忍者ブログ

聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

誓いの詞 前編
こちらは、本日UPの新作です
 ※シリーズ小説はカップリング小説です。
(勿論DxAですが、ダミアンxルークもあります。
でもこのシリーズのメインはRXです…多分/^^;

拍手[1回]


◇◆◇

 眠りから目覚めたその視界に映るのは、眩しいばかりの白い世界。
 窓から見えるのは、長閑な雪景色。
 昔から変わることのないその景色を前に…僅かに胸の奥が軋む。
----…やっぱり…行かないと拙いよね…
 小さな溜め息を吐き出しつつ、柔らかなベッドにその背を預ける。
 傷が完全に癒えるまで…医師としての感覚で考えれば、後もう少し。動こうと思えば、多少痛むもののそれが行動の妨げになるほどではない。そう考えれば、完治までも一週間とかからないだろう。恐らく、自分がここにいることを認められるのは、その間だけ。
 ここを去る前に…どうにかしなければ。
 そう思いつつ、目を閉じる。
 あれこれと思いを巡らせている間に、再び眠りの世界へと落ちて行った。

◇◆◇

 その日の仕事を終えた雷帝たるライデンは、王宮の廊下を小走りで進み、未だ占拠している皇太子宮へと戻って来ていた。
 皇太子宮の一番奥にある自室。そこに行く前に、幾つかの客間を通り過ぎる。そして、自室に一番近い客間の前で足を止めた。
 呼吸を整え、そのドアをノックする。
『はい』
 その声と共に開かれたドア。そしてその向こうに、見慣れた自分付きの官吏の姿。
「…御早い御帰りで…」
 慌てて帰って来たことは、その顔を見れば最早明確。そう言わんばかりの官吏…フィードは、くすっと小さく笑いを零した。
「ゼノンは?」
 小さく問いかけると、フィードはドアの前から僅かに身を引いた。
「今は眠ってらっしゃいます。昼間、ルーアン医師が往診にいらっしゃいまして、怪我の回復具合を確認なさっておりました」
 フィードの声を聞きながら、ライデンはそっと部屋の中へと足を踏み入れる。
 ベッドに横たわって眠っているその姿。それが、つい数日前に見た…あの時の瀕死の姿と重なるような気がして。一瞬、背筋がゾクッとして、その表情も険しくなる。
「…生きてるよね…?」
 思わずつぶやいた声に、小さく笑うフィード。
「大丈夫です。生きてらっしゃいます。わたくしもずっと御傍におりましたし、会話も致しました。それに、今、御報告致しましたでしょう?ルーアン医師の診察を受けておりますから、大丈夫です」
「…うん…」
 今朝方、無事に生命を取り戻した恋悪魔。このところロクに仕事に手をつけていなかったツケが回り、今日はどうしても傍にいることが出来なかった。だからこそ、一番信頼しているフィードのゼノンの世話を任せたのだが…傍にいられなかった分、今までと同じように、普通に眠りから覚めるのかどうかの不安は付き纏うのだ。
 大きく息を吐き出してその不安を追いやると、改めてフィードへと視線を向けた。
「…で?ルーアンは何て?」
「はい。傷はもう前から塞がっておりましたし、完治ではありませんが、動くことには問題はないそうです。後は、ゼノン様の"ココロ"と肉体がしっかり結び付いて回復すれば大丈夫ではないか、と」
「…"ココロ"と肉体の結び付き、か…」
 確かに、魂が行方不明になっている間、肉体の方の治療はしていたのだから、傷はとっくに塞がっていた。幾ら傷が疼くとは言え、長期の療養は必要はないのだろう。それは、理屈でもわかっている。
 ただ…"ココロ"と肉体の結び付き、と言われてしまうと…そのバランスは、ゼノンにしかわからない訳で。ライデンにはどうすることも出来ない。
「まぁ…その辺は様子を見るよ」
 小さく溜め息を吐き出したライデンは、ちょっと考えてから、フィードを自室へと促した。
 そしてドアを閉め、完全に二名だけになると、その口を開いた。
「あのさ……まだ親父にしか言ってないんだけど…今朝少しゼノンと話して決めたんだけど…俺、ゼノンと結婚するから」
 唐突な切り出し方に、フィードは一瞬、狐に摘まれたような…そんな、奇妙な顔をした。
「…何さ、その顔は…」
 そんなに可笑しいことを言っただろうか?
 そう言わんばかりのライデンの言葉に、フィードはハッとしたようにその表情を引き締めた。
「いえ…余りに突然だったもので…失礼致しました…」
 そう言って小さく咳払いをしたフィードは、改めてライデンに向け、口を開いた。
「あの…それは決定事項、と言うことですか?それとも、若様の御気持ちとして、これからそのようにしたい、と言うことですか…?」
「えっと…俺とゼノンの間では、決定事項。親父にも、俺は話もした」
「…そうですか。では、御婚約のことは、既に手は打ってらっしゃるんですね?」
「…まぁ…親父の了解は得てるけどさ。でも、それだけじゃないし。考えなきゃいけないこともやらなきゃいけないことも、まだまだ一杯あるしさ…勿論、俺が言い出したことだからね。俺は責任持ってちゃんとやるよ。だけど…ゼノンの負担を増やすのは目に見えている訳だからさ…その辺は慎重に、と思ってるんだけど…」
 小さな溜め息を吐き出すライデン。その不安は、これから先を見据えてのモノであることは、フィードにもわかった。
 そして、自分にだけ打ち明けてくれたことは…長年、傍に仕えて来た官吏として、信頼されているからだと、自覚せざるを得なかった。
「御前はさ…反対、しないよね…?」
 心配そうな表情で問いかけたライデンに、フィードはにっこりと微笑んだ。
「わたくしは、若様が御倖せになっていただければそれで良いのです。ゼノン様と御一緒になることで、笑って過ごせるのであれば、反対する理由はありません」
「…そっか」
 フィードの言葉に、ちょっと安心したように吐息を零すライデン。
「もしかしたら…ウチの関係者だけじゃなくて、天界も敵に回すかも知れないからね。それは覚悟してるけど…やっぱり、味方がいてくれるってのはホッとするね」
 そう言って小さく笑ったライデンのその表情は、やはり不安が拭いきれないようだった。
「…御言葉を返すようですが…天界に関してはどうかはわかりませんが、我が雷神界に関しましては、敵など存在しないと思いますよ」
 敢えてそう口を開いたフィード。
「…何でそう思うの?俺は、決まりかけた婚約を白紙に戻したんだ。当然、そっちからの反論はあって当然じゃない?それは敵じゃないの?」
 眉を寄せ、そう反論するライデンに、フィードは小さく笑った。
「御自分が国民にどのくら愛されていらっしゃるか、御存知ありませんか?勿論、説明は必要だとは思いますが、だからと言ってそこから反旗を翻す者がいるとは思えません。前雷帝陛下同様、この国を想う若様の気持ちは、誰もが理解していると思います。ですからわたくしは、雷神界に若様の敵は存在しないと申し上げたのですよ」
「……御免、言わんとすることはわかるけど…さっぱり実感がない…」
 そう言いつつも、思わず苦笑する。
「もっと、愛されていると言う自覚を御持ちください。ゼノン様からだけではなく…我々雷神界の国民全員から」
 フィードの言葉に、ライデンはちょっと赤くなった。
 雷帝を継いでから、まだそんなに経っていないと言うのに…そこまで愛されていると言う実感がないのは勿論の事、ゼノンの名前を出されたことに対して、今更ながらに照れていたりする…。
「まぁ…さぁ。直ぐにどうこう出来る問題じゃないことはわかってるから、今すぐ結婚する訳じゃないけど…そのつもりでいてよ」
「了解致しました。わたくしに出来ることでしたら、何でも致しますので」
 そう言ってにっこりと笑ったフィード。
 その言葉とその想いが、何よりも心強い。
 ライデンは改めて、そう実感したのだった。

◇◆◇

 くっしゅんっ!
 くしゃみの声に、ふっと意識が引き戻される。
「ライ…?大丈夫…?」
 目を開けるよりも先に思わず口を付いて出た言葉に、笑い声が返って来た。
「くしゃみ一つで良くわかるね。ってか、そんなに心配しなくても」
 相変わらずくすくすと笑う声に、やっとその目蓋を開ける。
 辺りはすっかり暗くなり、枕元のライトだけがその部屋の明かりだった。
「大丈夫?」
 問いかけられたゼノンは、漸くライデンの顔を見た。
 僅かな灯りの元、その顔はホッとしたように安堵の笑いを零したように見えた。
 再び生命を取り戻したのは、今朝方のこと。その後ライデンもゆっくりする時間もなく仕事に行ってしまったので、やっと一緒にいる時間が取れた、と言うところだった。なので…まだ何処か実感がないと思うのは、多分仕方のないことなのだろう。
「…ライ」
 名を呼び、手を差し伸べる。
「どしたの?」
 笑ったまま、その手を取ったライデン。その温もりは、確かな生命であると言う実感。
「大丈夫?」
 もう一度、ゼノンに問いかけた声。
「まぁ…ね。まだちょっと、ぼんやりするけど…寝過ぎかな」
 くすっと小さく笑う。そして、ゆっくりと身体を起こした。
 ライデンはゼノンの手を握ったまま、その身体の傍へと腰を下ろす。
「魔界には、連絡入れたよ。ゆっくり療養してから戻ってくれば良いって、ダミ様が言ってたから、心配しなくて良いよ」
「うん。有難うね」
 そう返事を返しつつも…ゼノンの表情は安堵、と言うには遠い気がする。そして、そんな表情を見つめるライデンもまた、何かが気になっている、と言う表情だった。
 ふと、手元に視線を落としたゼノン。
「ねぇ…上皇様は、俺の事…何か言ってた…?」
 控えめに問いかけたゼノンの声に、ライデンは小さく笑った。
「心配してたよ。でも、ゆっくり休めば良いって」
「…えっと…そうじゃなくて、結婚の事…話したって言ってたよね…?」
「あぁ…そう言う心配?」
 ゼノンの心配の向かう先が何となく見えて、ライデンは小さく息を吐き出した。
「心配しなくても大丈夫だよ。俺たちの事、親父は全部納得してくれてるし。それに、あんたが気にするであろうこともわかってるから。動けるようになったら、顔見せに来いって」
「そう…」
 そう、小さく言葉を零したゼノンは、握った手にもう少しだけ力を込めた。
「今朝は、半分勢いみたいな感じだったけど…冷静になって考えれば、浮かれてる場合じゃないんだよね。寧ろ、自重しないといけないんだよね。雷神界だけじゃなくて、魔界側にも迷惑かけた訳だし…この先どのくらい経てば、みんなの賛同を得られるんだろうって…」
「ゼノン…」
「あ、でもね、この手を離すつもりはないからね」
 ゼノンの言葉に、ちょっと不安そうな表情を見せたライデンに、慌ててそう言葉を繕う。それがまたゼノンらしいと、ライデンは安心したように笑いを零した。
「まぁ…ね。気持ちはわかるよ。俺だって、不安がない訳じゃない。でも…さっき、フィードにも言われたんだけどさ…愛されている実感を持て、ってさ。あんたからだけじゃなく、雷神界の国民全員から愛されている実感をもっと持てって。まぁ、そんな実感はまだ全然ないんだけどね。そう言われちゃったらさ、雷帝としての立場を思い知る訳よ。そしたら、不安だなんて言ってられない。俺は、精一杯雷神界を護るし、あんたのことも護るから。それだけはぶれないからね」
 そう言うと、ライデンはもう片方の手を握られた手の上に重ねた。
「今の俺たちに出来ることは、精一杯、その想いを伝えること。俺たちが選んだ道を、理解して貰うこと。その為に…みんなのところにさ、一緒に、頭下げに行こう」
「…ライ…」
 にっこりと微笑んだライデン。
 多分、どちらかが一名で説明に回る、と言う選択肢もなくはなかったはず。けれど、二名一緒に、と言う選択肢を選んだことは、ゼノンの意を汲んでのことだったのだろう。
 共に歩いて行くことを決めたのだから、頭を下げることも二名一緒に。その選択肢を選んだことが、何よりも嬉しくて。
「…有難う」
 そう、微笑みと共に返した言葉に、ライデンも目を細めて笑った。
「ねぇ…隣に寝ても良い…?あんたも完治してないから、別に何もしなくて良い。ただ、傍にいたいんだけど…」
「勿論良いよ」
 くすっと笑いを零したゼノンは、一旦ライデンの手を離すと、上掛けを軽く捲った。するとライデンは直ぐにそこに潜り込み、ゼノンの身体にぴったりと寄り添った。
「…ゼノの匂いだ」
 その首元に顔を摺り寄せ、そうつぶやいたライデン。
 ここまで密接したのはどれくらい振りだったか…改めてそう思うくらい、久し振りの事。
「…また…こうして傍にいられるなんて、夢みたいだ…」
「ライ…」
 あの日…ゼノンが王都から去る数日前、最後の臨床実験を終えたあの夜から…もう、決して許されないと思っていた温もり。けれど、再びその温もりを感じ、胸が一杯になったのは…両名とも同じこと。
 その身体に腕を回し、そっと抱き寄せたゼノン。
「…やっぱり駄目だね。どうやったって離れられない。離れられると思った自分が馬鹿みたいだ」
 くすっと笑いを零しながら、ライデンの髪に口付ける。
 その温もりと感触を実感しながら、再びその首元に顔を埋め、ライデンは大きく息を吐き出した。
 そこに混じっていたのは、小さな嗚咽。
「…大丈夫?」
 思わず問いかけた声に、ライデンは小さく頷いた。
「御免、大丈夫。何か、今まで堪えて来たモノが全部零れた感じ…」
 吐き出した言葉と共に、溢れて来る涙。
 ゼノンが戻って来るまでは泣かない。そう、自分自身に誓っていた。
 それでも最初の頃は幾度か涙も零れたが、それも次第に堪えられるようになっていた。雷帝としての精一杯の虚勢を張っていたのだ。
 そして夕べ、譫言で名を呼んで貰った時、久しぶりに号泣したつもりだった。けれど、未だ涙は涸れてはいなかった。
 そんなライデンの頭を抱き締め、撫でながらゼノンも大きく息を吐き出す。
「今まで我慢させちゃった分、今日は、一杯泣いて良いからね。誰にも言わないから」
「…うん…」
 溢れる涙は、そのままゼノンが着ていた夜着へと染み込んでいく。
 泣き疲れたライデンがそのまま眠りに付くまで、ゼノンはただずっとその身体を抱き締めていた。

 翌朝。ドアをノックする音で目を覚ましたゼノンは、傍らで未だに眠っているライデンを起こさないよう、そっと身体を起こしてドアへと向かった。
「はい?」
 ドアを開けると、そこには控えめな表情のフィードが立っていた。
「おはようございます。御加減は如何ですか?」
「うん、大丈夫。まだ傷は痛むけど、これくらいなら何とかね。少し動かないと、身体が鈍るしね」
 苦笑しながらそう答えつつ、フィードが朝早くから自分の部屋を尋ねて来た理由を察していた。
「えっと…ライデン、だよね?まだ眠ってるんだけど…」
 そう言いつつ、少し後ろを振り返ってライデンが眠るベッドへと視線を向ける。
 前日の昼間、フィードと少し話はした。けれど、ゼノンもまだ何処かぼんやりとしていたし、フィードの姿からも何処か余所余所しさは感じていた。
 だからこそ、今も…何だか、御互いに落ち着かない。
「はい、それは承知しております。若様のことですから、強引に居座っておられるのではないかと…」
「まぁ…強引と言えば強引だけど、ね」
 くすっと、笑いを零したゼノン。
「まだ完治しておりませんのに、申し訳ございません…」
 頭を下げるフィードを制し、ゼノンは小さく息を吐き出す。
「頭を下げるのは、俺の方、だよ。多分…君は、俺がライデンの傍に戻って来たことは納得出来ないと思うし、綺麗事だけ並べて有耶無耶にするつもりはないよ。ライデンを傷つけた責任はちゃんと取る。もう…泣かせない。約束するよ。これからも俺は、ライデンの傍にいたいんだ。だから…君には、わかって欲しい」
----本当に、御免ね。
 そう言って頭を下げたゼノンに、フィードは小さく息を吐き出し、首を横に振った。
「顔を上げてください。ゼノン様にそんなことをさせたら…わたくしが、若様に怒られます。ゼノン様を護れなかったのは…わたくしですから…」
「フィード…」
 顔を上げたゼノンは、真っ直ぐに自分に向けられたフィードの眼差しを見つめた。
「本来なら…わたくしが身体を張ってでも、若様とゼノン様を御護りしなければならない立場でした。ですのに、わたくしは若様とゼノン様を御護りするどころか、反対にゼノン様に護られ…その生命さえ、危険に晒してしまいました。貴方様の生命を救ったのは若様であり、魔界にいらっしゃる仲魔の方たちです。わたくしには、ゼノン様を助ける手立てもありませんでした。どうやって、償いをして良いのか…ずっと、それを考えておりました。わたくしは若様に仕える身ですから、勝手なことは出来ません。けれど、だからと言ってそれで善しとは思っておりません。今のわたくしに出来ることは、この雷神界でゼノン様の立場を御護りすることだと思っております。若様がゼノン様を御選びになられたのなら、わたくしには反対する理由はございません。わたくしはただ、御二方が少しでも安心出来るよう、環境を整えるだけです」
 真っ直ぐに向けられたその眼差しは、ゼノンを敵視しているものではなかった。寧ろその反対で、ゼノンの身を案じているのは間違いなかった。
「若様が倖せになっていただくことが、我々仕える者の望みです。ですから、ゼノン様が戻って来てくださって…若様が穏やかに、笑って過ごせるのなら…それ以上の倖せはありません。その御手伝いが出来るのなら、わたくしは思い残すことはないのです」
 その言葉の端に見えるフィードの覚悟のようなものに、ゼノンは小さく息を吐く。
「…でもそこには、ちゃんと君もいないとね」
「…ゼノン様…」
 神妙な表情を浮かべるフィードに向け、ゼノンは小さく微笑んだ。
「君は、ライデンが一番信頼している官吏だもの。そこに君がいないと、ライデンは納得しないでしょう?責任とか、償いとか…君が心配する必要はないよ。それは、主であるライデンが求める時には必要かも知れないけれど、多分ライデンはそんなことは望まない。君を心底信頼してるから、そんな必要はないと思っていると思うよ」
 多分、ライデンならそう思っているはず。それは、ライデンとフィードの関係を良く理解しているからこそ、感じたことだった。
「…そう言っていただけると…有難いです…」
 ゼノンは、フィードを咎めるつもりなど毛頭ない。そんな想いを感じ、胸が一杯になって頭を下げる。
「ほら、頭を上げてって」
 苦笑しながらそう言ったゼノンの声に、フィードは大きく息を吐き出して顔を上げた。
 そこにあるのは、穏やかな微笑み。
「これからも、精一杯、仕えさせていただきます。若様と…ゼノン様に」
「有難うね」
 フィードの想いを受け、ゼノンもにっこりと微笑んだ。
「…えっと…じゃあ早速、一つ御願いがあるんだけど…」
 まさに、良いタイミングだったと言わんばかりのゼノンの言葉に、フィードは僅かに想いを巡らせた。
 この状況で御願いとは…一体、何を御願いされるのか。
 そう思ったものの、ゼノンのこと、無謀なことは言わないだろう。
「…何でしょうか…?」
 取り敢えず話を聞いてみよう。そう思って答えを返すと、ゼノンの表情がとても真剣なものに変わる。
「上皇様と話がしたいんだ。出来れば、ライデンが起きる前に。だから…今からの謁見の許可を貰いたいんだけど…」
「…上皇様と、ですか…」
 果たして、ゼノンは何を話したいのか。それは、今のフィードには察することは出来ないが…悪い話にはならないだろう。
「…わかりました。何とか話を通してみます。この時間であれば、まだ忙しくはないと思いますので…」
「有難う。助かるよ」
 にっこりと微笑んだゼノンに、フィードも小さく笑みを零す。
 全ては、ライデンの為に。
 その想いは、ゼノンもフィードも同じだった。
PR
COMMENT
NAME
TITLE
MAIL (非公開)
URL
EMOJI
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
COMMENT
PASS (コメント編集に必須です)
SECRET
管理人のみ閲覧できます
 
  
プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
カレンダー
12 2025/01 02
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
バーコード
ブログ内検索
Copyright ©  -- A's ROOM --  All Rights Reserved

Design by CriCri / Material by petit sozai emi / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]