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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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渦 2
こちらは、本日UPの新作です
 ※シリーズ小説はカップリング小説です。
(勿論DxAですが、ダミアンxルークもあります。
でもこのシリーズのメインはRXです…多分/^^;
3話完結 act.2

拍手[1回]


◇◆◇

 ダミ様の執務室から、空へと羽ばたいた俺とシェリー…のはずだったんだけど…
「ルーク!」
 ダミ様とエースの声を背中に、俺は翼を構えたけど、シェリーは違った。
 掴んだ手に全体重をかけられ、慌てて両手でその腕を掴み直す。
「ちょっ…御前、翼は!?」
 思わず問いかけた声に、シェリーは首を横に振った。
「有翼種ではないので…っ」
「有翼種じゃなくても飛べるだろうがっ!それとも、習わなかったのかっ!?」
「急に連れ出しといて、無茶言うな」
 後から追いかけて来たエースが、シェリーの腕を片方掴むと、俺の意を察していたようで、そのまま上へと引き上げてくれた。
 ある程度まで上に上がり、下を確認した俺は、改めてシェリーに問いかけた。
「自力で飛べないのか?」
「…はい…済みません…」
「ったく…」
 思わず溜め息を吐き出した俺に、エースも溜め息を吐き出した。
「別にそれはシェリーの所為じゃないだろうが。確認もせずに連れ出したのは御前だろう?」
「それはそうだけど…」
「御前の補佐だろう?上司が責任持てよ」
 眉を寄せた俺に、くすっと笑ったエース。そして、その視線をシェリーへと向けた。
「…で、御前はルークがここに連れてきた意味をわかっているのか?」
 両腕を俺たちに抱えられて、困惑気味のシェリーであったが、エースの問いかけに小さく頷いた。
「影から…逃れる為…ですよね…?」
 シェリーは俺の顔を見て、そう問いかけた。
「まぁね。ここなら、足元の影は見えないから。まぁ…飛べなかったのなら、あんたは自力では来れなかったんだろうけど…」
 そう言いながら、俺は色々と考えを巡らせていた。
 シェリーについて考えられること。
 有翼種でないことで、天界からの使者と言う可能性は消えた。天界人は全て有翼種だからね。
 あとは、自力では飛べないと言うことで、種族も限られて来る。
 小柄な見た目から考えても…純粋な悪魔ではない可能性が高い。
 けれど…さっきのエースの言葉ではないけど…一体何の為に、俺に近づいたのか。それがわからない。
「じゃあ…話して貰おうか?あんたが知ってること全部」
 俺は、シェリーの眼差しを正面から捕らえ、そう問いかけた。
 するとシェリーは、大きく息を吐き出すと、ゆっくりとその口を開いた。
「…申し訳ありません…本当に、何もわからないんです。ただ、ある日突然任命書が届いて…貴方の元へ行けと…それだけ書かれていました。まさか、偽物だなんて思わなくて…」
「差出人は?」
「……それが…」
「…それが?」
 俺と同じように、エースも真っ直ぐにシェリーを見つめている。俺たちの視線の前で、嘘はつけないだろう。よっぽど、度胸が据わっていない限りは。
「…何者なのか…わたしは存じません…ただ"御前を見ている"と言うメモと、そこに添えられた"オズウェル"と言う署名はありました。ルーク様に、先日話したように…視線を感じているのは確かです。ですから、本当に監視されているのだと思います。"オズウェル"が何者か…本当に知らないんです…」
 怯えた眼差しでそう訴えるシェリー。多分、嘘は付いていない。とすると…本当に、誰だかわからない奴に命令されて、俺の元へ来ただけ、と言うことになる。
 目的すら、わからないままに。
「"オズウェル"か…上層部では聞いたことないな…御前は?」
 エースに問いかけられ、俺も首を横に振る。
「俺も聞いたことないな。一体…誰なんだか…」
 大きく溜め息を吐き出した俺に向けたエースの眼差しは…また変なことに巻き込まれて…と言っているようで。
「…どうする?」
 問いかけられた声には、俺も溜め息しか出ないよ…。
「まぁ…信じるしかないわな。一応、ウチの補佐ですし?何かあれば俺の責任だし?俺もしっかり巻き込まれたしね…」
 零した言葉に、シェリーはハッとしたように息を飲んだ。
「…ルーク様…まさか、ルーク様も…」
 あぁ、そうだ。シェリーには何も言ってなかったんだった…。
「まぁ、そう言う事だよ。俺もあんたと同じ。奇妙な視線に捕まった上に、闇に引き込まれる夢を見る。ちょうどあんたが来たのと同じくらいからね。だからこうして、影のないところで話をしてる訳だ」
「…そんな…」
 シェリーの顔色が一気に悪くなる。まぁ、俺も巻き込まれていると思っていなかったんだから…少なからず、責任を感じたのかも知れない。だから言わなかったんだけどね…。
「本格的に探し出すしかないな。ダミアン様には俺から報告する。あの執務室にいても、影は出来る。聞かれているかも知れないからな。あと、"オズウェル"についても調べてやるから」
 溜め息を吐き出したエースに、俺は小さく頷いた。
「有難う。何か御免ね、奇妙なことになって…」
「まぁ仕方ない。で、そいつはどうするつもりだ?」
 エースが視線を向けた先にはシェリーがいる。
「連れて帰るよ。しょうがないでしょ?見張られているんだったら尚更、通常通りの任務をしていた方が良いかな、とね。重要なことは筆談?」
「…意識波で話せば良いだろうに…それくらいは出来るだろう?」
 エースに問いかけられ、シェリーは小さく頷いた。
「えぇ、一応…」
「一応…ねぇ…」
「…申し訳ありません…」
 余りにも自信なさげな姿に、ルークは溜め息を吐き出す。
「取り敢えず、あんたの経歴書と、念の為任命書も出してね。それから、出来ることと出来ないことをはっきりさせないと、この先大変だから。暫くは試用期間で、あんたが本採用になるかどうかは、それ次第ね…」
 空も飛べない、意識波での会話も微妙、と来たら…ねぇ。補佐としてどうなのか、ってことだけどね…。
 ホント…こいつを利用して、何をしようとしてたんだか…最大の疑問だ…。

◇◆◇

 ダミ様への報告はエースに任せ、俺はシェリーと一緒に執務室へと戻って来ていた。
「じゃ…ちょっと試してみようか」
 俺はそう言うと、意識波の会話が出来るかどうか、でシェリーに話しかけてみた。
『…聞こえる?』
 すると。
「はい」
「…駄目じゃん。返事しちゃ…」
「あ、済みません…」
 天然何だか、ただピントがずれているんだか…ホント、何と言って良いのやら…。
『も一回。やり直し』
『…………は…い』
「…たった一言なのに、偉く時間かかんな…」
『……す……みませ…ん…』
 どうもたどたどしい…。これで会話をしようってのは、無謀なのかも知れないが…。
「…よし、わかった」
 溜め息を一つ吐き出した俺は、机の引き出しを漁って数枚の紙を出すと、メモ帳サイズに折ってシェリーに渡した。
「取り敢えず、それ、切っとけ」
「…はい…」
 言われた通り、大人しく紙を切り始めたシェリー。俺はその間、取り敢えず伝えなければならないことを紙に書いていた。そして、御茶を淹れに立つ途中でそれをシェリーに渡す。
《まずは、黙ってこれを読むこと。
当たり障りのない会話は今まで通りで構わない。だが、御前の雇用に関することと、今後の相談については、必ずメモに書くか、意識波を使うこと。
メモはこの執務室からは持ち出し禁止。その日の内に必ず焼却処分すること》
「…OK?」
「はい。了解しました」
 シェリーも顔をあげ、小さく頷いた。
 さて…これからどうするか…本格的に考えなければ。

 翌日。朝登庁して来たシェリーは、そのまま俺の執務室へとやって来たようだった。
 その手には、大きめの封筒。
「おはようございます」
「あぁ、おはよう」
 挨拶と同時に差し出されたその封筒。それに関して何も言わないところを見ると…俺が昨日頼んだものが入っているんだろう。
 中を確認すると、確かに経歴書と任命書が入っている。
「じゃあ、ちょっとエースの所に行って来るから。留守番頼むね」
「了解致しました」
 俺はそれだけ言い残し、封筒を持って情報局へと向かった。

 情報局へとやって来た俺。
「おはよー。これ、御願いね」
 そう言って封筒を差し出しながら、一応意識波で言葉を補う。
『これ、シェリーの経歴書と任命書。今朝持って来た』
 見られている可能性はある。ただ何処まで見られているのか、それとも聞かれているだけなのかは、まだわからない。見られているのなら、あんまり大っぴらに動かない方が良いんだろうけど…だからって引き篭もってもいられないしね。
『見たら、"上"ね』
 付け加えた言葉に、エースは封筒の書類にざっと目を通すと、小さな溜め息を一つ。
「…面倒くせぇ…」
「しょうがないでしょうよ」
 くすっと笑いを零し、俺は窓を開ける。
「良い天気だしね。御散歩、御散歩」
 そう言って俺は背中に翼を構え、空へと羽ばたく。その後をエースも追って来る。
 情報局のアンテナを越すと、やっとそこで上昇をやめ、エースを振り返った。
「…で?どう思う?」
 エースが追いつくなり、そう問いかけた。
「いきなりどう思う、って言われてもな…確かに任命書は"オズウェル"のサインが入っているな。用紙は正式なモノじゃないし、ダミ様が使っているモノでも枢密院で出しているモノでもない。だが気になるのは…何処かで見たことがある用紙、だ。まぁ、それは置いといて…後はシェリーの経歴書?俺が見てもしょうがないんだが…一応、軍事局に在籍してたんだな」
「…みたいだね。俺も知らなかったけど」
 俺も、ざっと見ただけなんだけど…確かに彼は、軍事局に在籍していた。しかも、参謀部の実行班に。
「種族は…と言うより、半精霊…か?どうやら、色んな血が混ざってるみたいだな。自力で飛べないのはその所為かもな」
「まぁ…色んな種族がいるからね。そんなことはもうどうでも良いんだけど…参謀部にいた割に、俺は知らないんだよね…そのレベルだ、って言うのなら話はわかるんだけど、だったらどうして補佐に?ってことでしょ?まぁ、後でラルに聞いてみるけど」
 状況がわかるにつれ、尚更混乱して来る。
「そう言えば、"オズウェル"について何かわかったの?」
 ふと思い出して問いかけると、エースは溜め息を一つ。
「一応、ウチの局のデータを調べたんだけどな…"オズウェル"って奴は見当たらない。一体何者なんだ、って話なんだが…あぁ、それから…御前が言ってた、"影に潜む妖魔"だけどな…もしかしたら、遣い魔の可能性ならあるかも知れない」
「…遣い魔、か…ってことは、それを操っている奴がいる、って事か…そいつが多分…"オズウェル"…?」
「多分、な。確証はないが…一番可能性が高い。だから、"オズウェル"を捕まえれば簡単なんだが…多分、難しいだろうな…」
 エースが溜め息を吐き出すんだから…捕まえられると言う確証はないんだろう。
「後は…直接、遣い魔を退けるしかないか…」
 退魔の呪を知っていれば、一番早いんだろうけど…残念ながら、俺は知らないし…それを選択肢に出さなかったエースも、多分そこまでは知らないんだろう。
「…こんな時、ゼノンがいたらね…」
 思わず零した言葉に…エースは空を振り仰いで、大きく息を吐き出した。
「呪を見つければ良いんだろう?」
「…エース…」
 ゼノンの行方は…未だわからない。
 俺たちも、自分たちの持っている知識をフル活用していたつもりだったけど、所詮は頭より身体を動かす方が得意だったものだから…ゼノンの知識に頼ってばかりいて、彼奴を追い詰めてしまったのかも知れない。この頃はふと、そんな意識も過ぎっていたりした。
 それは、多分エースも同じ。だから…自分たちで何とかしようとしているんだ。
 如何にその知識に頼っていたかを実感しつつ…俺がそこに触れてしまったからなのか…エースは、ちょっと機嫌が悪くなった…と思ったその瞬間。
 ふっと、エースの視線が俺を捕らえた。
「そう言えば御前、雷神界に行ってるんだって…?」
「え…?」
 突然そう問いかけられ、一瞬返事に困ってしまったが…。
「まぁ、時々ね。最近は忙しくて行けてないけど……って、そうか。ライデンなら知ってるかも!」
 俺は思わず、ポンッと手を叩いた。ライデンも知識が豊富だから、もしかしたら退魔の呪も知ってるかも知れない。
 どうしてもっと早くそうしなかったのか…と、思ったのも束の間。エースは俺を睨んでいる…。
「…何?俺、変なこと言った…?」
 睨まれている理由がイマイチわからず、そう零した俺に…エースは、溜め息を一つ。
「御前なぁ…自分の状況を考えろ?御前の影に妙なヤツがくっついている状態で雷神界に行って、そいつが御前の影からライデンに乗り換えてみろ。彼奴がそれに気付かなければ、雷神界の状況が駄々漏れに………」
「…駄々漏れ……」
 その言葉に、エースも俺も、一瞬息を飲んだ。
「…それが…狙い…だとでも…?」
「…何とも言えないが…それが一番、腑に落ちる」
 エースの眼差しが変わった。
「…また後で連絡する。御前は、執務室で大人しくしてろ」
 エースはそう言うと、俺の手の中に封筒を押し込んで先に戻って行った。
 もう…嫌な予感しかしない…。

 エースに言われた通り、大人しく執務室に帰っては来たものの…頭の中は、嫌な予感で一杯だった。
 一応、参謀部実行班総長のラルに連絡を入れ、こちらに来て貰うように話はしてあった。
 後は…エースの連絡待ち。
「…さて、どうしようか…」
 小さくつぶやきを零しつつ…状況を整理してみる。
 "オズウェル"の名前に心当たりはない。だが、雷神界をどうにかしよう…と言うことに…心当たりがない訳じゃない。ただそこは…あんまり想像したくない訳で…。
 大きな溜め息を吐き出した時、ドアがノックされてラルが顔を出す。
「御待たせ」
「あぁ、どうぞ」
 ラルをソファーへと促し、俺は小さな箱を持ってその向かいへと座った。
「用件は?」
 そう切り出したラルに、表情を変えず、箱を開ける。そしてその中から現れたモノを、ラルの前で広げた。
「……カードゲーム?」
「そ。新作」
「…あのなぁ…そんなことの為に俺を呼んだ訳…?」
 ソファーへと凭れかかり、呆れたようにそう口にしたラルに、俺は思わず小さく笑った。
「気晴らしって大事よ?根詰めて仕事するとね、行き詰るから。違うカタチで頭を使うと活性化するからね」
「だからってなぁ…」
 まだ何かを言おうとするラルだったが、直ぐに意識波を送った。
『大事な話があるから。黙ってゲームの相手して』
「…ルーク?」
 黙々と準備をして、顔をあげる。当然そこに、言う通りにしろよ、と言う思いは込めているけど…ね。
『…誰かに見られている可能性が高いんだ。多分、会話も聞かれてる。だから、ゲームはカモフラージュ』
『…わかった』
 小さな溜め息を吐き出したラルは、仕方ない、と言った表情で配られたカードを手にした。
 そして、ルールの説明をして、ゲームを始める。
 当然、意識波での会話も続いている。
『俺んとこに、補佐官が来たのは知ってる?』
 その声に、ラルは小さく頷いた。
『あぁ、シェリーだろう?ウチから行ったんだから。何でシェリーなのか、俺もわからないんだが…俺宛にもシェリーを御前の補佐にするって言う任命書が届いた。署名はダミアン殿下。その事が本題なのか…?』
 そう答えるラルの声に、俺は黙々と手を進めながら頷いた。
『シェリーの存在は、俺は知らなかったんだ。一応、何日か働いているけど…空も飛べないし、意識波も使い熟せない。仕事の道理もわかってないから、補佐のクセに参謀部の下っ端がやるような書類整理を、主任から振られたって文句も言わずにやってたくらいだからな。どう考えても、補佐って器じゃないんだけど…そっちにいた時はどうだった訳?それが聞きたかったんだ。因みに、任命書はニセモノね。ダミ様の署名も偽装だから』
 そう言われた途端、ラルは溜め息を一つ。
「あぁ…そう、か……一回パス」
 何処までが俺の問いかけの返事で、何処からがゲームの会話か混乱しそうだが…ラルはもう一つ溜め息を吐き出すと、再び意識波を飛ばして来た。
『俺も不思議だとは思ってたんだ。何せ、シェリーは…まだ入局して一年しか経ってない。ウチの部署でもまだほぼ雑用だ。ただ、あんなヤツだが剣術だけはずば抜けて優れてるから、その辺を認められたのかと思っていたんだが…』
『一応…褒める所はある訳ね…』
 入局一年じゃ、確かに補佐の仕事は無理だな…
『それから…彼奴は中途採用だ。ウチの部署に来る前は、枢密院の衛兵だったらしいぞ』
『…衛兵…か…』
 ソファーに深く凭れかかり、大きく息を吐き出す。
 繋がりがない…とは言えない状況が重なって行く訳で…。
「ルーク、御前の番」
「あぁ…はいよ」
 ゲームを続けながら、考えを纏める。
 接点があるとすれば、枢密院にいた、と言う事ぐらいだろうか…だが、何の警戒も抱かせず、俺の補佐に収まったところを見ると…多分、奴等の計画通りだったんだろう。何にもしてないのに俺が巻き込まれているところをみると…直接、俺に何かをする必要はなかった訳だしね。
 ただ、疑いも持たれずにそこにいれば良い。ただ、それだけの役割だったんだと思う。だからこそ…寧ろ、仕事なんて出来ない方が良かったのかも知れない。
 溜め息を吐き出す俺に、ラルはちょっと首を傾げた。
『そう言えば、見られてるかもって言ってたけど…心当たりはある訳?』
『あぁ…見られてる気配はあるんだ。俺の"影"から、ね』
「…か……?」
 思わず口を開いたラルだったが、直ぐにハッと我に返って口を噤む。
『…"影"…?』
 改めて、意識波を飛ばして来たラルに、俺は小さく頷いた。
『俺とシェリーの"影"に潜んでいるんだ。多分、首謀者の遣い魔だと思う。そいつも追っ払わないといけないってのに、退魔の呪がわからないもんでね…俺の行動が見張られてる訳だから、俺が動く訳にもいかないからって、エースが調べるって言ってるんだけど…』
『退魔の呪?』
 その言葉に、ちょっと何かを考えていたラル。そして。
「シェリーに聞けば?」
「……は?」
「知ってると思うよ。ほい、上がり」
「あ……負けた…」
 うっかり気を抜いた…。
『…シェリーが知ってるって、どう言う事?』
 カードを纏めるラルに向けてそう問いかけると、ラルはくすっと笑った。
『確かに誇れるモノは剣術ぐらいだけど、あれでも半精霊だったはずだから。遣い手の方の知識はあるはずだ』
「…そう言う事は早く言ってくれる…?」
 何だよ…だったら、こんなに遠回りする必要なんかなかったじゃないか…。
 思わず溜め息を吐き出した俺に、ラルは再び笑いを零す。
「灯台下暗し、ってな」
「……暗過ぎるわっ」
 そう零してみたものの…それでも引っかかることはある。
『でもさ…半精霊で、遣い手の知識があって…他の遣い魔に入り込まれてもそれと気付かないことってあると思う…?』
 眉を潜めてそう問いかけると、ラルは小さく息を吐き出す。
『彼奴は遣い手の知識があるだけで、自分が扱える訳じゃない。彼奴の魔力を考えれば、まだまだ未熟だからな。多分今の彼奴のレベルでは、入り込まれても気付かないのは不思議じゃない』
「……そう言う事ね…」
 まぁ…単に、シェリーが未熟過ぎるから付け入られた、ってことなんだろう。
「もう一回戦やる?」
 カードを揃えたラルが笑ってそう言った。
「いや。今日はここまで。頭も動いたしね、また今度」
 俺はそう言って、大きく息を吐き出した。
 取り敢えず、遣い魔を退ける手立ては見えた訳だし、後はエースの連絡待ち。
「有難うね、相手してくれて。持つべきモノは賢い同期だね。おかげで…助かった」
 ホント、ラル様々、って感じだ。
「言っとくけど、士官学校で習う基本知識だからな。まぁ、ヒトによって得意分野は違うから、あんたの足りないところは俺等が補うから。作戦参謀としても、剣術のセンスも、あんたには敵わなかったけど、少しは頼りになるならそれで良かったよ。まぁ、いつでも呼んで。俺の手が空いてる時なら…ね」
 そう言って、ラルは俺にカードの入った箱を手渡すと、執務室を出て行った。
 さて…それじゃ、もう一仕事…だな。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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