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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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かがやきのつぼみ 水端(前半) 1

第四部"for CHILDREN" (略して第四部"C")

こちらは、以前のHPで2005年07月31日にUPしたものです。
第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
4話(前半) act.1

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◇◆◇

 季節はゆっくりとだが、確実に進んでいる。
 勿論それは、誰に対しても同じ速度で。
 その季節が幾度も巡れば、それなりの成長を記すのは当然のこと。
 そしてそれは、それぞれの成長の速度に大きな差が出始める頃。

 そんな季節の中、彼はまだ、足踏みをしていた。

◇◆◇

 ガシャン。
 乾いた音と共に、一振りの剣が床に投げ出される。途端に、賑やかだった訓練室が水を打ったようにしんと静まり返る。
 それと同時に、大きな溜め息が一つ。
「…また御前か…」
「…済みません…」
 指導教官た呆れた顔で見つめる先には、一際小柄な少年。左腕を押さえた右手の指の間からぽたぽたと床を濡らした鮮血。
「誰か、医務室連れて行ってやれ」
 指導教官の声に、彼らを見つめていた一名が咄嗟に手を上げる。
「はい!僕が行きます!」
 そう言って駆け寄ってきたのは、怪我をした少年と寮で同じ部屋を共有している仲魔。
「ゼゼ、行こう」
 そっと少年を促し、これ以上指導教官の溜め息が零れないよう、そそくさと身を翻す。
「…大丈夫?」
 耳元で囁いた声に、小さく頷いた少年。彼にとって、この怪我は初めてではない。だから、ある意味、自分自身でも呆れているのかも知れない。
 何はともあれ、鮮血の溢れる傷口を押さえながら、彼らは医務室へと足を運んだのである。

 ドアをノックする音に、目を向けていた電子カルテから顔を上げる。
「はい、どうぞ」
 声に促され、入り口のドアが開く。そしてそこに顔を覗かせたのは、最早常連とも言える、生徒二名。否、本当の常連は、怪我をした少年一名…であるが。
「今日はどうしたんですか?」
 毎日のことだが、呆れることもなくにこやかに問いかけるのは、この医務室の医師たるリン。
 透き通るような透明な肌に、銀糸の長い髪は、滅多には御目にかかれない龍の一族の血を引く種族だった。
「…剣術の実習中にちょっと…」
 口を割ったのは、付き添って来た少年、アルフィード。怪我をした当魔は、傷口を押さえて俯いている。
「ゼフィー、いらっしゃい。傷を見せて」
 アルフィードよりも優に頭一つ分は小さい少年は、ゆっくりとリンの前椅子に腰を降ろす。
「…じゃあ、僕はこれで…。ゼゼ、急がなくて良いからね。ちゃんと見て貰ってね」
 そう言い残し、アルフィードはリンに頭を下げ、医務室を後にする。
 残されたのは…常連たるゼフィーと、医師たるリンの二名。
「…僕…どうして、みんなと同じことが出来ないんだろう…」
 それは、幾度も繰り返された言葉。そして吐き出された、小さな溜め息。
 同じ階級の生徒たちと、年齢は然程変わらないはず。けれど、ゼフィーは明らかに他の生徒たちよりも身体が小さく、実技の授業はぎりぎり着いて行ける程度。どう見ても、同じ階級には見えないのだ。
 そして何よりも…他の生徒が徐々に使い熟せている"魔力"が、ゼフィーには使い熟すどころか、まだ十分に使えない。その差が、彼の劣等感に更に追い討ちをかけているのだ。
「焦ることはないのですよ。成長の段階はヒトそれぞれですから」
 手当てをしながらリンがかけた言葉も、今はただの気休めにしかならない。それでも、医務室に来ると安心出来るのは確かなこと。それが医師の持つ"癒し"なのだとは、ゼフィーはまだ知らなかった。
「…さ、もう良いですよ。今日は安静にしてくださいね」
「…有難うございます…」
 微笑むリンに小さく頭を下げ、重い足取りで帰って行くゼフィーを見送ると、リンは小さな吐息を一つ。
 ゼフィーの成長は、正直に言えば著しく遅い。そして、魔力も体力も、身体の大きさも、知能以外の全てが平均以下なのだ。だからこそ、体格差と魔力の差が出る実技では、身体の大きさに合わない剣を扱う為、必要以上に怪我もする。そして、傷の治りも通常よりも遅いのが実情。
 元々研究員として文化局に入ったリンが、師と仰ぐ局長と同じ医師の道を歩き始めてからもう随分の年月が経っている。その間、経験を積む為に夜勤担当として色々な局を廻って来たが、士官学校の校医は初めてであった。子供の頃の成長の段階を初めて目の当たりにした。だからこそ、ゼフィーのような症例を見たのも初めてのこと。ぎりぎりとは言え、他の生徒に着いて行けること自体、奇跡的としか言いようがないのだ。その分、ゼフィーはその小さな身体に、普通では考えられない程の傷跡が残っているが。
「…ゼノン様に、相談した方が良いのでしょうかね…」
 たった今開いたばかりのゼフィーのカルテを眺めながら、小さく零した言葉。
 すると、閉まっていたはずのドアの方から、くすっと笑い声が聞こえた。
「まぁ~た御前は、ゼゼのことで悩んでるのか?」
「…瀞瀾(せいらん)…」
 声を聞きつけ、溜め息を一つ。視線を向ければ、ドアに凭れて笑っている、学生時代からの同期の医師の姿があった。
 水の能力を持つ彼は、青い紋様を戴いている。軍事局の軍医一筋で勤める彼は、それに相応しく常に冷静沈着であり、優し過ぎて厳しさに欠けるリンにとっては苦言を呈してくれる大切な仲魔だった。
「…また勝手に入って来て…ノックぐらいしてください。治療中だったらどうするつもりです?」
 溜め息と共に零れた声に、相手はくすくすと笑う。
「治療中だって構わないだろう?俺だって医者なんだから。尤も、軍医だけどな」
 笑ってはいるものの、その目は笑っていない。それが、この医師の厳しさたるものだった。
「…それにしても、あれだけ成長の遅い奴も珍しいよな。種族だって、はっきりしないんだろう?」
 リンの背後からゼフィーのカルテを覗き込みながらそう言葉を放つ瀞瀾に、リンは小さな溜め息を吐き出す。
「一応、"鬼"の種族だと申告されていますよ」
「自己申告だろう?角もなければ、牙も鬼面もない。何一つ証拠がないじゃないか」
 瀞瀾の言う通りだった。
 ゼフィーは"鬼"の種族の血を引いているはずだが、その頭にはあるべきはずの角もなく、牙も鬼面も持たない。だからこそ、唯でさえ希少な種族となりつつある"鬼"の種族の血を証明出来るものは何もないのだ。
「純粋な"鬼"ではないと考えるのなら、可能性はあります」
「他の種族との掛け合わせだろう?だったらもっと魔力はあるはずだ。彼奴の歳を考えれば、今に至っても自分の魔力を上手く扱えないだなんて、考えられない」
 そう言いながら、瀞瀾は小さく吐息を吐き出しながら、リンの傍を離れて診察用のベッドに腰を降ろす。
「甘やかし過ぎじゃないのか?」
 一言、瀞瀾が言葉を放つ。
「…私は別に…」
 戸惑いの表情を浮かべたリンを、瀞瀾は一笑した。
「冗談だよ。幾ら御前が甘やかしたところで、彼奴の成長が遅いのは元々のものらしいしな。それよりも、もっと重要なことがあるんじゃないか…?」
 笑いを収めた瀞瀾の眼差しが、真っ直ぐにリンを見据えた。
「…彼奴、雷神界でゼノン様に保護されたんだよな?」
 心なしか、そう問いかける声が低い。
「…そう、聞いていますけれど…」
 只ならぬ雰囲気を漂わせ始めた話題に、リンも瀞瀾を真っ直ぐに見つめる。
「妙だと思わないか?雷神界に、"鬼"の種族がいるなんて。それも…偶然、ゼノン様が保護するだなんて」
「…"鬼"の種族だから、保護したのではないですか?」
「何の証拠もないのに、安易に"鬼"の種族だと言えるか?唯でさえ、希少な種族だぞ?他の種族との掛け合いだとしても、偶然に巡り合える可能性は低いんだ。しかも、魔界に連れて来る必要性だってない。雷神界だって無情じゃないんだ。ゼノン様がわざわざ魔界に引き取って来る必要はないだろう?だとすれば、考えられる可能性は絞られて来るんじゃないか…?」
 瀞瀾はそこで一旦言葉を切り、小さく息を飲んだ。
「ゼノン様は、彼奴の出生を知っている。それも…他悪魔には言えない事情がある」
「…まさか…」
「そう考えるのが一番妥当だろう?知っていたからこそ、保護して魔界へ連れて来た。だから、あの状態でも"鬼"だと断言出来たんじゃないのか…?」
 困惑の表情のリンを、瀞瀾はじっと見つめていた。
 自分の言ったことは、あくまでも想像の範疇を出ない。それが事実であると良いう根拠も何もない。
 ゼフィーの今後のことを真剣に考えるのであれば、横から茶々を入れることが相応しくないこともわかっている。そして、本来担当医ではない自分が口出しするべきではなかったことも。
 真面目で、一生懸命なリンに対してならば、尚更。
 ただ…引っかかっているのは、自分も同じ。それを…単なる発育不良と見做して良いものかどうか。それは、まだ瀞瀾にもわからなかった。
「…まぁ…さぁ。俺が言ったことは、あくまでも想像だしな。ゼゼのことも、今すぐにどうこうしなければならない問題でもないし。時間をかけて成長を見守るしかないことだしな。ゼノン様に相談してみるのも良いかも知れない。どうするかは、担当医の御前が決めることだから。まぁ、俺も相談相手ぐらいにはなれるだろうから」
 瀞瀾はベッドから立ち上がると、思い詰めた表情をしているリンの肩をぽんと叩いた。
「…あんまり悩むなよ。御前がどんと構えてないと、子供らが安心出来ないからな」
----邪魔したな。
 そう言い残し、瀞瀾は医務室を出て行く。
 その背中を見送り、リンはまた溜め息を吐き出していた。

 その日の夜。
 自分の部屋のベッドに寝転び、ぼんやりと天井を見つめていたゼフィーの耳に、小さなノックの音が聞こえた。
「…はい」
 身体を起こし、声をかけると、開いたドアの隙間からは同室の先輩である礫(れき)が顔を覗かせた。
「アルから聞いたよ。腕、怪我したんだって?大丈夫?」
 心配そうに見つめる眼差しに、ゼフィーは小さく頷く。
「うん。今日は安静に、って言われたけど」
「そうか」
 安心したようににっこりと微笑む礫。けれど、見つめる先のゼフィーの表情は、暗く沈んでいる。
「…また、そんな顔して…」
 小さな吐息を吐き出し、礫はゼフィーの隣へと腰を降ろす。
「…何で、みんなが出来ることが、僕には出来ないんだろうって…その度に、アルにも迷惑かけて…」
「気にするなって。これからもっと強くなれるから」
 そう声をかけるものの、ゼフィーは大きな溜め息を吐き出す。
「…あ、そうだ。だったら、コーチ紹介しようか?」
「…え?」
 思いがけない言葉に、ゼフィーは礫の顔を見つめる。
「俺と同じクラスに、剣術の得意な奴がいるんだよ。コーチになって貰える様に、話しようか?」
 良い思い付きだとばかりに、上機嫌で笑う礫。けれど、ゼフィーは素直に頷けずにいた。
 原因の一端はわかっている。自分の生まれた状況。それが、彼の運命を位置づけたのだから。それを受け入れなければならないことは重々承知である。けれど…自分が不甲斐ないのではないかと、そればかりが頭を過ぎる。
「…少し…考えても良いかな…?」
 そう、口を付いて出た言葉。
「…あぁ…そうだよな。直ぐになんて、決められないもんな。気が向いたら、声をかけて」
「…うん。御免ね。折角、心配してくれたのに…」
「良いって。だから、そんな顔、するなよ」
 にっこりと微笑み、ゼフィーの頭をぐりぐりと撫で回す礫。
 アルフィードと言い、礫と言い、何とも心根の優しい仲魔に恵まれたことだろう。
 それは、とても倖せなこと。
 それだけは、魔界に来て良かったと思えることだった。

◇◆◇

 その数日後。
 その日の実技では怪我こそなかったものの、他の生徒に着いて行くことが出来なかった為、独り訓練室に残って練習をしていた。
 いつになっても、上手くはいかない。気持ちだけが空回りをして、思い通りに身体が動かない。そんな自分が、とても情けなくて。
 剣を抛り投げたまま地面に仰向けに横たわると、大きな溜め息が零れた。
「…情けないな…」
 父親たるゼノンもライデンも、かなり強かったと聞いてる。自分にもその血が流れているのだから、もう少し上達しても良いのでは…と思いながらも、それが出来ない自分に呆れているのも実情。きっと、今の姿を見たら、父親たちは悲しむだろう。そんな思いも、その胸に過ぎっていた。
 再び、その唇から溜め息が零れる。
 と、その時。思いがけず、上からゼフィーの顔を覗き込んだ、短い黒髪と深い紫の瞳。そして青い紋様を戴いた姿。
「居残り練習?」
「…っ!?」
 見かけたことのない顔に声をかけられ、思わず息を飲んで身体を起こす。すると、ゼフィーのその驚いた顔と行動に、その姿はくすっと笑いを零した。
「御免。驚かせたみたいだね?」
「……あ…」
 くすくすと笑う相手は、明らかに上級生、だった。
「…済みません…訓練室、使いますか…?」
 もしかしたら、この後この訓練室を使う予定だったのかも知れない。
 そう思って慌てて片づけを始めようとしたゼフィーを、"彼"は笑いながら制した。
「御免御免。使わないから、慌てなくて良いよ」
「…はぁ…」
 笑い続ける"彼"に、ゼフィーは困惑の表情を浮かべる。
 訓練室を使わないのなら、"彼"は、何をしにここへ来たのだろう。
 "彼"は、ゼフィーの表情でそんな疑問を感じたのだろう。僅かに笑いを収め、言葉を紡いだ。
「ドアが、開いていたからね。誰か残っているのかと思って、ちょっと覗いただけなんだ。そしたら、君が寝転んでいるだろう?何か、躓いているのかと思ってね、声をかけたんだ。剣を抛り投げておくと危ないしね」
 そう言って、ゼフィーの傍へと腰を降ろす。
 "彼"の行動の意味を理解出来ないゼフィーは、相も変わらずの困惑顔、である。
 "彼"は手を伸ばし、ゼフィーが放り投げていた剣を手に取ると、その刃先をじっと見つめながら、言葉を続けた。
「君は…戦うのが嫌い?」
 徐ろに、そう問いかけられる。けれど、ゼフィーはどう答えて良いのかわからなかった。
 戦うことが好きか嫌いかなど、今まで考えたこともなかったから。
 暫く考えた後、ゼフィーはゆっくりと言葉を放つ。
「…わかりません。今まで、考えたこともなかったから…」
 素直にそう答えたゼフィーに、"彼"の視線がゼフィーを捕らえた。
 深い紫色の、綺麗な眼差し。
「そう。なら、これから考えてみると良いよ。嫌いなら、無理して剣を持つこともない。何処の局にも、戦わない部署があるから。でももし好きなら…正しい戦い方を身につけたら、もっと、剣術が好きになれるかもね」
 にっこりと微笑まれ、言葉に詰まる。
 多分…"彼"は、戦うことが好きなのだろう。だから、剣を抛り投げていたゼフィーを、やんわりと諭したのかも知れない。
 それは何れ、自分の生命を護るべきモノになるのだから。粗末に扱ってはいけないモノだから。
「…御免なさい…」
 俯き、小さくつぶやいた声に、"彼"は再び小さく笑う。
「謝らなくても良いんだよ。別に俺は、君を咎めた訳じゃないし、好きか嫌いかは自然にわかることだから。ただ、自分が何の為に士官学校に入って、剣を握ろうと思ったのかをきちんと理解する必要はあると思う。流されるだけじゃ、時間は無駄に過ぎていくばかりだから。心の中の大切なものを、きちんと掴んでいないとね」
「…はい」
 少し、胸が痛かった。
 今のゼフィーは、ただ流されているだけ。強くならなければ、と言う気持ちだけが先走り、本来の"心"を忘れていたのかも知れない。
「…僕は…強くなれますか?」
 思わず、そう問いかけてしまった。
 すると"彼"は、笑うことをやめ、再びその深い紫色の眼差しでゼフィーを見つめた。
「強くなりたいの?何の為に?」
 そう、問い返される。その声に、ゼフィーはもう一度その言葉を自分の中で問い返した。
 何の為に、強くならなければと思ったのか。
 目を閉じ、ゆっくりと自分に問いかけ、その答えを探す。その間、"彼"はじっとゼフィーを見つめ、ゼフィーの答えを待っていた。
「……僕が…"ここ"で、自分の力で、生きて行く為。そして…僕の大切な…"片割れ"を、護る為…その為に…僕は、強くなりたい…」
 ゆっくりと紡いだ言葉。そして、顔を上げたゼフィーは、にっこりと微笑んでいる"彼"を見た。
「そう。なら、大丈夫。目的があるのなら、きっと強くなれるよ」
 そう、投げかけられた言葉が、とても嬉しく思えた。
 ただ流されるだけではない。自分を、もう一度きちんと見つめること。
 そんな些細なことで、感じ取れた安心感。それを教えてくれた"彼"を、ゼフィーは素直に凄いと思っていた。
「頑張ってね」
 ゼフィーの頭に載せられた、"彼"の掌。その温もりは…かつてを思い出させた。
 魔界に降りたばかりの頃、そうしてくれた父親の手の温もり。そして…父親の仲魔たちの手の温もり。
 自分は一名ではなかったと、改めて思い出させてくれた。
「…あの…っ…僕に、コーチしてくれませんか…っ」
 そう、口走ってしまったのはどうしてだろう。
 言ってしまってから、拙かっただろうかと、俯いて顔を赤くするゼフィー。
 けれど、"彼"は一瞬驚いた表情を見せたものの、再びにっこりと微笑んでみせた。
 そして。
「良いよ。俺で良ければ」
 その答えに、ゼフィーはパッと顔を上げる。
「ホントですか…っ?!」
「うん」
 ニコニコと微笑む"彼"に、ゼフィーは立ち上がって頭を下げる。
「宜しく御願いします!」
「うん、宜しくね」
 "彼"も立ち上がり、ゼフィーの正面に立つと、そう言葉を返す。
 そして。
「…で、君の名前は?」
「…え…?」
 "彼"の言葉に、ゼフィーの顔が一気に赤くなる。
「…す…っ…済みませんでした…自己紹介もしないで……」
「御免ね、俺も忘れてたんだ。俺は、リディ。六階級のAクラスだよ。君は?」
 笑いながら、"彼"…リディは改めてゼフィーに問いかける。
「僕は…ゼフィー・ゼラルダです。二階級のFクラスです…」
 六階級と言えば、礫よりも階級が上になる。そして何より、その階級のトップクラスであるAクラスとは。一番下のFクラスに属しているゼフィーにしてみれば、まさに天と地程の落差があるのだ。当然、自己紹介の声も次第に小さくなる。
 けれど、リディはそんなことは全く気にしない様子で、相変わらず微笑んでいた。
「頑張ろうね」
 先程の『頑張ってね』から、『頑張ろうね』に変わった言葉に、ゼフィーの胸がほんのりと熱くなった。
「…はい!」
 満面の笑みで答えるゼフィー。その笑顔を、リディもにっこりと微笑んで見つめていた。

 その出会いがその後の運命をどう変えるか、まだ二名共気がつくはずもなかった。
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
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非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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