聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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真実(まこと)の地球
静かな空間がここにある。
風が行き来する音が聞こえる他は、何も聞こえない。
真白な空間がここにある。
空を染める蒼(あお)色も、地を染める碧(みどり)色も、ここにはない。
常人ならば気が狂ってしまいそうなこの空間に、突如として、黄金の閃光が駆け抜ける。そしてそれを追いかけるように、赤い閃光が駆け抜ける。黄金と赤が交わる彼方、ぼんやりとした影が二つ見える。
一つは気高い光を放つ黄金。もう一つはただ我武者羅にその黄金を追って来た赤。
二つの影が交わる彼方、揺るがない時間が流れる。
「…何を…見てるんだ?」
ぼんやりと遠くを見つめる黄金…デーモンに、赤…エースは尋ねた。
「…御前には何が見える?」
デーモンは遠くを見つめたまま、つぶやいた。
エースはデーモンの視線の先を見つめた。二悪魔の視界を遮るものは何もない。但し、どんなに近くを見ても、どんなに遠くを見ても…見えるものはただ一つ。
それは真白な空間。
「…俺たち…いつからここにいるんだ?」
デーモンと同じ空間を見つめ、エースはつぶやいた。
「さぁ…な…」
デーモンはつぶやき返す。しかしその視線は動かない。
デーモンが何を見つめているのか…その視界に何が映っているのか…その記憶の限り…この空間でデーモンと過ごして来たエースにも、それはわからなかった。
その時、僅かにエースの呼吸が乱れた。
「…どうした?」
それに気付いたデーモンは、視線をエースへと移す。
エースは小さく首を振ると、うつむいてつぶやいた。
「…御前の考えてることがわからない。何の目的があって、御前が俺をここに連れて来たのか。ここが何処なのか…何の為の空間なのか…それすらも、だ。だが、御前には総てわかっているんだろう?」
デーモンは何も答えなかった。ただエースの傍らに立っているだけで。
「教えてくれ。ここは…何処なんだ?」
エースは顔を上げ、デーモンに尋ねた。
「ここは…地球だ」
「…地球…だと!?」
デーモンの声に、エースは目を見開いた。
「馬鹿なことを言うな!地球は、滅んだはずだ。見届けただろ!?人類が死に絶え、荒れ果てた地表には草一本残ってはいなかったはずだ!」
「そうだな。吾輩もそれは見届けた。しかし…確かにここは地球のもう一つの姿だ」
「…な…に!?」
デーモンの声に、エースは息を飲む。
「人類に支配されなかった…そしてどの生物も植物も…太陽光線さえも、正常に受け入れなかった地球の姿だ。故意的に光を遮った所為で太陽光線にあるべきはずのスペクトルさえ見当らない。だから空も地表も色を失い、ただ風だけが自由に行き来する。二度と過去の過ちを繰り返さぬようにと、地球自らが孤立した世界を造った」
再び遠くに目を向け、デーモンは言葉を放っていた。
「…そうか…生きる力を失ったあの地球に御前がしていたあの行為は…総てこれの為だったのか…」
思い出したように、エースはつぶやいた。
人類が死に絶えた地球から魔界に戻る直前…地に跪いて何やらつぶやいていたデーモンの姿を、エースはちらりと見かけていたのを思い出していた。
「…助け…たかったのか?この地球を。その為に…隔離した世界を造ったのか?」
ふとつぶやいた声。それはまるで、デーモンを非難しているかのようで。
「総てを与えず、かつてのような地表を造ることも許さず色も与えない。そして微生物の生殖すら許さない。この世界で生きているのは地球本体だけ。そんなことをしてまで御前は地球を助けたかったのか?御前のエゴを押しつけてまで…」
「彼女を…地球(ガイア)を、あのまま殺す訳にはいかないだろう?」
そうつぶやきを零したデーモンに、エースは冷めた眼差しを向けた。
デーモンの気持ちは、エースにも良くわかっているつもりだった。だがそれだけでは、デーモンの気持ちは地球から離れない。エースには、それが不安だったのだ。
「地球が滅びかけたのは人類の、他を顧みない愚かな欲望の結果だ。彼女はただ、その犠牲になったに過ぎない。しかし、こんな造られた空間になって…彼女はホントに満足してるとでも?」
「満足させようとしてやった訳ではない。吾輩は生き残りたいと言う意思を受け、僅かな力を与えてやっただけだ。この世界を造り上げたのは吾輩ではなく、彼女(ガイア)自身だ。文明の発達が余程堪えたと見える。自ら総てを遮断して、限りなく無に近い世界を造り上げたのだからな」
僅かな笑みを零したデーモンを、エースは黙って見つめた。
「吾輩が御前をここに連れて来たのには訳がある。御前が吾輩の気持ちをわかってくれるのなら、目的を察してくれるのではないかと思ってな」
その言葉に、エースは溜め息を吐いた。
「わからないな、御前の目的は。俺に地球のこんな姿を見せて、同情するとでも?」
「同情させようと思って連れて来た訳ではない。ただ…感じるだろ?人間共に支配されていた時よりも、彼女は充実感に満ち溢れているだろう…?」
「確かにな。だが、その反面…宇宙(そら)が泣いてる」
「…それは、わかってる」
エースの声に、デーモンは目を伏せた。
「彼女だけが、宇宙の中から孤立している。太陽系にあるにも関わらず、太陽の存在を全く無視しているからな。宇宙が嘆くのもわかる気がするよ。全く以って面倒な存在だな。御前の彼女は」
エースはそうつぶやくと、背中に現れた羽を二、三度羽ばたかせた。
「帰ろう、デーモン。御前は地球に拘わり過ぎてる。御前は魔界にいた方が良いんだ」
「…そうかも…な」
デーモンはつぶやいた。
再び、黄金と赤の閃光が駆け抜けた。それは魔界に向かって。
静かな空間がここにある。
風が行き来する音が聞こえる他は、何も聞こえない。
真白な空間がここにある。
空を染める蒼色も、地を染める碧色も、ここにはない。
最早、この空間を侵す者はない……
そう、そのはずだった…。
少なくとも…彼は、そう信じていたはずだった。
けれど、やがて全てが一転する。
二度と、戻ることの出来ない迷路に…彼等は、迷い込んだのかも知れなかった。
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HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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