聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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Disaster 6
こちらは、以前のHPで2004年02月08日にUPしたものです
※シリーズ小説はカップリング小説です。
(勿論DxAですが、ダミアンxルークもあります。
でもこのシリーズのメインはRXです…多分/^^;
7話完結 act.6
※シリーズ小説はカップリング小説です。
(勿論DxAですが、ダミアンxルークもあります。
でもこのシリーズのメインはRXです…多分/^^;
7話完結 act.6
その頃、剣の中に閉じ込められたエースたちはと言うと、魔力を振り絞って更に結界を強く張り直し、ただ、見えない壁の前でどうしようもなく座り込んでいた。
「…一体、どうなってるんだよ…」
そうつぶやいたライデンの声も、些か元気がない。結界と空間に魔力を奪われているのだから、当然と言えば当然なのだろうが。
エースもまた、困惑の交じった溜め息を一つ零していた。
ライデンの腕の中には、最愛の悪魔の魂がある。それを世に返さなければ、ここへ来た意味はないのだから。
そして何より…自分たちもまた、帰らなければならない。
現世には、待っている仲魔が…恋悪魔が、いるのだから。
けれど、帰る術はない。自分たちは、訳もわからずに、ここに閉じ込められてしまったのだ。
再び、重い溜め息を吐き出した時…エースは、何かを感じてふと顔を上げた。
「…どしたの?」
その奇妙な姿に、ライデンも顔を上げ、エースを見つめる。
エースはと言うと…遠くをじっと見つめたまま、何かの気配を掴もうと懸命に気を凝らしていた。
「…誰か…来る」
「…え?…」
ドキッとして、エースの眼差しと同じ方向を向く。けれど、エースが捕えた"何者"かを見つけることは、ライデンにはまだ出来なかった。
ごくりと、息を飲むエース。その表情は、既に尋常ではなかった。
暫しの後、ライデンもまた、エースと同じように息を飲んだ。
その眼差しの先には…ぼんやりとではあるが、確かに悪魔型を作る魂が二つ、ゆっくりと歩み寄って来たのだ。
「…ちょっ…あれって、まさか……」
目を見張るライデンの言葉に続けるかのように、エースの小さな言葉が零れる。
「…俺、だ…」
信じがたい事実。けれど、見間違えるはずなどない。白い顔に戴いた赤い紋様は…確かに、エースなのだから。
「…もう一名は…?」
真っ直歩み寄って来るもう一名のエースの背後からやって来る、腰までの長い黒髪と、白い顔に戴いた蒼い紋様。それは、ライデンには、見覚えのない姿。だが…持っている雰囲気は、見知った仲魔と良く似ていた。
ライデンがそう思っていると、溜め息交じりの言葉が、エースの口から零れた。
「……ルシフェル…参謀長…」
「…っ!?」
やがて、驚く彼等の前に、うっすらとした二名の姿が到着した。そして、息を飲む彼等を見下ろした、琥珀の眼差し。
『久し振りだな、エース』
「……」
それは、確かにエースの声。と言うことは、答えは一つしかない。
彼は…デーモンが殺した、エースの魂。
僅かに困惑の眼差しを見せるエースに、魂は小さく笑いを零した。
『まさか、こんなところで出会うとは思ってもみなかったな。御前とは、御前が死ぬまでは出会うことはないと思っていたのにな』
「…それは、こっちの台詞だ」
大きく息を吐き出して気持ちを宥めたエースは、改めてその視線を己の魂へと向けた。
「何故御前がここへ出て来た?しかも…ルシフェル参謀長まで連れて…どう言うことだ?」
問いかける声に、魂は再び小さな笑いを零す。
『何故って…来ない方が良かったとでも?ここから出られなくて四苦八苦しているのを、黙って見過ごして、ここの住魔になるまで黙っていろと?折角、この空間の主でもあるルシフェル殿を連れて来たと言うのに』
その言葉に、エースもライデンも息を飲んだ。
「…出られるのか…?」
『条件さえ揃えばな。それについては、ルシフェル殿に聞くのが良いだろう』
エースの魂がそう答え、僅かにルシフェルを振り返る。そして、エースとライデンの視線も当然、ルシフェルへと向く。
暫しの沈黙の後、ルシフェルはゆっくりと口を開いた。
『…この壁は剣の封印壁だ。内側からは壊すことは出来ない。外部の者が封印を解く以外には、手段はない』
「…剣の封印…?内側からは壊せない…?それじゃあ、出るのは無理だと言っているようなモノじゃないか!誰が剣の封印のことを知っていると……」
そう言いかけたエースであるが、不意にその口を噤んだ。
剣の封印。そう言う言い方ではピンと来なかった。だが、違う言い方をしてみれば…
エースが結論に辿り着く頃、ライデンもまた、同じ結論に辿り着いたようだった。
「…"練磨の剣"が"錬叛刀"に変わった理由…?それが、封印…?」
エースの代わりに、ライデンがそう言葉を零す。
僅かに瞳を伏せたルシフェル。それが答えだと言わんばかりに。
「だとすると、"練磨の剣"が"錬叛刀"と名を変えたことを知っている者のみが、封印のことを知っていると言うことになるな…」
心当たりは、ある。"錬叛刀"のことを誰よりも詳しく知っている者。それは、一名しか有り得ないのだ。
その結論を、エースの表情で察したのか、ルシフェルがゆっくりと口を開いた。
『"練磨の剣"を封印した者こそ、唯一封印を解ける者だ。わたしがそれを託した者が、その呪を覚えていることを願うしかないな』
「ちょっと待ってくれ。封印をした者しか、封印を解けないのか?封印をしたのは、貴殿では……"練磨の剣"の名を"錬叛刀"に変えたのは、貴殿ではないのか…っ!?」
自分が思い描いていた結論と違う方向に向かったルシフェルの言葉に、当然エースは息を飲む。
エースは、"練磨の剣"に封印をかけ、"錬叛刀"と名を変えたのはルシフェルだと思っていた。けれど、ルシフェルの言葉が意味するところでは、それはルシフェルではないのだ。
「…全部…ダミ様がやったことなの…?」
不安そうに紡がれた、ライデンの声。心なしか、その表情も声も震えていて。
唯一を知る者。多くを語らず、黙秘を続けて来たダミアン。ならば、あらかじめそうなるであろうことは予測出来たのではないか…?
そんな想いが、彼等の胸に過った。
何の為に…ダミアンは、口を噤んでいたのだろう?こうなることがわかっていながら、何故そこまで……。
不安の色を浮かべるライデン。だが、エースの表情は明らかに不安ではなかった。
本来、エースはここにいるべき存在ではなかった。あの時…躊躇うデーモンをそのまま行かせていれば、今ここにいたのはデーモンだったはず。そう思うと、エースの心中は尋常ではなくなっていた。
そこにあるのは、明らかに怒り、だった。
「…俺たちを欺いたダミアン様を信じるしかないと…?全てを知っていながら、黙って俺たちを行かせたダミアン様を信じるしかないと言うのか…っ!」
「エース!落ち着いてよっ!ダミ様にも、何か、事情があったんだよ。そうでなければ、俺たちがやろうとしていることに口を噤んでいるはずがないじゃない…っ」
何か理由があったはず。そうでなければ、黙っているはずがない。ライデンは、そう信じたかった。そう信じていなければ…疑ってしまえば、今までの関係が、何もかも崩れてしまうような気がして。
「デーさん、言ってたでしょ!?冷静に、真実を見ろって…何があっても、気持ちを乱すな、って」
「約束を守れるとは言ってない!」
「それはそうだけど…っ」
既に、エースは冷静さを欠いていた。自分の身の安全よりも…長年傍に仕えていたデーモンを行かせるつもりだったと言う事実が、エースの怒りを煽ったのだ。
大切な恋悪魔が、犠牲になりかけたと言う事実が。
「理由があれば、何をしても良いと言うのか!?皇太子だから、それが許されると言うのか…っ!?」
「エース、やめて…っ!!」
悲鳴のような、ライデンの声。その声に、エースは一瞬息を飲む。
目の前にあるのは、今にも泣き出しそうな表情のライデン。そして…黙って、真っ直に自分を見つめる、かつての自分とこの空間を作った堕天使。
『皇太子だから…言えなかったんじゃないのか?』
ぽつりとつぶやいたのは、もう一悪魔の自分。
『全てを吐き出すことが出来れば、ダミアン様もどれだけ楽だっただろうな。けれど、それを口にすることが出来なかったから…その秘密を明かすことが出来なかったからこそ、苦しかったんじゃないのか?』
「…けれど、それがデーモンとライデンを行かせて良いと言う理由にはならないだろう?必ず助かると言う保証が何処にある!?」
『確かに御前の言うことは正しいよ。一理あるとは思う。けれど、今の御前は冷静じゃない。だから、察することが出来ないんだろう。ダミアン様の胸の内を、な』
そう言葉を放つ魂の表情は何処か冷めているようで、エースの感情を更に煽っていた。
「御前は何とも思わないのか!?自分の恋悪魔だろうが…っ!」
『今は、俺の恋悪魔じゃない。御前の、恋悪魔だ。だが、生きている御前の恋悪魔だからこそ、誰よりも生還を願うだろう?もしも御前が残される立場であれば、デーモンが帰って来ないことなんか許さないだろう?どんな手段を取ったとしても、必ず取り戻すだろう?それだけの"絆"を、ダミアン様は信じていたんじゃないのか?』
もう一名の自分にそう言葉を向けられ、エースは口を噤んだ。
確かに、自分が残される立場にいれば、デーモンを失ったままにしておく事はなかった。どんな手段を取ったとしても、必ず取り戻すつもりでいるのだから。それを、常に心の奥底に抱いているのだから。
『御前のその強い想いを見込んで、ダミアン様は御前を残し、デーモンを行かせようと思ったんじゃないのか?御前ならば、必ずデーモンを…そして仲魔を、助けられると思ったから』
「………」
そうかも知れない。ダミアンならば、そこまで考えていたかも知れない。
けれど、今のエースには、それも屁理屈でしかないのだ。
「…だとしても、閉じ込められることがわかっていて行かせたことは許せない」
そう口にしたエース。勿論、理屈では多分理解しているのだ。全て、不可抗力であったと言うことを。けれど、それを素直に飲み込めなかったのは…やはり、そこに己も含めて、生命の危険を感じたから、としか言いようがないのかも知れない。
「…俺は、信じてるから…ダミ様のこと…」
ぽつりとつぶやいたライデンの声。ふと視線を向けてみれば、今にも泣き出しそうな表情を必死に堪えながら、そっと抱えたままの最愛の魂をじっと見つめていた。
「俺は…ゼノンを助ける為なら何だってする。生命をかけたって…この魂を、必ず連れて帰るんだから…」
『…そうだよな。その為に、わざわざこんなところまで追いかけて来たんだもんな』
もう一名のエースが、優しく微笑む。そして、その手をそっと伸ばし、ライデンの頭をポンポンと叩いた。勿論、実体のない魂である。現実に触れている訳ではない。だが、ライデンにはそれが確かに現実として、触れた温もりに感じていた。
『御前も見習えよ、エース。ライデンは、こんなに前向きじゃないか。抜け出せないことを嘆くんじゃない。怒る気持ちはわかるが、恨むんじゃない。今大切なのは、御前たちの生命力なんだから。生き続けようとする気力、なんだから』
「……」
既に、生命を失った魂。けれど、異空間では生き続けている魂。この空間にいる限り、彼等は滅ぶことを知らず、永遠にそのままで有り続けるのだ。
自分たち、限りある生命とは違って。
それ故に抱いたのは、"生きる"ことへの憧れ、だったのかも知れない。
口を噤んだエースの姿を見つめる、濃紺の眼差し。限りなく黒に近いその深い色は、何を思っていたのだろう。ふと開いた唇が、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
『…信ずればこそ、真実が見えて来るもの。疑心暗鬼に陥れば、己の身を護ることすら、危うくなるものだ。何が正当で、何が邪道なのかと言う想いも、それぞれが抱いた基準の元でしかないことは確かだがな。様々な想いに触れてこそ、色々なものが見えて来るものだ。一つのことに拘わり過ぎると、そなたが潰れてしまうぞ』
その言葉に、ドキッとしてエースは顔を上げた。
目の前にいる、もう一名の自分。それが、思い詰めた末の結果だったことは言うまでもないはずだったのに。
そして…ルシフェル自身もまた、その結果だったはず。
その時、ふとエースの脳裏を過った疑問。
「…貴殿が…ここにいると言うことは、貴殿もまた、剣を受けたのですか…?」
問いかけた声に、ルシフェルは小さく微笑んだ。
『わたしは、自分の意志で、この剣を受けることを望んだ。"彼の君"の前に醜態を曝すよりは、その方が良かれと思った結果だ。尤も…周囲は反対したがね』
ルシフェルが言う"彼の君"が誰であるか、エースに察しはついていた。かつてもまた、彼より同じ言葉を聞いた記憶があったから。だが、その事情が良くわからないライデンは、怪訝そうな表情のまま、ルシフェルの表情を見つめていた。
そして。
「貴殿は…それで良かったと言う結論を出せたんですか?」
問いかけた言葉に、微かな微笑みが返って来る。けれどそれは何処か、切なく見えたのは…気の所為だったのだろうか。
『わたしは、後悔はしていない。けれど…その所為で傷つけた者もいたことは事実だ。一つの結論を出すことは、皆の倖せに当て填る訳ではないことを忘れてはいけないのだ。だから、それが良かったとは言えないかも知れない。ただ、わたしに関しては…何よりも最良の結論だったとしか、繰り返せないがね』
その言葉を、その時のエースは、"彼の君"に宛てた言葉だと思っていた。勿論、エースの思考はそう考えるだけの余裕しかなかったと言えばそれまでなのだが。
エース同様、ルシフェルの真意を伺えないライデンは、ただ黙って、その表情を見つめていた。
ライデンがルシフェルの姿を見たのは初めてのこと。ルシフェルと言えば、ルークの父親であると聞いている。よくよく見ると、確かにその表情の作りの一つ一つは、ルークと良く似ていると思う。けれど…その瞳の奥の深い色は、ルークの胸の内とはまた違った色を見せているように思えてならなかった。ルークよりも更に深い色。それはまるで…底の見えない、恐怖感さえ感じさせた。
双方とも、堕天使であることには変わりない。けれど…天界を降りた理由はまるで違うのだ。その境遇の違いが、その瞳の色に現れていたのかも知れない。
ぼんやりとそんなことを考えている間に、ルシフェルは小さな吐息を吐き出すと、ゆっくりとその視線を閉ざした。
『…どうやら、"鍵"は現れたようだな』
「…"鍵"…?」
エースが怪訝そうに眉を顰たその瞬間。
ドンッと言う重い地響きと共に、奇妙に高まる周囲の魔力。そして、何かに引き寄せられるような感覚を覚えた。
「…な…んだ…?」
慌てて周囲を見回すエース。そして、息を飲んで、しっかりと恋悪魔の魂を抱き締めたライデン。
『…"鍵"は二つ。この結界壁は"外"と"内"の双方からの"鍵"を使わねば開かぬ扉だ。協力してやろう』
小さく微笑んだルシフェルは、そう言葉を零すと、彼等の前にすっとその手を差し伸べた。そして、その掌が微かな光を帯びた。
『"彼の君"を、信じろ』
くすっと、小さな笑いを零したのはもう一名のエース。その笑みが、この世界で彼等が見た最後の微笑みとなった。
次の瞬間…エースとライデンは、目映い光に包まれて、何者かの手によってその場から引き離されていた。
時少し前。
カオスでは、先程からデーモンとガブリエルが結界を見つめながら消えた二名を待ち侘びていた。
そして、幾度目かの溜め息を吐き出した時、その場にもう一名の姿が現れた。
「…ダミアン様…」
神妙な面持ちで現れた魔界の皇太子。
「待たせたな。後はわたしに任せろ。"錬叛刀"の封印を解いて、エースとライデン…それからゼノンの魂は、わたしが召還する」
状況は既にルークから聞き得ていたのだろう。多くを語らず、それだけを口にすると、徐ろに結界の方へ歩み寄る。そして自らの指先を傷つけて赤き血が溢れ出すと、呪を唱え始めた。
その呪は輝く魔法陣となり、結界を包み込むように取り囲んだ。
傍観者たちが見つめる中、その声は高くなる。
そして。
徐々に高まる魔力によって、"錬叛刀"の封印が解かれた。その直後、輝きは大きくなり、能力が爆発する。
「…っ!」
傍観者たちは、その眩しさに思わず目を覆った。そして暫しの後、その光が薄らぐのを感じて目を開けてみれば…その結界の中には、茫然としている二名の姿があった。
「エース!ライデン!無事で良かった…」
思わずそう声を上げたのはデーモン。その声と姿に、自分たちが帰還したのだと言うことを察したのだろう。二名の口から、安堵の溜め息が零れた。
無事に帰還した姿に、ガブリエルも小さな吐息を吐き出すと、彼等を包んでいた結界を消滅させる。
やっと戻って来ることが出来たと言うことを実感しながら、二名の視線は自然ともう一名の姿へと向いていた。それは、彼等を剣の中より召還した本魔、ダミアンへと。
そしてエースはと言うと、戻って来ることが出来たと言う安堵感よりも先に、彼に対しての怒りの感情を露にしていた。
「…エース…?」
その徒ならぬ雰囲気を感じ取ったデーモンの言葉にも、視線を向けない。ただ、真っ直に向けられた眼差しの意味を、当のダミアンもわかっているのだろうか。ただ黙って、その視線を受け留め、しっかりと視線をエースへと向けていた。ライデンはその視線の間で、おろおろしていると言うのが正しいかも知れない。
「…無事で何よりだったな。さ、ライデン。その魂を早くゼノンに…」
「あ…はい…」
ダミアンに声をかけられ、ライデンは慌ててゼノンを包む魔法球へと走り寄った。だがエースは、相も変わらずその場所で、その手を固く握り締めていた。
そして。
「…悪いな。急用を思い出した。ちょっと魔界に行って来る。またあとで、様子を見に行くから。それから"錬叛刀"は、情報局に返して来る。もう必要ないだろうからな」
怪訝そうに自分を見つめるデーモンにそう声をかけ、"錬叛刀"を拾い上げて鞘に納めると、自分を見つめるダミアンを一瞥し、踵を返した。
そしてその背中が消えると、ダミアンは小さな溜め息を吐き出した。
「…ダミアン様…エースは…」
心配そうにつぶやいたデーモンの声に、ダミアンは小さく笑う。
「もう一仕事、だ。ルークには…話をしたよ」
「……っ!」
小さく息を飲んだデーモンの表情が、僅かに歪む。けれどダミアンは自分の身体でそれを他の者の目から隠すように抱き寄せ、その耳元で囁く。
「…気丈を保て。それが、御前の仕事だ」
「…御意に…」
そして、デーモンの肩を一つ叩くと、ダミアンは姿を消した。
当然、デーモン以外の者には…一部始終を見つめていたガブリエルにも、その奇妙な空気の意味はわからなかった。
大きく、息を吐き出して平生を保つ。そしてデーモンは、ライデンが駆け寄った魔法球の傍へと歩みを寄せる。
「…その魂を肉体(うつわ)に返してやれば、ゼノンは元に戻るんだな?」
「えぇ、恐らく」
デーモンの背後に立つガブリエルも、その様子をそっと見つめていた。
ライデンの腕の中の魂からは、僅かな生命反応しか感じられない。それが本当にゼノンの魂であるのか、彼等には判別するのが難しいくらい、弱々しい生命の鼓動だった。ライデンだからこそ、判別出来たのだろう。
「…これを戻したら…ホントにゼノンは帰って来るんだよね…?」
デーモンたちを振り返り、念を押すように繰り返したライデン。その瞳が僅かに潤んでいるのは、安堵感からだろうか。
「あぁ。記憶まではどうなるかわからないがな。だが、部分的な魂を殺した訳ではないから、きっと大丈夫だろう」
唯一不安な点はそこにある。
かつての事を思い出すならば、エースはデーモンに関する記憶を、憎しみ以外全てを失くしたのだ。勿論それは、"デーモンへの想い"を殺したのだから当然なのかも知れないが。だが、何処まで記憶がしっかり伴っているかと言うことは、覚醒してみなければならないのだ。
ごくりと息を飲んだライデンは、意を決したように魂にそっと口付けると、その腕を魔法球の中に溶け込ませた。そして、ゆっくりとその手をゼノンの心臓の上へと掲げる。
淡い光を放つ魂は、そのまま肉体へと溶け込んで行く。
時間をかけて、魂は完全にゼノンの肉体へと消えて行った。急にどうと言う変化は現れなかったが、仄かな輝きで包まれた身体は、確かに魂を受け入れた証拠だった。
「直ぐに目覚める訳ではないですから、暫く安静にしておいた方が良いでしょう」
そう言葉をかけたガブリエル。その表情も、幾分安心したように見られた。勿論、ゼノンが確実に戻って来なければ、"制覇の剣"もガブリエルの元には戻って来ない。
その剣は、今ガブリエルの手の中にある。ライデンが剣の中から戻って来た時から置き去りになっていたので、ガブリエルが拾い上げていたのである。
そのまま姿を眩ませてしまえば、確実に戻って来るはずの剣。けれどガブリエルは敢えてそれをせず、ライデンとの約束を正々堂々と守るつもりでいた。
黙って見つめるその先にいる、ゼノンの姿。穏やかな表情に大きな溜め息を吐き出したのは、デーモンも同じことだった。
「雷神界に連れて帰って、様子を見た方が良いだろう。医師もいることだし、我々だけよりは環境も良いはずだしな」
「そだね。じゃあ、このまま雷神界に連れて行くことにするよ」
ライデンもデーモンの意に同意し、再び魔法球に能力を満たした。そしてふと、"制覇の剣"をガブリエルが持っていることに気がついた。
「あ…それ…」
「…あぁ、拾っておきましたよ」
ライデンのつぶやきに気がついたガブリエルが、"制覇の剣"を彼へと差し出す。
「約束、ですから。ゼノン殿が帰って来るまで、この剣は雷神界の管理下です。それに、今回の事件の証拠品でもありますから。御持ちになって下さい」
「…わかった。じゃあ、事が納まったら、あんたに返すから。あんたにも…大事な剣だもんね」
ガブリエルから"制覇の剣"を受け取ったライデンは、その姿に向け、にっこりと微笑んで見せた。
「有難う。なるべく早く、返すからね」
その言葉に、ライデンの精一杯の感謝の想いを感じて、ガブリエルも小さく微笑んだ。
敵であり、敵ではない。
そう言ったミカエルの言葉がふと蘇った。今まで理解しようとは思わなかったその言葉の意味が、ほんの少しだけわかった気がして…自然と零れた微笑みだった。
デーモンとライデンが魔法球と共に姿を消すのを見送りながら、ガブリエルは小さな吐息を吐き出していた。
「…私も、甘くなりましたね…」
その言葉に、自嘲気味な笑いを零しつつも、満更悪い気もしないガブリエルであった。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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