聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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BLUE 1
白い、真白な大陸。そこを被っているのは淡い輝きを持つオーラ。そのオーラを突き破り、空から落ち行く一つの躰があった。
能力を封じられ、成す術もなく目を閉じたその躰は、失いかけた意識の中で、遠く離れた仲魔に訴えていた。
----…僅かでも良い…感じてくれ、この気を…見つけてくれ、この躰を…
どさっと言う音と共に、躰は地面に投げ出される。真白な地に、真紅の血が絵を描く。落ちた音を自覚し、痛みを感じた後、彼の意識は完全に遮られた。
不意に聞こえた何かに、窓の外に目を向ける。
何がいる訳でもなく、誰が喋った訳でもない。ただ、何かが聞こえたような気がして。何かを、訴えて来たような気がして。
「…エース様、どうなされました?」
そう声をかけられ、ふと我に返る。
「…いや、別に…」
この執務室の主であるエースは首を傾げる副官のリエラにそう返し、机の上の書類に手を伸ばす。
「会議に行って来る」
エースはそう言い放ち、執務室を抜け出す。
その胸には小さな不安。その源は…この手に持った書類である。
以前彼がその一員として参加した任務の追加報告。それだけなら聞こえはいいが、その実情は定かではない。
任務を終えた彼等が魔界へ帰って来てから、どれくらいの時間が経ったことだろうか。それを今更追加報告をしろだ、などとは間の抜けた話ではあるが、これには訳がある。
任務地に異常が起き始めている。それも、神の絡んだことで。
「別館だなんて…ったく…冗談じゃねぇぜ…」
本日の目的地はどう言う訳か、軍事局の別館にある会議室。情報局からはかなり距離がある為、余り行きたくないのが正直なところだが、人目を避ける為…と言う名目ならば、ここは仕方がない。
エースは足早に廊下を進み、情報局の建物を後にした。
「いやぁ、早かったね、エース」
エースが別館の会議室に通されると、そこで待ち構えていたかのように声がかかった。声をかけたのは当然ここの主であるルーク。
「…他の奴等は?」
会議室には、ルーク一名の姿しかない。確か、五名全員呼び出しがかかっていたはずなのだが。
「ゼノンはまだ抜け出せないらしいよ。少し遅くなるって連絡が入ったから。デーさんもライデンも、もう直ぐ来るんじゃない?別に、緊急の連絡も入ってないし」
「そうか」
小さく答え、エースは傍にあった椅子に腰を降ろす。
それにしても…とルークはエースに背を向け、窓の外に視線を移しながら言葉を紡ぎ始めた。
「まさか…また神が手を出して来るだなんて、思いも寄らなかったけどね。未練があったことに驚きだよ」
「まぁな。考えてみれば"アレ"は神が壊したようなモンだったが…そこからまた何かを始めようと思っているのなら、わからなくもないが…」
煙草に火を付け、エースはふと壁の時計に目を向ける。約束の時間はもうとっくに過ぎているにも関わらず、相変わらず会議室にはエースとルークの二名だけである。
ルークはテーブルの上に、かつての任務地の詳細が書かれた書類を抛り投げた。
「取り合えず、あの後実際に見て来たのはあんたとデーさんだけだからね。状況を詳しく話して貰わないと」
「…しょうがねぇなぁ、ったく…」
呆れたような溜め息を吐き、エースは長い足をテーブルの上に投げ出していた。
小一時間程経ってやっと現れた来たゼノンは、頭数が少ないことに首を傾げる。
「あれ?御前たちだけ?」
とっくに全員来ているとばかり思っていたのだろう。だがデーモンとライデンの姿は、まだない。
「彼奴等、こんなに待たせやがって…来たら、ただじゃおかねぇからなっ」
指を組んでばきばきと鳴らしたエースがそう言いかけた時、もう一名…ライデンが到着した。
「お、やっと………ライデン?……ちょっと…大丈夫?」
ルークは、その異様さに声をかける。
「…御免…」
うつむいたままのライデンの声は嗄れ、その横顔は酷く憔悴し、足元はおぼつかない。
「ライ、どうしたの?」
傍にいたゼノンがそう尋ねた時、零れた透明な雫で床が濡れる。
「…俺…取り返しの付かないこと…したかも知んない…」
震えるライデンの声に、酷く胸騒ぎがするのは、どうしてだろう。
「…何があった?言ってみろ」
ライデンの正面に立って肩を掴み、その顔を覗き込むようにしてそう尋ねたエースの声。固く目を瞑り、震える肩。それは、懸命に涙を堪えている姿に他ならない。
「…デーさん…帰って来なかった…帰って来るって、約束したから、穴を繋げたのに…帰って…」
「デーモンが…何処に行ったんだ?」
ライデンを刺激しないよう、ゆっくりと問いかける声。
「…様子を見に行くって…ガイアに…」
「地球(ガイア)!?」
声を上げたのは、エースを筆頭にルーク、ゼノン。
「…ライ、どう言うこと?何でデーモンが地球に…?」
足元が震え、今にも倒れそうになっているライデンを支えるように腕を回し、ゼノンはもう一度尋ねてみる。だが。
「…俺…どうしていいか、わかんないよ…」
ライデンは首を振ってそうつぶやくだけで、質問の答えになるような言葉は出て来ない。
「…精神的にかなり参ってるみたいだね。少し、休ませた方が良いかも。部屋、変えようか」
ゼノンはそう言うとライデンを支えて歩き出した。
「あ、あぁ…じゃあ、こっちに…」
ルークに促され、ゼノンとライデンは会議室を出て行く。エースは一つ、溜め息を吐き出す。
「…嫌な予感はこれか…ったく、デーモンの奴…」
そう言葉を残して、エースも後を追った。
別館に一室設けられていたルークの自室に移り、ライデンをソファーへと寝かし付ける。
「本格的に安定させる手順を踏む時間はないけど…まぁ、仕方ないね」
ゼノンはそうつぶやきながら、ライデンの額にそっと掌を乗せる。そして、聞き慣れない呪文を口にした。
「…これで手順踏んでたら、時間が幾らあっても足りないじゃない」
多少不安そうな表情を見せているものの、ゼノンの呪術を信頼しているルークはそう言葉を零す。その傍ら、エースは終始無言でその儀を見つめていた。
「…これで仕上げ」
呪文を終えたゼノンはそっとライデンの首の後ろに手を差し入れ、持ち上げる。涙の溢れる目を閉じ、僅かに開いたその唇に、ゼノンは何の迷いもなく己の唇を押し当てた。
「呪を結んだから、これで少しは安定すると思うけど…」
再びライデンをソファーに寝かし、ゼノンはそうつぶやく。
「話…聞けそうか?」
ライデンの頬を拭うゼノンに、エースは小さく尋ねる。
「多分ね。急激に精神を追い詰めなければ」
その声の後ライデンの瞼が僅かに震え、その瞳は開かれた。
「…大丈夫?」
ゼノンに尋ねられ、彷徨っていた視線は声の主に注がれた。
「…大…丈夫…」
掠れてはいたが、その言葉ははっきりと聞き取れた。
「どうして、デーさんは地球に行った訳?」
ルークが改めてライデンに問う。ライデンは身体を起こすと一つ間を置き、小さくつぶやく。
「…デーさん、神がどれくらい地球に侵略して来てるかってこと調べようとして行ったんだ。俺だって留めたよ。あんたたちに相談もしないで来たって言ってたから。でも駄目なんだよ、デーさんは。彼女のことになると普段の冷静さがなくなっちゃう。定刻通りに帰って来るからって言われて…それで空間繋げたんだけど…」
----帰って、来なかった。
言い終わった後、ライデンは唇を噛み締めていた。その言葉に、ルークは溜め息を一つ。
「…ったく…無謀なことするんだから。いつも俺等には勝手なことするなって言ってるクセに」
デーモンに対しての嫌味ではあるが、その口調は明らかに彼を心配しているものだった。
「とにかく、ダミアン様に交渉しよう。捜しに行くにしても…もう一度、地球に行く許可を貰わないことには、話にならない」
エースはそう言葉を放ち、凭れていたドアから身を起こした。
「ゼノン、御前はライデンを見ててくれ。俺とルークでダミアン様んとこに行って来るから」
エースはルークを促し、身を翻す。
「朗報を待ってるよ」
いつになく重い声と共に、ゼノンはエースとルークを見送った。
「駄目だ。許可は与えられない」
その無情な声は、皇太子の執務室から聞こえた。
「何故ですか!?副大魔王閣下が、地球で行方不明なんですよっ!?」
ダミアンに真っ向から議論する粋盛んのルーク。しかしダミアンは無情にもそのルークに背を向けた。
「法(おきて)を破ったのはデーモンだ。正式に任務と決まった訳でもないのに、勝手に地球に向かった彼奴に責任はある」
「しかし…っ!」
「何を言っても無駄だ。第一、感情だけで動いている今の状態で許可が下りるかどうかぐらい、わかっていたはずだ。許可を貰いたければ、正式に任務として許可出来るような書類ぐらい、まとめて来るんだな」
「殿下…っ!」
まだ文句の言いたげなルークを制し、それまで黙ってこの両名のやりとりを見ていたエースが口を開いた。
「書類を…まとめてくれば良いんですね?」
「流石に御前は冷静だな、エース。しかし、まだ視察部隊すら出していないのだろう?」
ダミアンは冷然とそう零す。
「任務後、一度視察には行きました。地球の成れの果て…いや、その後の姿は俺がしっかり見て来ましたから、視察部隊は必要ありません。現在の状況は、ライデンが空間を繋げてくれさえすれば、外見から凡そわかります。書類は二、三日後には提出出来ますよ。勿論、許可が下りるぐらい、立派なヤツをね」
まるでほくそ笑むかのように笑ったエースを、ダミアンは斜めに見つめた。
「ほう、面白い。ま、楽しみにしているよ」
「どうぞ。御望み通りのモノは、用意して来ますよ。では失礼。行こう、ルーク」
「ちょっ…エースっ…!?」
さっさと頭を下げ、出て行くエースの後ろ姿を、ルークは慌てて追いかけた。
「ま、たまにはこう言う状況も面白いな。死にゃしないさ。デーモンのことだからね」
二名が消えたドアを見つめ、ダミアンは笑っていた。まるで、全てを見透かしているかのように。
落ちた体制が悪かったのか、身体の節々が痛む。やっとで開けた視界に映るのは、真白の世界。
「…くそっ!結界なんぞ張りおって…神の奴…」
己の中の魔力がほとんど感じられず、デーモンは起き上がった早々、文句を宣う。
身体を起こしたその弾みで、赤い血が染み込んだ白い地に新たに滴が落ちる。小さく舌打ちをしてこめかみの辺りに当てたその手に付いたのは、真紅の血。
「…傷だらけ…って訳か。ここだけでもなさそうだな…」
至るところから流れ出る血は、かなりの量である。しかも神の張った結界の中である所為もあって、傷が治らないどころか、正直動くことも辛い。
しかし彼の凶刃な精神は、未だに健在である。
「…とにかく、彷徨ってみるも良し…か」
デーモンはゆっくりと立ち上がり出血の激しい左の肩を押さえると、トコトコと歩き始めた。まさに猛者(もさ)である。
暫く足を進めると、そこに立ち塞がる数名の姿がある。
「…武装天使までいるのか、ここは…」
呆れたような溜め息を吐き出したデーモンは、実に厄介だと溜め息を一つ。道を塞いだ数名の武装天使たちは、その手に携えた剣を各々デーモンへと向けている。
「甘く見るな。馬鹿共が…」
デーモンは睨みを利かせてそうつぶやくと、腰にかけてあった剣を引き抜く。
----少しぐらい…残っていろよ…
デーモンはそう念じ、僅かな魔力を剣に集めた。もしもこの場にエースやルークがいたら、怪我魔の分際で…などと言われそうではあるが。
「どいつからでも良いぞ。さっさと決着を付けよう」
デーモンが冷笑するのと略同時に、カッとなった武装天使たちは気勢の声と共に一斉にデーモンに向かって来る。
「副大魔王をなめるな」
デーモンはそうつぶやくと、剣を振り上げる。時間にして二分と経たなかっただろう。デーモンの足元には、既に消えてしまった武装天使の僅かな気だけが残っていた。
だが怪我を負っている上に神の結界の中だけあって、流石のデーモンも疲労の絶頂に達していた。
「…くそ…こんな時に…」
不意に眩暈を感じ、デーモンは地に膝を落とす。
---…吾輩としたことが…何たる不覚…
デーモンは目の前が真っ暗になり、そのまま地に倒れ込んだ。そしてその意識は、再び遠くなるのだった。
エースとルークが別館に帰って来ると、ルークの自室にはゼノンの姿しかなかった。
いつもより、心なし顔色が悪く見えるのは…彼らを、心配していたからだろうか。
「ライデンは?」
帰って来た早々に、尋ねたルークの声。
「うん、仮眠室のベッド貸してくれるって言われて、そっちに。それよりも…どうだった?ダミアン様からの許可、貰えたの?」
突然本題に入られ、ルークは気まずそうに表情を曇らせる。
「それがさ…全く耳を貸そうとしてくんないんだ。俺が幾ら言っても、全く聞いてくれない。おまけに、エースが余計なことを…」
「なぁにが余計なこと、だよ。御前がしっかりダミアン様を口説き落とさないからだろうがっ」
口を尖らせて反論するエース。
「口説き落とすって…あのねぇ、俺はあんたみたいに誰かれ構わず手を出すような、軽薄な男じゃないの!」
こちらもムッとしたように言い返すルーク。
「こら…だぁれが誰かれ構わず手を出すって…言っとくけどな、彼奴以外は興味対象外だっ!冗談は顔だけにしておけよなっ!」
「何だよ、顔だけってのはっ!!」
「もぉ…っ!静かにっ…!!」
こんな時に意味もない喧嘩をしているエースとルークの間に立ち、ゼノンは声を張り上げた。
「喧嘩は後っ。ダミアン様から何を言われたのか知らないけど、そんな喧嘩よりデーモン助ける方が先でしょ!?」
いつになくきつい口調で言ったゼノンの声に、エースもルークも口を噤んだ。
「デーモンがいなくて落ち着かないのはわかるけど…今大事なのは、何よりも俺たちの結束でしょう?気が荒立っているのはわかるけど、落ち着かなきゃ。とにかく話を戻そうよ。で、ダミアン様に何を言われた訳?」
話の根源を戻すべく、ゼノンはそう言葉を発した。
「…感情だけで動いている今の状態じゃ許可は下りないって。許可が欲しければ、それなりの書類を持って来いって…」
その言葉が尤もであると認めているのだろう。ルークは口惜しそうにつぶやいた。
「尤もな返答じゃない。で、それに対して、エースはどんな余計なことをした訳?」
「余計なことじゃない。きちんと書類を持って来るって言っただけだ。ルークが勝手に余計なこと呼ばわれしてるだけだ」
「だって、ダミ様にやたら攻撃的だったじゃないかっ!あれでもしも、ダミ様の満足出来る書類じゃなかったら、どうなると思ってんのさっ!」
口喧嘩の第二ラウンドを始めそうになったこの二名を、ゼノンは再び制した。
「もう止めっ!いい加減に……」
瞬間。
「…ゼノン…?」
「…何でも…ないよ…」
突然口を噤んだゼノンに、眉を寄せた二名。
「何でもなくはないだろう?どうしたんだ…?」
良く見れば、さっきよりも更に顔色が悪い。問い質すように口を開いたエースに、ゼノンは大きく息を吐いて言葉を続けた。
「だから、何でもないって…心配性だな、エースは…」
僅かな笑みを浮かべ、そうつぶやいたゼノンではあったが…その直後体制を崩し、床に膝を落とした。
「ゼノン!」
咄嗟に抱き留めたエース。
「…大丈夫…だよ。ちょっと、眩暈がしただけだから…」
エースの手を押し退けるように、ゼノンは無理矢理立ち上がろうとした。しかし小さく咳き込んだかと思った次の瞬間、ゼノンは口を押さえて大きく咳き込む。その押さえた手の隙間から溢れ出たモノは、真紅の鮮血。
「ゼノンっ!しっかりしろ!」
突然のことに目を見張りながらも、エースは吐き出した血に噎せ返るゼノンをしっかりと抱き留めていた。そしてその視界に、今までは長い髪の毛で隠れていた真っ赤に染まった背中を見た。
「…っ!!ルーク、ゼノンの服を脱せっ!早くっ!!」
「わ…わかった!!」
「ちょっ…やめ…」
「じっとしてろ…っ」
慌てて身体を起こそうとしたゼノンの動きを、エースは魔力を以って封じた。ぐったりと意識を失ったゼノンの上着を無理矢理脱がせたルークは、そのまま血に染まったアンダーシャツを引き裂く。
「エース…これ…」
「…この馬鹿ヤローが…」
アンダーの下には、厚く巻かれた包帯が既に真っ赤に染まっていた。
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COMMENT
プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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