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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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STILL ALIVE 7
こちらは、以前のHPで2003年08月23日にUPしたものです
 ※シリーズ小説はカップリング小説です。
(勿論DxAですが、ダミアンxルークもあります。
でもこのシリーズのメインはRXです…多分/^^;
13話完結 act.7

拍手[3回]


◇◆◇

 皇太子宮にやって来ると、執事によって直ぐにダミアンの寝室へと通された。
「ゼノンです」
 そのドアには結界が張ってある為、ノックすることは出来ない。だが、当初からゼノンだけは声紋認識で簡単に解除出来るようにされていた為、名乗るだけで結界は解除された。
「どうぞ」
 結界が解除されるや否や、ダミアンの声が帰って来る。その声に促され、ドアを開けて寝室に足を踏み入れる。
 上半身を起こしたままベッドに納まっているダミアンは、その視線を、窓の外へと向けていた。
「診察に来ました」
 そう声をかけると、ふと視線がこちらを向く。
「御前は律儀だね」
 くすっと、笑いを含んだ声。だが、明らかにその表情も、眼差しも、元気がない。
 ウイルスが、確実にダミアンの身体を蝕んでいることは明確だった。
「職務、ですから」
 短くそう答えると、ゼノンはダミアンの熱を測り、手に巻かれた包帯を解き始める。
 微熱は、未だ下がらない。そしてその手の傷はかろうじて塞がっている。だが、その内面は、まだ出血が続いているのだ。
 いつ果てるともない交戦の先に見えた、ごく僅かな光り。それを確実にするまで、どんなことをしてでも守らなければならない生命が、ここにある。
 いつも通りの手当を終え、後片づけをする後ろ姿をぼんやりと見つめていたダミアンは、ふっとその表情を緩めた。
 多分、それは笑っている、と称せるのだろう。
「何か…わたしに言いたいことがあったんじゃないのか?」
 そう問いかけると、その背中がぴくっと小さく反応した。
「何を聞いても、驚かないよ」
 全てを悟っているかのようなその言葉に、ゼノンは大きく息を吐き出した。
 そして、ゆっくりとダミアンへと視線を向ける。
 全てを見透かすようなその澄んだ眼差しを向けられてしまえば、最早逆らうことは出来なかった。
 この悪魔に…隠し事は出来ないのだ。
「…重大な…報告です」
 重い口をゆっくりと開き、ゼノンはその全ての報告をした。
 問題のウイルスが…自分が手がけたモノだと言うことも、包み隠さずに。
 全てを話し終えると、その部屋の中には沈黙だけがあった。
「…そう、か」
 暫しの沈黙を破り、ダミアンはそう口を開いた。
「申し訳ありませんでした…」
 深々と頭を下げるゼノンに、ダミアンは小さく笑ってみせた。
「気にするな。御前が撒いた訳じゃない」
「ですが…」
「そうか。御前に気にするなと言う方が無謀だったな」
 思い出したようにポンッと手を打ち、ダミアンはくすくすと笑った。
 だが、その笑いをすっと納めると、真っ直ぐにゼノンを見つめた。
「それじゃあ、御前に対する処分を言い渡す。今現在、魔界に蔓延っているウイルスを撲滅させることに専念しろ。それが、御前に下された処分だ」
「…それだけ…ですか?」
「そうだ」
 思いもかけない処分に、当然ゼノンは目を丸くする。しかし、ダミアンは相変わらず、柔らかな表情を浮かべたままだった。
「御前の責任ではないだろう?御前が故意的に広めたウイルスなら、当然然るべき処罰は与えるさ。だが、そうではない。不可抗力だ。それを、御前に押しつける訳にはいかないだろう?御前はウイルスに対する処置と言うカタチで、既に自分の罪を償っていると、わたしは思っているよ。だから…それ以上思い詰めるな。今まで通り、文化局で研究に励んでくれれば良い。それが魔界の為でもあり、御前の為、だ。わたしの生命は、御前に預けたのだから、もしもの時はそれまでだ。だが例えその時でも、御前に責任はないよ」
「ダミアン様…」
「今言ったことは、上層には内緒だよ」
 茶目っ気たっぷりにそう笑うダミアンに、ゼノンは返す言葉もなかった。
 ダミアンの寛大さを身を以って感じ、その申し訳なさで…思わず、一筋涙が零れた。
「ルークやライデンは良く泣いていたけれど…初めて見たね、御前のそんな顔は」
 手を伸ばし、ぽんぽんとゼノンの頭を軽く叩くダミアン。その仕種がとても優しくて…胸の奥が痛い。
「済みません…本当に……」
「もう、良いから」
 その声。その温もり。その優しさ。その強さ。その偉大さ。
 その全てが、今まで自分たちを支え、護っていてくれたのだと、改めて気が付いた。
 今や、魔界の運命を握る皇太子、ダミアン。
 何としてでも、彼を助けたい。
 その想いは、ゼノンの中で前にも増して強くなっていた。

◇◆◇

 時同じ頃、ライデンはデーモンの屋敷を訪れていた。
「どう?具合の方は?」
 寝室に通されるなり、そう問いかける声に、デーモンはくすっと笑った。
「あぁ、心配ない。体温は戻って来たみたいでな、調子も良いんだ」
「そう。良かった」
 確かに、デーモンの顔色は悪くはない。機嫌も良いようだし、この分だと臨床実験と称した対処法も上手く行くかも知れない。そう思うと、ライデンの頬も僅かに緩んだ。
「ゼノンの話だと、一週間ぐらい様子をみて、次のステップに移るらしいから。それが上手く行けば、次はルークとダミ様。そして、最終的に全種族に抗体が行き渡る。その間に悪化しなければ、ウイルスの撲滅も目前、ってことね」
「だと良いけどな」
 そう言葉を返しながら、デーモンは昨夜の騒動を思い出していた。
 ゼノンの様子が可笑しい。そう言って、エースはゼノンの元にライデンを送った。そのライデンがここに来ていると言うのだから、ゼノンはもういつも通りの職務に戻っているのだろう。
「…大丈夫か?」
 思わず問いかけた、デーモンの声。
 具体的に、何かを心配した訳ではない。ただ…空元気、と言うのだろうか…ライデンの表情が、いつもと何処か違っているような気がして。
「昨夜のゼノンのこともあるし…」
 そう言いかけたデーモンは、ふと口を噤む。
 ライデンが…泣き出しそうな顔をしていたから。
「ライデン?」
 ウイルスの発生場所の件は、まだライデンしか知らないこと。
 それを話してしまえば…彼はそれを咎めるだろうか?
 それを話さなければ…彼はそれを咎めるだろうか?
 話すことも黙っていることも、ライデンには辛いことだった。
 ウイルスに侵された当事者が…ここにいると言うのに。
 ウイルスを作った恋悪魔が…心を痛めていると言うのに。
「おい…」
 もう一度問いかける声に、ライデンは大きく息を吐き出した。
「…泣かない」
 そう、小さなつぶやきが聞こえた。それはきっと、ライデンの自己暗示だったのだろう。
 そして、意を決したように、その口を開いた。
「デーさん…実はね……」
 黙っていることは出来なかった。話すことで、ゼノンが助かる道が見つかれば。そう思って、ライデンはその全てをデーモンに話した。
「そのことは…他の奴等は知ってるのか?」
 全てを聞き終えると、デーモンはそう問いかける。
「ううん。ダミ様にはゼノンが報告に行ったけど…他にはまだ…」
「そうか…」
 ひとしきり思案に暮れるデーモンを、ライデンはただじっと見つめていた。
 当事者は…事実を知って、どんな結論を出すのだろう…?
 それを聞くのは、とても怖かった。でも…前に進むと決めたのだから、どんな答えを出したとしても受け止めるしかないのだ。
 そんなライデンを見つめていたデーモンは、ゆっくりと口を開いた。
「取り敢えず…彼奴等には話した方が良いと思う。ダミアン様ならきっと、寛大な処置を与えてくれる。だから、処罰のことは心配しなくても良いだろう。そうなると残された問題は…誰がウイルスを広めたか、と言うことになるだろう?その犯魔を探すとなれば、情報局や軍事局の協力も必要になるだろうからな」
「……」
 エースが協力してくれるのならば、きっとウイルスを盗み出した犯魔は見つかる可能性が高いだろう。
 だが、しかし…素直に協力を求めることが出来ない自分が、ここにいるような気がして。
 エースは…きっと、許してはくれない。たった一つの不注意から…誰よりも大切な恋悪魔を、巻き込んだのだから。
 唇を噛み締めたライデンの表情で、その心情はわかっていた。しかし、デーモンは敢えてその口を開き、その言葉を紡ぐ。
「…御前が、苦しんでるのはわかっている。だがな、目の前の現実から逃げてもどうにもならないだろう?御前は、ゼノンを助けてやるんだろう?だったら、御前がそんな顔をするな。ゼノンがウイルス撃退に努めている間に御前が出来ることをやらずにどうする?」
「…わかってるよ…わかってるけど……エース、絶対に怒るよ。デーさんを…ダミ様を、ルークを…多くの種族を巻き込んだ原因が、直ぐ目の前にあったのに…管理者であるゼノンが、それを見逃したこと…怒らない訳、ないじゃない?」
「そりゃ、怒るかも知れない。だが、そんなことを気にして、魔界の滅亡を黙認するのか?エースの怒りは一時だ。喉元過ぎれば何とやらだ。心配する気持ちはみんな同じだろう?今まで共に戦った仲魔じゃないか。案ずるな」
「…うん…」
 頷いた瞬間、ライデンの中で、堪えていた何かが外れたような気がした。
 その途端に、ポロリと頬に零れた涙。
 泣かないと決めていたのに…これ以上、自分が心配をかけまいと決めていたのに…どうして、涙が止まらないのだろう。
「御免…俺が泣いてもしょうがないのね……ホント、情けない……」
 袖口で涙を拭いながら、小さな言葉を零す。
 いつまでもこんなに心が弱いのでは、雷帝を継ぐことも儘ならない。だから、強くなろうと必死になって堪えていたはずなのに。どうして自分は、いつまでもこんなに脆いのだろう。
 それが悔しくて…情けなくて。更に涙は溢れて来る。
 そんなライデンの心情を察していたデーモンは、小さな笑いを零すと、腕を伸ばしてライデンを引き寄せると、自分の胸へとその頭を抱き締めた。
「情けないもんか。頼りにしているんだぞ?」
「…デーさん…」
 いつも、泣くなと言うデーモンが、今日は違う。泣いたことを咎めることもない口調に、ライデンは涙に濡れた顔を上げた。
 そこには、微笑みがある。
 まるで、いつものゼノンのように。
「精一杯…頑張ってるんだもんな。想う気持ちは、みんな同じだ。今は泣いたって良いさ。誰も、御前を情けないなんて思わない。全部、吐き出していけば良いさ。御前がいるから、ゼノンが気丈でいられるんだ。御前が、ゼノンを支えているんだぞ?自信持って良いんだからな」
 今は、ゼノンに頼ることが出来ないとわかっているから。だから今は、せめてこうして受け止めてやろう。
 そんなデーモンの想いも、ライデンには伝わっていた。
 大切な仲魔だから。だから、支え合うことも出来るのだと。
 だからこそ、護らなければ。
 ライデンは大きく息を吐き出すと、袖口で涙を拭う。そしてデーモンに向けた眼差しは、前にも増して力強く感じた。
「…有難う。もう、大丈夫」
 自分自身にも言い聞かせるように、ライデンはにっこりと笑ってみせた。
 そして。
「エースの所に行って来る」
「あぁ、頼んだぞ」
 デーモンの声を背中に、覚悟を決めたライデンはルークの屋敷へと向かった。

 不安な心を抱えながらも、しっかりとした足取りで、ライデンはルークの屋敷へとやって来た。
「エースは?」
 使用魔にそう聞くと、ルークの寝室にいるとのこと。大きく溜め息を吐き出し、そのドアの前までやって来た。
 軽くノックをすると、内側からドアが開かれる。出迎えたのは、エースだった。
「…ゼノンは?」
 ライデンの登場に、そのことが気がかりだったのだろう。問いかけるエースに、ライデンは一つ間を置き、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「…任務に…戻った」
「もう大丈夫なのか?」
「ゼノンは、大丈夫って…それに、ダミ様の検診もあるからって…」
「そうか」
 部屋の中へ促されると、ベッドに半身を起こしたルークも、軽く微笑んで迎えてくれた。
「具合は?」
 ルークに、そう問いかける。
「うん、割りと落ち着いてる方かな。あれ以来、酷い症状も出てないしね。まぁ、ベッドから離れることは許可して貰えないけど、まぁまぁってとこ」
「そう。良かった」
 僅かに、ライデンの口から安堵の溜め息が零れる。だが、これから報告しなければならないことを考えると、やはり気持ちはまだ深く深く沈んでいるのだった。
「…どしたの?」
 その暗い表情に、ルークもちょっと表情を曇らせる。
「何か、あったのか?」
 エースも、怪訝そうにそう問いかける。
 ライデンは大きく息を吐き出し、気持ちを宥める。そして、やっとでその言葉を口にした。
「…怒らないで聞いて…」
「…は?」
 真っ直に見つめたのは、エースの眼差し。それが、彼の気に触ることなのだと察することは容易だった。
「ゼノンから、何を聞いた?」
 すっと表情を変えたエースは、低い声で問いかける。それだけで、最早エースが怒りを感じ始めていることは明確であったが。
「…ウイルスの…こと…」
「ウイルスがどうした?」
「…発生場所の確認が取れたって…」
「何処だ?」
「……」
「ライデン」
 なかなか、言葉が出て来ない。自分を見つめる二名の眼差しが辛くて…思わず目を伏せたライデンであったが、ここで自分が臆しては何も始まらない。そう自分に言い聞かせ、顔を上げて口を開いた。
「ゼノンの…研究室」
「研究室って…」
 その言葉が指すことが事実であるのなら、ウイルスはゼノンが手がけたもの、と言うことになる。
 瞬間、エースの気が鋭く変わった。表情もとても険しい。
 エースは座っていた椅子をひっくり返す程の勢いで立ち上がると、ドアに向かって真っ直歩き出した。それを慌てて制したのは、ライデン。
「怒らないでっ!確かに、ゼノンが手がけたウイルスだけど、盗まれたんだよ!だから、蔓延したのはゼノンの責任じゃないでしょ…っ!?」
「盗難にあったなんて報告は受けてない!ゼノンは文化局の管理者だろうっ!?」
「管理者だからって、絶対でなきゃいけないのっ!?だったらあんたは、情報局に入って来る全ての情報を、詳細に説明出来る!?」
「それとこれとは話が違うだろう!」
「違わないっ!根本は一緒じゃない!」
「ちょっとあんたたち…いい加減にしなよ」
 御互いに声を張り上げる二名を制したのは、病魔であるルーク。しかし、それでもエースの怒りは止まらなかった。
「そのたった一つの不注意で、魔界がどれだけの被害を被ったと思ってるんだ!?どう、責任を取れると思ってるんだ!?」
「だから…ゼノンだって頑張ってるじゃない!ウイルスを撃退する為に、手立てを考えてるじゃない…っ!!」
「デーモンを犠牲にしてか!?それで治らなかったらどうするつもりだ!?」
「…それは…」
 声を荒げたエースに、ライデンは返す言葉が見つからなかった。
 《青の種族》と《紋様のない種族》が侵されたウイルスは、今や魔界全土に広がっている。この後に及んで実験が上手く行かなければ、最早魔界は滅亡の一途を辿ることになることは目に見えていた。
 俯いて、口を噤んでしまったライデンに一瞥を与え、エースは再びドアへと足を向ける。
 だが、そこに立ち塞がる姿が一つ。その手には、ベッドサイドに置かれていた水差しが握られている。しかしどうやら、エースの視界にそれは映っていないようだ。
「言い過ぎだよ」
「ルーク、退けよ」
「退かない」
 エースの前に立ちはだかるルークの眼差しは鋭く、真っ直にエースに向けられていた。
「ライデンを責めたって、どうなるモノでもないでしょ?少し頭を冷やしな」
 瞬間、ルークは水差しの水を、エースへとぶちまけた。
「ルークっ!!」
 その行動には、ライデンも思わず目を見張って息を飲んだ。
 当然、エースは避けられるはずもなく、頭からずぶ濡れである。だが、エースが声を荒げたところで、ルークの眼差しは変わることがない。
「当事者から、言わせて貰うよ。俺は、ゼノンの責任だとは思ってない。多分、ダミ様だって、デーさんだってそう思うはずだよ」
「だからって、ゼノンが全くの傍観者と言うことでもないだろう!?」
「確かに。ゼノンの管理の不備にも非はあるだろうよ。でも、俺はそれよりも、あんたの言葉の方が許せないよ」
 そう言葉を放ち、ルークは一呼吸置く。エースの表情は相変わらず険しいが、水をぶちまけられたことで僅かに正気が戻ったのか、先程までの刺々しさは多少和らいでいた。だが、まだまだ纏う気は険しく、そんな気を向けられたルークを、ライデンも心配そうな眼差しを向けていた。
「デーさんに望みを託したことを、犠牲だと思ったの?」
 その言葉を紡いだルークの表情が、酷く悲しそうに見えたのは気の所為ではないはず。その証拠に、エースもライデンも、僅かに息を飲んだ。
「誰の為に生きようとしているのか、わかってるでしょ?なのに、そんな言い方するのは、デーさんにもゼノンにも失礼だよ。魔界を救う為に…ウイルスに侵された全ての者を救う為の第一歩。そんな説明は、上辺だけで十分。デーさんは…あんたの為に生きようとしてるんじゃない。ゼノンは精一杯手を尽くして、その道を見つけてくれた。生きる為の手助けをしてくれたんだよ?なのにどうして、素直に感謝出来ないかな?どうして、咎めることしか出来ないかな…?」
「……」
「俺は、綺麗事が言いたいんじゃない。ただ、一時の感情に任せて、真実を曲げないで。責任を全てゼノンに押しつけることが正しいことかどうかは、あんたにもわかってるはずだよ?」
 ルークの言葉には、エースも口を噤んだままだった。
 重たい溜め息が零れる。それは、エースの口から。
「…悪かった」
 一言そう言い残すと、エースは濡れたまま部屋を出て行く。
 その背中を見送るライデンは、当然心配顔だった。だが、ルークはそんなライデンに、小さく笑ってみせた。
「エースも、信じてやってよ。大丈夫、ちょっと興奮しただけだよ。真実を見極める目は、誰よりも鋭いんだから」
「…ルーク…御免ね…」
「俺に謝ることなんかないでしょ?」
 そう言って笑ったルーク。
 ルークが言いたいことは、ライデンにも良くわかっていた。勿論、エースも良くわかっていたことだろう。ただ、思いがけない展開に、冷静さを失っただけで。
「俺も…いけなかったんだ。最初から、エースが怒ると思ったから予防線張ったりして…ゼノンばっかり、保護するような言い方だったのかも知れないし…だから…」
「そうかもね。それが、エースの気に触ったのかも知れない。でも、エースだって、あんたの気持ちは良くわかってるよ。ゼノンが俺たちを必死で護ろうとしてくれているのと同じように、あんたも必死でゼノンを護ろうとしてる。そんな気持ちなんかさ、言われなくたってみんなわかってるんだし。デーさんも俺も…ダミ様もね」
 にっこりと微笑むルークに、ライデンは涙を堪えて、唇を噛み締めていた。
 そう。デーモンにも言われたこと。
 今まで支え合って来た仲魔だからこそ、誰よりも案じているのだ。だから、本気で怒ることもある。だが、それから逃げていたら、何も解決はしないと言うことも。
 溢れそうになった涙をぐっと飲み込み、ライデンは大きく息を吐き出した。
「有り難う」
 そう言った声に、ルークはにっこりと微笑んだ。
「ま、俺たちに出来ることは、信じて待つことだからさ」
「そうだね」
 やっと気持ちが落ち着いたライデンも、僅かな笑みを零した。
 信じて待つことしか出来ないのならば、腰を据えて待つしかない。
 そう気持ちの整理を出来たことが、何よりもライデンの心の安息となった。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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