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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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約束の旋律
こちらは、本日UPの新作です
 ※シリーズ小説はカップリング小説です。
(勿論DxAですが、ダミアンxルークもあります。
でもこのシリーズのメインはRXです…多分/^^;

拍手[3回]


◇◆◇

 途切れた歌を、この手に繋ごう。


 運命の日は、無情にもやって来る。
 継承式と戴冠式の行われる日は、とても良い天気だった。

 冬の雷神界には、例年通り雪が積もっていた。けれどその日は雪もやんでいた。晴天の空の下、風が吹くと時折小雪片がちらついているのが見えた。
 継承式と戴冠式を滞りなく終え、夕方の日差しになりつつある景色を自室の窓からぼんやりと眺めていたライデンの耳に届いたのは、控えめなノックの音、だった。
「…はい?」
 今日はもうやることはない。官吏たちは片付けに忙しく、来賓たちも既に帰っているはずだけれど…そう思いながら返事を返すと、そっと開いたドアの隙間から顔を覗かせたのは、馴染みの悪魔、だった。
「よぉ。落ち着いたか?」
「…デーさん…」
 その姿を見て、ホッと安堵の溜め息を吐き出す。
 継承式、戴冠式の来賓として、魔界から皇太子たるダミアンと、その警護の名目として軍事局総参謀長のルークと共に雷神界に来ていた副大魔王デーモン、だった。
「一悪魔?ダミ様とルークは?」
 問いかけた声に、デーモンは小さく笑う。
「あぁ、ダミアン様は忙しいのもあるし、今日は御前も疲れただろうからってな、先に帰った。ルークもそれにくっついてな。吾輩は…ちょっと話がしたくてな」
 そう言いながら、ライデンの様子を伺うデーモン。
「…顔色が悪いな。大丈夫か?」
 問いかけた声に、ライデンは小さく溜め息を吐き出す。その手は無意識に、自分の腹部に添えられている。
 ずっと、胃の辺りが痛い。けれど、このところ薬もロクに効かない。
「…大丈夫」
 力のない声。体調が悪いのは、誰の目にも明らかだろうが…それでも大丈夫、と言わざるを得ないその状況に、デーモンも気の毒そうに小さな吐息を吐き出していた。
 そっと伸ばした手をライデンが腹部を押さえた手に重ね、そっと魔力を送り込む。
「…気休めだけどな。やらないよりはマシだろう…?」
「…有難うね」
 ほんのりと温かくなる感覚に、大きな吐息を吐き出し、目を閉じて暫しその癒しの施しに身を委ねる。
 せめて、医師たるゼノンが傍にいてくれれば、もう少し何とかなっただろう…。そんな思いがデーモンの脳裏に過ぎっていた。一応、ゼノン宛の招待状はデーモンが預かっていたものの…まだその行方は知れないが故に、結局渡せずにいたのだ。
「エースも心配していたぞ?時々通信画面で話すだけだが、御前が元気がないのがわかるって…」
 念の為…と魔界に残ったエースからの伝言に、ライデンはほんの少しだけ口元を緩めた。
「そんなに心配しなくても良いのに。今更だし…ね」
 小さく零したその自嘲的な笑いに、デーモンは小さく溜め息を吐き出す。
「今更だから、心配しているんだ。御前がそうやって、頑なに心配ないって言うから…」
「だって、そう言うしかないじゃん。強がりだろうが何だろうが、そう言ってないと…自分自身に発破かけてないと、倒れちゃうから」
「ライデン…」
「今はまだ大丈夫。何とか頑張れるから。それに、デーさんとの約束もあるからね…ゼノンのことも、待ってるけど…もう、俺の想いは届かないんじゃないかって思うよ…」
 一番古い友。だからこそ…ふと、零してしまった弱音。それは…久しく見せなかった、ライデンの本音だった。
「信じて待っていてくれ、って言うデーさんの気持ちはわかってるよ。でもさ…正直、最近風当たりも強いんだよね…いい加減、身を固めてくれってさ。特に老主たちからね。待っていればいつか必ず報われるって…そう言う訳でもないって、前にも言ったじゃん」
「…だからそれは…」
「わかってるよ。デーさんが、俺が辛い時には来てくれるって約束してくれたし、その約束もちゃんと守ってくれてる。デーさんを信じてない訳じゃない。だけど…俺は、一国の王になったんだ。だから…いつまでもあんたに頼ってばかりもいられないんだ…」
「………」
 ゼノンがいなくなるまでは、無邪気に笑っている顔しか思い出せないくらい良く笑っていた。そして、何でも良く話してくれていた。
 けれど、ゼノンがいなくなってからはずっと沈んだ表情ばかり。口数も極端に減り、ずっと体調も悪そうだった。一番信頼していた恋悪魔が、自分に何も言わず姿を消してしまったのだから、その気持ちもわからなくはないのだが…そこには、次期雷帝としての責任も背負っていたのだ。
「…とにかく、俺は大丈夫だから。心配いらないって、みんなにはそう言っといて」
 大きく息を吐き出し、ライデンはその話をそう締め括る。
 心配されているのは、ライデンも良くわかっている。けれど、だからと言って弱音を吐き出す訳にもいかない。それは彼が…雷帝となるから。一国の王が、他国に弱音を吐く訳にはいかないから。
 これ以上、ライデンにはゼノンのことを言ってもどうにもならないだろう。それは…デーモンにとっても、一つの区切りだったのかも知れない。
「…御前が雷帝として覚悟を決めたのなら…御前にもちゃんと、言って置いた方が良いな。ここから先は…雷帝である御前に、しなければならない話だ。」
 少し考えた末に、デーモンはライデンにそう切り出す。
「…何?」
 デーモンの視線の先…ライデンは僅かに首を傾げ、表情を曇らせる。
「前に…エースから、軍部の強化の話をされているよな?」
「…うん。それは聞いてるけど…はっきりした理由は聞いてないんだけど、何でなの?」
 怪訝そうに眉を寄せたライデンに、デーモンは一つ間を置く。
 そして、その話を口にした。
「前雷帝に…御前の父君には、ダミアン様から詳しいことも伝えてはあるはずだ。だが御前はまだ雷帝を継いでいなかったからな、警告だけで詳しい話はしなかったんだが…今日で御前も正式に雷帝となった。だから、言って置くが…"魔界防衛軍"が、雷神界を狙っている可能性がかなり高い。エースが軍部の強化を打診したのは、その所為だ」
「…"魔界防衛軍"が雷神界を狙ってる…?」
 "魔界防衛軍"に関してはライデンも覚えている。けれどライデンの記憶ではそれは魔界で起こった革命の時に聞いたのであって、もう随分前の話だった。それが何故、今ここで出て来るのか…そこまでは、頭が回らなかった。
「ほら、ゼノンがいなくなってから半年ちょっと経った頃、彼奴の局長解任の話があっただろう?我々が御前からロイドの話を聞いた時の」
「…うん…」
「あの時も…確証はないんだが、恐らく裏でロイドを操っていたのは、"魔界防衛軍"の残党ではないか、と言う話になったんだ。あの時は、結局黒幕を捕まえられないままロイドは殺されてしまった。その後も、ルークのところに何者かが補佐を送り込んで来て、悪夢に捕らわれ、その影に遣い魔を忍ばせて監視したりな…そのままルークが気付かずに雷神界に来ていたら、御前のところにその遣い魔が移り込んで、雷神界の情勢が筒抜けになった可能性もある。それは未然に防げたが…いつ、何処で、何が起こるか全く想像がつかないんだ。だからこそ、エースは御前に軍部の強化を打診したんだ」
「………」
 思いもかけないその話に、ライデンは当然眉を潜めている。
 知らない間に、魔界でそんなことが起こっていたとは。そして…自分もまた、知らない間に巻き込まれかけていたとは。
「…でも何で…"魔界防衛軍"は、エースとルークとゼノンが潰したんじゃ…」
 あの時は、そう聞いていたはず。けれどその言葉に、デーモンは小さな溜め息を吐き出して首を横に振った。
「我々も…そう思っていたんだ。だが…ロイドが殺される数日前に、"ターディル"と良く似た後姿の悪魔が、文化局で目撃されている。ロイドを殺し、テオ=ホリィに重症を負わせた奴も、恐らく同一魔者だろう。勿論、ターディルの姿であれば直ぐに目に付くんだが…どうやら、顔は違うらしい。でもな…状況の全てが、"魔界防衛軍"の延長線上にあるようにしか思えないんだ。勿論、奴等は"魔界防衛軍"とは名乗っていない。ルークの補佐として来た奴が持って来た書類に記された"オズウェル"と言う名前だけが、唯一残された証拠だが…"オズウェル"と言う悪魔は、魔界には存在していないこともわかっている。だから、もう既に魔界だけの問題ではないかも知れないんだ。既に…天界や、この雷神界にも潜んでいるかも知れない。それは何とも言えないんだが…可能性がゼロではない限り、用心するしかないんだ」
 大きな溜め息を吐き出したライデン。それは当然と言えば当然のこと。
「…それにな…ゼノンがいない今、これも確証はないんだが…ゼノンが失踪するきっかけになったあのウイルスの件も、もしかしたら"魔界防衛軍"の差し金かも知れない」
「…どう言う事…?」
「つまり…御前も知っている通り、あのウイルスはロイドが盗んで、ばら撒いたんだとする。あの時はゼノンが無事に抗体を見つけられたから良かったものの…もしもあの時、抗体が見つからなかったら。魔界は…半壊滅状態、だ。その上、ダミアン様も吾輩もいない。統率者がいなければ、支配するのは容易なことだ。最初からそれを目論んでいたのかも知れないが…それは運良く免れた。だが、ゼノンはその責任を背負って姿を消した。だからこそ、目的を魔界の支配から雷神界の支配にシフトしたと考えることも出来るんだ。ゼノンがいなくなれば、当然御前がダメージを受ける。ロイドが声を上げなかったのも…それが理由だったのかも知れない。そして、御前がダメージを受けている間に、遣い魔を送り込んでその情勢を掴むことが出来れば…雷神界を支配するのは容易いのではないか、とな。勿論、我々の仮説なんだが…ないとは言えない。そして…ゼノンがそれを何処まで知っているのかも、我々にもわからないんだ」
「…じゃあ…ウイルスの盗難に関しては無罪だ、ってこと…?」
 そっと問いかけた言葉。
「…盗まれたことに関しては、そうなのかも知れない。ロイドが何も言わずに殺されてしまった以上、ゼノンに真実を聞くしかないんだが…そのゼノンがいない状態だからな。ゼノンが全てを正直に話してくれれば、それは明らかになるんだ。だから、罪魔であると言う械は、背負う必要はなくなるんじゃないかと思う」
「…そっか…なら、良かった…」
 ほんの少し、ライデンの表情が和らいだ。けれど、その表情も長続きはしない。
 直ぐに、その口から小さな溜め息が零れた。
「…でもさ……もしも、ゼノンがそれを知った上で失踪したんだとしたら…もしも、何も知らないまま失踪したんだとしたら……その二つは、違う答えが出ていたと思う…?」
 ライデンの問いかけている意味が良くわからず、今度はデーモンが首を傾げた。
「どう言う事だ?」
 再び問いかけると、ライデンはその視線を伏せ、小さく息を吐き出す。
「知っていたにしろ、知らなかったにしろ……今の状況は、何も変わらない。俺はそう思う、ってこと」
「ライデン…」
「どっちに転んでも…ゼノンは、王都を出て行ったと思う。彼奴が背負ったのは……ウイルスから目を離した罪。それを、ロイドに託してしまった罪。盗難を見逃してしまった罪。それは…真実を知っていようがいまいが、変わらないことでしょ?だから…出て行ったんだ。残された魔界がどうなるとか…残される俺がたちがどうのとか…そんなことは問題じゃなかった。ただ…自分が全部背負えばそれで良いと…俺から離れられれば、それで良いと…思ったんじゃないかな…」
 そう言葉を吐き出すライデンは…とても苦しそうで。それでも…その言葉は真っ直ぐだった。
 その姿に…デーモンも溜め息を零す。
「好きでいるからって言う想いは…今でも変わらないよ。だけど…ゼノンはきっと、俺のその想いが苦しかったんだよね。だから、俺は諦めるって言ったじゃん。俺は…ゼノンを、護ってやれなかった。支えてやれなかった。それは事実だもん。理想ばっかり言って、現実を見れなかった俺が無力だった。結局俺は雷神界が大事で…捨てる、捨てるって言っても…跡取りである現実を捨てることは出来なかった。だから…やっぱり無理だよ…例え、ゼノンが帰って来たとしても…俺は…ゼノンの傍にはいられない。これ以上、ゼノンを追い詰めることは出来ない。ホントに御免ね、デーさん…」
 昔ならば…泣いていただろう。でも今のライデンは、笑っていた。ただ、掌に爪が喰い込む程固く握り締めたその手が…デーモンには、酷く不釣合いに見えて仕方がなかった。
 胸が痛い。それは…御互いが、口に出せなかった想い。
 大きな溜め息を吐き出したデーモン。
「…謝ってくれるな…一番辛いのは、御前じゃないか」
「だって…デーさんの方が、泣きそうな顔したから…」
 ライデンにそう言われ、デーモンは初めて自分がどんな顔をしていたのかを知った。
 そんなデーモンを、ライデンは笑って見ていた。
「大丈夫。辛いのは…長い魔生の中の、ほんの一瞬だから。ちゃんと、前を向いて行けるからさ」
 ライデンは、窓の外へと目を向ける。
 時折ちらつく雪片は、相変わらず。
 ほんの一時だけ。直ぐに消えてしまう風花。その風花が…自分の心と、重なるようで。
 ライデンはそっと手を伸ばし、デーモンの身体を抱き締めた。
「…有難うね。でも…もう、大丈夫だから」
 幾度も同じ言葉を繰り返すライデン。その体調も、精神状態も、本当は大丈夫ではないのだろう。けれど、先ほど自分で言っていた通り…自分の発破をかけなければ、前へは進めないから。
 大きく息を吐き出したデーモンは、ライデンの背を軽く叩いた。
「プライベートでなら…この部屋にいる時ならば、弱音を吐き出しても良いんだからな。今言えなくても良いから…フィードにぐらいは、全部吐き出しておけ。そうしないと、ホントに倒れるからな。取り返しが付かなくなってからじゃ、全部遅いんだぞ?」
「…うん。そうだね…気をつけるよ」
 ちょっと身体を離し、デーモンの顔を見つめたライデン。その姿に、デーモンは小さく笑った。
 どうにもならないのなら…せめて、その想いを歌に託して贈ろう。
「新たな道を歩き出す御前に…一曲、贈るとするか」
 そう言うと、デーモンはライデンから少し離れる。そして、大きく息を吸い、呼吸を整えると…その歌を口にした。
 それは、未来への希望を祈る歌。
 この国を、立派に護れるように。そして…いつかもう一度、最愛の恋悪魔と出逢えるように。せめてもの願いを込めて。
 デーモンの歌が終わる頃には、先ほどとは打って変わって、ライデンの目に溢れんばかりの涙があった。
「…悪いな。御前の気持ちはわかっているが…出来ることなら…ゼノンのこと、諦めて欲しくはないんだ。折角繋ぎ続けて来た絆を…断ち切って欲しくはない。それが、雷帝としての御前が望んで良いことなのかどうか、正直吾輩にもわからないんだ。だが…吾輩は、そう願い続けるから」
「…うん…デーさんの気持ちは、ちゃんとわかってるから…」
 涙を袖口で拭い、そしてにっこりと笑ったライデン。
 いつか、もう一度…共に過ごせるようになれるのなら。確かにそれは、一番望ましいこと。けれど、それはライデンだけの気持ちでは出来ないのだから仕方がない。
 それでも、そのデーモンの想いは、ささやかでも希望を繋ぐモノとなった。
 もう少しだけ…願いを、繋げてみよう。そう思えただけ、感謝しなければ。
「また、様子を見に来るから」
「うん…有難う」
 デーモンのその気持ちが、ただただ嬉しかった。

 繋いだ歌が、空に届く頃。
 巡り逢える日は、必ず来るから。

◇◆◇

 翌日から、また慌しい日々が始まった。
 雪は、再び降り始めていた。
 数日間、その同じ光景をぼんやりと眺めていたライデンであったが……ふと、記憶が甦る。
「…何処やったっけ…」
 記憶を辿りながら、引き出しの中を漁る。そして見つけた箱を開けると、中に入っていたのは綺麗な鳥の羽根が一枚。
 その羽根を手に取ると、小さな笑いが零れた。
「…そうだ。今年も、餌…やりに行かないとな…」
 小さくつぶやいた声は、誰の耳に届くこともなかった。

 そして……運命の針は、再び動き出した。
 暫く姿を潜めていた"奴"と共に。


 巡り逢える日は、きっと……
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
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がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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