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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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Disaster 5
こちらは、以前のHPで2004年02月01日にUPしたものです
 ※シリーズ小説はカップリング小説です。
(勿論DxAですが、ダミアンxルークもあります。
でもこのシリーズのメインはRXです…多分/^^;
7話完結 act.5

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◇◆◇

 剣が交わった瞬間、漆黒の闇が彼等を包み込んだ。その途端、カオスから断絶された空間に飛ばされたのだと理解することは出来た。そして自分たちの背後に、微かな光を零す穴を確認する。
 自分たちは、来てしまったのだ。死者が彷徨う空間に。
 僅かずつ、生気を奪おうとする気が漂い始めると、エースは小さな溜め息を吐き出した。
「成程な。十分で帰れなくなると言うのは、どうやら真実らしいな。十分もここにいれば、生気も殆ど奪われそうだ」
 そう零し、自身の回りに結界を張る。ライデンもエース同様、結界を張って刺すような霊気を遮断すると、前方へと目を向けた。
 漆黒の闇の中に、ぼんやりと小さな光が幾つも見える。
「…あれが、剣に奪われた魂…?あの中から、ゼノンを見つけなきゃならないんだ…」
 その光は、一つ二つではない。闇の所為で遠くまで見通せないものの、並大抵の量ではないことはわかった。その中から、たった一つの魂を探し出さなくてはならないのだ。
「のんびりもしていられない。行くぞ」
 エースが先に、走り出した。それに促され、ライデンもまた、ゼノンの気を捜しながら駆け出す。
 どれくらい、走っただろう。どれくらいの魂の間を走り抜けたのだろう。ライデンは、それすらも良く覚えていなかった。ただ、前を走るエースの背中を追いかけ、感覚を磨ぎ澄まして恋悪魔の気配を逃さないようにと懸命で。
「…そろそろ制限時間の半分だ。ライデン、見つけたか?」
 乱れる呼吸を整えるように立ち止まったエースは、背後のライデンを振り返る。ライデンもまた、荒い呼吸を零して立ち止まっていた。
 戻る時間を考えると、そろそろ先に進むことは限界だった。
 何かを探るように、懸命に気を探る。すると、僅かながら懐かしい気配を感じた。
「……あった!!」
 声を上げ、ライデンが駆け出す。エースもその背後を追いかける。
 そして彼等が立ち止まった先には、今にも消えてしまいそうなくらいうっすらとした色身の魂が一つ。
 確かに、感じ慣れた気が微かに感じられる。けれど、注意して探らなければ、エースなら見落としていたくらい、その発する気は弱々しい。
 呼吸を整えたライデンが、そっとその手を差し伸べる。
「…ゼノン。遅くなって御免ね。迎えに来たよ。おいで」
 その声が、本当に聞こえたいたのかどうかはわからない。けれどその魂は、引き寄せられるようにライデンが差し出した手へと流れて来る。
 ライデンは、自身を包んでいた結界を一時消し去ると、ゼノンと断定した魂をそっと腕の中に抱き締めた。そして再び、結界を張り巡らせる。
「…御帰り」
 感慨深げに魂を抱き締めるライデンを、エースも目を細めて見つめていた。しかし、ゆっくりしている暇はない。
「ライデン、急いで帰るぞ」
「了解!」
 エースが駆け出すとほぼ同時に、ライデンも魂を抱いて走り出した。
 そして、出口である穴が徐々に窄まり始めるのが見えたその時。
「うわっ!」
 突然、ライデンの前を走っていたエースが、何かに弾き返されたかのように勢い良く地面に叩き付けられた。
「エースっ!」
 訳もわからないまま、ライデンは慌ててエースへと駆け寄る。そしてエースもまた、訳がわからないと言った表情で茫然と目の前を見つめていた。
「な…んだ…?」
 思わず息を飲むエースの視線の先に、更に小さくなっていく穴が見える。けれど、何かに行く手を阻まれて先に進めないのだ。
「…何かがある。先に、進めない」
「…っ!?」
 ライデンも思わず先に向けて手を差し伸べる。けれどエースの言う通り、目に見えない何か固いものが指先に当たり、その先へは進めないことを明らかにしていた。
「…帰れない…?」
 思わずつぶやいたライデンの声。背筋を這う悪寒と、青ざめていく感覚を感じながらエースを振り返ると、エースもまた青ざめた表情で息を飲んでいた。
 エースは息を飲んだまま…そしてライデンは最愛の魂を腕に抱いたまま、閉じていく穴を茫然と見つめているしかなかった。
 そして無情にも、唯一の出口である穴は閉ざされたのだった。

◇◆◇

 一方カオスでは、一向に戻って来ない二名を案ずる者たちがいた。
「…遅いね…」
 ぽつりとつぶやくルークの声に、デーモンも不安そうに小さな溜め息を吐き出して、結界の中の二本の剣を見つめていた。
「そろそろ時間だろう?直に戻って来るだろう」
 そう返したものの、先程から何やら嫌な予感がその脳裏に過っている。
 刻々と時間が過ぎる中、彼等の不安は的中することとなった。

 制限時間を過ぎても、エースもライデンもその姿を現さなかった。
 奇妙な空気が流れる中、不安を口にしたのはルークだった。
「何で…帰って来なかったんだよ…っ!あんたの仕業じゃないのか…っ!?」
 思わずガブリエルの胸倉を掴みかかるルーク。けれど、ガブリエル自身も表情を強ばらせ、明らかに動揺しているようだった。
「…待て、ルーク。ガブリエル殿に当たっても無駄、だ」
 掴みかかるルークを制したデーモン。その手が…微かに震えていたのは、見間違いではなかった。けれど、今ここで自分が揺らぐ訳には行かない。そんな想いにぐっと息を飲み込み、その視線をガブリエルへと向けた。
「一度閉じた出口は…もう開かないのか?」
 そう問いかける声に、ガブリエルは大きく息を吐き出した。
「…わかりません。私も、実際に目の当りにしたのはこれが初めてですから。けれど…何故、こんなことが……全て、言い伝え通りに…」
 瞬間、ガブリエルは震える手で自分の口を押さえ、すっと顔色を変えた。青ざめた表情が、何かに辿り着いた結果であることは、デーモンにもルークにも感じ取れた。
「…そうか。違うんだ…あんたが言ったのは、"制覇の剣"と"練磨の剣"だ。でも、ここにあるのは、"練磨の剣"じゃない。"錬叛刀"だ…」
 そう口にしたのはルーク。誰もが、同時にその結論へと辿り着いていた。
「やはり、名前が変わったのはそれなりの理由があったのかも知れません。魔界で最も"錬叛刀"に詳しい者なら、その理由も知っているかも知れません」
 ガブリエルの言葉に、ルークが小さくつぶやく。
「ダミ様だ…」
 そう。ルークはダミアンに話を聞いた時から、わかっていたはずだった。
 剣を封印したのは、ダミアン。そして…その真実を知っているのも、またダミアンなのだ。ただ、問題は…"練磨の剣"が"錬叛刀"と名を変えた理由。それが、全ての元凶だったと、どうしてもっと早く気が付かなかったのか。
「…ダミ様に、聞いて来る」
 胸が痛い。
 全てを知っていたはずのダミアンが…どうして、何も言わずに彼等を送り出したのか。
 何よりもまず、その理由を、知りたかった。
「ちょっ…待て、ルーク!」
 デーモンの制止も聞かず、ルークは駆け出していた。そしてあっと言う間に姿を眩ましていた。
「…あれだけ、冷静でいろと言ったのに…」
 諦めの溜め息を吐き出したデーモン。けれど、ルークの気持ちも良くわかっているはずだった。そして、ダミアンの気持ちも、痛いほどわかっていた。
 何も言わなかったのではなく…言えなかったのだ、と。全てを打ち明けることで…全ての絆を、断ち切ってしまう。だから、口を噤むしかなかったのだと。
 今は、信じるしかない。みんな必ず、帰って来ると。
 身代わりに行かせてしまった以上、どんな不安も、今は飲み込むしかなかった。そしてデーモンがふと視線を向けた先に、ガブリエルの表情が映った。
 いつも気丈で、プライド高いガブリエル。その彼女が、いつも見せないような、不安そうな…何とも言えない表情を見せていたのだ。
「…貴殿が…そんな表情をするとはな」
 つぶやいたデーモンの声に、ガブリエルは顔を上げた。
「…不安では、ないのですか?」
「不安…か。勿論、不安はある。だが…絶対、彼奴等は帰って来る。約束、したんだからな、エースと。彼奴は…約束は必ず守ってくれる。だから…待つしかない」
 その言葉に、ガブリエルは小さな吐息を零した。
「…閣下が、そんな夢みたいな言葉を信じているとは知りませんでした」
「夢みたい…か。確かに、そうかも知れないが…我々にとっては、それが大事な絆なんだ」
 デーモンは目を伏せてぐっと拳を握り締めると、顔をあげた。
「貴殿にとってみれば、厄介者が纏めて消えてくれれば申し分はないだろう?それなのに、そんなに心配する必要があるのか?」
 問いかけた声に、ガブリエルの表情はまた険しくなる。
「心配もそうですが…申し訳ないと思って。私が、剣を盗まれたばかりに…」
「そのことなんだか…」
 ガブリエルの言葉を遮るかのように、デーモンが口を挟んだ。
「あの剣が…ルシフェル殿が仕立てた剣であることが確かならば…何故、天界に残されたその一振りを貴殿が持っていたんだ?貴殿が、ルシフェル殿から譲り受けたのか…?」
 ずっと、疑問に思っていたことを問いかけたデーモンの眼差し。しっかりと見つめたその色は、答えを拒むことは出来ないと物語っていた。
 小さく溜め息を吐き出したガブリエルは、その眼差しに負け、小さく首を横に振ると、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
「…あの剣は…私が預かった、"護り刀"、です」
「…"護り刀"?ルシフェル殿からの?」
「いえ…私は、ルシフェルとの接点は一つもありません。私が入局した時には、もう魔界へ降りた後でしたから。あれは……」
 気まずそうに口を噤んだガブリエル。しかし、諦めたように、その名前をぽつりとつぶやいた。
「…ミカエルからの、です」
「…ミカエル総帥…?」
 思いがけない名前に、デーモンも息を飲んだ。
 ガブリエルはミカエルの妻であるが、噂に聞く分には、夫婦仲は破綻状態だと聞いている。尤も、純潔を重んじる天界人故に、軽々しく離縁することも儘ならないのだが。
「…かつて…ルシフェルが魔界へ降りる際、仕立てた剣の一振りを次期熾天使として期待していたミカエルに託したそうです。結局、熾天使にはなりませんでしたが…その剣は必然的に、総帥としてミカエルが預かることになったそうです。私は、彼と結婚する時に、その剣を彼から"護り刀"として譲り受けました。その時に、この剣の曰くも聞きました。あの剣は、危険過ぎます。何故、ルシフェルが、一振りを天界に残したのかはわかりません。けれど…私は、あの剣を世に出さないことを決めました。だからこそ、私が保管していたのに…いつの間にか、奪われていました。盗まれた理由もわかりませんが…ライデン陛下から聞いた"魔界防衛軍"の話が真実なら、誰かが剣の逸話を知っていて、悪用するつもりだったことは間違いないでしょうが」
「…成程な。だが、その剣のことは天界で広まっていた訳ではないんだろう?ならば、それを知っていた者は限られるんじゃないのか?絞り込むことは出来なかったのか…?」
「それに関してはわかりません。ただ推測が付かないだけで、何処からか噂だけが広まっているのならば…」
「まぁ、そればっかりは調べようがないかも知れないな。ただ、犯人は天界の剣だけでなく…魔界の剣のことも知っている。吾輩とルークも、現に剣を持っている時に闇に引き込まれかけたからな…」
「閣下たちも…?」
 途端に、ガブリエルの顔色が変わる。けれど、デーモンの方は臆している様子はない。それどころか、更にその話に引き込まれたようだ。
「もしも、"魔界防衛軍"の残党の仕業であるのなら…何処に潜んでいるか、全く予測が付かないんだ。我々でさえ、未だ黒幕には辿り着けていない。我々を嘲笑うかのように、我々の知らない所でしっかりと様子を伺っている。今までは魔界だけの話だったが、今回のことで天界にも雷神界にも、その残党が潜んでいると見て間違いはない。そして、我々の想像以上の情報量を得ているはずだ。そうでなければ…ここまで、我々の動きに敏感であるはずがない」
「……厄介な相手に、目を付けられた…と言うことですね…」
 小さな溜め息を吐き出したガブリエル。そして、先ほどから引っかかっていたことを、デーモンに問いかけた。
「…閣下は…"練磨の剣"…いえ、"錬叛刀"について…何処まで御存知なのですか?私が見たところ…他の者たちは、深くを知らないようでしたが…」
「…あぁ…深くは知らなかったはずだ。過去に一度関わっているとは言え、"錬叛刀"はただ魂を吸い取るだけの剣だと思っていただろう。剣を持ち込んだのが誰であったのかと言うことや、その剣の真実の姿も、今回のことがあって初めて耳にしていたはずだ。吾輩以外は…な」
 そこでデーモンは一端言葉を区切り、大きく息を吐いて、再び口を開いた。
「…吾輩は、昔ダミアン様から聞いたことがある。この剣の逸話も、持ち込んだ者のことも。少なくとも、彼奴等よりは詳しくな。だが、全ての真実を知っているのは、恐らくダミアン様だけだろう。それに、吾輩の知っていることが何処まで貴殿の知っている事実と噛み合うかと言うことはわからないしな。実際…"練磨の剣"が、"錬叛刀"と名前を変えた理由は聞いていない。それは貴殿も同じだろう。だからこそ…まさか、こんなことになるとは思わなかったが…」
 神経質そうに指先で顎を触わるデーモン。その心境は、到底穏やかではない。だが、仲魔を信じる気持ちは誰よりも強い。
 その絆の深さを目の当りにしたガブリエルは、小さな溜め息を一つ吐き出した。
「まさかこんなことになるのなら…あの剣は…残しておくべきではなかったのでしょう。今回の件が落ち着いたら…私は、あの剣を処分します」
「…だが…ミカエル総帥からの、"護り刀"なのであろう?それなりの、意味があったものではないのか…?」
 思わずそう問いかけたが…ガブリエルが、素直にそれに応えてくれるとは思ってはいなかった。けれどガブリエルは…暫く口を噤んでいたが、やがて小さな溜め息と共に、その言葉を吐き出した。
「…そうですね。意味は…あったと思います。あれは…私がミカエルから受け取った、"誓約の品"ですから…」
「…"誓約の品"…」
 その言葉の指す意味は、デーモンにもわかった。
 天界では、御互いに誓約の品を送り合うことで、婚姻が成立する。つまりは…あの剣は、ガブリエルがミカエルの"妻"である、と言う証なのだ。
「…失礼だが…あの剣が"誓約の品"であるのなら、処分するべきではないと思う。貴殿と、ミカエル総帥の関係がどのようなものだったかは、我々にはわからないが…大事にしていたのなら、貴殿にも思い入れがあったのだろう…?」
 ガブリエルは、再び溜め息を吐き出す。
「遠い昔の話です。今は…貴殿たちの知っている通りですから。これでも貴殿たちよりも長く生きていますから…その間には…色々なことがあります。あの人は…私の夫である以上に、天界の総帥だった。そして私も…あの人の妻である以上に、戦士だった。私たちの婚姻は、最初から間違っていたのかも知れません。だから…今更思い残すことはないのです」
 どうして…その想いを、今吐き出したのか…それは、ガブリエルにもわからなかった。
 ただ…目の前の副大魔王が、悪魔とは思えないくらい、とても優しい眼をしていたから。
「…馬鹿な話ですね。よりによって…大敵である副大魔王閣下に、こんな話をするだなんて。幾ら何でも…」
「寧ろ…貴殿と吾輩は、今まで何の接点もない。この先も、多分そうだろう。だからこそ、吐き出せたのでは…?」
「……そうかも知れませんね…」
 小さな笑いを零したガブリエル。
 今まで、何の接点もなかったからこそ…偽らずに、その想いを吐き出せたのかも知れない。
 その気持ちも汲み取ったデーモンも、小さく微笑みを零した。
「…吾輩は、天界の仕来りに詳しい訳ではないから、無責任だと思われるかも知れないが…もしも、御互いが納得出来るのなら、別々の道を歩いて行くことも間違いではないと思う。もし、踏み出すことが出来るのならば、貴殿もミカエル総帥も、御互いに思い残すことがない人生を送れるのでは…?過去に縛られて生きるよりも、その方が余程利に叶っていると思うが…まぁ、御固い天界人には難しい発想の転換だろうな」
 例え、敵であったとしても。それでも、無駄に生きることを勧めるつもりはなかった。だからこそ、デーモンはそう口を開いたのだ。
 暫く、その言葉をどう受け留めるべきかと口を噤んでいたガブリエルであったが、やがてその口元に小さな笑みが浮かんだ。
「…そう…かも知れませんね。古い格式に捕われてばかりでは、何も出来ないのかも知れません。その点で考えれば…良い転機なのかも知れませんね」
「前向きに生きてこそ、価値のある人生だろう?まぁ、悪魔の吾輩が、天界人である貴殿に論ずるのも可笑しいがな」
 くすくすと笑いを零すデーモン。そんな姿を見つめながら、ガブリエルは改めてこの悪魔が、副大魔王としての役職に付いていることを納得していた。
 前向きであるが故に、仲魔を信じられる。未来を、信じられる。そんな姿が、他の仲魔たちにも良い影響を与え続けたのは、今目の前で起こっている事実に反映しているかのようで。
 ならば、自分も、出来る限り彼等に協力してやろう。
 馴れ合いではなく…敵として啀み合うのではなく…相手を尊重した、彼女なりのやり方で。
 改めて抱いた彼女の想いは、その表情を幾らか柔らかくしていた。

◇◆◇

 時同じ頃。大慌てで魔界へ戻って来たルークは、そのまま皇太子の執務室へと飛び込んでいた。
「ダミ様、大変です!」
 そう、声を張り上げながら飛び込んで来たルークを、ダミアンは顔色一つ変えずに出迎えた。
「どうした?」
 声のトーンも変わらない。それが、ルークの苛立ちを更に煽ったのは言うまでもない。
「エースとライデンが閉じ込められたんです!"錬叛刀"の中に!」
 その言葉には、流石にダミアンも僅かに表情を変えた。
「閉じ込められた?」
「そうです!知ってるんでしょ!?"錬叛刀"の名前が変わった理由!」
「ちょっと待て、ルーク。落ち着いて、話を整理してから話してくれないか?」
 興奮して、上手く状況を説明出来ないまま、感情でぶつかって来るルークに、ダミアンは大きな溜め息と共にその言葉を与えた。
「そんな呑気なことを言っている場合じゃないんですっ!」
「それなら、尚更落ち着くべきだな。今の御前の話では、筋道が目茶苦茶だ。理解の仕様がない。とにかく、冷静になれ。どうして、エースが?デーモンが行くはずだったろう?」
 デーモンからも言われた言葉。それを思い出し、大きく息を吐き出す。そして、改めて口を開いた。
「デーさんが…とてもじゃないけど、行ける状況ではなかったからです。あの剣の中には、デーさんが殺した"エース"の魂がある。だから…エースが、自分で行くと言ったんです。でも…エースとライデンが"錬叛刀"の中に入ったまま、約束の時間になっても帰って来ませんでした。出て来られなかった原因は…"練磨の剣"が"錬叛刀"と名前を変えた理由と関係していると、我々は判断しました。その理由を…御存知ですよね…?」
 そこまで聞き終えたダミアンは、口を噤んだまま、僅かに目を伏せていた。
 その様子に、確たる証拠だと踏んだルークは、改めてダミアンの表情を見つめていた。
「…ガブリエルは、"練磨の剣"は父様が…ルシフェルが、魔界へ持って降りたと言っていた。そして貴方は、ルシフェルからその剣を譲り受けた。そして、名前が変わった"錬叛刀"を封じたのは貴方だ。だとしたら…知っているはずです。名前が変わった理由を。それがわからなければ…エースとライデンとゼノンを、助けられない。俺たちは、貴方の言葉を、待つしかないんです」
 真っ直ぐにダミアンを見つめる、黒曜石の瞳。それは……"彼の君"に、良く似ていた。
 それが…酷く、心を締め付ける。
「…言ったはずだ。"錬叛刀"に、御前が関わることは許さないと」
 ここに至ってまでその態度を変えないダミアンに、ルークは得体の知れない不安を感じていた。
「今はそんなことを言っている場合ではないでしょう!?エースにライデン、ゼノンの生命がかかっているんですよ!?」
 ダミアンの思考が読み取れず、あからさまにその不安を口にするルークに対して、ダミアンは冷酷とも思えるような台詞を口にしていた。
「御前が関わるべきことではない。彼奴等の状況はわかった。わたしが何とかしよう。だから御前は、ここで大人しく待っているんだ」
「…ダ…ミ様…っ!?」
 目を見張り、息を飲むルーク。そこまで頑なに"錬叛刀"との関わりを拒むダミアンの意図が、どうしてもわからないのだ。
「…どうして…ですか…っ!?こんな事態になっていると言うのに、どうしてそこまで俺の介入を拒むんですかっ!?俺には、何も出来ないと言うんですか…っ!?」
 真剣な眼差しで問いかけるルークに、ダミアンは小さな溜め息を一つ。
「そうだ」
「…ダミ様…」
 いつになく強い口調にダミアン。その表情も、眼差しも、見たことがないくらいに険しいものだった。
「…俺は…そんなに役立たずですか…?俺は…彼奴等を助けることも出来ないんですか…?どうして…」
 ショックを隠しきれないルークは、真っ直ぐにダミアンを見つめたまま。その黒曜石は、涙で潤んでいる。
 大きな溜め息を吐き出したダミアン。
 最早…繕う言葉も出て来ない。
「…最早、潮時だと言うことだな」
「…潮時…って……」
 ドキッとして、思わず息を飲む。
 ルークを一瞥したダミアンは、その眼差しを伏せた。
 そして。
「御前が、"錬叛刀"に関わるなと言う理由を教えてやる。わたしは…あの剣で、御前の父を…ルシフェルを殺した。そして、それを隠す為にあの剣の名前を変えて封じた。わたしは、御前の仇だ。御前から、父親を奪ったのは、このわたしだ。だから、御前に関わるなと言ったんだ。それが、御前が知りたかった真実だ。それで…満足か…?」
「…ダミ様…」
「わたしは…ずっと御前を欺いて来た。御前から、唯一の肉親を奪ったのはこのわたしだ。それをずっと、隠し通して来たんだ。憎みたければ、憎めば良い。御前の憎しみぐらい、一生背負ってやる。それぐらいの覚悟はある。だが…それでおしまいだ。我々の関係も…な」
「………」
 茫然とするルークをその場に置き去りにし、ダミアンは執務室を出て行った。
 ドアが閉まる音が耳に届いた時…ルークの黒曜石から、一筋の涙が零れ落ちた。
 何故だろう…?
 どうしてだろう…?
 酷く、胸が痛い。
 本当に知りたかったのは…そんな事実だったのだろうか…?
 疑問符ばかりが巡る意識の片隅で、ルークは微かな声を、聞いたような気がした。
 そして、無意識のうちに…その身体は、執務室から消えていた。
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
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非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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