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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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ARCADIA
こちらは、以前のHPで2004年06月27日にUPしたものです
 ※シリーズ小説はカップリング小説です。
(勿論DxAですが、ダミアンxルークもあります。
でもこのシリーズのメインはRXです…多分/^^;

拍手[2回]


◇◆◇

 夢は、諦めなければ必ず叶う。
 そんなことを聞いたのは、いつのことだっただろう…?
 夢は、現実になり得るのだろうか…?
 その答えは、如何に。

◇◆◇

 その知らせは、彼が登庁して直ぐに伝えられた。
「ルークが…?」
「はい。後でいらっしゃるそうです」
 それだけ伝え、官吏は下がって行った。
 それを聞いて、主は溜め息を一つ。
「…そうか。無事、だったのか」
 それは、安堵の溜め息。
 ゼノンの生命がかかった事件が起こった一ヶ月前に、不意に行方を眩ませて以来、その行く先は誰にも掴めなかった。それが今日になって、急に会いに来ると伝言して来るとは。
 いつになく回り諄い方法を取っている理由にも気が付かない程、主はその連絡に安堵していたのだった。

 昼も近付いた頃、その執務室を訪れた者が一名。
 ノックの音に入室を促すと、そのドアを開けて入って来たのは、他局の局長。
「…何だ、ゼノンか。どうしたんだ?」
 思いがけない訪問客に、主は目を丸くする。
「うん、朝登庁したら、ルークから伝言が入っててね。デーモンの執務室に来て欲しい、って…」
 こちらも、困惑した表情を浮かべる局長…ゼノンに、主…デーモンも小さな溜め息を吐く。
「あぁ、うちにもルークが来る、と言う伝言はあったが…御前の所にも来ていたのか」
「まぁ、無事だったことには安心したけど…珍しいよね、『伝言』なんて回り諄い方法で呼び出すなんて…何かあったのかな?」
 そう。このゼノンが一大事を乗り越えて雷神界から戻って来てみれば、ルークが行方不明になっていると言う事態になっていたのだ。情報局長官であるエースでさえも、その行方を掴むことは出来ず…ましてや、恋悪魔とも呼べるダミアンでさえ、覚悟の失踪と、行方を追うことを諦めてしまっていたのだから。
「直接会ってみれば、彼奴の気持ちもわかるだろうけれどな」
「そうだね」
 何はともあれ、直接ルークに会ってみなければ話にならない。
 それよりも何よりも…無事であったことと、ルーク自ら連絡を入れてくれたことは、幾ら安堵の溜め息を吐き出しても無駄にはならないと言う心境であった。だが、直接会ってみるまで、まだ安心は出来ない。そんな想いもまた、彼等の心中にはあったのだった。

 それから一時間近くが経った頃、やっと待ち兼ねたノックの音が聞こえた。
「どうぞ」
 デーモンの声に、そのドアが開く。そして姿を現したのは、エースだった。
「…何だ、御前か…」
 てっきりルークだと思っていたばかりに、デーモンもゼノンも、溜め息を零す。
「何だとは何だ。折角、連れて来たのに…」
 あからさまな溜め息に、エースも露骨に眉間に皺を寄せる。だが、エースの放った言葉に、ゼノンが小さく反応していた。
「…連れて来た…?誰か、一緒に来たの?」
「ま、そう言うことだ。ほら、照れてないで、入って来いよ」
 なかなか姿を現わさないもう一名を促すエース。その声に、廊下から小さな溜め息が聞こえたかと思うと、ゆっくりと姿を現したのは、漆黒の短い髪の悪魔。
「……ルーク…?」
「…御待たせ」
 すっかり短くなった髪の毛に、デーモンもゼノンも目を丸くしている。
「…どうしたんだ?その髪は…」
 それまでは腰に届くまでに伸ばしていただけに、突然の変貌に驚くのは無理もない。
 ばっさりと切りっぱなしだった髪は、今日になって再び、毛先を整える為に更に短くなっていた。まるで、軍事局に入局した頃のようである。
 デーモンやゼノンの反応を凡そ察していたのか、ルーク当魔は照れくさそうな溜め息を吐き出していた。
「まぁ…何処から説明して良いのやら…」
 そう言いながらも、言葉を選びながら、そこに至るまでの経緯をゆっくりと語り始めた。
 行方不明と言われていた間、何処にいたのか。何故、髪を切ったのか。そして、昨夜のダミアンとの話までも。
 その話が終わり、僅かな沈黙が訪れた。その間、既に全てを聞いていたエースは、窓辺で(煙嫌いが揃っているので必然的に…)紫煙を燻らせていた。
「…成程な。御前の意向はわかったんだが…本当に、それで良いのか?」
 そう問いかけたのはデーモン。それは、ダミアンとのことを指しているに他ならない。
「まぁ…賛否両論あるだろうけれどね。俺が堕天使である過去は変えられない訳だし、子供産める訳でもないしね。決して、公には出来ないけど…俺はそれでも良いと思った。ダミ様がちゃんと受け止めてくれている以上、俺は後悔はしないし。それもまた、俺の運命かな?ってね」
 くすっと小さな笑いを零すルークの表情に、彼が言うように憂いの色はない。寧ろ、公に認められないとは言え、御互いが共にいることを納得したと言う安堵感さえ感じられた。
「…気持ちは、わからないでもないよね」
 未だ何処か苦渋の表情を見せるデーモンに対し、隣で聞いていたゼノンは、ルークに共感の意を唱えた。
「ある意味、俺も同じかな、ってね。俺たちの事も、多分すんなりとは行かないと思うけど…それでも、俺もライデンも、御互いが覚悟を決めたんだもの。自分たちの径は、自分たちで切り開くんでしょう?御前たちだって、例外じゃないんだから」
 そう話題を振られ、デーモンは更に溜め息を零していた。
「そりゃ…わからない訳じゃないぞ。だが、現実問題としてだな…今はそれで良いかも知れないが、何れ、奥方が目に入る。子供が目に入る。そうなった時、否応なしに苦しむのは御前なんだぞ?」
「わかってるよ。でも、覚悟を決めたんだから。俺は、ダミ様を信じる。結論は、それしかないんだ」
 真剣なルークの眼差しに、デーモンは再び溜め息を吐き出す。
 そして。
「…なら…吾輩は、もう何も言わない。だが…我慢するなよ。無理だと思ったら、ちゃんとそう言うべきだ。それは、約束してくれよ」
 にっこりと微笑むデーモン。
 仲魔を案じるが故に、共に真剣に悩んだ上での結論。だからこそ、悩んでくれる気持ちも、ルークにも痛い程わかるのだ。
「…御免ね、心配ばっかりかけて」
 ぽつりと呟いたルーク。そのいつになく沈んだ声に、先程まで溜め息ばかり吐き出していたデーモンも、手を伸ばしてルークの短くなった髪の毛をくしゃっと掻き混ぜた。
「何を今更。赤の他魔じゃあるまいし」
 くすくすと笑う声に、ルークの表情が一瞬歪んだ。そして次の瞬間、その黒曜石の瞳から零れ落ちた一筋の涙。
「…安心したら、泣けてきちゃった…」
「…ったく、御前は…」
 ぐしぐしと袖口で涙を拭うルークの頭を、デーモンは小さな溜め息と共にぎゅっと抱き締めた。
「これから御前の行く道は、棘だらけなんだからな。今から泣いてたらしょうがないぞ?」
「…うん」
 涙を拭い終わったルークは、改めて顔を上げた。
 まだ涙で濡れている黒曜石は、引き込まれるような深い色。その深い黒曜石は、これからの未来に向けて真っ直ぐ向けられようとしているのだった。
 その瞳をしっかりと見つめたデーモンは、安堵の笑みを浮かべた。
「頑張れよ」
「有難う」
 にっこりと微笑んだルーク。だが、ふとあることを思いだし、ルークの表情が曇った。
「…そうだ。ねぇ、デーさん…俺の扱いって、どうなってるの…?」
「…は?」
 ルークの問いかけた意味が良くわからなかったんのだろう。首を傾げたデーモンに、ルークは改めて言葉を放つ。
「軍事局で、俺の扱いってどうなってるの?まぁ、一ヶ月も無断で留守にしてたんだから、何の処分もないとは思っていないけど…俺の身分って、まだ残ってるの…?」
 不安そうに問いかけた声に、デーモンはくすっと小さな笑いを零した。
「あぁ、そう言うことか。ちょっと待ってな」
 そう言うとデーモンは、徐ろに机の引出しを開けて何やら探し始めた。そして目的のモノが見つかると、その一枚の紙をすっとルークの前に差し出した。
「…これは…」
「見ての通り、だ」
 ルークの視界に入ったのは、『休暇届』と書かれた用紙だった。
「…ダミ様もな、御前が戻って来る確証は持てなかったんだ。だが、もしも戻って来てくれるなら、御前の居場所が必要だろう?だから、これはダミ様からの精一杯の心遣いだ。御前がいつ帰って来ても大丈夫なように、期間は御前がいなくなった日から、終了日は無記入になっている。御前が復帰する日に合わせて書き込めば、御咎めはなし、と言うことだ。まぁ、暫く纏まった休暇は取れなくなるかも知れないけどな」
「…そこまでして貰えれば十分。一生懸命働くからね」
 てっきり、何かしらの御咎めがあると思っていたばかりに、思いがけない休暇届に戸惑っているルーク。だが、その気持ちは、感謝で一杯だった。
「…有難う」
 最愛の恋悪魔からの休暇届を大事に胸に抱き、ルークは大きな吐息と共に、満面の笑みを浮かべていた。
「…そうだ。もう一つ大事な話。で、結局…"魔界防衛軍"はどうなったの…?」
 すっと表情を変え、そう切り出したルーク。マラフィアから聞いた話は、まだ口には出来ないが…上層部には、その後の動きが何かあったのかは聞いておきたかった。
「あぁ、そう言えば俺も詳しく聞いてない。ざっと流されただけのような気がするんだけど…」
 ゼノンの復帰後、一応ざっと話はしてあったが…誰もが忙しく、それ以上の追求は出来なくなっていた。そんな状況も相まって、デーモンとエースは顔を見合わせ、御互いに溜め息を吐き出す。
「あぁ…結局、あれ以来何の動きもないんだ。天界の方でも、剣を盗んだ犯人は見つけられなかったようだし…また逃げられてしまったようだ…」
 小さな溜め息を吐き出したデーモンの言葉に、エースも溜め息を一つ。
「納得はいかないけどな…また様子見、だ。ただ、ゼノンが討たれたあの事件も"魔界防衛軍"の仕業であるのなら、天界から剣を盗んだことも、ゼノンが雷神界で討たれたことも含め…魔界だけの話ではなくなった、と言うことは明らかだ。ただでさえ情報が少ないのに…更に捜索範囲が広がっただけ、だからな。厄介であることには変わりない」
 半ば投げやりなエースに、ルークも溜め息を吐き出していた。
「そっか…まぁ、何かの節目節目で仕掛けて来るかも知れないからね…気をつけるしかない、ってことか…」
 今は、その言葉しかない。ただ、状況を聞く限りでは、どうも彼等が関わっているようには思えない。それが安堵なのかもわからないし、まだ何の解決もしてはいないのだが…まぁ、ゼノンの生命が助かったことは善しとしなければ。
「…さて、それじゃ話も済んだことだし、御茶でも淹れようか」
 落ち込んだ気分を変えるように、デーモン自ら御茶淹れに立つ。
「それじゃあ、御相伴に預かろうか。ね、エースもこっちおいでよ」
「そうだな」
 ルークに促され、今まで窓際で紫煙を燻らせていたエースも、ソファーへと戻って来る。
 御茶を淹れるデーモンの背中を見つめながら、すっかり和んだ空気に再びルークが口を開いた。
「そう言えば、まだ言ってなかったよね」
 そう言った瞳が、ゼノンへと向く。
「あんたが無事に帰って来てくれて良かったよ。結婚も決まったんだってね。おめでとう」
「あぁ、有難う。御前にも一杯心配かけたよね」
「無事ならそれで良いの」
「御前もね」
 にっこりと笑い合う二名。
「結婚したら向こうに行くの?それとも魔界に残るの?嫁…じゃないよね?あんたのことだから」
 夕べ、エースから聞いた話を思い出しながら問いかける声に、ゼノンは小さな唸り声を上げた。
「それなんだけどね…まぁ、俺が嫁ではないことだけは確実なんだけど…まだ何も決まってないんだ。俺が魔界に戻って来てからは御互いに忙しくて雷神界に出向けてないし。ただ…仕事は、続けて行きたいかな…ってくらい。これからライデンと一緒に、各方面に説得に回らなきゃいけないしね。でも上皇様が味方でいてくれるから、心強いけどね」
「色々大変だね…でもまぁ、しょうがないよね。惚れた相手が相手だもんね」
 腕を組み、うんうんと頷いているルーク。
 その呑気な姿に、ゼノンは思わず苦笑する。
「大変なのは、自分だって同じじゃない。まぁ俺のことは、自分で撒いた種だからね。ちゃんと刈り取りに行って来るから」
「…御互い大変だけどね。ま、前向きに行きましょう。今度、ライデンのところにも、御祝い持って行かなくちゃね~」
 くすくすと笑うルークは、すっかり他魔事のようになっている。その様子に苦笑しながら、デーモンがトレーに載せた御茶を運んで来た。
 その手元をぼんやりと見つめていたルークは、ふとあることに気がついた。
 御揃いの指輪。それが、デーモンとエースの左の薬指にそれぞれ填まっているのだ。
 今まで填めていなかったその二名の指輪に、自分がいなかった間に何かが変わったのだろうか?と言う疑問が過った。その直後、その疑問は素直に言葉となる。
「デーさんたちはどうするの?ゼノンも結婚を決めた訳だし…やっぱり、結婚するの?」
 不意に問いかけられ、デーモンとエースは思わず顔を見合わせる。どうやら、その疑問は御揃いの指輪から来ているのだろうと言う想像は付いたようだ。そして、暫しの沈黙。その後、口を開いたのはデーモンだった。
「吾輩たちは別になぁ…ゼノンとライデン、ダミアン様の状況ならともかく、我々は別に世継ぎを残さなきゃいけない訳でもないし、どちらかと言うと必要ないと思っているんだが…結婚となると何かと面倒だろう?なぁ、エース?」
「あぁ。別に、必ず世継を、って身分じゃないしな。御互い、自分の血は自分の代で終わらせようと思ってるからな」
「そうそう。だから、今まで通り、だな。ま、指輪の意味を知っているのは、人間界にいたことのある奴だけだから。これだけは堂々と出来るけどな」
 テーブルにカップを置きながら、くすくすと笑って答えるデーモン。御互いに納得した結果であるのだから、それ以上口を挟む理由もなかったのだが…それに口を挟んだのは、研究者たるゼノン。
「…でも、ちょっと勿体無いよね。デーモンもエースも、御互いの一族の最後の生き残りでしょう?言霊師も邪眼族も、御前たちが最後だなんてね」
「仕方ないさ。そう言う運命だったと思えば。滅んでいく種族なんて、沢山あるだろう?」
「それはそうだけどさぁ…」
「研究材料にだけはするなよ」
「はいはい、わかってるよ。そこまで深追いしないから安心して。そこまで無粋じゃないから」
 一族の生き残りとして扱われることを好まなかったデーモンとエースが出した答えに、ゼノンは残念に思いながらも、頷いて答えるしかなかった。
「それにしても、ルーク。ここに来るのが随分遅かったな?朝連絡があったのに、来たのは昼じゃないか」
 話を切りかえるように尋ねたデーモンの声に、ルークは唸りながら、短くなった髪を掻きあげていた。
「ホントは、早く来ようと思ったんだけどさ…どうも髪が纏まらなくてね。切りっぱなしだったから、尚更だったみたい。朝、蒼羽に切り直して貰ったんだけど…そしたら、ますます短くなっちゃってさ。流石に、ちょっと入り辛くて…そしたら、ここの執務室の前でエースに会って…」
「ドアの前をうろうろしていたからな。連れて来たんだ」
「成程ね」
 くすくすと笑うデーモンの声に、ルークは溜め息を一つ。
「まぁ、良いじゃないか。髪も短くなって、また気持ちも新たになっただろう?」
「まぁね。そのつもりで切ったんだけどね。でも、もうちょっと長くても良かったかな~って」
 ポリポリと頭を掻きながら、苦笑いするルーク。
「良く似合っているぞ?昔みたいで」
「ホント。昔を思い出すね」
「…ヤダ、恥ずかしい…そんなに昔、昔って連呼しないでよっ」
 懐かしさを感じさせるルークの髪型に、一同盛りあがってはいたが、ルークの表情は昔とはまるで違う。
 自分の居場所を見つけることが出来た安堵感。そして、自分を必要としてくれている、自分が必要としている恋悪魔がいる。それが何よりも嬉しくて。見守っていてくれる仲魔がいることが、嬉しくて。
 かつては考えもしなかったが…この地に来ることは、きっと自分の運命だったのだと、ルークも感じていた。

◇◆◇

 すっかり日も落ちたその帰り道。ルークは、自分の屋敷の前で佇む一つの影を目にした。
「…アリス?」
 薄闇の中、久し振りに見たその相手。色薄の金色の髪に、薄い碧色の瞳、中性的な顔立ちの"彼女"は、くすっと笑いを零した。
「御無沙汰してます。髪…切られたんですね」
「…うん、まぁ…」
 思いがけず待ち伏せされていた相手は、仮面師でもあり、ダミアンの隠密使の一名であるアリス=レイド。そして…以前、ルークに好きだと告白して来た相手。
「少しだけ…御時間、良いですか?」
「あぁ…ウチ入る?」
「いいえ、ここで結構です。直ぐに帰りますから」
「そう…」
 何処か気まずい。そう思うのは…多分、アリスだけが…ルークに、現実を突きつけたから。そして、その現実が…今まさに目の前にあるから。
 門の壁に凭れかかったルークの隣で、アリスは小さく言葉を放った。
「現実を見た感想は?」
 勿論それは、ダミアンの婚姻の話に他ならない。隠密使と言う立場柄、まだ広まってもいないその話を聞いていたのだろう。
 そう問いかけられ、ルークの脳裏にアリスが以前ルークに投げかけた言葉が、ふと甦った。
 ルークのダミアンへの想いは、決して報われることも、世間に認められることもないのだ、と。アリスは、ルークに面と向かってそう言い切っていた。
「俺を、笑いに来た訳?」
 吐き出すようにそう言ったルーク。けれどアリスはそんなルークに歩み寄ると、そっと顔を近づけてそのまま徐ろにその唇に口付けた。
 一瞬…何が起こったのか理解出来ていないルーク。けれど、そこにある温もりは現実だった。
「…アリス…?」
 ふと我に返ったルークは、唖然としたまま。そんなルークを、アリスは笑った。
「これも、一つの現実。貴殿が周りを見ないだけで、貴殿を好きな悪魔は沢山いるんですよ。貴殿の仲魔は貴殿の気持ちを尊重して頑張れだとか、応援するだとか、そんなことしか言わないでしょう?でも、本当の現実はそんなに甘くはないから。そのうち、現実に打ちのめされるかも知れない。立ち直れないぐらい、傷付くかも知れない。それでも…貴殿は、気丈な振りをして笑っているんでしょう?それが、自分が決めた道だから、って。そんな強がり…馬鹿みたい」
 アリスの笑みが、一瞬哀しそうに歪んだように見えた。そして…ルークの表情も、今まで仲魔たちと向き合っていた顔とは違う…とても、寂しそうな表情へと変わっていた。
「…そうだね。あんたの言う通りだ。覚悟は決めてる。でも…それが何になるのか、って思ってる自分もいるのは確かだね。でもさ…やっぱり、駄目なんだ、俺は。どう足掻いたって…あのヒトを、忘れることが出来ない。勿論、応援してくれる仲魔の気持ちは嬉しいし、有難いよ。だから、俺は笑うんだ。例えそれが強がりだって良いんだよ。だって、笑ってさえいれば…本心はバレないでしょ?他の誰にも迷惑かけないならそれで良いじゃない。それを突っついて来るのは、あんたぐらいだよ」
「だって、私は…今でも、そんな強がりばっかり言う貴殿が好きだから」
 そう言って、アリスはくすっと笑った。
「まぁ、良いです。どうせ貴殿の眼中に私はいないし、誰が何と言ったって貴殿は自分の決めた道を真っ直ぐ歩いて行くんだから。でも…本当に疲れたら…立ち止まって、振り返ってみても良いんじゃない?引き返せとは言わない。どうせ戻れない道だもの。でもその時は…私が、幾らでも慰めてあげるから」
「アリス…」
「報われない想いでも構わないんでしょう?貴殿はそう言ったもの。だから私も、諦めないことにしました」
 にっこりと微笑まれ、そう言われる。勿論、ルークが自分で言った言葉なのだから…否定は出来ない。
「もう一度…キスしても良いですか?」
 そう、問いかけられて…ルークは一瞬、困ったように笑った。そして。
「…良いよ」
 そう答えようと思ったのは、どうしてだろう。でも…ふと、心が軽くなったような、そんな気がしていた。
 ルーク自ら手を伸ばし、アリスの頬にそっと触れる。
 冷たいその頬で…どのくらいの間、ここで自分を待っていたのかを察して、ルークは小さく笑った。
「馬鹿だね、御互いに」
「…そう、ね」
 アリスも目を細め、小さく笑った。そして、ルークの方からその頬を近づけると唇をそっと重ねた。
 相手からされることはあっても…ダミアン以外に、自分からキスをしたことはなかった。それなのに…何の躊躇いもなくキス出来たのは…自身が抱いて来た想いと、何処か重なっていたからかも知れない。
「相変わらず優しいね、貴殿は。知ってる?キスにもヒト柄って出るって」
 唇を離すと、アリスはそう言葉を零す。
「そりゃ光栄だね」
 本命ではない相手にキスをしておきながら、優しいと言われるのもどうかと思う。そう思いながらも、ここはアリスの気持ちを素直に受け取ることにした。
「有難うね」
 そうつぶやき、軽く抱き寄せる。
「…泣きたくなったらいつでも呼んで。まぁ、そうならないことを祈っているけれど」
「覚えて置くよ」
 にっこりと微笑むアリスに、ルークも笑いを零す。
「…では、また」
 アリスは身体を離してそう言い残すと、振り返らずにその場から立ち去った。
 その背中を暫く見送っていたルークは…大きな溜め息を吐き出すと、屋敷へと戻って行った。
 アリスに言われたことが…現実になるかどうかはわからない。
 例え、どれだけ傷付いたとしても。それを癒す場所が何処かにあるのなら、進んで行こう。
 今のルークには、その思いしかなかった。
 全ては……愛する悪魔と、共にいる為に。

◇◆◇

 夢は、諦めなければ必ず叶う。
 そんなことを聞いたのは、いつのことだっただろう…?
 その時は、そんなことは信じていなかったのかも知れない。けれど、今ならばその意味がわかる。
 夢は…見続けることで、その思いが叶うのだと。だから皆、夢を見続けるのだと。
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プロフィール
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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