聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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FEEL
空が、青かった。
ただそれだけのことだったのに、そこから動くことが出来なかった。
暫く、空を見上げていた。
白い雲が流れ、消えていく。何処に流れて行くのかなんてことは理解らないが、この星から離れることはないのだろう。
もう直、消えてしまう星なのに。
久し振りに、星が綺麗な晩だった。
屋敷の裏にある木立ちの、一番大きな木の下。そこでぼんやりと空を見上げていた俺の耳に、近付いて来る足音が聞こえた。そして、届いた声。
「また、ここにいたのか?」
「悪い?」
俺が一番気に入ってる場所なんだ。別に、良いじゃないか。
「まぁ、御前の趣味をどうこう言うつもりはないけどな」
くすくすと笑う声に、俺はちょっと視線を向けた。
今し方、シャワーを浴びて来たばかりなのだろう。まだ湿った匂いのする洗い晒した髪が、風に流されている。それが邪魔なのか、片手で押さえようとしているが、どうも上手く纏まらないらしい。
「…馬鹿だな、俺も。もう同じことは繰り返さないつもりだったのに」
「同じこと?」
「そ。馬鹿なことはやめようと思った訳だ」
そう。同じことを繰り返すつもりはなかった。この惑星に対して、俺はそれ程強い思い入れを持っていた訳じゃない。それに、この惑星だって、俺に対して思いを寄せている訳ではないと理解っているのだから。それどころか…嫉妬の眼差しを受け続けているんだ。
「御前も、気を付けろよ」
俺は、それだけ言い残して踵を返した。
少し前のこと。
俺の愛した惑星が、一つ消えた。彼女も、俺を愛してくれていた。だから、胸が潰れる思いがした。
もう、同じ思いはしたくなかった。だから、どの惑星にも感情移入しないことに決めていた。
なのに。どうして…こんな惑星から離れられないのだろう。
空を渡る風は青。海を流れる水は蒼。草木を染める色は碧。その全てが、彼女を可憐に見せていたのだろうか。
だが、その生命はもう長くない。それが確実なのに…どうしてこうも魅せられるのだろう。
この俺も…そして、デーモンも。
遠く果てない、この広がりに
心預けてみれば、今まで
気づかなかったことを知る
いつも変わらない、この波音に
心預けてみれば、小さな
この想いすぐ、消えてく
その日、仕事が入ったついでに足を伸ばして海まで行ってみた。
公園のベンチから、海を眺めてみる。
晴れ渡った空が眩しくて。日差しを跳ね返す水が眩しくて。
その公園に来ていたカップルやら家族連れやらが、出店で売っているエサを、鳩や鴎に与えている。その所為で栄養が行き渡り過ぎているのか、少々肥満気味のようだ。
ぼんやりとする俺の髪を、風が巻き上げる。
一体、いつまでこうしていられるのだろう。いつまで、この惑星は彼等に夢や希望を見せていられるのだろう。
彼女が眠りに着く時、彼女を愛した"奴"は、どれ程の傷を、その胸に受けるのだろう。
押し寄せて来る波を見つめながら、溜め息を一つ。
今のこの時が、酷く哀しく思う。
昔…俺が愛した惑星も、とても綺麗だった。その彼女が消えた時、俺は…傍にいることが出来なかった。
俺の為にその生命を縮め、そして消えてしまった。そのショックの大きさは、今でも思い出すのが辛い。
蒼く美しい、地球と言う惑星。その色に魅せられたのはみんな同じだったはず。
彼奴だけではない。そう思いつつも、やっぱり、一番想いを寄せていたのは彼奴なのだ。だから…この惑星の最後に、きっちり付き合う気でいるのだろう。
「…忠告ぐらい…してやろうかな」
予めわかっていることなら、多少、気持ちの整理も付くだろうから。
そんな想いから吐き出した独言を、まさか聞かれているだなんて思いもしなかったけれど。
「何の忠告?」
不意に背後から問いかけられ、驚いて振り返る。
「…ゼノン」
何でここに?
そう問いかけようとした口を噤んだのは、まず当たり前だ。
この近辺は、彼奴の守備範囲(テリトリー)じゃないか。考えてみれば別に不思議じゃない。
「珍しいじゃない。エースがこんな所にいるだなんて」
「ま、気分転換、ってヤツだよ」
俺の隣に腰を降ろしたゼノンは、くすくすと小さな笑いを零した。
「いい景色、でしょ?」
「まぁな」
ぼんやりと見つめる先には、押し寄せる波。
「…この景色、切り取って置きたいくらい」
ふとつぶやいた声に、俺は視線を向ける。
ゼノンにしては、酷く寂しそうな眼差しが、そこにあった。
「惜しいなら、写真にでも残してたらいいじゃないか」
その声に、再びその口元に笑みが戻る。
「駄目だよ。俺が欲しいのは、今のこの景色だもの。写真は確かに残るかも知れないけど、それは真実じゃない。偽りの記憶でしかないんだよ」
「それは…そうだけどな」
それなら、どうしてこいつはあんなに写真に拘わるんだか…それもまた、この男の不思議なところだった。
「この景色を…このまま残して置きたいね。そうすることが出来たなら、きっと……」
その先の言葉は、ゼノンの口からは出て来なかった。
俺たちが任務を遂行するのなら、それは不可能に近い。
生きることを拒否する惑星は、このままの色を残しては置けないのだから。
「今のうちに、堪能しておくしかないんだな」
「そうだね」
日が沈むまで、俺たちはそうしてぼんやりと海を眺めていた。
両手を大きく広げてみても
決して掴めるモノはなく
誰の力も及ばない
大切な事は
手に入れることじゃない
共に生きること
宵闇の中に浮かぶ月。その光は、儚いほど淡い色で、静寂を包み込んでいた。
溜め息を一つ。
心に思うことなら簡単だった。ただ、それを口にすることが、酷く難しく思えて。
「…たった、一言なのにな…」
深入りするな。
たった、その一言が言えない。
それは、もう手遅れなのかも知れないと言う想いがそこにあったからかも知れない。
俺がそれを口にするまでもなく、デーモンは多分…俺が思っている以上に、この惑星に想いを寄せているだろう。
かつて俺が、他の惑星を愛したように。
例え、手遅れであったとしても…もう、戻れないくらいに深く想っていたとしても、この惑星に待っている結果は同じなんだ。
滅びない惑星はない。
それを理解っているはずなのに…どう仕様もなく、儚い生命に魅かれていく姿を、俺は引き留めることが出来なかった。
全ての後悔は、彼女に出逢ってしまったこと。
空と海が溶け合うように
大地と風が交わるように
光が満ち溢れる時も
闇が染み込んでいく時も
この星を護れと言うことじゃない
この星を救えと言う訳じゃない
共に生きることが出来たなら
誰のモノでもないのだから
風が荒野に向かうこの空を
いつも、いつでも、見つめていたい
懐かしい夢、描いて
遠くの森、焦がれて
終わらない歌、唄って…
今日も聞こえる彼奴の歌声は、きっと途切れることのない想いのコトバなのだろう。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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