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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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Happy Smile ~sideT~
こちらは本日UPの新作です。

拍手[1回]


◇◆◇

 電話の呼び出し音が聞こえ、ギターに向かっていた意識がそちらへと向く。
 スマートフォンの画面に目を向けると、珍しい相手からの電話だった。
「もしもし?珍しいね、どうしたの?」
 電話を繋ぎ、問いかけた声。
『…あっと……御免、今、大丈夫…?』
「今?うん、自宅だし、大丈夫だけど…どうした?」
 改めて問いかけると、電話越しの声は溜め息を一つ。
 そして。
『あの…相談にね、乗って貰いたいんだけど…』
「相談?俺に?」
 実に珍しい。
『うん…』
 何処か、躊躇いがちな声。すんなりと話が進まないのだが…珍しい相手からの相談なのだから、取り敢えず相手の出方を伺ってみた。
「電話で良いの?直接会う?」
『…時間あるの?忙しいでしょ?』
「まぁ、忙しいのは忙しいけど、あんたの都合の良い日教えてくれれば時間は作るよ?」
『じゃあ……』
 相手から何日かピックアップされた日にちと自分のスケジュール表を照らし合わせ、会える日を決める。それが決まると、大きな吐息が聞こえた。
『…有難うね。助かった』
「まだ、相談は聞いてないけどね」
 くすくすと笑いながらそう応えた声に、小さな溜め息が聞こえる。
『そう、だね。まぁ…後日ゆっくりと』
「了解」
 溜め息と共に切れた電話に、思わず苦笑する。
「…さて、一体何の相談やら…」
 何となく察するものの…まぁ、面白そうなので、黙って話を聞いてみよう。
 興味本位で片足を突っ込んだ彼。
 普通に楽しみ、だった。

◇◆◇

 約束をしたその日。
 先に待ち合わせの場所に来ていたのは、相談を持ちかけた彼。その心情を察するに…落ち着かなかったのだろう。
 溜め息を吐き出しながら、頼んだ飲み物を口にしていると、約束の時間丁度に相手が現れた。
「石川さん、もう来てたの?御免、俺遅かった?」
 そう言って時計に視線を向ける。
「いや、大丈夫。俺が早かっただけ」
 その声ににっこり笑って、相手…石川の正面に座る。そして飲み物を注文し、それが届くまで当たり障りのない近況報告などをし合う。そして飲み物が来ると、漸く本題を口にした。
「で、相談って?」
 切り出した声に、小さな溜め息が一つ。そして自分の首の後ろに両手を回し、外したネックレスを相手の前に置く。
「これと同じもの、何処で買えるかな…?」
「…はい?」
 問いかけられ、改めて"それ"に視線を向ける。
 "それ"は、指輪がついたネックレス。
 そんなものを持っていることがまず驚きだが、それが欲しいと言う意味も良くわからない。
「…えっと…これはどっちを…?」
「…あぁ…こっち。このネックレス」
 思わず問いかけた声に、石川はネックレスの方を指差す。
「え?特別な奴?ブランド物とか?」
 特別これと言って特徴はない訳で…それを何処で買ったら良いかと言う問いかけに首を傾げてしまう。
「あの…ブランドとかはわからないんだ。自分でも随分探してはみたんだけど、"これ"がついてるのを見かけなくて…」
 そう言いながら、指輪がついているホルダーを指差す。
「…ネックレスって言うから鎖の方かと思ったら、"これ"が欲しいの?」
 首を傾げながら問いかけると、小さな頷きが返って来る。
「あぁ、御免。わかりにくかったね。そう、"これ"が付いてるネックレスが欲しいの。ワンセットで」
「…因みに…聞いて良い?この指輪は…誰の?」
 素朴な疑問に、石川はちょっと考えて…それから再び小さな溜め息を吐き出す。
「まぁ…そう。俺の。誕生日に"これ"とセットで貰って……お返しをしたいんだけど、"これ"が何処で売ってるのかわからなくて…篁なら、アクセサリーも一杯持ってるから知ってるかな、と思って」
「あぁ、そう言う事…」
 道理で最初からはっきり言わない訳だ。と思いながら、相手…篁は苦笑する。
 どうせ、送った相手は自分のバンドのドラマーだろう。昔からの付き合いで、今更ながらの感はあるが…漸く指輪を贈り合うところまで来たのか、とちょっと安心している節もある。
「俺も見たことないんだけど、"これ"の話、貰った時に何か聞いた?」
 良い年をして話だけでうっすら赤くなる石川に、改めて問いかける。
「えっと…確か聞いたんだ。でも忘れちゃって…」
「そう……で?いつの誕生日に貰ったの?」
「………それは内緒」
「…内緒かよっ…」
 思わず突っ込みを入れたくなるような天然の回答に、石川らしさを感じつつ…と言うことは、一体どれだけ待たせているんだ、とも思う訳で。
「…まぁ、少なくとも今年…じゃないみたいだよね。それだけ待たせて、湯沢は何にも言わない訳?」
 今までの様子を察するに…仕事中は特に変わった様子はない。けれど、二人になった時はどうなのかと思うのだが…まぁ湯沢の事だから、石川に任せているのだろうが。
「何も言わないよ。だからずっと気になるんだけど…何処で買ったの?って本人に聞けないでしょ?他の人に聞いても、変に詮索されそうだし…だったら、知ってる相手の方が良いかと…」
「じゃあ、清水さんは?良く会うんでしょ?大橋だっているじゃん?デーさんだって」
 ここ数年、一緒に仕事をする機会が増えていると言う話は聞いている。だが、その問いかけに石川は首を横に振る。
「聞いてみようかと思ったんだけど…清水さんは違うかな、と…変な意味じゃなくて、だったら、正々堂々と、指輪渡しとけ、って言われそうで。アクセサリーもつけてないし。大橋は色々忙しそうだから…デーモンも忙しそうで、あんまり連絡取れないし…」
「俺も忙しいけど?」
「御免…」
 苦笑する篁に、石川は気まずそうに溜め息を一つ。
「冗談だよ。滅多にないあんたからの相談だもんね。協力はするけど……取り敢えず、検索してみる?ちょっと待ってね」
 そう言いながら、ポケットからスマートフォンを取り出す。そして、何かを検索し始めた。
「えっと……取り敢えず、"ネックレス"、"指輪"で探してみるか……お、あるじゃん」
「ホント?」
 早々に検索に引っかかった画像を見せると、石川も身を乗り出して篁のスマートフォンを覗き込んだ。
「"リングホルダーネックレス"、って言うんだ」
「あぁ、そう言えば…そんな名前だったかも…」
 貰った時に、そんなことを言われた気がする。冷静さを保っていたように見せていたが…突然のプレゼントに記憶が飛んでいる。如何に自分が緊張していたのかと言うことを、改めて感じていたりする。
 大きな溜め息を吐き出した石川に、篁はスマートフォンの画面を閉じ、飲み物に手を伸ばす。
「で?自分で用意する?それとも、俺が代わりに頼もうか?」
 まぁ、頼まれることはないだろうと思いつつ、取り敢えずそう聞いてみる。すると石川も自分の前に置かれたカップへと手を伸ばす。
「大丈夫。捜して貰ったから、後は自分でやるよ」
「そう。じゃあ、頑張って」
 くすっと笑いを零す。
「……で?清水さんとか大橋とか元気なの?」
 何となく問いかけた言葉に、石川はちょっと首を傾げる。
「相変わらず元気だよ?…連絡、取ってないの?」
「……まぁ……ねぇ」
 濁した返事をしつつ…よくよく考えてみれば、今全員と仕事をする機会があるのは、石川一名なのではないか、と気が付く。
「…あんたはみんなと連絡取れてるんだよね?」
「…まぁ…一緒に仕事する機会はあるね」
 そう言いつつ、石川も状況を考えてみる。
 確かに、どんなに少なくとも年一回ぐらいはそれぞれと顔を合わせる機会はあるだろう。
「そう言えば…清水さんが篁や湯沢くんと仕事した、とは聞かないね。デーモンとは…まぁ色々あるから、直接会うことは少ないみたいだけど、連絡は出来てるみたいだよ」
「みたいね。デーさんも時々言ってたよ」
 以前に比べれば、それはかなりの進歩。だが、そこには主たる悪魔が恋悪魔同士だ、と言う前提がある訳で…それ以上の理由がない上に、仕事でも関わらない以上、なかなか連絡も取らない。
「良いね、あんたは」
 思わず零した言葉に、篁は自分で苦笑した。
「良いね、って言うのなら、連絡すれば良いのに…」
 苦笑する篁を前に、石川は小さな溜め息を一つ。
「現実はね、そんなに簡単じゃないのよ」
「簡単か簡単じゃないかは、自分の気持ち次第じゃないの…?」
「まぁね。確かにそうなんだけど…」
 石川の言わんとすることはわかっている。だがしかし。
「…嫌われてる…とは思ってないし、俺も清水さんのことは嫌いじゃないんだけどね。会えば話だって普通に出来るし。前に会った時も、別に変なしこりもなかったしさ。けどさ…元々の方向性が違う、って言うの?昔はそれでも一つのグループとして成立していたけど、各々自分のやりたいことを…って求め始めたら、やっぱり違う方向を向いているかな、って。そうなるとなかなか一緒に、って言う訳にもいかないでしょうよ」
「…そう言うものかな…」
「まぁあんたはね、結構自由自在だし?あんたの技術は流石だと思うよ」
 石川は色んな相手とセッション出来るだけの技術もあれば、実績もある。それは学生時代から変わらない。それだけ安定した演奏を出来るだけの実力が、土台にあるのだ。それに加えて、人当たりの良さ。必要以上に出しゃばらず…それでいて、存在感がある。それだけ信頼出来る存在なのだと、改めて感じていたりする。
「まぁ、仕事の話は良いよ。清水さんの音は好きだから、いつかまた一緒に出来れば良いかな~とは思うけど、無理にどうこうとは考えてないから。無理に誘ったところで、清水さんには嫌がられるだろうからね。それはまぁ、追々ね。それよりも、湯沢とのこと…ちゃんとしなさいよ。それだけのアプローチされてるんだから、真面目に応えないとね」
「それは勿論、ちゃんと考えてるから。まぁ…またゼノンが来るだろうことも視野に入れなきゃいけなくなって来ているから、それまでには何とか…と思ってはいるんだけど…」
 そう。総帥たるデーモンから、遠回しにだが打診は受けていた。勿論、自分が断る理由もない。ただ、活動中は…再び、主たる悪魔がやって来る。そうなると、半分以上悪魔の意識になってしまうので、人間であるうちに。そんな思いは、石川の頭の中にあった。
「そう。あんたはどう考えても参加必須だもんね。まぁ、一緒にいる時間は増えるけど、ゼノンとライデン相手じゃねぇ…彼奴らの方がのびのびいちゃつくしね」
 くすくすと笑う篁に、石川は小さな溜め息を一つ。
「エースは…清水さんの手前多分来ないだろうから…活動が始まったら、またデーモンが限界になる前にちゃんと連絡するように言っておかないとね…」
「まぁ、ね。でもエースさえしっかりしていれば、大丈夫じゃない?」
 そう話題に出したものの、昔ほど心配はしていない。彼らがお節介を焼く前に、本魔たちはちゃんと前を見て進めている。余計な口を挟む必要など、もうそこにはないのかも知れない。
「一緒に活動出来ないのはやっぱり寂しいけど、それはそれで割り切らないとね。エースは、清水さんのことも考えての決断だものね」
 再結成の話題が出る度に、いつもそこで躓いてしまう。けれど、その決断を周りがとやかく口を挟む権利はないのだ。だからこそ…割り切らなければ。
 それに…今やらなければならないことは、悪魔たちが戻って来る前に収めておかなければならないこと。言い方は良くないが、ヒトの心配よりもそちらを最優先にしなければ。
 腕時計に視線を向けると、次の予定の時間が押し迫っている。積もる話はあるものの、それは今でなくても大丈夫。これからまた、会う機会が増えるのは必至なのだから。
「そろそろ行かないと。忙しい時に有難うね。助かったよ」
 石川が先にそう口を切って、伝票を手に席を立つ。
「自分の分は払うよ?」
 慌ててそう口を開いた篁に、石川はにっこりと笑った。
「大丈夫。相談料、ってことで。俺に払わせて」
「…じゃあ……そうさせて貰う。御馳走様」
 一応、気を遣ってくれた石川の提案に、素直にその意に従う。
「じゃあ、またね」
 そう言って、石川は先に帰って行った。その背中をにやにや笑いを抑えつつ見送った篁。
 上手くいきますように。そんな願いが脳裏に過ったが…今更ながらなので、最早別れる可能性の方が低いだろう。
 仲間がいつ、にやにや笑いながらやって来るかを楽しみにしておこう。そんな楽しみがあっても良いのだろうと、ささやかな倖せを待つだけであった。

◇◆◇

 そんなことが数か月前にあった、バレンタインデーの数日後。
 篁の予想通り、緩んだ表情で仕事場へとやって来た湯沢。その首には、いつもは見かけなかったネックレスのチェーンが見えている。
「…ちょっと。顔が蕩けてるけど?」
 凡その見当はつく。だからこそ、くすくすと笑いながら問いかけた声に、両手で自分の頬を押さえた。
「うっそ…そんなに?」
「うん、そんなに、だね。石川さんから良い物貰ったの?」
 笑う篁の姿に、赤くなったまま首元のチェーンを引っ張り出す。そこには、以前石川に見せられた物と同じ、リングホルダーに、指輪が填められていた。
「バレンタインに、俺の指輪をね、一緒に行って買って貰ったんだ。前に俺があげたプレゼントのお返しにね。けどさ…」
 そう言いながら、小さな溜息を一つ吐き出した湯沢。その表情も先ほどまでの蕩けた顔ではなく…何処か、憂い顔。
「…なんで溜息?」
 思わず問いかけると、湯沢は再び溜息を一つ。
「いや…石川くん、忙しいのに時間調整してくれて…俺があげたネックレスと同じ物も用意しておいてくれてさ…結構無理したんじゃないかなって…」
 忙しさなら自分たちもそこそこのモノだと思うのだが、日替わりであちこち渡り歩いているベーシストには敵わない、というところなのだろうか。それでも、嬉しいの気持ちの方が勝るのではないかと。
「でも、嬉しいんでしょ?素直に喜びゃ良いのに」
「そりゃ、嬉しいけど…」
 ふと、篁の脳裏に過った、相談を持ち掛けて来た時の石川の顔。
 ただ、真っ直ぐに。その気持ちに、何ら疑うところなどない。
「確かに忙しいだろうし、なかなか予定も合わないかも知れないけどさ、それを準備したってことは、それが石川さんの誠意ってことでしょ?そんなの、心配しないで素直に受け取りゃ良いのよ。素直に嬉しいって表すことが、あんたからの一番の返事、でしょ?」
「誠意、か…」
 その言葉の重みたるや。けれど、それだけの想いがそこにあるのなら、確かに篁の言う通り、素直に受け取るのが一番なのだろう。
「…わかった。まぁ、嬉しいのは確かだしね。そうだね、有難う」
 にっこりと笑う湯沢。そこに見えたのは、やっと安心出来た、と言う素直な気持ち。
「そうそう。その顔の方が、あんたらしいよ」
 もう直…また主たる悪魔たちに、支配される前に。精一杯の、誠意を持って。
 長い付き合いだからこそ…そんなけじめが欲しかったのかも知れない。
「また、忙しくなるからね。頑張りましょ?」
「おうっ!」
 こうして笑い合える時間を大切に。その笑顔を、大切に。
 その想いは、石川から湯沢に対しての想いだけではない。これから悪魔に戻る仲間たちみんなが共有出来るように。そして、参加出来なくてもちゃんと見守ってくれているであろう、大事な仲間にも同じ気持ちで。
「さて、それじゃお仕事お仕事」
 ネックレスを再び首元から服の中にしまった湯沢。その感触を確認するように、服の上から大事そうに押さえるその仕草。そんな姿もまた、倖せそうで。
 そんな湯沢を見ている篁もまた、嬉しそうな微笑みを見せていたのだった。
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趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
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