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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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STILL ALIVE 13
こちらは、以前のHPで2003年10月11日にUPしたものです
 ※シリーズ小説はカップリング小説です。
(勿論DxAですが、ダミアンxルークもあります。
でもこのシリーズのメインはRXです…多分/^^;
13話完結 act.13

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◇◆◇

 ルークがライデンとレプリカと連れだって皇太子の執務室を訪れたのは、もう日も落ちてからだった。
「遅くなりました」
 執務室のドアを開け、そう言葉を放つと、そこには既にやって来ていたデーモンとエースの姿もあった。
「ライデンはもう大丈夫なのかい?」
 問いかけるダミアンの声に、ライデンは小さく頷いた。
「…済みません。御心配をおかけして…もう、大丈夫です」
「そうか。なら良いんだが…。それではエース、頼むよ」
「はい」
 ダミアンに促され、エースはゆっくりと口を開いた。
「夕方、ゼノンの屋敷のレプリカから、わたしとルークの元に連絡が入りました。ゼノンを捜してくれ、と言うことでした。心当たりを捜した後、屋敷に行ってみればライデンとルークがいて、ゼノンがいなくなったとの報告を受けました。何処にも姿がなく、執務室と研究室には鍵がかかっていました。研究室は鍵を見つけて中に入りましたが、蛻(もぬけ)の殻でした。執務室は合鍵はないとのことだったので、ドアを壊して中に入ってみるとそこも同様に蛻の殻でしたが、これを見つけました」
 そう言ってエースが取り出したのは、ルークもチラリと見た、あの封筒と水晶のペンダント、そして真白な仮面、だった。
「レプリカの話では…ゼノンは数日前から、執務室と研究室の片づけをしていたようです。そして、自分のやることに口出しをするな、とレプリカに言ったそうです。自分は…一国の王となるライデンには相応しくない、と言ったそうで…失踪した原因も、多分それなのではないかと」
 報告を聞きながら、ライデンは俯いたまま自分の爪先をじっと見つめていた。そしてドアの隣に立っていたレプリカも、辛そうな表情を浮かべていた。
「うちの局員にも足取りを追わせましたが、昼間にこの執務室に報告に来てからの足取りは掴めませんでした。行方を眩ませたのは、その後に間違いありません」
「成程ね…」
 机の上に置かれた封筒と水晶のペンダントを手に取ったダミアンは、小さく息を吐き出すと、封筒の封を切った。
 中から出て来た手紙を覗き見たデーモンは、その最初に掲げられた言葉に、息を飲んだ。
「…辞職願…?」
「…やっぱりな」
 封筒、と言う時点で予想はしていたものの、やはり目の前でそれを見てしまうと、途端に胸が痛くなる。
「ウイルスの件で責任を取って辞職する、と言う旨が書かれている。局長を辞職するのだから、屋敷も処分して欲しいとのことだ。レプリカは文化局で職を持っているから良いものの、他の使用魔の再就職先も、全部段取りを付けて行ったようだね。余程前から準備を進めていたようだな」
 ダミアンの言葉に返って来るのは、溜め息ばかりだった。
 ゼノンが、そんな準備をしてたことに、誰も気が付かなかったとは。
 一同の気持ちが落ち込む中、ダミアンは俯いて唇を噛み締めるライデンと、ドアの前で立ち尽くしているレプリカへと視線を向けた。
「どうやらこれは、御前たちに宛てたモノらしいな」
 そう言って、水晶のペンダントをライデンへ、真白な仮面をレプリカへと渡す。
 黙って唇を噛み締めるレプリカ。その仮面の意味は…ゼノンと、レプリカにしかわからないことであった。けれど、ダミアンにはその意味が何となくわかっていたのだろう。黙って、その頭をポンポンと叩くと、再び自分の椅子へと戻る。
 ペンダントを受け取ったライデンは、小さく震える指先で水晶に触れた。
 確かに感じられる、ゼノンの波動。それがライデンの気と触れ合い、小さな反応が起こる。
 微かに聞こえたのは…ゼノンの"声"、だった。
『…御前がこれを手にしていると言うことは、もう俺がいなくなっていることはわかっている頃だね』
 ゆっくりと紡がれる言葉。その一語一句を聞き逃さないよう、誰もが黙ってその言葉を聞いていた。
『御免ね、ライデン。御前には、何度謝っても許して貰えないかも知れないけれど…俺には、謝ることしか出来ない。だって俺は、罪を犯したんだもの。ウイルスを手がけたのは、他の誰でもない。この俺なんだから。ダミアン様やデーモン、ルークが、幾ら俺に責任はないと言ってくれても、俺が罪を犯したことには変わりない。だから俺は、その報いを受けなければならない。御前の王位継承が決まった今だから、俺も離れる決心が付いた。俺は、御前には相応しくはない。でも…嫌いになった訳じゃない。何も言わずに姿を消すことになってしまったけれど…これだけは忘れないで。俺は、ずっと御前のことを愛しているよ。御前が、立派な雷帝になることを、望んでいるよ。だから……元気でね、ライデン。ずっと、忘れないから……』
----さよなら。
 "声"は、そこで終わっていた。
 誰も言葉を発することが出来ない。ライデンも唇を噛み締めたまま、涙を堪えている。
「…他に…方法はなかったんだろうか…」
 口を開いたのは、デーモンだった。
 その言葉に、溜め息を吐き出したのはダミアン。
「方法は、幾らでもあったはずさ。だが、ゼノンにはこう言う方法しか、思い浮かばなかったんだろう。それが…ゼノンなんだよ」
「馬鹿…だよね、彼奴は…」
 ふと口を開いたのは、ルーク。
「俺たちみんなを助けてくれたのに…一番大事なライデンを傷つけることしか出来ないなんて…」
 遣り切れない想いは、誰もが同じこと。
 大きな溜め息が零れる。それは、誰と限定する必要もなかった。
 しかし、その直後、溜め息とは違う大きな吐息を吐き出した者がいた。
「…俺は、信じるよ。ゼノンのこと」
「ライデン…」
 恐らく、一番精神的にも参っていると思われていたライデンが発した言葉に、一同の視線が注がれる。
 その脳裏に過ぎっていたのは…最後にゼノンと過ごしたあの日の言葉。
『ずっと…好き、だよ…ライデン。色々…有難うね』
 あの言葉は…自分に向けた、最後の…別れの言葉、だったのだろうか。
 今聞いたメッセージも含め…ゼノンだけが呼ぶ"ライ"と言う愛称も使わず、きちんと名前で呼ばれた。どんな気持ちでそう呼んだのかすら、気付かなかった。あの時、愛していると言えなかったゼノンの気持ちを…受け留められなかった。
 とても、胸が痛い。でも多分…それ以上に、ゼノンも胸が痛かったのだろう。
 誰にも言えずに…独りで悩んで、出した結論だったのだろう。
 だから…精一杯、笑っていよう。いつか…もう一度、出逢えるまで。
「ゼノン…俺に言ったよ。俺がいるから、帰って来られるって。だから俺…立派な、雷帝になるから…ゼノンがそう望むのなら、頑張るから…ゼノンが安心して戻って来られる居場所を作って待ってるから…そしたら…きっと、帰って来てくれるよね…?その為なら…頑張れるから……」
 その頬に、涙が伝わる。懸命に笑ってみせても、ポロポロと零れ落ちる涙。
「約束…したもん。ずっと、傍に居る、って……だから…きっと帰って来る。いつか…その胸が、痛まなくなったら…帰って来てくれるから…」
 きつく、唇を噛み締める。その顔は、最早笑ってはいなかった。だが、その強い想いは確かなモノだった。
「…わたくしも…信じて待っていたいと思います。わたくしの主は、ゼノン様だけです。ですから…屋敷の処分だけは…どうにか回避出来ないでしょうか?屋敷がなければ…帰って来られませんから…」
 その胸に真白な仮面をしっかりと抱き締め、真っ赤に潤んだ眼差しをダミアンに向けたレプリカは、必死にそう訴える。
 その想いをわかっているダミアンは、小さな吐息を吐き出すと席を立った。
「あぁ…御前たちの気持ちは良くわかっているよ。屋敷の処分はしない。局長の椅子も、暫くそのままにして置く。取り敢えず今は…信じて待っていよう。わたしたちが信じて待っていてやれば、きっと戻って来てくれる」
 にっこりと微笑みを浮かべたダミアンは、ライデンとレプリカにその視線を向けた。
「頑張れるね?」
「…はい」
 ライデンもレプリカも、小さく頷きを返す。
「…吾輩たちも、信じているから。大丈夫だ。きっと、帰って来る」
 デーモンの声に、エースもルークも、にっこりと微笑んでライデンの背中をポンポンと叩いた。
「…うん」
 その気持ちが、何よりも心強い。何よりも、心の支えになる。
 ライデンは、声を上げて泣いた。
 本当は、誰よりも切なくて…哀しくて…寂しくて。でも、信じて待っていれば必ず恋悪魔が帰って来てくれると思うから。
 ただ、その想いだけを、胸に。
----ライデンには…良い仲魔が沢山いるから。
 そう言ったゼノンの言葉が、レプリカの脳裏に甦る。
 確かに、支えてくれる仲魔は沢山いる。けれど…一番傍にいなければならないのは、他の誰でもない。ゼノン一名だと言うのに…主は、ここにはいないのだ。
 切ないその想いを…その泣き声を、誰もが胸が潰れる想いで聞いていた。
 帰って来ると言う確証は、何処にもないとわかっているから。

◇◆◇

 その夜、デーモンが自分の屋敷へとライデンを連れ帰り、レプリカもゼノンの屋敷へ。エースは職務の残っている情報局へと戻って行った。
 皇太子の執務室に残ったのは、主たるダミアンと、ルーク。
「…納得出来ない顔だね」
 暗く落ち込んだルークの表情に、ダミアンが小さく言葉を零す。
 すると、ルークは小さな溜め息を一つ。
「…出来る訳、ありません。ライデンがゼノンを想う気持ちは、痛い程わかっているはずなのに…ゼノンがライデンを想う気持ちも、わかるはずなのに…それが、不条理に思えてならないなんて…」
「不条理、ね…まぁ、御前の気持ちも、わからなくはないよ」
 小さな吐息を吐き出すダミアン。
「ライデンとレプリカには、あぁ言ったものの…文化局をいつまでも局長不在のままにしておく訳にも行かないのが実状だろうね。だが、今全てに結論をつけることは、わたしにも出来ないね。あの状況で、流石にそこまで冷酷になる訳にもいくまい」
 勿論、保留にしてそれで全てが丸く収まる訳ではないことは、ダミアンも承知の上。それでも、そうせざるを得なかったのは…残されたライデンとレプリカが、余りにも不憫で。
「…そう言えば、レプリカに渡したあの仮面って…」
 ダミアンが黙ってレプリカに手渡した真白な仮面。それに関し、ダミアンは何も触れることはなかった。けれど、その意味を察していると踏んだルークは、改めてそれをダミアンに問いかけた。
「あれはね…レプリカが、ゼノンに忠誠を誓った証、だ。多分、仮面師としての仕来りだったんだろう。それを返却した、と言うことは…侍従関係を白紙に戻す、と言う意味だよ」
「………」
「まぁ、それはゼノンとレプリカの問題だからね。わたしが口を挟むことではない。だから、他の者にも言わなかったんだが…多分、エースは知っているだろうね。昔…その頃に、エースも関わっていたはずだからね」
 小さな溜め息を吐き出すダミアン。
 レプリカの並々ならぬ想いは、誰もがわかっていた。それを一方的に撤回され、ショックを受けたのはライデンと同じだろう。
 けれど、一つだけ違うことは…あくまでもレプリカはゼノンの使用魔である、と言うこと。ゼノンがレプリカに仮面を返したとは言え、王都に戻ってさえ来れば、その関係も元通りになる可能性はかなり高い。しかし、ライデンに関しては、そう簡単に話が進まないであろうことは、わかり切っていることでもあった。
「彼等の手前、全て保留にはしたが…ゼノンが無事に帰って来たところで、もう一度素直に局長に戻るかどうかもわからない。それに…ライデンが雷帝に就任したとして…ゼノンが魔界に在籍している以上、今まで通り傍にいられると言う保証もない。多分、デーモンやエースはわかっていると思うが…ライデンがそれを、何処まで理解しているか…」
 それは、ライデンには言えなかった現実。
 中立を護る雷神界。だが、ライデンとゼノンが一緒になる、と言うことで、魔界とのパイプが太くなると天界が判断すれば…そこに、揉め事が起こらない訳がない。今までは、ライデンも魔界へ修行に来ていた身であったから、大目に見ていたのかも知れないが、雷帝の立場となると話は変わって来るのだ。
「まぁ、御前があの場で顔に出さなかったのは正解だね。とにかく、ライデンを宥めるのが先決だったからね」
「でも…それで本当に、ライデンが報われるんですか?誰かがそれを伝えてやらなきゃいけないんだったら…その時こそ、深い傷を受けるんじゃ…」
「そうかも知れない。だが、ライデンは負けないよ。ゼノンを信じている限りはね」
 不確かな未来の中で、それだけが唯一の確証。
「誰かを想う気持ちは、ヒトを強くする。ライデンはまさにその典型だろう?もう少し、ライデンを信じてやっても良いんじゃないか?」
「……」
 ダミアンが言いたいことも、ルークには良くわかっているはずだったのに…どうしても割り切ることの出来ない自分がいる。
「…ゼノンは…本当に帰って来ると思いますか…?」
 問いかけた声はとても重い。
「…御前は、戻って来ないとでも?」
 ルークの様子を眺めつつ、問い返したダミアン。その問いかけに、ルークは小さな溜め息を吐き出しながら、首を横に振った。
「大事な仲魔ですから…帰って来て欲しいと言う思いは当然あります。でも…こんな風に出て行ったゼノンが、素直に帰って来るはずがない。もし、帰って来たとしても…ライデンの傍にはいられないと思うのなら、きっと突き放すはずです。それが、本心ではなくても。でも、ライデンにとっては、突き放されると言うことには変わりない。裏切られた傷は…そう簡単に消えるモノじゃないことは、俺が一番良くわかっています。俺は…それを予測出来るのに…それを回避させてやるべきかもわからないし、回避させるべきではないのなら…俺は、ライデンを見ていられない…」
「ルーク…」
 わかっているからこそ、どうして良いのかわからない不安。それがルークが抱えている想いであると言うことを理解したダミアンは、大きな溜め息を吐き出すと、腕を伸ばしてルークの頭をそっと抱き寄せた。
「わかっているからこそ…漠然と"信じろ"と言うことに抵抗があるのか。ならば…御前が味方になってやれば良い。御前に不安があるのなら、わたしが支えてあげるから」
「…ダミ様…」
「わたしは、何処へも行かない。そう、約束したね?御前の不安は、わたしが受け留めてあげるから。だから…御前は、ライデンを護ってやれば良い。例え傷ついても、それを恐れずに立ち直る道を、示してやれば良い。そうだろう?」
 それしか方法がないのなら…ただ宥めるよりも、慰めるよりも、全てを受け留めることが何よりの方法ならば。
 小さく頷いたルークを、ダミアンは柔らかく抱き締めていた。
 大切な恋悪魔を、護り続けて行くように。

◇◆◇

 その日の夜遅く、デーモンの屋敷を訪れたエースの姿があった。
 ライデンと共に客間の寝室にいると言うことだったので、通されたリビングで暫し待つことになった。
 日も変わるかと言う頃になり、デーモンはやっとリビングへと現れた。
「悪いな、待たせてしまって」
 そう言いながら、デーモンはエースの前へと腰を降ろす。
「ライデン、大丈夫か?」
 問いかけた声に、デーモンは小さな溜め息を一つ。
「他の者の前では、それでも彼奴なりに気丈に振舞っていたんだけれどな…やはり、ショックだったんだろう。帰って来てからは食事も取らずに、黙ったままずっと泣いていた。さっき、やっと眠ったところだ」
「そうか」
 エースも溜め息を吐き出した。
 多分、信じているとは言え、ライデンもそれが確たる証拠としての根拠がある訳ではないことをわかっているのだろう。ただ、信じたいと言う気持ちが大きいだけで。
「…御前が病床にいる時に、ライデンに尋ねたことがあったな。ゼノンがいなくなったらどうするかって。まさか、現実になるとは思ってもみなかったが…」
「それで、ライデンは何て?」
「…そんなことは考えないことにしてる、って言ってたな。何があってもゼノンと一緒にいる、ってな」
 自分も、そう思ったはず。
 デーモンを護る為ならば、どんなことでも出来ると思っていた。失わない為に、精一杯両手を伸ばして掴んでいようと思っていた。
 全ては、共に過ごす為に。
 ライデンも同じ想いを抱いて、その両手でゼノンを捕まえていたはずなのに…するりと滑り落ちてしまったのは、どうしてだろう?
「俺たちがここでどれだけ悩んだところで、何も変わりはしないのにな。俺たちの想いが、ゼノンに届いているかもわからないと言うのに…」
 わかってはいても、そうすることしか出来ない。
「…そう言えば…あの真白な仮面だが…御前は、あれがレプリカの物だとわかっていたのか?」
 仮面を持ち帰って来たのはエースである。それがゼノンが残していった物だとは言え、あの場に意味のある物かどうかの判別を、エースがどうつけたのか。デーモンはそれを問いかけた。
「あぁ…最初は良くわからなかったが…ダミアン様がレプリカに渡した時、思い出したんだ。レプリカは…今はその名を使っていないとは言え、仮面師だろう?昔…俺もゼノンもまだペーペーだった頃にな、仮面師に関わったことがある。俺は直接会ったことはなかったが、話には聞いていた。その後ゼノンを慕ってレプリカが来たんだ。彼奴は何も言わなかったが…その後で、レプリカがその時の仮面師だったとわかった時、本来の名前を捨ててまでゼノンの元で働くその意味がわかった。そして残されたのがあの真白な仮面、だろう?あの真白な仮面は、仮面師が忠誠を誓う証、だ。昔、本で読んだ記憶がある。だから、それをレプリカに返す、と言うことは…」
「…全て、なかったことに…と言うこと、か…」
 小さくつぶやいた声に、エースも小さく頷いた。
「まぁ、そう言う事だろうな。今にして思えば…黙ってしまっておけば良かったのかも知れない。だが、それじゃ、レプリカにはゼノンの本心が伝わらない。今は、持ち帰って良かったと思っているよ。それが…レプリカには辛いことだとしても、な」
 仮面を返したのは、ゼノンなりの"解放"の意味があったのだろう、と。
 せめて…自分に見切りをつけて、新たな道を歩いて欲しい。そんな思いが、ゼノンにはあったのだろう。
 それは、主として。そして…仮面師に関わった、研究者の一名として。
「ただ…ゼノンの気持ちはわかるけどな…どんなに相手を思ってのことだとは言え、言葉が足りな過ぎる。あれだけじゃ…ライデンもレプリカも、納得出来ないのは当然だ」
 ただ、待つことしか出来ないことが、何よりも不安で。何よりも苦しいことだと言うこと。ライデンとレプリカは、いつそれに気が付くのだろう。
 大きな溜め息を吐き出すエースに、デーモンは小さく微笑んだ。
「ライデンもレプリカも、純粋に待っているんだ。だから、それで良いじゃないか。レプリカはゼノンの帰るべき場所をきちんと用意してくれている。ライデンは、ゼノンの為に強くなれる。きっと、立派な雷帝になれるさ。だから、我々はそれを見守って行くしかないんだ」
「…前向きだな、御前は。それに…ライデンもな」
「当たり前だ。"勇往邁進"をライデンに教え込んだのは吾輩だからな」
「通りで」
 大きな溜め息が、エースの唇から零れた。だが、その表情に、先程までの苦悩の表情はなかった。
「大丈夫だ。一緒に待ってやろう」
「…仕方ないな」
 にっこりと微笑むデーモンの前、エースも苦渋の笑いを零していた。
 今出来ることが、それだけならば。精一杯の想いを込めて。

◇◆◇

 数日後。ゼノンの屋敷の使用魔たちは、レプリカを除いた全員が新たな主の下で働き始めていた。勿論、誰もが喜んで移って行った訳ではない。けれど、主がいない今、そうするしかないのが現状なのだから。
 独り、残されたレプリカは…その書斎でぼんやりと部屋の中を眺めていた。
 いつかまた…ここに、主が帰って来てくれるだろうか…?
 それは、何の確証もない…ほんの小さな希望。
 その手にずっと持っていた真白な仮面を胸に抱き締め、小さく言葉を紡ぐ。
「…いつまでも…御待ちしております。貴方は…わたくしの主、ですから」
 その頬に、幾筋もの涙が零れる。
 今は、信じて待つことしか出来ない。それが、どんなに辛くて…切ない時間だったとしても。
 
 無常な時間は…始まったばかりだった。
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プロフィール
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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