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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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骸 2
こちらは、以前のHPで2002年6月16日にUPしたものです
 ※シリーズ小説はカップリング小説です。
(基本DxAですが、色々複雑です…スミマセン…/苦笑)
3話完結 act.2

拍手[1回]


◇◆◇

 夢を閉じ込めておけたら、どれだけ良いだろう。
 彼の夢を、この記憶の中に…確実に、残して置きたいのに。
 それが出来なくなったのは…どうして、だろう?


 サラがライデンに半ば引き摺られるように連れて来られたのは、とある部屋のドアの前。
「ここは…何処なんですか…?」
 問いかけたサラの声に、ライデンは小さく笑って答える。
「良いとこ」
 そう口にしたものの、相手の表情を見て、ふと言葉を変える。
「あぁ…変な意味じゃなくてね。あんたの、願いが叶うかも知れない場所…ね」
 そう言うなり、ライデンはそのドアをノックする。
「デーさん、開けるよ」
 返事を待たず、ライデンはドアを開ける。
 そこにいたのは、青い紋様を頂いた悪魔。
「…どうした、そんなに慌しく……って、御前、誰を連れて来た…?」
 多分、この部屋の主である悪魔はそう言って、ライデンが手を繋いだままのサラへと、怪訝そうに視線を向けた。
「ちょっとね。奥の間貸してくれる?」
「…おい、ライデン…?」
「…良い話、だと良いな…と思ってね」
 ライデンはそう言うと、返事を待たずにずかずかと部屋を横切り、奥にあるドアを開ける。そして、サラをそこへ促す。
「ちょっとここで待ってて」
 そう言うと、一旦ドアを閉める。そして、隣の皇太子の執務室のドアをノックして中へ入る。そして直ぐに、ダミアンを連れて戻って来た。
「おい、ライデン…」
 改めて問いかけると、ライデンはしーっと口の前で人差し指を一本立てると、小さく笑って奥の間へと入る。そして、そのドアを少し開けたままにする。
「…ダミアン様、あれは一体…」
 ライデンの不審な行動に眉を潜める主だが、隣に立つダミアンは簡単に事情は聞いたのだろう。デーモンをドアの傍へと促すと、黙って二名の話声に耳を傾けた。
 主も仕方なく、それに倣う。
 そして…その話を、聞くことになった。

「御免ね、慌しくて」
 そう言ってライデンは、サラをソファーへと促す。
 そして改めて、サラに向かい合った。
「…話してくれる?あんたが知ってる、エースのこと…」
 その言葉に、ドア向こうの二名は小さく息を飲んだ。けれど、言葉は何も発せず、そのまま聞き耳を立てる。
 そんな状況を知らず…サラは、ライデンの顔をじっと見つめる。
 彼を…本当に、信用しても良いのか否か。
「…貴方…誰なんですか…?」
 もう一度、問いかけられる。
「ここ…どなたかの執務室…ですよね?許可もなく、こんな風に場所を借りに来るだなんて…」
 ここが何処かは、サラはまだわかっていない。まぁ、それはそれで問題はないのだが、どうやらライデンの素性を聞くまでは納得しなさそうである。
「俺ね、雷神界の…雷帝の息子」
「…雷帝の息子、って…皇太子様…っ?!…失礼致しました…っ!!」
 慌ててソファーから立ち上がり、頭を下げるサラに、ライデンはくすっと笑う。
「まぁ、そうとも言うね。でも魔界には修行で来てるんだし、そんなに恐縮しないでくれる?それよりも俺は、あんたの話が聞きたいんだけど…」
 ライデンはそう言うと、再びサラをソファーへと促す。
 素直にソファーに座ったサラは…暫く、言葉を選ぶかのように考えていたが、やがてゆっくりとその口を開いた。
「…エースは……エース長官は…今、私の家に…います」
 その言葉に、誰もが息を飲んだ。
「…状態は…?」
 小さく問いかけたライデンの声に、サラの表情は曇る。
「…そう問いかけると言うことは…ご存知…なんですよね?エース長官の…その……病気のこと…」
「…まぁ…ね」
 その声は、とても低い。
「…正直…良い状態ではありません。いつ、どうなるか…私たちは医者ではありませんから、わかりません。ただ…毎日ぼんやりと外を眺め…言葉も発せず、表情もない。時々魘されて、涙を零して…子供みたい。私たちが村の入り口で保護してからずっとその状態のまま…半年過ぎました。でも…先日の風の強い晩…魘された時に、初めて…名前を、呼んだんです。"デーモン"、と…。私は父に言われ、その名を頼りに調べに来ました。そこで、エースの身分を知り…呼んだ名前の持ち主を知りました。だから、お会いしたかったのですが…」
 ゆっくりと言葉を紡ぐサラ。その瞳には、うっすらと涙が浮かんでいる。
 半年も面倒を見ていれば、当然情も湧く。だから…助けたいのだ。
 無垢な…子供の心の、エースを。
 ライデンは大きく息を吐き出し、ソファーにぐったりと凭れた。その手を…固く、握り締めて。
「半年前…精神(ココロ)が壊れたまま、王都を飛び出して行って…何処で、どうしているのか…わからなかったんだ。その状態で、どれだけ生きていられるのかも…。勿論、生きていると、信じていたけど…俺たちには、どうにも出来なかった。あんたを、ここの下で見た時…懐かしい"匂い"がしたって、言ったよね?あれは、エースの"匂い"だったんだ。微かに纏っていた"気"も、エースのモノだって確信した。だから、あんたに問いかけたんだ。あんたなら…エースを知っている、って…それが、間違いじゃなくてホッとしてる。でも…」
 ライデンはそこで言葉を区切る。
 真っ直ぐに、サラを見つめる眼差しは…とても、哀しそうで。
「…御免ね。今の俺たちには…まだ、手を出すことが出来ないんだ」
「…どう言う…ことですか?エースを…見殺しにするんですか…っ?!」
 思わず、声を上げるサラ。
「じゃあ、何の為に話を聞いたんですか?生死の確認の為だけ?!聞くだけで、何も手を貸してくれないのなら、話さない方が良かった…っ!」
 そう、言葉を吐き出した時…開いていたドアから、入って来た姿が一つ。
「助けて、あげるよ」
「……っ!」
 思わず声を上げそうになったライデンに視線を向け、その言葉を押さえ込む。そして、今度はサラへと視線を向けた。
 綺麗な…真っ直ぐな、眼差しを。
「エースを、助けてあげるよ」
 もう一度、厘とした声が答える。
「…本当ですか…?」
 問い返す声に、にっこりと微笑む。
「ただね、今は担当者が他の任務中でどうしても手が離せなくてね…少し時間はかかるが…必ず、助けるよ。約束しよう」
 にっこりと微笑みながら、サラの頭をそっと撫でる。
「エースを、見つけてくれて有難う。保護していてくれて、有難う。君には…感謝するよ。だから、もう少しだけ…面倒を見ていてくれるかい?必ず、迎えに行くから」
 優しく、そう言葉を紡ぐ。その姿を、ライデンは黙って見つめていた。
 自分には…まだ、ここまで感情を抑えることが出来ない。けれど…その胸の内を、察する事は出来た。
「また、"デーモン"の名を呼んだら…教えてくれるかい?ライデンに連絡を入れてくれれば大丈夫だ。その時は、必ず…助けに行くよ」
「…わかりました…」
 言い包められた感は否めないが…少なくとも、彼はエースを助けてくれると、約束してくれた。それだけで、サラには救いだったのかも知れない。
 やっと、落ち着いた表情を見せたサラの姿に、彼はライデンに視線を向けた。
「ライデンが、下まで送ってくれるよ。気をつけて帰るんだよ」
 そう言って、視線でライデンを促す。
「…そうだね。送って行くよ」
 ライデンはそう言うと、サラを促して部屋を出て行く。
 そして、廊下へと出た時に…サラは初めて、後ろを振り返った。
 閉じる寸前のドアの隙間から…真っ直ぐに、自分を見つめる、金色の眼差し。先ほど見た、青き悪魔の…それは…とても、悲しい色をした、眼差しだった。
「…あの…先ほどの方は…」
 問いかけた声に、ライデンは小さく微笑む。
「…みんな…エースを、心配してる仲魔、だよ。だから…必ず…助けに、行くよ」
「…ライデン殿下…」
 無意識に、ライデンはサラの手を繋いでいた。
 その表情と、繋いだ手の強さは…サラの心を、締め付けていた。
 抱いている想いは、自分と同じ。いや、それ以上に…もっと、深い想いがあるのだろう。
「…さっきは…御免なさい…」
 俯き、小さくつぶやいたサラの言葉に、ライデンはその視線をサラへと向ける。
「…何が?」
「…言い過ぎました…」
「…あぁ…」
 サラの言葉に、ライデンは小さく笑う。
「気にしないで。俺も…どう言って良いのかわからなくて、あんたを傷つけたのかも知れない。あんたが怒るのは当然だよね。助けて貰いたくて…救いを求めて、ここまで来たのにね。聞くだけ聞いて、今は無理だ、なんて言われたら…俺だって怒るわ」
 歩きながら、やっと気持ちの整理が出来て来たライデン。
「"あのヒト"の言葉じゃないけど…ホント…まず最初に、あんたに感謝しなきゃいけなかったね。折角…生命を、繋いでいてくれたのにね。言葉が足りなくて御免ね…」
「…いえ…」
 本当は…直ぐにでも、助けに行きたい。けれど、助けに行けない理由が、そこにあるのだろう。ライデンのその気持ちは、サラにも伝わっていた。だからこそ…それ以上、ライデンを責めることも出来ず。
「…"あのヒト"を…信じても良いんですよね…?」
 不安げに問いかけたその言葉に、ライデンはにっこりと笑う。
「大丈夫。"あのヒト"は…間違ったことは言わない。少なくとも、俺はそう思う。だから…きっと、助けるからね」
 その笑顔に、サラもホッとする。
「それで、あの…何処に連絡すれば、ライデン殿下に繋がりますか…?」
「…え?」
 それが、先ほどの話に繋がっているのを思い出したライデンは、ちょっと考えを巡らせる。
「…俺、特定の居場所ないから……そうだね、じゃあ…文化局のゼノンのところに…」
「…ゼノン…様?」
「そう。そこか、さっきの所か、どっちかにいるけど…ゼノンの方が確実だと思うから、そっちに」
「…わかりました…」
 不安は、まだある。けれど…今は、彼等を信じなければ。そうしなければ…エースを、助けられない。
 そんな思いで、サラは王都を後にした。


 サラを見送ったライデンがデーモンの執務室に戻って来ると、そこには執務机に向かい悲痛な表情を浮かべるデーモンと、窓の外に視線を向け、背中を向けているダミアンの姿があった。
「…勝手なことして御免なさい…」
 まず、ライデンが口にしたのはその言葉、だった。
 その言葉に小さな溜め息を吐き出したダミアンは、ライデンへと視線を向ける。
「やっと…消息がわかったんだ。御前が謝ることじゃないよ」
 その眼差しはとても柔らかく、ライデンを咎めるものではない。
「…そうだな。御前が謝ることじゃない。御前には…感謝しないとな…」
----有難う、な。
「…デーさん…」
 小さく吐き出したデーモンの言葉に、ライデンはきつく唇を噛み締める。
 これから先のことは…デーモンから、話は聞いていた。
 ここから先は、デーモンとエースの問題であって…自分たちが立ち入って良い話ではない。そして…デーモンが、一番辛い想いをするのだと言うこと。それが確かなだけに…その気持ちを察することも辛いのだ。
「御前が…一番辛いことはわかっているよ。でも、だからこそ…頑張らねばな。我々みんな…御前を、支えてあげるからね」
 ダミアンはそう言うと、デーモンの肩をポンポンと叩く。
「…わかっています。エースを…助ける為なら…」
 大きく息を吐き出し、デーモンはそう言葉を吐き出す。
 残された時間は、もうあと僅かだった。

 その夕方、任務で遠出をしていたルークの元に、デーモンからの通信が届いた。
 その通信は、簡潔に、必要なことだけ伝えて直ぐに切れた。
 それが、かえって切ない。
「…ルーク様…?」
 浮かない表情で溜め息を吐き出すルークに、声をかけた姿。それは同じ任務を任せられている情報局副官、リエラだった。
「エースの行方がわかったらしいんだけど…デーさんは、やっぱり実行するってさ…」
 ルークは目を伏せ、そうつぶやく。
「それでは…やはり、エース様を…」
「…多分ね…」
 辛そうな表情のルーク。その隣で、リエラも同じような表情を浮かべていた。彼を助けるには、それしか方法はないのだ。しかし、それでも…その想いは辛過ぎて。
 エースの行方がわかったとは言え、それを手放しで喜ぶことは、ルークにもリエラにも出来なかった。
 デーモンと同じように。
「準備しなきゃいけないことがあるから、一旦帰るよ。後は大丈夫だよな?」
 溜め息と共に吐き出した声に、リエラは頷きを返した。
「御気を付けて」
 リエラに見送られ、ルークはそこから飛び立って行った。

◇◆◇

 エースの所在がわかってから、半月程が経っていた。
 季節は花の咲き乱れる、一番穏やかな季節。

 見る夢は、切なくて。いつになっても、逃れることの出来ない夢。
 青い、夢。ただ、段々とその色は薄らいで行くけれど。

 エースは、ベッドに腰かけたまま、窓の外の草木をぼんやりと見つめていた。
 いつから、自分はここにいたのだろう。いつからこうして、時間に追われずに過ごしていたのだろう。
 曖昧な意識だけが、エースの中にある。
 はっきりと覚えていることはただ一つ。
 自分が、死ぬことも叶わずに生きていると言うこと。

「エース、どうしたの?」
 声をかけられ、視線を向ける。彼女はいつも、微笑んでいる。まるで、自分を護ってくれるように。
 いつから、この眼差しを受けていたのだろう。もっと見知った同じ眼差しは、何処へ行ってしまったのだろう。
「…サラ…」
 エースは、久しく発していなかった声を零した。自分は何を求めているのだろう。それを、問いかけたい一心で。
「俺は…何を、しているんだ?彼奴は…"デーモン"は…何処へ、行ったんだ…」
 そう、問いかけたのは、自分自身に対して。
「エース…」
 答えに詰まり、サラは言葉を区切る。言葉としての、きちんとした声を聞いたのは…あの嵐の時以来である。しかも今回は、自分を見つめるしっかりとした眼差しもある。
 そして何より…"デーモン"の、名を呼んだ。
「…エース…?」
 それは、不安に駆られて。
「…俺は…どうして生きているんだ…?彼奴を苦しめて…傷付けることしか、出来なかったのに…どうして俺は生き続けているんだ…?彼奴は…どうして、俺を…殺してくれない…?」
 そうつぶやいたエースの瞳は、悲しみに打ち拉がれていて。
 自身を責めることしか出来ない想い。それを何処に解き放して良いのかわからず、最終的に自分自身を追い詰めてしまった結果がこのエースなのだと、サラは感じ始めていた。
 そしてエースの言葉は…はっきりとした意思を、示していた。
「俺を…殺してくれ…」
 サラはドキッとして、目を固く瞑る。
 助けなければ。彼を…エースを。
 サラは大きく息を吐き出すと、真っ直ぐにエースを見つめた。
「…エース…待っていて。どうしても貴方に逢わせたい悪魔がいるの。呼んで来るわ。だから御願い…何処にも行かないで。ここにいて…エース…」
 自分を見返すエースの眼差しは、儚くて。それでもエースは僅かに頷いて見せる。
 それを確認し、サラは部屋を飛び出した。

「サラ、何処に行くんだ?」
 慌てて飛び出して来たサラを目の当りにしたディールがかけた声に、サラはその足を留める。
「出かけて、来るわ。エースを助けて貰うの」
「御前、またそんなこと言って…からかわれるだけじゃ、ないのか…?」
 心配そうなディールの眼差しに、サラは首を横に振る。
「そんなことないわ。必ず…助けてくれる。約束したもの。だから、父様はエースを見ていて」
 口早にそう言い、サラは再び駆け出していた。ライデンがいると言っていた、文化局へ向かう為に。

◇◆◇

 奇妙な不安が、そこにあった。
「…どした?」
 窓の外を見ていた視線を巡らせ、その声の主を辿る。
「感じない?"気"が…騒いでるんだ…」
 そうつぶやいた声は、不安げで。
「…もしかして……エース?」
 表情を曇らせ、歩み寄って来る姿。
「……サラからは、まだ連絡はないけど…時間…なのかな…」
「…そうかもね…」
 溜め息と共に零れた言葉は、僅かに震えていて。固く繋いだ手は、両名ともとても冷たい。
「デーモンに任せるしか…今は、方法はないんだよ。俺にも…もう、エースを助けることは…」
 出来ないんだ。
 その声は、とても口惜しそうで。狂い始めた歯車は、もう元には戻らないのだと、思い知らされた気がして…胸が、とても痛い。
 刹那。ドアが叩かれ、声がした。
『あの…御客様がいらっしゃってますが…』
「客…?誰?」
 この部屋の主…ゼノンは、怪訝そうにドアの外の従者に尋ねる。
『…サラと、名乗っております。ゼノン様に、ライデン殿下に取次いで貰いたいと申しているのですが…』
 まだ子供のようで、何とも…
 従者に声に、ゼノンもライデンも息を飲む。
「…あぁ、俺の客。ここに呼んで」
 ライデンは、小さく答える。
『畏まりました』
 ライデンの声に従い、従者は廊下を戻って行った。
「…いよいよ…最期だね…」
 つぶやいたライデンの声。伏せた眼差しは悲痛さを隠していたが、到底隠し切れるはずなどない。
「見殺しには…出来ないんだよ、ライデン。エースを助ける為には…仕方がないんだ」
「わかってる…でも…悔しいよね…」
 俺たちは、何って無力なんだろう。
 つぶやいたライデンの声に、ゼノンは口を噤んだ。無力の、何物でもない。ただ愛しているからと言う気持ちだけでは、その身を護ってやることも出来ないのだ。だから、いつだって決断が必要になる。
 そして、デーモンは…その決断を下す決心をしたのだ。

 叩かれたドアは、直ぐに開かれた。飛び込んで来たのは、いつかの彼女。
「ライデン殿下っ!エースを助けて下さいっ!!」
「サラ…落ち着いて」
 サラの肩を掴み、ライデンは宥めるかのようにゆっくりとその口を開く。
「…エースの状態は?」
 尋ねられた声に、サラは今にも泣き出しそうな顔を横に振る。
「別魔…みたいです…言葉も、眼差しもしっかりしていて…でも…"デーモン"の名を呼んで…殺して欲しいって…」
「…やっぱり…」
 溜め息と共につぶやいたライデンは、茫然としているゼノンを振り返った。
「ゼノ。デーさんとルークに連絡取ってくれる?俺はエースがまた血迷ったことしないように、サラと先に行く」
「わかった。後から、御前の気を追って行くよ」
 ゼノンの答えを聞き、ライデンはサラの手を取って部屋から出て行った。
 その姿を見送ったゼノンは、前の見えない道の行く末を案じ、大きな溜め息を零していた。


 胸騒ぎは、止まらない。

 その緊急の連絡に、微かに手は震えていた。
 これを、届けなければ。
 剣の柄が、鞘の口でカタカタと鳴っている。
 時は、来てしまったのだ。もう戻ることなど出来ないのだと、全てが伝えていた。


「デーモン、入るよ」
 執務室のドアの前でそう声をかけ、そのドアを開ける。
「…何だ、ゼノンか。どうした?」
 書類を手に、振り仰いだのはデーモン。
「…時間だよ、デーモン。行かなきゃ…」
 そうつぶやいた声は、酷く悲しげで。そしてその表情と声で、デーモンは状況を十分過ぎる程、理解してしまった。
「…そう…か」
 溜め息を吐いて、デーモンは立ち上がる。
「ルークに連絡は?」
「うん…ここに来る前に連絡はしたよ。直ぐ来るって」
「そうか…」
 デーモンがそうつぶやいた時、外から軽く窓をノックされる。そして、返事を待たず、その窓が開かれる。
「…御待たせっ」
 窓の向こうにいたのは、蒼き悪魔。その背中に真白な翼な羽根を背負い、その手には…見慣れない剣を一振り、持っていた。
「丁度良いタイミングだな。じゃあ、行こうか」
 デーモンはそう声をかける。
「うん。エース、待ってるしね…」
 ルークはそうつぶやいて、小さく笑う。
 その微笑みは…自分を、みんなを…奮い立たせるかのようで。
 デーモンを先頭に、ルーク、ゼノンは、ライデンの気を追いかけて夕刻の空に飛び立った。
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プロフィール
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
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非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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