忍者ブログ

聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

風花 1
こちらは、本日UPの新作です
 ※シリーズ小説はカップリング小説です。
(勿論DxAですが、ダミアンxルークもあります。
でもこのシリーズのメインはRXです…多分/^^;
5話完結 act.1

拍手[2回]


◇◆◇

 何にもやる気が起こらない。
 一歩、執務室から出てしまえば、騒々しさに巻き込まれる。否…多分、その意識も身体も、それを拒否する。だからこそ、こうして執務室から一歩も出ない事に決めたのだ。
 十日ほど前に聞かされた、最愛の恋悪魔の婚姻の話。確実となったその話は、あっと言う間に魔界全土へと広がりつつある。執務室の外が騒がしいのは、その所為だった。
 そしてもう一つ…"魔界防衛軍"に関しての事。
 どちらも覚悟は決めていたはずだが…やはり、時間が経てば経つ程、それが身に染みて苦しさも増して来る。
 今やそれは…ただの拷問、でしかなかった。

◇◆◇

「…大丈夫…?」
 そう声をかけられ、ハッとしたように引き戻された。
 そこには…心配そうに自分を見つめる、碧色の眼差しがあった。
「あぁ、ゼノン…来てたの…」
 溜め息と共に吐き出された言葉に、相手…ゼノンも小さな溜め息を吐き出す。
「エースが心配してたよ?御前が辛そうだ、って…」
 そう言われ、彼…ルークはくすっと笑いを零した。
「大丈夫だよ、そんなに心配しなくても」
 そう言葉を返したものの…ゼノンの眼差しの前、そんな言葉はただの強がりでしかなかった。
「…何かあった…?」
 様子を伺うように、ゆっくりとそう問いかける。
「何か、って?エースが心配してるのは、ダミ様の結婚の話でしょ?それだったら心配しなくても良いって言ってるのにね」
 言葉を選んで返したつもりだった。けれど、その言葉の裏側の意味を、ゼノンは感じ取った。
「…それだけじゃないでしょ?まだ他に何かあるでしょ?俺たちに黙っている事」
「…何の話?」
 くすっと、笑いを零す。
 普段は呑気なクセに…実のところ、何処までも鋭い男だ。ふと、そんな思いが過ぎる。
「ねぇ、ルーク……一悪魔で、抱え込まない方が良いよ?」
 そう問いかける声に、思わず笑いが零れた。
「何言ってんの。自分だって結構抱え込むクセに」
「…まぁ…反省はしてるよ」
 確かに、それは否めない。だから、ゼノンも小さく溜め息を吐き出した。
「でもね…俺の事はともかく、御前が抱えてるモノがどれだけ大きいか、って事だよ」
「……」
 一つ、息を吐き出したルーク。
 マラフィアと再会してから…ずっと、頭の中から離れない言葉。
 "魔界防衛軍"は…魔界だけではなく、雷神界にも、天界にも、その種子は芽吹き始めた。今、自分たちが注意すべきは…直ぐ近くにいる"誰か"、だ。誰かが、自分たちを裏切る、と。
 大きいと言えば何よりも大きい。もしかしたら…今、こうして目の前で心配そうに自分を見つめるその眼差しの彼が、裏切り者かも知れないのだから。
 けれど……と、ルークは小さく頭を振る。
「色々…考えてみたんだけどね…」
 そう言葉を紡ぎだしたルークを、ゼノンは真っ直ぐに見つめていた。
「あんたは…除外、かな」
「…は?」
 急に除外、と言われれば…何の事やら、と怪訝に思うもの無理はない。けれど、ルークはゼノンをソファーへと促し、自分もその正面に座ると、小さく笑った。
「マラフィア殿にね、会ったんだ」
「…マラフィア参謀に…?」
「うん。何だかんだで俺が王都を留守にしてた時ね。偶然、マラフィア殿のところに辿り着いて…あんたたちが無事だった事も聞いたし…ダミ様の結婚の事も聞いた。それに…"魔界防衛軍"の事も」
「……"魔界防衛軍"…」
 再び、その現実が目の前に現れる。当然、ゼノンの表情は固くなる。
「マラフィア殿は…俺に言った。"魔界防衛軍"は、俺たちの直ぐ近くにいる"誰か"、だって。そして…その"誰か"が、俺たちを裏切る、って…」
「……っ」
 思いがけない言葉に、ゼノンが目を見開いて息を飲む。
「俺の頭の中から離れなかったのは、そっちの方が大きいかな。マラフィア殿曰く、俺にその話をした時点で、俺は"魔界防衛軍"の残党である、と言う嫌疑は免れてるらしい。まぁ、俺自身心当たりは全くないし…寧ろ、結構巻き込まれたしね。まぁ、それは扠置き…だからこそ、俺は…上層部の嫌疑を晴らそうと、色々考えてたんだ。あんたに関しては、ウイルスの件から始まって…まぁ、王都からいなくなっちゃったから、あくまでもグレーでしかなかったんだけど…全部ひっくるめても、あんたが"魔界防衛軍"として存在する理由がない。それに、あんたはライデンを護って、生命を失いかけた。あんたの魂が身体から離れている間にも、俺とデーさんと、闇に引き込まれかけてる。つまり、それに関してはあんたはシロ。だから、俺はあんたは除外だと考えた。で、今この話をしてる、って訳」
 淡々とそう話すルークに、ゼノンは大きな溜め息を吐き出す。
「…言いたい事はわかった。でも…俺の嫌疑は免れたとしても、他の構成員は?まさか、全員クロ、って訳じゃないんでしょ…?」
「まぁ…ね。ウイルスの時は、ダミ様もデーさんも…まぁ俺も、だけど…巻き込まれて生命の危機にあった訳だから、そこはシロ。エースとライデンと…あんたもだけど。赤の種族は、限りなくグレー。その後、あんたもいなくなっちゃったしね。その次はロイドの件だったけど…あんたは王都にいなかった。ただ、それはさっきも言った通りグレーでしかない。あの時ロイドと一緒にいたのはテオだけ。俺はアリスと一緒にいたから、一応シロ。エースは任務で王都にはいなかった。まぁ、任務先では誰かしらが傍にいたようだから、エースもシロ。ライデンはデーさんの屋敷にいたみたいだから、シロ。ただ、ダミ様とデーさんは執務室にいた。こっそりと抜け出す事は可能な訳だから、疑うには十分」
 そう言いながら、ルークはもう一度自分の頭の中で状況を整理していた。
「それから、俺の影に妖魔が取り付いた件では、俺は被害者だから一応シロ。ライデンは雷神界にいたからシロ。あと、俺の補佐として巻き込まれたシェリーは、恐らく唯一"魔界防衛軍"として名前が割れている"オズウェル"と会ってる。つまり、そこはグレーでしかない。で、残りのあんたとダミ様、デーさんとエースは容疑がかかる。で、最後の今回あんたが討たれた件に関しては、あんたはシロ。で、その傍にいたライデンもシロ。俺とデーさんは、"錬叛刀"を運ぶ時に闇に引き込まれかけたからシロ。残りはダミ様とエース。ただ、エースはライデンと一緒に剣の中に入ってる。生命をかけた訳だから、シロと考えても良いと思う。ただ…ダミ様の疑いを晴らす事は出来ない」
 メモを書きながら、そう話をしたルーク。そのメモをじっと見ていたゼノンは、小さく息を吐き出した。
「…一応、全般的には考えた訳ね。御前以外は全員、何処かしらで嫌疑がかかってるって事だよね?」
「まぁ、ね。でも…一番最初に"魔界防衛軍"が出て来た時、ライデン以外は全員が何かしらの被害を被っている訳だから、そんな"魔界防衛軍"に手を貸すとは到底思えない訳だ。ライデンだって、魔界をどうにかしようだなんて思ってない事は重々承知。それに…自分自身の企てで、あんたを殺そうとするとは到底思えない。そのあと、生命がけであんたの魂を探しに行ってる訳だからね。そう考えると…一応、上層部の嫌疑は全員晴れた、と言えるかな」
 大きく息を吐き出したルークは、大きく伸びをする。
「…で、あんたの見解を聞きたいんだけど」
 御茶を淹れにソファーを立ったルークは、未だメモ書きをじっと見つめているゼノンへと視線を向けた。
 当然、今ルークが話したのは、上層部が単独で目論んだ時の話。複数名で企てているのなら、幾らシロでも納得は出来ない訳で。
 カップを両手に席に戻って来ると、ゼノンは溜め息を吐き出した。
「…御前の言わんとした事はわかった。でもこれは確定じゃないよね?単独では無理でも、複数なら出来ない事はない」
「そう。それは俺もわかってる。でも、上層部にはそんなリスクを背負う理由はないと思ってる。何の為に、魔界を滅亡させようとする訳?権力を握ったとしても、一番疑われる訳じゃない?」
「それは尤もだけどね」
 溜め息を吐き出しつつ、置かれたばかりのカップを手にする。
「マラフィア様は…俺たちの直ぐ近くにいる"誰か"で、その"誰か"に"裏切られる"、って言ったんだよね?」
「そう。近くにいるヤツだから、取り敢えず一番近い上層部から考えてみたんだけどね。上層部の嫌疑を外すとなると…後は、側近とか補佐のラインに切り替えていくしかないか…それでも駄目なら、部下まで手を広げる?」
 ルークもカップに口を付けながら、そう零す。
 勿論、"裏切られる"事が前提なのであって、そこでかなりのダメージを負う相手でなければ意味がない。そう考えると、下っ端は論外となるはず。
 そんな事を考えていたルークであったが…カップを置いたゼノンは、少し考え込んだあと、ゆっくりと口を開いた。
「…ねぇ…大事な事、忘れてない…?」
「…大事な事?」
 怪訝そうに眉を寄せたルークに、ゼノンは一つ頷いた。
「最初のウイルスの時、一番に感染して発病したのはダミアン様だよね。ピンポイントでダミアン様を狙っていたのなら、傍近くに行ける身位は限られるはずだよ。そう考えれば、対象は俺たちと同等ぐらいの身位はあるはず。闇雲に捜す必要はないよ」
 ゼノンのその言葉に、ルークは息を飲む。
 確かにその通り。ダミアンに近付けるのは限られた悪魔だけ。それはわかっていたはず。
「…俺たちではないとすると…屋敷にいる執事、使用魔…側近……いや、違うな。彼等は俺たちも良く知っているし、何より枢密院なり、文化局なりを歩いていたらわかるはずだ。だとすると…」
 指折り数えてみたものの…ダミアンの屋敷の執事、使用魔や側近である可能性はかなり低い。
 だとすると…誰が、残っているか。見落としているのは誰なのか。
「…ねぇルーク…一番最初に疑わなきゃいけないところを見落としてない…?」
 先に、そこに辿り着いたのはゼノンだった。
 思わず視線を向けたルーク。そこにあるゼノンの眼差しは…とても鋭い。いつもの彼からは想像出来ないくらい、顔付きも、纏う気も鋭くなっている。
「…ダミアン様に一番近くて、枢密院の中を自由に歩いていても疑われない。そして何より…面が、割れていない。そんな"部署"、一つしかないでしょ…?」
 未だ辿り着けていないルーク向け、そう言葉を放ったゼノンに、ルークは息を飲んだ。
 思い当たるのは…一つしかない。
「…まさか…"特別警備隊"…?」
 酷く、喉が乾く。それは、気の所為なのだろうか。
「御前は、"特別警備隊"の中の何名の顔と名前が一致してる?少なくとも俺は…"アリス"の名前を知っている程度だよ。顔も知らない。そこに何名いるのかも知らないよ?そんな特殊な部署、他にないでしょ?」
「…まぁね…俺も、ジュリアンとアリスを知ってるくらい。そこに何名いて、誰なのかなんて…聞いた事もない」
 真剣な表情のゼノンの前、ルークも必然的に纏う気が変わる。
「前に、ダミ様にちょっとだけ聞いた事はあるけど…笑ってはぐらかされたんだ。ジュリアンもアリスも、それに関してはダミ様と同じ。絶対に口を割らなかった。まぁ、その時は別に深刻な事じゃなかったからね、俺も引っかかりはしたけどそれでおしまいだった。確かにあんたの言う通りだな…でもさ、ダミ様を護るはずの"特別警備隊"だよ?ダミ様も危険に晒すような事……」
「全てが、隠れ蓑だったとしたら?」
「ゼノン…」
 何処までも追従するようなゼノンの言葉に、ルークは思わず眉を寄せる。
「甘いよ、ルーク」
 ルークのそんな表情に、ゼノンは溜め息を吐き出す。
「ダミアン様が何処まで知っているかは知らないよ。自分の隠密使たる"彼等"の事を疑っているとも思えない。でももしかしたら…"魔界防衛軍"の黒幕が誰なのか、全て知っているかも知れない。そればっかりは、俺たちにはわからないからね」
「全て知っているとしたら、どうしてそれを見逃すのさ?俺たちがどれだけ苦汁を飲まされているか、わかってるはずだよ?生命の危機にだってあってるんだ。それを見逃すだなんて…」
「見逃しているの?それとも…指示を出してるの?」
「ゼノン!!」
 一番、想像したくなかった事。それをあっさりと口にしたゼノンに声を上げたルークは、真っ直ぐにゼノンを睨み付けていた。
 けれどゼノンもそこで引かない。
「疑うって言う事は、そう言う事だよ、ルーク」
 そう言った碧の眼差しが揺らめく。
 勿論、ゼノンとて疑う事を善しとしている訳ではない。ただ、信じる為には…疑いを晴らさなければならない。その為には、まず疑わなければ。その思いだった。
「御前は何がしたいの?"魔界防衛軍"の残党を見つけたかったんじゃないの?まず、信じている仲魔たちの疑いを晴らしたかったんじゃないの?その為に、俺たちを疑ったじゃない。だったらダミアン様だって同じでしょう?」
「だから俺だってあんたたちと同様に、ダミ様に嫌疑をかけたじゃないか!」
「俺たちと同等に、でしょ?でもそれじゃ足りないんだよ。首謀者であるかも知れないのだったら、もっと疑う余地はある。総参謀長として…今回の件の唯一の審議者なら、それをしないのは怠慢だよ。このままだったら、御前は…真実に辿り着けない」
「……」
 ルークの胸の中に、モヤモヤした感情が生まれていた。
 ゼノンの言っている事は正論。だからこそ…言い返せない。
「徹底的に疑って…その上で、ダミアン様は真っ白だ、って事を知らしめないと。それが、御前の役割でしょう…?」
「そう…か」
 大きく、溜め息を吐き出す。
 確かにそうだ。疑いを晴らすのなら、どれだけ突っ込まれても論破出来るくらい、完璧でなければ。その為に、徹底的に疑って、その疑いを晴らさなければ。
「…御免ね。嫌な言い方して」
 申し訳なさそう言葉を零したゼノンに、ルークは小さく笑った。
「大丈夫。あんたの言い分は尤もだよ。俺は、信じているから極力疑いたくなかった。でも、確かにそうじゃないよな。何が何でも…ダミ様の嫌疑は晴らさなくちゃな」
 そう言って、大きく伸びをする。
 その姿は、ルークがダミアンをまるで疑っていない事は明らかだった。ただ、ゼノンからしてみれば…信じてはいるものの、完全に疑いを晴らすところまでは行っていない。それは…誰に対してもそうなのだが。
「取り敢えず、"魔界防衛軍"に関しては正面から探っても簡単にかわされるからね。もう少し探りつつ様子を見てみる」
 僅かな活路を見出したルークは、ゼノンが訪ねて来た時よりも多少落ち着いたようだった。
「まぁ、様子を見るしかないのはしょうがないけど…でも、気を抜いちゃ駄目だよ。うっかりすると、簡単に巻き込まれるよ?何かあってからじゃ遅いからね?」
 注意を促すゼノンの言葉に、ルークは小さく笑いを零して頷いた。
「わかってるよ。十分気をつける。あんたも雷神界行ったり忙しいだろうけど、十分気をつけてね。何処で見られているかわからないしね」
 ルークの言う通り。ゼノンもこれからライデンの婚約破棄と結婚の許可取りで頭を下げて回らなければならない。それも、雷神界のみならず、魔界、天界の各方面に。まぁ、それを苦と思うくらいなら、最初から相手に選んではいないだろうが。
「ありがとう。気をつけるよ」
 そう、返事を返す。
 先の見えない不安は、確かにある。けれど、そこで立ち止まっている訳にはいかないのだから。
「頑張って」
 今は、そう言葉を送るしかなかった。

◇◆◇

 それから数日、ルークは"特別警備隊"について探りを入れていた。
 その日の執務終了時間が過ぎてから、ルークはコンピュータの前に張り付いていた。
 以前、デーモンから預かっていた枢密院の名簿に改めて目を通しながら、部署を絞っていく。
 だが、奇妙な事に…その名簿には、"特別警備隊"の主任たるジュリアンと、彼の他に唯一ルークが知るアリスの名前が見つからないのだ。
「…何でもっと早く、見つけなかったかな…」
 小さく愚痴を零しながら、溜め息を一つ。
 元々、"魔界防衛軍"の残党を見つける為に、当時あの革命で姿を消した者を洗い出す為に各局から預かったものだった。それがまさか、ここで役に立って来るとは。まぁ、"魔界防衛軍"の残党を見つける、と言う使用目的には変わりないのだが。
 それにしても…と、ルークは腕組みをして椅子の背に身体を預け、天井を振り仰ぐ。
 ダミアンの傍近くにいる者で、ちゃんと名簿に名前が載っているのは側近だけ。何処を探しても、隠密使の名前はない上に、"特別警備隊"と言う部署もない。と言う事は、この名簿は完璧ではない、と言う事。
 勿論、内密な部署であるから、公にはしていないと言う事はわかっている。けれど枢密院のその名簿を用意したのはデーモンだったはず。デーモンは昔からジュリアンを知っていたはず。となると…今一度、デーモンも疑わざるを得ない。
 だがしかし。デーモン自ら隠したのではないとしたら。そう考えると…疑いはやはり、ダミアンに向けられる。
 大きく息を吐き出したルーク。
 果たして…何が、正しいのか。そして、何を信じたら良いのか。
「…難しいな…」
 元々、疑う事を好まないルークである。よりによって、ダミアンの嫌疑を晴らす為にダミアンを疑わなくてはいけない。そして、嫌疑を晴らすどころか…疑いはますます深くなる訳で…溜め息しか出て来ない。
 今日はもう切り上げよう。
 そう思い、メモリファイルを机の引き出しにしまって鍵をかけ、コンピューターの電源を落とす。そして、半月振りぐらいに漸く自分の屋敷へと足を向けたのだった。

 ルークが自分の屋敷の前までやって来ると、その門柱に隠れるように佇む姿を見つけた。
「…誰?」
 顔が見えないので、誰なのか判別がつかなかった。なのでそう声をかけると、その姿は身動ぎして門柱の影から顔を出す。
「…こんばんは」
「…アリス…」
 思いがけない姿に、ルークは僅かに顔を強張らせる。
 まさか…自分から、姿を現して来るとは。
 一瞬過ったそんな思考を読み取ったかのように、アリスはくすっと笑いを零した。
「そんな顔をされるのは心外です。殿下が、このところ貴殿が屋敷に戻られていないらしいと心配されていたので、こうして足を運んだと言う事です」
「…ダミ様が見て来いって言ったの?」
 今までに、そんな事は一度もなかった。直接声がかかるか、ルークが自ら押し掛けて行っていたのだから、他悪魔に様子を見に来させるだなんて事はなかったのだ。
 だからこその棘のある言葉。けれど、アリスは表情を変えない。
「いいえ?私の独断です。少しでも殿下の心配事を軽くしようと思いましてね」
「…そう…」
 溜め息が一つ、零れた。
 御互いに現状は不服であるが…これからは今まで通りに気安く訪ねる事が出来ない。その現実は、日に日に重くのしかかる。そして…"魔界防衛軍"と"特別警備隊"の関係性も、頭を痛める原因だと言うのに。関わりがあるかも知れない目の前の姿は、いつもと何も変わりない。それが無性に…腹立たしい。
「…御気分を害されたようですね…?」
 溜め息の意図を察したアリスは、すっと表情を変えた。
 冷静な、感情の見えない表情。それが本来ルークが知っているアリスだった。
「…まぁね」
 零れた言葉に、アリスは小さく吐息を吐き出した。
「では…これ以上逆撫で致しませんよう、失礼致します」
 そう言って踵を返したアリス。その背中に、ルークは再び溜め息を吐き出す。
「…御免。ちょっと疲れてたんだ。折角来たんだから寄ってけば…?」
 つい、イラッとして顔と態度に出てしまったが…こう言う時こそ、冷静に対応しなければ。
 そう思い直して引き止めたものの…僅かに振り返ったアリスは、その口元に小さな笑みを浮かべていた。
「冷静ではないと言う事は、何か疚しいと思う事があると言う事です。宜しいんですか?そんな状況で、私を屋敷に誘うだなんて。私がそうなるよう、誘導したのかも知れませんよ?」
 明らかに挑戦的な言葉に、ルークは溜め息を一つ。
「探られたって痛い腹なんかありゃしない。帰るって言うなら別に俺は構わないけど?」
 半ば投げやりのような言葉にも、アリスはくすっと笑った。
「折角誘っていただいたので、少しだけ御邪魔します。長居をするつもりはありませんので」
 いつものように、さりげなく一歩引いた態度。勘繰り過ぎだと、自分でわかっているものの…つい、イラッとする。
 だが、今回は少し探りを入れたいところなのだから、これ以上悟られないようにしなければ。
「…ま、御自由に」
 そう声をかけ、ルークは先に屋敷への門を潜る。そして、その後を付いてくるアリスの視線を感じながら、小さな溜め息を吐き出していた。
PR
COMMENT
NAME
TITLE
MAIL (非公開)
URL
EMOJI
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
COMMENT
PASS (コメント編集に必須です)
SECRET
管理人のみ閲覧できます
 
  
プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
カレンダー
12 2025/01 02
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
バーコード
ブログ内検索
Copyright ©  -- A's ROOM --  All Rights Reserved

Design by CriCri / Material by petit sozai emi / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]