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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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熾烈なる戦い 1
こちらは、以前のHPで2000年7月25日にUPしたものです
 ※シリーズ小説はカップリング小説です。(基本DxAです…/笑)
5話完結 act.1

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◇◆◇

 現世に於ても、悪魔と天使の諍いは続いていた。
 その日はいつもにも況して天使の気が強く、屋敷では主たるデーモンが、うっとおしげに眉を潜めていた。
「…ったく、彼奴等…何もこんな日に出かけなくても良さそうなものを…」
 今から遡ること数時間前、エースの元に突然飛び込んで来た一つの情報により、エースとルークはこの日の外出を余儀なくされていたのだった。
 勿論、エースとルークの腕を信用していない訳ではないのだが、この日に限ってデーモンは奇妙な胸騒ぎを隠し切れない。
「デーさん、少しは落ち着いたら?」
 デーモンと同じく屋敷に残っていたライデンは、カタカタと貧乏揺すりをするデーモンを横目に、そう尋ねた。
「ライデンの言う通り。デーモンがそんなに神経質になっても、仕方ないよ」
 屋敷に残っていたもう一名。ゼノンは三名分のコーヒーのカップをテーブルの上に置く。
「しかしなぁ…」
 眉を潜めたまま、溜め息を吐き出すデーモン。この不安の種は、そう簡単には消えないらしい。
「エースの奴、ルークには話したようだが、吾輩には情報の内容をはっきりと言わないんだ。何でも、魔界にいた当時から捜していた天使の正体がわかったとか、何とか言っていたんだが、語尾を濁すんだ」
「…捜していた、天使の正体…?」
 ふと、ゼノンの動きが止まる。
「何だ?心当たりでもあるのか?」
 そう問いかけられて、思わずにっこりと微笑む。
「…別に?」
 ゼノンまでもが僅かに纏う気が乱れる。それを隠すように、そそくさとその場から立ち去る。
「…まさかねぇ…もう随分前のことなのに…」
 廊下に避難して来たゼノンは、そう独言を零していた。
 瞬間、不快な気が屋敷を包み込み、ゼノンは背筋に寒気を感じた。それと略同時に玄関のドアが開き、そちらに目を向けたゼノンは、一瞬にして凍り付く。
「ちょっ…エースっ!!ルーク…っ!?」
 その声に弾かれたように、リビングからデーモンとライデンが飛び出して来た。そして、その姿を見つけた瞬間、目を見開く。
 ドアを蹴破るように入って来たエースは既に血塗れで、肩で大きく息を吐く姿は自身を支えるのでも精一杯なようだった。しかし、その腕に抱え込まれたルークは、既に意識がないようでぐったりとしている。
「エースっ!?」
 駆け寄って来たデーモンに、エースは掠れる声でつぶやいた。
「早く…ルークを。意識がないんだ…」
「わ…わかった!」
 エースに言われるままに、ライデンはルークを抱えて部屋に向かった。が、その瞬間、当のエースも張りつめていた糸が切れたように、ふっと意識を失って倒れかけた。
「エース、しっかり…っ」
 エースを抱き留めたデーモンは、そのままゼノンと共にエースの自室へと運んだのだった。

 ルークの手当を先に終え、ゼノンがエースの部屋へと来た時には、エースは既に意識を取り戻していた。
 エースの怪我はルーク程酷くはなかったのだか、それでも安静は安静。あちこちに包帯を巻かれたエースは、ベッドに押し込められている。
「…訳を、聞かせて貰おうか?」
 これ以上の黙秘は許さないと言わんばかりのデーモンの表情に、エースは溜め息を一つ。
「御前には、関係のないことだ」
「関係がない訳ないだろう?御前やルークがどんな状態で帰って来たと思ってるんだ?!吾輩を差し置いて何をしようと言うんだ…っ」
 声をあげたデーモンにも、エースが口を噤んだままである。その様子に、見兼ねたゼノンが一言。
「デーモン、ちょっといい?」
「…何だ?」
 眉間に皺を寄せたまま、デーモンはその視線をゼノンに向けた。
「安静、なんだけど」
「…は?」
「医者として…今は、患者に無理はさせたくないんだ」
 そこまで言われてしまえば、デーモンとて無茶は出来ない訳で。
「…わかった。だがな、容体が良くなったら、話して貰うからな」
 不満たらたら、デーモンは部屋を出て行く。その後ろ姿を見送ったエースとゼノンは、溜め息を吐き出す。
「…助かった」
 ぽつりと零したエース。その姿に、ゼノンは軽く笑みを零してベッドの傍の椅子に腰かける。
「俺には、話してくれるよね?御前が追ってた、天使のこと」
「…聞いたのか?」
「うん。まさかとは、思ったんだけど…その様子から察して、多分間違ってないと思って」
「…ったく…」
 諦めたように溜め息を吐き出したエースは、そっとその眼差しを伏せ、言葉を続けた。
「御前の考えてる通りだ。俺が追ってたのは、彼奴を…レイラ=クーヴェイを殺した奴だ」
「…やっぱりね」
 小さく返し、ゼノンも目を伏せて溜め息を一つ。
 今も、忘れた訳ではない。忘れられるはずなど、なかったのだ。エースがデーモンに想いを向け始めた根源は、そこにあるのだから。
「仇討ちのつもり?」
 ふと、問いかけた声。
「良く…わからない。仇を討ちたいと思ってたのは確かだが…ルークを巻き込むつもりはなかったんだ。誰にも内緒で行こうと思ったのに、彼奴が無理矢理着いて来て…二悪魔してこのザマだ。情けねぇな」
 口惜しそうにつぶやいた、エースの言葉。ゼノンの表情は一転して心配そうな表情に変わる。
「俺にも、話して欲しかったな。レイラのことなら俺だって他悪魔事じゃないんだし…」
「だって、御前にもしものことがあったら、ライデンが可哀想だろ?」
「じゃあ、エースはデーモンのこと考えたの?」
 そう問い返され、エースは思わず口を噤んだ。
「デーモン、凄く心配してたんだよ。俺やライデンはともかく、デーモンには事情を説明しても良かったんじゃないの?」
「言える訳、ないだろ?言えば当然着いて来るだろうし…何より、彼奴の気持ちを裏切るだろう…?」
「エース…」
 エースの思い詰めた表情に、ゼノンはそれ以上、エースを責めることが出来ない。
「デーモンを失わない為には、秘密にしておくしかない。狡いことだってことはわかってる。でも…そうする他に何が出来る?俺の我儘でも…クーヴェイのことだけは…俺と、御前の胸にしまって置かなきゃいけないんだ」
 それが、エースの何よりの想いだったと言うことはわかる。でも…それだけではデーモンは納得しないだろう。
「まぁ…御前らしい結論ではあるけどね。でも、いつまでも隠し通せるモノでもないでしょう?いつかはデーモンだって気付くよ。俺たち以上に御前のこと見てるもの」
「…わかってる。でも、今は言えない」
 エースはそれ以上口を開かず、ゼノンは諦めた溜め息を吐くしかなかった。

◇◆◇

 その夜。物音で目を覚ましたゼノンは、その音の根源を見つけるべく、部屋のドアを開ける。リビングから裏庭に出る窓が開いているのを見ると、そこから裏庭へと歩みを進めた。そして、木立ちの中に音の根源を見つけた。
「…エース?」
 安静を言い渡し、部屋から出ることを禁じたはずのエースが、そこに立っていたのだ。しかも、戦闘服に身を包んで、虚ろな表情で空を見上げているではないか。
「…何やってるの?安静って言ったはずだよ?」
 そう声をかけたゼノンを振り返り、エースは真っ直ぐにゼノンを見つめた。
 その表情も…眼差しも、既に尋常ではないと誰でも容易に感じることが出来る程…徒ならぬ気配を纏って。
「…あの場所で…クーヴェイが待っているんだ。だから……」
「ちょっ…エース…っ!」
「俺にもしものことがあったら…後のことは頼むな」
「…エース、待って…っ!!」
 咄嗟に呼び止めたものの、そこには既にエースの姿はなかった。
「エース!!」
 思わず上げたのは、悲鳴に近い声。
 エースが再び行ってしまうであろうことは、予想の範疇だったはず。それなのに、どうして部屋のドアに封印をしておかなかったのだろう?
 一瞬ゼノンの頭に過ぎったのは、大きな後悔。当然、その後悔はゼノンの気は大きく乱していた。
 早く追って行って、エースを止めなければ。
 そんな思いで咄嗟に魔力を高め始めた瞬間。背後から、その腕を掴まれた。
「…っ!!」
 ドキッとして振り返れば、そこには自分を睨み付けるデーモンと…そしてその背後に、心配そうな表情を浮かべているライデンの姿があった。
「そんな格好で…何処へ行くつもりだ?」
 表情とは裏腹に、とても冷静なデーモンの声。
「…だって、エースが…っ」
「エースのことはわかった。だから、ちょっと落ち着け。何の準備もせず追いかけて行ったって、ただの足手纏いだろうが」
 そう言われて初めて、自分が酷く無防備であることを認識した。
 大きな溜め息と共に、思わずその場に崩れ落ちるゼノン。
「…自ら行こうとしたってことは、エースの行く先を知っているんだろう?吾輩が行って来るから。御前は少し休んだ方が良い」
「…でも…御前を行かせたら、エースに怒られる…」
「今更何を言ってるんだ。今の状況で御前を行かせられる訳ないだろうが。エースに怒られるのが何だ。彼奴を助ける方が先だろうがっ」
「…デーモン…」
 デーモンの言うことは真っ当であり、反論の余地はない。そして、呑気にしている場合でもない。
「エースは何処にいる?」
 改めて問いかけたデーモンの声に、ゼノンは溜め息を一つ。
「…一級危険区域…」
 レイラ=クーヴェイの仇討ちであるなら、その場所に間違いはない。
「一級…危険区域…?」
 デーモンその場所を聞いたのは、どれくらい振りだろう。そして、その場所でエースが必死に隠した理由がわかった訳で。
「わかった。とにかく、行って来る」
 デーモンは小さな溜め息と共に踵を返し、戦闘服に着替えると魔界へと出発した。
 その一部始終を黙って見つめていたライデンは、デーモンを見送ると大きな溜め息を一つ。
 そして。
「ゼノ…戻ろう?コーヒー淹れてあげるから」
 その優しい声に、ゼノンは顔を伏せ、唇を噛み締めていた。

 リビングのソファーに腰を下ろしたゼノンの前に、ライデンは今淹れて来たばかりのコーヒーのカップをそっと置くと、その隣へと腰を下ろした。
「…大丈夫だよ。デーさんが追っかけて行ったんだもん。ちゃんと、エースを連れて帰って来るよ」
 ゼノンを宥めるかのように、俯いて丸くなった背中をそっと撫でる。
 その優しい仕草に…ゼノンは、大きく息を吐き出した。
「…御免。もう大丈夫だから…」
「…ゼノン…」
 ゼノンはコーヒーを手に取ると、一口啜る。そして気持ちを宥めるように再び大きく息を吐き出した。
 その姿に、もう切り出しても大丈夫だろうと察したライデンが、やや躊躇いがちに口を開く。
「ね…俺にも話してくれる?一級危険区域に、エースがいる理由。あと、あんたと…デーさんがそれに関わっている理由。ルークも、知ってるの?」
 問いかけたライデンの言葉に、諦めたようにゼノンはゆっくりと口を開いた。
 レイラ=クーヴェイのことも、今回の事件の発端から経緯まで。
「…御免ね。御前に黙ってるつもりはなかったんだけど…エースの気持ちを考えると、どうしても言えなくて…」
 それは、エースが負った大きな心の傷。そしてそれが、デーモンとの確執に繋がっていたのだと。
 勿論、ゼノンにとっても大事な仲魔だったのだから、少なからず心に傷は負っている。だからと言う訳ではないが…余り深く触れるべきではないことは、ライデンにもわかった。
 そして、考えた末に…ライデンが紡いだ言葉。
「…御免ね、あんたの傷も抉ったみたいで…」
「…ライ…」
 顔を上げたゼノンは、俯いているライデンの横顔を見つめた。
 傷付けてしまっただろうか?
 ゼノンの表情は、そう言っているようだった。
 けれどライデンは、小さな吐息を吐き出すと顔を上げて、小さく微笑んだ。
「エースは…気持ちの整理をしに行った訳でしょう?だったら、デーさんとの事はきっと大丈夫だよ。それに多分デーさんだって、勿論俺だって…亡くなった悪魔相手に、争うつもりはないよ?到底、敵う訳ないもん」
「…どう言う…」
 ライデンの言葉の意味が良くわからず、怪訝そうな表情を浮かべたゼノン。
「…強く残った想いは…そう簡単に消えないと思う。薄らいだって、消える訳じゃない。それで、残った記憶は良かったことばっかりなんだよね。そんな相手と戦ったところでさ、敵う訳ないじゃん?俺は、その時にあんたの傍にはいなかった。だから、同等じゃない。今生きているのなら欠点だってあるだろうけど、良い思い出しか残っていない相手じゃさぁ、無理ってもんだよ。だから俺は、レイラ=クーヴェイって奴と張り合うつもりはない。デーさんだって…多分そうだよ。今のエースの気持ちが何処を向いているか、その本質がわかっているから…だから…大丈夫だって、俺は思ってる」
 ライデンの言葉を聞きながら、ゼノンは自分の気持ちを反芻していた。
 確かに。レイラ=クーヴェイを思い出しても、腹の立つことなど何もない。元々が憎むことなどなかったのだから、それは尚更。そして…失った瞬間から、新しい記憶が上書きされることはないのだ。新たに欠点が増えるはずもない。
 ライデンは完全に部外者だったからこそ…冷静に、判断出来たのだろう。
「…そうだね。御前の言うことは尤もだよ。御前が…冷静でいてくれて助かった…」
 それは正直な気持ち。だからこそ、救われたのだと。
「だって俺、何にも知らないもん。慌てようがないし」
 苦笑するライデン。
「確かにね」
 つられて、ゼノンも苦笑いをする。
 気持ちは、殆ど落ち着いた。
「少し眠る?」
 問いかけたライデンの声に、ゼノンは首を横に振った。
「もう大丈夫。いつ、どんな状況で帰って来るかわからないからね。起きて待ってるよ。コーヒーもあるし」
「じゃあ、俺も飲もうっ。あったかいの。淹れ直そうか?」
 ソファーから腰を浮かせたライデン。ゼノンは思わずその腕を掴んだ。
「どした?」
 その問いかけが終わらないうちに、引き寄せられてその腕の中へと転ぶように飛び込んだライデン。
「…ちょっ…?」
 一瞬慌てたライデンだったが、ゼノンにしっかりと抱き留められている状況に、口を噤んだ。
「…有難う」
 耳元で聞こえた、ゼノンの声。落ち着いたように見えても、まだ心の何処かで揺れている想いがある。それを感じ取ったライデン。
「…俺は、ずっとあんたの傍にいるからね。心配しないで」
 くすっと笑ったライデンは、そう言ってゼノンの腕をポンポンと軽く叩く。
「…ちょっとだけ休もう」
 張り詰めた状況の中、それはほんの一時の休息。
 ゼノンとライデンは、ソファーで寄り添ったまま、じっと二名の帰りを待っていた。
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