
「どう?仕事は慣れた?」
会話のきっかけにでも…と、言葉を切り出してみる。
「…はい。だいぶ。ルーク様が御優しいので、安心して働けます」
「…別に、御優しくしてる訳じゃないけどね。でも、補佐なんて暇でしょ?俺は、極秘任務もあるから自分の仕事は他人に手伝わせないし、俺から仕事振ることもないし。やることって言ったら、他所からの伝達を回して来るくらい?」
「あと、書類の整理をしています。古い書類の整理を頼まれて…勉強にもなりますし…」
「…へぇ。誰が古い書類の整理なんか頼んでんの?」
ちょっと、カチンと来て思わず問い返す。
補佐の仕事って、誰の指示で動くモンなの…?何で、他の仕事回されてんの?
「……参謀部の主任から、ですが…いけませんでしたか…?」
不安そうにそう俺に問いかけるシェリー。まぁ…俺が仕事頼まないから、やることはなかったんだろうけど…。
「…まぁ、良いや。主任には、俺から話しとくけど…古い書類の整理は、参謀部の下っ端がやる仕事。あんたの仕事じゃないし。勉強したいなら、もっと別のやり方があるから」
「…済みません…」
ホント、申し訳ないくらい恐縮してちっちゃくなってしまった…。
「…御免、俺がいけないんだよな。今まで、補佐なんていなかったから、自分の仕事は自分で全部やるのが当然だし、そっちの方が効率良かったからね。俺も、何を頼んで良いのかもわからないしね。情報局に腕利きの副官がいるから、仕事のやり方を教えて貰うと良い。補佐の仕事にも詳しいはずだから。今度連絡しとく。まぁ…ゆっくり、やって行こうよ」
くすっと笑ってそう言うと、シェリーはやっと少し落ち着いたみたいだった。
「済みません。わたしも、勉強不足で…」
その口元に、小さな笑みが浮かぶ。けれど、途端にその表情がすっと変わり、何かを気にするような仕草を見せた。
「…どした?」
その問いかけは、この執務室に入って来てから二回目。明らかに、普通じゃない。だから俺も…つい、有無を言わさない眼差しを、シェリーに送る。
「…いえ…」
シェリーは、答えようとはしない。でも、何もない、と言う姿ではない訳で。
聞き出すべきかどうか、ちょっと考えたものの…その後のことを考えると、策は取っておいた方が良い。
「…あのさ…まず、自分の立場、ってのを良く考えてな。あんたは、ここの補佐。あんたが何に怯えてるのか、俺はわからないけど、もしものことを良く考えろよな。もしも、誰かに狙われているのなら、あんただけじゃない。周りにも、被害が及ぶかも知れない。誰にも言わなかったことで、被害が大きくなるかも知れない。もしそれで重要な情報が漏れたら?取り返しのつかないことになったら?誰が、責任を取るんだってこと。話して、もし何もないならそれで良い。でも、俺たちで対処出来ることなら、対処してやるから。局の中で何か可笑しいと思うことは、俺にちゃんと報告すること。俺は、あんたの上司であり、この局の責任者でもある訳だから。わかる?」
「…はい…済みません…」
「…で、何があった?」
畳み掛けるように問いかけると、シェリーはやっと口を開いた。
「…実は…ここへ来てから…誰かに、見られているような気がして…気の所為かとも思ったのですが…気配と言うか…視線と言うか…」
「…いつも?それとも、状況?場所?」
監視されているとなれば…俺としても、放って置く訳にはいかない。勿論、狙われている状況でなければ安心だけれど…こちらに被害が出ても困る訳だし。
俺の問いかけに、暫く考えていたシェリー。やがて、ゆっくりと答えを返す。
「…気が付くと…と言うのが、一番近いと思うのですが…時間や場所が限定されている、と言う訳ではないんです。ただ、周りに何もなくても…気配を感じることはあります。わたしを狙っても、得をすることは何もないと思うのですが…」
「…いや、あるでしょ?あんたは今、補佐なんだから。さっき、古い書類の整理をしてる、って言ってたでしょ?それだって、誰かにとっては大事な情報源にもなる。それに、もっと言えば…こう言う隙を突けば、俺の生命も狙える」
「…ルーク様…」
一瞬にして、シェリーの表情が変わった。まさか、一番簡単なことを想像していなかったんだろうか…。
「あんたは、この執務室に自由に出入り出来る。要は、俺はあんたになら、簡単に生命を狙われる、ってことだ。まぁ、あんたにその度胸があれば、の話だけどね。で、俺がいなくなったらどうなるか。まぁ、閣下も情報局長官もいるから、魔界が大きく揺らぐことはないにしろ…多少は影響も出るかな、とは思うよ。少なくとも…あんたは、無傷ではいられない…かな」
これは、脅し文句じゃない。まぁ、シェリーが俺の命を狙っている…とは、思ってはいないし、もし仮に狙われたとしても、みすみすやられるつもりもないけどね。
「だからね、自分の立場を考えろ、って言った訳。わかった?」
顔色を変えたシェリーは、無言で頷いた。
そう。俺が、補佐を置かなかったのは…そんな理由もあって…だ。
副官とは一線をおける。でも、補佐はそうも行かない。俺の補佐をするのが仕事だからね。
昔から…ただでさえ、堕天使ってことで良く思っていない奴は大勢いた。勿論、理解して受け入れてくれる奴も沢山いたけど…心の中でどう思っているか、まではわからないしね。だから、一番近くで生命を狙われないように、自分の仕事は自分で回せるようにした。
周りを、信用していない訳じゃない。でも、信じていた相手に裏切られるのは…何よりも辛いから。
「…で、誰かに見られているような気配を感じてから、何か変わったことはあったの?どんなことでも良いから、あったら教えて」
未だ、青い顔をしているシェリーに、そう声をかける。
「今のところ、特には…ただ…」
「ただ?」
一瞬、困った表情を浮かべたシェリー。けれど、俺から散々言われたこともあってか、小さな声でその言葉を零した。
「…変な夢を、見るんです。毎日…」
「…変な夢…?」
一瞬…俺の方が、心臓を掴まれたみたいにドキッとして息を飲んだ。
「はい。真っ暗なところにわたしがいて…その闇の中に、引きずり込まれるような…」
「………」
俺が見ているのと同じ夢。これは…単なる、夢見が悪い、とか言う話じゃない。
「…何かあるな…」
思わず零したつぶやきに、シェリーは真っ直ぐに俺を見つめた。
「…何か…御存知なんですか…?」
「…いや…御存知、と言うことはないんだけど…」
これは、拙いかも知れない。
もし仮に、シェリーが誰かに見張られているのだとしたら…俺も、そこに含まれている可能性が出て来た訳で…。
「取り合えず…様子を見よう。何か、実害があったら直ぐに言うこと。わかったな?」
今は、そう言うだけに留めた。
早急に…"何者"かの、目星をつけなければ。
それから数日。俺は、注意を払って生活していた。
勿論…と言う言い方をするのは何だけど…あの"夢"も、未だに見続けている。特に何も言わないけれど…多分、シェリーも。
そして、俺が一つわかったこと。
それは…視線…と言うか、気配そのものが…上からではなく、下から感じる、と言うこと。もう一つ言えば…常に、視線が傍にある、と言うこと。
それが指す意味は…俺は、一つしか思い浮かばなかった。
その日俺は、エースの執務室を訪れていた。
「…顔色悪いみたいだが…大丈夫か?」
顔を合わせるのは、久し振り。そして顔を見た瞬間にそう言われたのだから…多分、相当酷い顔をしていたんだろう。
まぁ、当然と言えば当然…か。寝不足十日目ぐらい?もう、良く覚えていないし。
「まぁ…大丈夫っちゃ、大丈夫だけど…昼間に転寝するくらい?」
「…無理するなよ」
いつになく、心配そうな表情を見せたエースに、俺は笑ってみせた。
そして、気配を探る。
そこに、僅かな気配がある。
「…ちょっと、一緒に来てくれる?」
怪訝そうな表情のエースを連れ、俺がやって来たのは…情報局から、遥か上空。
下を見れば…問題ない。
「…おい、何でこんなところに…」
俺についてやって来たエースは、ますます怪訝そうな表情。
「うん、ちょっとね…」
俺は、ぐるっと辺りを見回す。情報局のアンテナよりも随分高いところにいるので、流石に周りには特に何も見えない。そして下を見ても、何もない。
そこでやっと、安堵の溜め息を吐き出す。
「…ルーク?」
そう呼びかけられ、エースの顔へと視線を向けた。
「あのさ…"影"に潜む妖魔とかっているかな…?」
「…は?」
俺の問いかけに、エースは当然、奇妙な声を上げた。
「…"影"って…?」
「だから、"影"。ほら、人や物に引っ付いてる"影"」
そう言って俺は、足元を指差す。まぁ、この高さですから、地面に俺の影は見えないけど。
「…何でそんなことを?」
反対に問い返され、俺は念の為、もう一度辺りを見回す。
大丈夫。誰もいない。あの奇妙な気配も、ない。
「…このところ、変な気配がするんだよね。自分自身の"影"から。みんなに心配されるくらい夢見も酷いし。まぁ、昼間に転寝してるけど、やっぱり夜の補充にはならない。でも、夜寝るよりはずっと良いんだ。多分、闇に包まれていないから、かな」
闇は…言わば大きな"影"。だからこそ、その奇妙な気配の大きさも半端ない訳で…多分、それが悪夢に繋がるんだと思う。
「確かなのか?"影"から気配がする、だなんて…」
エースは腕を組んで、奇妙に唸っている。
「正直、多分…としか、言いようがない。だから、あんたに聞いてるんじゃない。何か、知ってるかな~ってさ」
「…"影"に潜む妖魔、ね……聞いたことはないが…夢見が悪い以外に、何かあるのか?」
「悪夢以外、今のところは実害はないけど…あと、シェリーも同じこと言ってるんだよね。気配に気づいたのはシェリーが先なんだけど、問いただしたら俺と同じ悪夢を見てて…」
と、俺がそこまで言った時、俺の言葉を遮ってエースが声を上げる。
「シェリーって誰だ?」
「…え?シェリーだよ。ウチの補佐の…」
「…補佐…?」
エースの、眼差しが変わった。
「御前、いつから補佐なんてつけたんだ?」
「…いつ、って…十日ぐらい前…」
そう言いながら…もう、心臓はバクバクしていた。
そう。俺の不眠と、同じ頃だ。
そして極め付け。
「そんな話、聞いてない。デーモンも、何も言ってなかったぞ…?」
「……」
最早、嫌な予感しかしない。
「…誰、だ…?」
エースの呟きよりも早く、俺は自分の執務室へと方向を変え、羽ばたいていた。
慌てて執務室に戻って来た俺は、机の引き出しを漁ってシェリーが来た時に持って来た任命書を探していた。あれがあれば、はっきりするはずだから。
俺の後を追ってやって来たエースが見守る中。それを、見つけた。
「…あった。これだ」
俺は、シェリーの任命書をエースへと手渡す。
エースは、暫くじっとそれを見つめていたが…やがて、大きな溜め息を吐き出す。
「…これは、正規の書類じゃないな。用紙が違う。これは、ダミアン様が出したものじゃない」
そう言って、任命書を俺に返した。
「…ホントだ…」
受け取った時は気付かなかったけど…他の書類と比べて見れば、確かに違うところがある。そんな簡単なことを見逃したのは…俺のミス、だ。
「ダミアン様は知ってるのか?」
「…何処まで知ってるかはわからない。でも、補佐がいることは知ってる…」
そう言えば、この前…ダミ様と話をした時、どうも奇妙な感じがしたんだ。
「…ダミ様のところから連絡が入った時…シェリーに繋がったんだよね。いつもなら、直接俺のところに連絡が来るのに。それがちょっと引っかかって、そのことは話した。そしたら、側近がいつも通りに連絡を入れたら、補佐に繋がった、って言ってたって。まぁ、だからって連絡を切られている訳でもないし、ダミ様は直接顔を見て用件を言うから、途中で話が漏れることはないし、問題はなかったんだけど…」
確かに、表立って問題はない。俺も、多少は気を使って簡単な仕事は回したりしたけど…大事な仕事は今まで通り、自分で全部やっているし。それに、"影"からの気配に気付いてからは、尚更、漏洩には十分気をつけていたから、シェリーに探られている、と言うこともない。
「とにかく、ダミアン様に確認しよう。話はそれから、だ」
「…わかった…」
あぁ、情けない…。
大きな溜め息を吐き出した俺の背中を、エースは軽く叩く。
「しっかりしろ」
「…わかってる」
もう一つ、大きく息を吐き出すと、俺は顔を上げた。
「…俺は先にダミ様のところに行くから、後でシェリー連れて来て貰って良い?ダミ様に話を聞いてから…はっきりさせたい」
「俺、御前の補佐の顔、知らないが…?」
「…あぁ…多分大丈夫。赤茶の短い癖っ毛で金色の目の小柄な可愛い顔の子だから」
「…は?」
「じゃ、宜しくっ」
俺は任命書を手に、エースを残して執務室を飛び出した。
皇太子の執務室の前へやって来た俺は、そのドアの前で大きく息を吐き出す。
手には、謎の任命書。これが、ダミ様が出したものではないとすると…一体、どう言う事なのか…?
それを確認に来た訳だけれど…当然、足は進まない。
でも…これ以上、黙っている訳にもいかないし、何より…シェリーが何者なのかを、きちんと把握しなければ。
意を決してドアをノックする。
「はいどうぞ」
「…失礼します」
ドアを開けて執務室へと入ると、にっこりと微笑むダミ様が出迎えてくれる。
「どうした?」
その笑顔の前、どうしても言い難いんだけど…仕方がない。
俺は、手に持っていた任命書をダミ様の前に置いた。
「…先日話した、補佐の任命書です。エースは、自分のところにもデーさんのところにも、補佐に関して何の連絡も入っていないとのことだったので、改めて確認したところ、これが偽物だと判断しました」
「…偽物?」
ダミ様の表情がふと曇る。そして、机に置かれた任命書に視線を落とした。
「…そうだね。良く似せているが…これは、わたしが出したものじゃない」
「…やっぱりそうですよね…」
どうして…もっと早く、気付かなかったんだろう…俺とした事が…。
溜め息を吐き出した俺に、ダミアン様も小さな吐息を吐き出す。
「この任命書が偽物だとわかった訳だが…ならば、彼は誰なんだろうね?そして、御前を策に填めたのは誰なんだろうね?」
と、その時。執務室のドアが開かれた。
「それは、彼に直接聞いてみれば良いんじゃないですか…?」
「エース…」
入って来たのは、エースと…怯えた表情のシェリー。
「…どう言うことだ?」
俺は視線をシェリーに向けた。怯えた目をしたシェリーは、固く目を閉じて首を横に振った。
「わたしは…何も知らないんです…っ!わたしはただ、ルーク様の補佐に就くように言われただけで…っ」
「誰が御前にそれを指示したんだ?」
まるで尋問のようなエースの声に、シェリーは更に身体を小さくする。
「それは…わかりません…」
「わからない?それは可笑しいだろう?御前は、誰からともわからない指示に従ったと言うのか?何の為に?」
「それは……」
ふと、怯えた眼差しが俺に向いた。
その時ふと、頭の中を過ったのは…影。
あぁそうか…。
「ダミ様。ちょっとだけ時間下さい」
俺はそう言うと、ダミ様の返事を待たずに、シェリーの手を取って窓を開けて外へ飛び出していた。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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