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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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風花 4
こちらは、本日UPの新作です
 ※シリーズ小説はカップリング小説です。
(勿論DxAですが、ダミアンxルークもあります。
でもこのシリーズのメインはRXです…多分/^^;
5話完結 act.4

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◇◆◇

 ルークの屋敷までやって来たゼノンは、そのままリビングへと通され、御茶を出されて一服していた。
 そこへ、着替えを終えたルークが戻って来て、ゼノンの前へと腰を下ろす。
「…御免ね、何かあんたまで巻き込んだ感がする」
 蒼羽の淹れてくれた御茶を飲みながらそう言ったルークに、ゼノンは小さな吐息を吐き出す。
「まぁ…最初に"特別警備隊"の事を仄めかしたのは俺だから、今更なんだけどね。でも…ホントに、十分注意してよ?」
 その言葉と表情に、ゼノンも多少責任は感じているのだろうと察する。だからこそ、ルークは小さく笑いを零した。
「俺の心配はしなくても大丈夫。俺は元々作戦参謀だから、仮に腕一本ぐらいなら持って行かれちゃっても、頭の中身が無事なら何とか仕事も出来るし。でもさ…"仮面師"となると、話は別でしょ?片腕じゃ、他の誰かになる事は出来ないし…利き腕取られてるからね、剣も握れないとなれば、生命があったってこれから先どうなる事か…」
「…ルーク…」
 ふと、ルークの表情が崩れる。僅かに歪んだその表情は、今にも泣き出しそうにさえ見えた。
 医務室で、ルークが目覚める前。まだ眠っていたルークの表情は、今と同じように歪み…そして、涙が零れていた。そんな姿を見ていたゼノンだからこそ…その胸の内を想像すると、胸が痛い。
 ルークは…どれだけ、傷付いたのだろうか、と。
「…アリスの事…本気だった訳じゃないんでしょう…?」
 小さく問いかけた声に、ルークはふっと表情を戻す。
「本気、って?恋愛感情があるかどうか、って事…?」
「まぁ…」
 幾ら何でも、それはないだろう。そう思うものの、どうもルークの心が揺れ動いているようにしか思えない訳で…そう問いかけずにはいられなかった。
 だがしかし。ルークは心配そうな表情のゼノンを笑い飛ばす。
「馬鹿言わないでよ。俺はダミ様一筋だって、ずっと言ってるじゃないさ。アリスだって、それはずっとわかってたよ?」
「でも…」
 相変わらずの表情のゼノンに、ルークは目を細める。そして、小さな吐息を吐き出した。
「…正直ね、アリスといると安心は出来た。ダミ様とはまた違う感覚だったんだ。俺はダミ様の恋悪魔で、アリスはダミ様に仕える身で…御互いに一線を引いたままだったけど、それが丁度良い感じだったんだよね。だから、恋悪魔だとか、恋愛感情だとか…申し訳ないけど、俺はそこまでは辿り着けなかった。でも…」
「…でも?」
 途切れた言葉を問いかけた声に、ルークは視線を伏せる。
「もっと早くそう思えたら…きっと、一番好きになってたかもね。勿論、そうだったら良かったな、って言うだけの想い。実際ダミ様とは何もないままだったとしても…その時はアリスも俺を好きにはならなかったかも知れないしね。あくまでも、想像でしかないけどさ」
「…ルーク…」
「駄目だね、俺は。想いを返せない分、せめて護ってやりたかったのにさ…結局、何も出来なかった。出来なかっただけじゃなくて、アリスの"腕"を…奪われた。見通しが甘かったのは、俺の責任。情けないったら…ありゃしない」
 唇を噛み締めたその顔に、ゼノンは小さな笑いを返した。
「御前らしいね。でもそれは、御前の責任じゃないよ。アリスも、それはわかっていたはずだと俺は思うけど」
「…ゼノン…」
「もし、アリスが本当に御前に護って貰うつもりでいたのなら、自ら寝返った事は認めないと思う。幾ら御前がブレスレッドを追って行ったって、いつ如何なる時でも瞬時に行ける訳じゃない。だとしたら、アリスはただ…御前のその"想い"を、御守り代わりにしたかったんじゃないかな、って俺は思うんだ。御前から、勇気を貰ったから…敢えて、"魔界防衛軍"に立ち向かったのかも知れない。寧ろ、身体を張って御前を守るつもりで…ね。だから、剣を抜いたんじゃないかな」
「………」
 確かにエースの報告では、血溜まりの中に、一振りの剣と一緒に"腕"があったと言っていた。話を聞いた時は、"腕"がつけていたブレスレッドが大事になってしまっていたが…確かに、アリスは剣を抜いたのだ。
 それが、ただ単に自分の身を護る為だったのか、相手に反旗を翻した証だったのかはわからない。けれど、アリスなら…後者である可能性が十分高い。それは、ルークにもわかっていた。
 大きく息を吐き出したルーク。
「…これから、どうする?」
 思い悩むルークを前に、ゼノンはそう問いかける。
「これから、か…本当は、アリスを捜してやりたいけど…多分、今のままじゃ無理だよね。何処に消えたのかもわからないし…探し出したところで、寧ろアリスがそれを求めていなければ生命の危険もある訳だからね。だとしたら、暫く大人しくしてるよ。まぁ、エースはあんたみたいに簡単には認めてはくれないだろうけど…」
 溜め息を吐き出しながら、そう言葉を紡ぐルーク。だが、その脳裏に過ぎったのは…もっと大事な事。
「そうだ。ジュリアンの方もどうにかしないとな…」
 そう。その話も、素通りは出来なかった。
 先ほどエースに話した時も、ジュリアンも"魔界防衛軍"である事は告げてある。多分、エースにしてみれば行方のわからないアリスよりも、今一番近いところにいるジュリアンの方が重要となるはず。
「でも、ダミアン様はジュリアンが…と言うよりも、"特別警備隊"そのものが、"魔界防衛軍"に取り込まれているとは知らないはずでしょう?あんまり騒ぎ立てる事も出来ないよね?」
「まぁね。アリスはそう言ってたよ。でも…それに関しては、実際はどうなのかはわからない。ダミ様が、自分の周りの事に気付かないなんて事が、本当にあるのかなんて…俺は信じられないしね。ただ、俺からはダミ様には何も言わない事にする。でも、ジュリアンには一度話を聞きたい。アリスの事もあるし…ジュリアンの本心を聞きたいんだ。まぁ、今すぐに…じゃなくても良いから、折を見て、ってところかな」
 そう話をするルークの姿は、いつもの任務中の姿と殆ど変わりない。だからこそ…それが、強がりにしか思えなくなる時がある。ゼノンにとって、今がまさにその時だった。
 思わず…大きな溜め息が零れた。
「…大丈夫?あんたの方が、辛そうだけど…?」
 ゼノンの表情の変化に気が付いたルーク。その言葉に、ハッとしたように顔を上げたゼノンは、その直後に両手で顔を覆った。
「…御免、大丈夫。ちょっと…色々と一杯一杯でね…」
 確かに、今一番気苦労が多いのはゼノンだろう。自ら撒いた種だとは言え、療養を終えて魔界に帰って来てから早々にルークの失踪とダミアン、エースの諍いに頭を悩ませ、デーモンを励まし…そして、自身は時間を作って幾度も雷神界へと足を運んでいる。そして今も、ルークを唆したとは言え、ルークと共に"魔界防衛軍"と"特別警備隊"の件に頭を悩ませている。ゆっくり休む暇もないはずだった。
「…多分さ…俺は、そう簡単に狙われないと思うよ」
 ゆっくりと口を開いたルークに、ゼノンは顔を覆っていた手を下ろす。
「何を根拠に?」
「根拠、って言われると難しいんだけど…」
 そう言いながら、すっかり冷めてしまった御茶のカップに口を付ける。
「…考えてみなよ。今までも、真実に一歩近付いたら、"魔界防衛軍"は離れて行くんだ。いつだって、止めを刺して来ないじゃない。勿論、それが何を思っての事なのかはわからないけど…でも、アリスの件もあるからね。今、俺に手を出したら直ぐに尻尾を掴まれる。多分、向こうはそう思うんじゃないかな。だから、また暫くは様子見だと思う。まぁ、何にもないとは言い切れないけど…それは、俺自身が警戒する事であって、あんたがそこまで抱える事じゃないでしょうよ。心配してくれる気持ちは有難いし、感謝するけど…あんたまで一緒に悩む必要はないよ。自分の事でも大変なんだから」
「ルーク…」
 にっこりと笑うルークに、ゼノンは溜め息を一つ。
 ルークの何処までも真っ直ぐで強いその想いは、いつになっても変わらない。だが、変わらないからこそ…いつかその重さに潰されてしまうのではないかと言う不安も、ゼノンにはあった。
 けれど…ゼノンに出来る事は、そんなルークを見守る事だけ。ルークが求めない以上、それ以上の手助けは出来なかった。
「……わかった。御前の事は御前に任せるけど…何かあったら、必ず相談してよ?」
「わかってるって」
 ルークにしてみれば、これ以上ゼノンを巻き込まないように。そして、不安にさせないように。尤も、ゼノンにしてみれば、それでも不安を拭えるものではないのだが。
 溜め息を吐き出しつつ、ゼノンはルークの屋敷を後にする。
 帰って行くその背中を窓から見つめながら、ルークも大きな溜め息を零していた。

◇◆◇

 翌日、ルークがいつも通り執務室に向かうと、そのドアの前には既にエースが待っていた。そしてもう一名、デーモンもそこにいた。
「…何で、デーさんまで…?」
 思わず問いかけたルークの声に、デーモンは少し、エースを振り返った。
「いや、エースがな…御前と話をして感情的にならないように止めてくれと言うから…」
 その言葉に、ルークは溜め息を一つ。
「何だよ、感情的になるのが前提って、端っから対決姿勢じゃないのさ…」
「…仕方ないだろう?まだ何一つ解決していないんだ。御前もまだ話してない事があるだろう?」
 昨日のルークの態度で、秘密にしている事があると言う事はエースにもわかっていた。勿論、その全てを話すかどうかはルーク次第であるし、それを強要するだけの公的な書類は今回は下りていない。つまり、ルークが黙秘すればそこまでなのだ。
「…取り敢えず入ったら?廊下でする話じゃないし」
 小さな溜め息を吐き出しつつ、ルークは執務室のドアを開ける。そして執務室の中に促すと、開口一番、エースに問いかける。
「"腕"の持ち主の判別はついたの?」
 すると、ソファーに腰を落ち着けたエースは、溜め息を一つ。
「まぁ…な。ダミアン様にはまだ話してはいないが、"特別警備隊"の上司であるジュリアンには連絡を取って貰って、確認して貰った。御前の言う通り…恐らく、アリスに間違いはないだろう、と言う見解だ。詳しい事はこれから調べるが…ジュリアンはかなり驚いていたぞ。彼奴にもまだ詳しい事は話してはいないが…まぁ、察してはいるだろうな」
「…そう、か…」
 ルークが吐き出したのは、重い溜め息。そんな姿を見つめつつ…デーモンが口を開いた。
「なぁ…吾輩も詳しい事は聞いてはいないんだが…エースからざっと話を聞いたところによると、"特別警備隊"が"魔界防衛軍"と繋がっていると言う事なんだろう?と言う事は、例の"オズウェル"も"特別警備隊"にいるんだろうか…?」
「…確実なのかはわからないけど…その可能性はあるかもね。アリスもそこまではわからないって言ってたから」
 ルークはそう言いながら、御茶を淹れに席を立つ。
「デーさんは…"特別警備隊"に何名いるか、知ってる?」
 背中を向けたまま問いかけた声。その言葉に、エースもデーモンへと視線を向ける。
「"特別警備隊"、な…それに関しては、吾輩も良く把握はしていないんだが……昔、ダミ様の隠密使として名前を聞いた悪魔が数名いたのは覚えている」
 そう言いながら、その名前を指折り数え始める。
「ジュリアンと、アリスには会っている。あの時は、アリスの容姿は違っていたが…後は…"ウェスロー"と"アデル"…吾輩が知っているのはそのくらいだな…他にもいるのかどうかはわからないが」
「…"ウェスロー"と"アデル"…?」
 初めて聞くその名前に、ルークも…そしてエースも、眉を寄せる。
「聞いた事ないな?御前はその二名と、今でも頻繁に顔を合わせるのか?」
 怪訝そうな顔で問いかけたエースに、デーモンは首を横に振る。
「いや。吾輩もその二名には会った事はないんだ。名前を聞いただけでな。今でも"特別警備隊"に在籍しているかどうかもわからないんだが…」
 デーモンとエースのやり取りを聞きながら、ルークは机の引き出しを開けてメモリファイルを手に取ると、そのままコンピューターの前へとやって来ていた。
「…ルーク?」
 黙ったまま黙々と作業をするルークに、ふとエースが視線を向けた。
「……やっぱりね。"ウェスロー"も"アデル"も、何処の部署にも登録はされていない。因みに、ジュリアンとアリスも登録されていないし、"特別警備隊"なんて部署も存在してないって知ってた?」
「…"特別警備隊"が存在していないだなんて、聞いてないぞ?」
 相変わらず、苦渋の表情のエース。だが、デーモンの方は小さな溜め息を零していた。
「…あぁ、そのメモリファイルだろう?吾輩も一通り確認はしたから、疑問に思ってはいたんだ。だが、内密にコピーしたものだからな、ダミアン様に直接聞く訳にもいかないしな…そう思っている間に、色々な事があってすっかり抜けてしまっていたんだが…どうやら、"特別警備隊"は隠し部署らしい。元々隠密使だからな。内密に事を進める必要があったんだろうとは思う」
「やっぱり、デーさんは知ってたんだ。そうなると話が早いや」
「…おい…」
 一名、話に置いて行かれているエース。だがルークは、そんなエースよりも今はデーモンに話を聞く方が優先だった。
「アリスの話だと、"特別警備隊"に在籍している構成員は、みんな別名で別部署に登録されているらしいよ。因みアリスは"エリカ"だって。部署も総務の末端に登録されてるって言ってた。今確認したけど、確かに総務に"エリカ"は存在してる。ただ、ジュリアンが何の名前で、何処の部署に登録されているかはわからないんだよね…」
 椅子に深く凭れながら、ルークは溜め息を一つ。そして再び立ち上がると、淹れかけだった御茶を淹れ終え、デーモンとエースの前にカップを置くと、自分の分を持って再びコンピューターの前へと戻る。
「因みに、"ウェスロー"と"アデル"の容姿は知らないの?」
 ふと思い出したように、問いかける。
「あぁ、会った事がないからな」
「そう、か…」
 名前しかわからない、謎の二名。しかも、登録されている方の名前もわからない訳で…虱潰しに捜していく時間もない。
 溜め息を吐き出したのは、ルークとデーモン。だが、置いてけぼりのエースだけは、苦渋の表情のまま、何かを考えているようだった。
「…どうした?」
 そんな奇妙な表情のエースに、デーモンが問いかける。
「…アリスがエリカ、ねぇ……」
「…何に、引っかかっているんだ…?」
 デーモンの声に、ルークもエースへと視線を向ける。
「いや…どうしたら、その名前になるのかと思ってな。ただの思いつきなのか、それとも何か理由があるのか…」
 神経質そうに指先で顎をなぞりながら、目の前のカップを見つめたままのエース。
「…理由?」
「…あぁ。まぁ、気にするな。俺は俺で少し考えるから」
「あ、そう…」
 エースの発想の方が謎だ…と思いながらも、ルークも再びコンピューターへと視線を向ける。
 膨大な局員がいる枢密院の中の何処かに、自分を狙う視線がある。それが何名いるのか…それすらも、未だ掴めない。
 大きく溜め息を吐き出したルーク。
「まぁ…さ、一度ジュリアンには話を聞きたいとは思っているけど…後の二名は今のところ大きな動きはないみたいだしね、暫く様子を見ようかと思うんだけど」
「様子を見る?」
 心配そうに寄せられた視線。けれど、ルークは小さく笑いを零した。
「そ。今回のアリスの事があったから、直ぐに何かを仕掛けてくる事はないと思うよ。だから、向こうの出方を見る。どうせ、簡単に尻尾を出さないだろうからね。その間に、こっちも体勢を立て直せるし」
「…アリスの事はどうするつもりだ?このまま、何もしないのか…?」
 大事なブレスレッドを託してまで、護ろうとしたはず。それなのに、この先どうするか、と言う事には何も触れないルークに、エースは眉根を寄せていた。
 その言葉に、暫し口を噤んだルーク。その表情も、酷く真剣だった。
 やがて、ゆっくりとその口を開く。
「…昨日…ゼノンに送られて屋敷に戻って、これからの事を少し話をした。その時も言ったんだけど…アリスの事も、少し様子を見る。勿論、捜してやりたい気持ちは山々だけど…アリスは、それを望んでいないかも知れない。元々、俺がダミ様を裏切る事を酷く嫌っていたし…まぁ、裏切るつもりはないけど…とにかく、俺がダミ様の傍を離れる事は望んでいない。だとしたら、危険を冒してアリスを捜しに行く事は望まないんだと思う。俺に護って貰うつもりだったら、反旗を翻した事も認めないだろうし、剣を抜く事もなかったんじゃないか、って…それはゼノンの見解だけどね」
「…まぁ…アリスの性格を考えればそうだろうな…」
 ルークの言葉に、デーモンは腕を組んでそう答える。
「俺がアリスの気持ちに応えるとしたら…やっぱり、ダミ様を護る事だと思うんだ。元々アリスは、魔界をどうこうしようとか思っている訳じゃなかったし、隠密使としてダミ様に忠誠を誓っていた。だからその意を汲むのなら、俺は、ここにいる。ダミ様の傍を離れない。そして…アリスが戻って来る事を待つから」
「…そうか、わかった」
 エースは一言そう零すと、ソファーから立ち上がる。
「御前がそのつもりなら、俺は何も言わない。ただ、"魔界防衛軍"と"特別警備隊"の事もそうだが…少し探っていこうとは思う。まぁ、俺の独断だからな。御前を巻き込むつもりはないから」
 そう言うなり、その身を翻して執務室を出て行く。
 その背中を見送ったルークは…溜め息を一つ。
「…昨日も思ったんだけど…俺、エースの気に触る事したかな…?ってか、ずっと怒ってるよね…?」
 デーモンの正面へと移動して来たルークは、そう愚痴を零す。その言葉に、デーモンはくすっと笑いを零した。
「考え過ぎだ。彼奴はアレで、御前を心配しているだけだから。ただ、今回の"魔界防衛軍"と"特別警備隊"に関しては思うところは何かあるんだろう。だから、ずっと何か考えているようだ。別に、御前に対して腹を立てている訳ではないみたいだぞ?」
「なら良いんだけど…」
 溜め息を吐き出すルーク。尤も、そう簡単に納得して貰えるとは思っていなかっただけに、意外とあっさりと引いた事の方が驚きでもあった。だがデーモンの言う通り、何か思うところがあるのなら…そっちに気が向いているのだろうと思う事にする。
「…良いの?エース追いかけて行かなくて…」
 残って寛いでいるデーモンに問いかけると、デーモンはくすっと笑った。
「別に、始終くっついている訳じゃない。彼奴の勝手で連れて来られて、勝手に帰って行ったんだ。吾輩も勝手にするさ。たまにはのんびりするのも良いだろう?御前とゆっくり話すのも久し振りだしな」
「…まぁ、ね」
 思わず、ルークもくすっと笑いを零す。確かに、このところルークも執務室に篭りっきりであったし、その後会ったのもゼノンとエース、そしてアリスぐらいだった。ダミアンの顔も見ていないし、デーモンに会うのも暫く振りだった。
 ルークが淹れた御茶のカップに口を付けながら、デーモンはソファーの背にゆったりと凭れる。
「…ダミアン様も、心配していたぞ?御前がちっとも執務室から出て来ない、ってな。やっと出て来たと思ったら、この騒ぎだろう?ダミアン様も婚姻の儀の準備で忙しくなった事もあるし、御前も顔を合わせ辛いとは思うんだが…たまには顔を見せてやってくれないか?ダミアン様も、疲れているみたいだしな…御前の顔を見たら、元気になると思うんだが…」
「…まぁ確かに、会い辛いのはあるんだけど…誰にも会わなかったのは、それだけじゃないんだ」
「どう言う事だ?」
 問いかける声に、ルークは大きく息を吐き出してから、御茶を一口。それから改めてデーモンに向かい合う。
「王都を留守にしていた間にね…マラフィア殿に会ったんだ」
「…マラフィア殿に…?」
「そう。何処に住んでいるのかも知らなかったけど、いつの間にか辿り着いていたんだ。そこでね、色々話を聞いたの。ゼノンやエース、ライデンが無事だった事も、ダミ様が結婚するって言う事も…"魔界防衛軍"の残党が直ぐ傍にいて、俺が裏切られる、って事も」
「……裏切られる?どう言う事だ?」
 困惑した表情を浮かべたデーモンに、ルークは溜め息を一つ。
「俺の直ぐ近くにいる"誰か"が、"魔界防衛軍"に属してるって言う事だよ。だから…色々考えてたし…周りのみんなに、一通りの嫌疑をかけた。エースもゼノンもライデンも…勿論、デーさんも……ダミ様も」
「…ルーク…」
 疑う事が、何よりも嫌い。けれどそれよりも、裏切られる事はもっと辛い。ルークがそれを誰よりも嫌う事はデーモンも良く知っていた。だからこそ…顔を合わせていない間、心を痛めていたのだろうと言う事も。
「最初に嫌疑を解いたのはゼノン。どう考えたって、彼奴が主犯になる意味がわからないしね。だから最初に、ゼノンに全てを話した。そしたら、ウイルスの件の時に、一番ダミ様に近いところにいるのは誰だ、って事になって…"特別警備隊"に疑いの目を向けた。そしたら、アリスが尋ねて来たから、それなら…って事で取引を持ちかけた。アリスはその取引に乗って…それで、俺はアリスから全てを聞いたって訳。まぁ、ここまで取引云々の話をしたのはデーさんにだけ、だけどね」
 そうは言うものの、自分がターゲットであった、と言う事だけは言えなかった。言えば、余計に心配をかける。恐らく、"魔界防衛軍"は直ぐには動き出さない。その直感を信じるしかなかった。
「ゼノンには話さなかったのか?」
 昨日エースの執務室で倒れてから、ゼノンと共に屋敷に帰ったと聞いていた。だから、最初にゼノンの嫌疑を解いたのなら、全てを話していたのではないか。そう思ったのだが、ルークは首を横に振った。
「そこまでゼノンに背負わせるのは酷でしょ?ただでさえ、彼奴もライデンとの事で忙しいんだし…何か、俺以上に辛そうに見えたしさ…」
 そう。昨日のゼノンの姿を見れば、全てを話すのを躊躇う。恐らく、自分で言い出した事だから…と、責任を感じているのではないか、と。
「…で、アリスと何の取引を…?アリスが"魔界防衛軍"だと言う事を打ち明けたと言う事は、御前もそれなりの"何か"を代償にした訳だろう…?」
 嫌な予感が過ぎりデーモンは、様子を伺うようにルークへと問いかける。
「代償、ね…まぁ、言うとしたら"良心"かな?」
「"良心"?」
 悪魔のクセに何を…とも思うが、ルークならわからなくもない。
「そ。俺は結局ダミ様から離れられないし、アリスも俺を好きだって言ってくれるけど、隠密使としてダミ様を裏切る事は出来ない。御互いに、一線は引いてる訳だよ。まぁ…キスぐらいはね、したけどさ…」
「………」
 あっさりと、ルークの口からキスだなんて言葉を聞くとも思わなかった。そして何よりも…ダミアンに一途なルークが、まさか…と思うものの、まぁ初(うぶ)ではないのだから、ルークがそれで問題ないのならそれに関してはこれ以上触れない事にした。
「…だが、どうして吾輩にその話を?吾輩への嫌疑は解けたのか?」
 ゼノンに関して、嫌疑を解いたのはわかった。だが、自分に対しては何がきっかけだったのか…と思うのは当然の事。するとルークは苦笑いを零す。
「俺は、疑うのは嫌い。だけど、疑わなければ潔白だと確定出来ないのなら…と思って、みんなに嫌疑をかけたけどさ…アリスがあんたたちみんなシロだ、って言っていた。それを聞いて、ホッとしたんだ。だからって訳じゃないけど…俺はアリスの話を信じるし、あんたたちを信じる。やっぱり俺は、疑うよりも自分の直感を信じたいんだ。それにほら、俺はデーさんの参謀だしね。着いて行くしかないじゃん」
「…成程な」
 その言葉は実にルークらしい。思わず笑いを零したデーモンに、ルークも笑いを零す。
「アリスとキスしたってのは、内緒ね?ダミ様もそうだけど…特に、エースには」
「あぁ。わかってる」
 別に、エースがルークに対して変な理想を抱いている訳ではないが、まぁ言わない方が無難だろう。それはデーモンにも納得出来る。
「まぁ、"魔界防衛軍"に関しては暫く様子を見るから」
「わかった。何かあったら、必ず報告しろよ?吾輩は…御前の上司、だからな?」
「了解」
 くすっと笑いを零したルーク。やはり、仲魔が傍にいるのは有難い。そして、何よりも心強い。
 それを、改めて実感していた。
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
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自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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