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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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かがやきのつぼみ 水端(後半) 3

第四部"for CHILDREN" (略して第四部"C")

こちらは、以前のHPで2005年12月11日にUPしたものです。
第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
3話(後半) act.3

拍手[1回]


◇◆◇

 ゼフィーが目を覚ますと、その身体が何となく重いような気がする。そう思って頭を巡らせてみると、自分が寝ていたベッドの上掛けの上に凭れかかって眠る、父親の姿が目に入った。
 このところ、帰りの遅かった父親。自分が眠る時間に家に帰って来ることは殆どなかった。そして、朝はいつも通りに出勤して行くのだから、当然疲れているはず。
 その原因の一つは、自分なのだろう。
 そんなことをぼんやりと考えていたゼフィーは、思い立ったようにそっとベッドを抜け出した。
 眠るまで一緒にいた父王の姿はない。だが、その部屋は見慣れた屋敷の部屋ではないから、多分まだ副大魔王閣下の屋敷にいるのだろう。ならば、父王は仲魔の誰かに会っているのだろう。そう考えながら、音を立てないようにそっと部屋のドアを押し開けた。
 廊下に顔を出してみても、誰の姿もない。ならば、大丈夫だろう。
 ゼフィーは身体も廊下に出し、後ろ手にそっとドアを閉める。そして、廊下をきょろきょろと見回し、見当をつけて歩き出した。
 目的地は、先程行った書斎。
 昔から本が大好きだったゼフィーだが、士官学校に入ってからは、昔のように好きなだけ本を読むことが出来なくなっていた。だから、久し振りに嗅いだ本の匂いにつられたとでも言うのだろうか。自然と書斎へと引き寄せられていたのだ。
 ゆっくりと廊下を進みながら、ドアの一つ一つに手を当て、中に誰の気配もないことを確認しながらドアを開けて部屋を確認する。それを繰り返しているうちに、やっと目的の場所に辿り着いた。
 うっすらと開けたドアの隙間から見えたのは、天井にまで届く高い本棚と、そこに収まっている沢山の蔵書。そして、中には誰の気配もない。
 ほう…っと安堵の溜め息を吐き出し、もう一度廊下を見渡す。そして、誰もいないのを確認すると、もう少しだけドアを開け、廊下を伺いながら後ろ向きにそっと身体を滑り込ませる。
 パタンとドアが閉まり、廊下から隔離されると、再び安堵の溜め息を零したゼフィー。
 けれど、その安堵も直ぐに覆された。
 早速本棚に向かおうと踵を返した瞬間、自分を見つめる眼差しと真っ直ぐに目が合った。
 蒼の…鋭い眼差し。気配を完全に殺し、存在感を全く感じさせなかったその姿は、ドアの隙間から死角になる場所で、ゼフィーが書斎に入るまでの一部始終をずっと眺めていたのだ。
 それを感じた瞬間、背筋が寒くなる。そして、思わず息を飲んで、少しでもその眼差しから逃れようと、背中をドアに押し付けるゼフィー。
 拙いところに入って来てしまった。
 ゼフィーの表情は、完全に固まっていた。
 しかし、じっとゼフィーを眺めている相手は微動だにしない。窓辺に凭れかかったまま、本を片手に、まるで人形のような表情でゼフィーを見つめていた。
 もしかしたら、相手も驚いているのかも知れない。勿論、今のゼフィーにそこまで察することは無理なことだが。
「…御前…さっきの…?」
 相手が、ゆっくりと口を開いた。凛とした声。その響きはその無表情からは想像出来ないくらい耳に心地良い。
 呆然としているゼフィーの表情に、相手は小さな溜め息を吐き出した。そして、手に持っていた本を傍の机の上に置くと、ゆっくりと彼に歩み寄って来る。
「…さっき、親父から聞いたよ。御前、声が出ないんだってな」
 そう言いながら、相手はゼフィーの目の前までやって来る。ゼフィーの頭一つは軽く大きい相手は、真っ直ぐにゼフィーを見下ろしていた。
「それに…身体は小さいのに俺よりも少し年上、らしいな」
「………」
 一瞬、ゼフィーは大きく息を飲んだ。
 相手は、何処まで自分のことを知っているんだろう。真っ直ぐに注がれた蒼の眼差しが、とても恐ろしく感じた。
 カタカタと小さく震える身体に、相手も気がついたのだろう。強張ったゼフィーの表情を見下ろしながら、口元に小さな笑いを浮かべる。それは、楽しんで笑うと言うよりも…嘲笑っているかのようで。
「御前、雷帝とゼノンの子供なんだってな。双子で生まれて、王位継承権のない御前は、魔界へ引き取られた。そして、いじめにあって、自らの殻に閉じ籠った……惨めなもんだよな。双子で生まれさえしなければ、御前が雷神界の皇太子だったかも知れないのにな。そうだったら…どうだったと思う?」
 差し伸べられた手が、ゼフィーの喉元に触れた。その瞬間、ぐっと首を掴まれた。
 息苦しさに顔を顰めたゼフィー。けれど、その首に与えられた圧力は、呼吸を遮断する程のモノでもない。
 先程までの嘲笑も、既にその顔にはなかった。
「…どのみち…その運命から解放されることなんかないんだ。皇太子だろうが、そうでなかろうが…御前の運命は誰にも変えられない。自分で…乗り越えて見せろよ」
 その眼差しに浮かんでいるのは、強い意志。それは、彼が皇太子であると言う運命を背負っている証でもある。
 そんな眼差しを、自分の片割れも抱えているのだろうか?
 もしも、そうだとしたら…自分だって、負けていられないはず。
 皇太子には、皇太子としての運命がある。そして、そこから零れ落ちてしまった自分にも…また違った運命が待ち受けているのだ。それを、目の前の彼は伝えようとしているのだ。
 ゼフィーの首に与えられていた圧力は、いつしか熱い力となっていた。そしてその力は、ゼフィーの身体に染み込んでいく。
 圧力をかけていた手が離されると、ゼフィーは思わず自分の手で首を触った。特に、何の外傷もない。それどころか、寧ろ与えられた力が、未だほんのりと熱を持っている。
 ゼフィーにしてみれば、相手が何をしようとしたのかが未だに良くわからない。ただ…その蒼の眼差しが、一時も逸れることなく自分を見つめていると言うことがとても引っかかる。
 間違いなく、何かをゼフィーに伝えようとしている眼差し。そんな色を察し、ゼフィーは尚更混乱していた。
 初めて会った皇太子。その存在が自分にどう影響するのか。尤も、そんなことは今のゼフィーには全く想像も付かないことなのだが。
「…で?親父さんたちに黙って、ここに来たのか…?」
 改めて問いかけた相手の声に、ゼフィーは思い出したように小さく息を飲んだ。
 寝室を出てから、どのくらい経ったのだろう。緊張で時間の感覚などさっぱり掴めない。
「…呼んでるよ」
 そう、言葉を零すと、相手の眼差しがやっとゼフィーから逸れた。そして、窓の外へと向けられると、そのまま先程まで持っていた本に手が伸び、視線はその本に注がれることとなった。そして再び、人形のように動かなくなる。その途端、遠い所で自分を呼んでいる声が確かに聞こえた。
 それは、部屋で転寝をしていた父親の声。
 ゼフィーは窓辺で動かなくなった相手に黙って頭を下げると、ドアを開けて廊下へと出る。その途端、廊下の向こうから駆け寄って来る父親の姿が見えた。
「ゼゼ!ここにいたの…心配したよ…」
 安心した表情を浮かべる父親に、ゼフィーはそれだけ自分が心配をかけてしまっていたと言うことを改めて感じていた。
 そう思うと…やっぱり、胸が痛い。
「…ゼゼ…?」
 うつむいて、唇を噛み締めるゼフィー。膝を折って視線を合わせ、その姿を首を傾げて覗き込む父親。
 無意識に、その手は先程皇太子が触れた首を、押さえていた。
 未だ、熱を持ったように熱い。その熱さが…ゼフィーの喉に引っかかった"何か"を、溶かしているような感覚さえする。
 そして。
「………めん…な…さ……」
「…ゼゼ…」
 震える声が、微かに零れた。
 そして、頬に伝わった涙。けれどゼフィーは、その涙を拭い、真っ直ぐに父親を見つめた。
 強くなりたい。そう願ったのは…嘘ではなかったはず。だから…自分で、乗り越えるのだ。
 大きく息を吸い込み、首を押さえたまま、懸命に言葉を紡いだ。
「……ご…めん…なさい………ぼ…く……」
 その途端、きつく抱き締められた。
「…ゼゼ…」
「…と…うさ…ま…」
 精一杯に紡がれた言葉に、ゼノンはただ抱き締めてやることしか出来なかった。
 その姿はまるで…愛しい伴侶の、昔の姿のようで。
「…御前はやっぱり、ライデンの血を引いているね」
 ゼフィーの耳元でそう囁かれた言葉。そして、抱き締めていた腕を緩め、その腕の中のゼフィーと顔を合わせたゼノン。懐かしそうに細められた眼差しは、赤く潤んでいる。そして…とても、優しかった。
「御前が謝る必要はないんだよ。だから、もっと自分に自信を持って良い。そして、後悔するよりも、前を見ること。そうすれば…必ず、目の前が開けるから。『勇往邁進』と言う言葉を、覚えておくと良いよ」
「…ゆう……?」
「『勇往邁進』。勇んで、躊躇わず、進むこと。俺が羨ましいと思った、ライデンの生き方。今は意味がわからなくても…いつか、御前も…そう生きられると良いね」
 微笑みながら、ゼノンはゼフィーの頭の上にそっと掌を置く。
 『勇往邁進』。その言葉を、ゼフィーは頭の中で幾度も噛み締めていた。
 そう。何よりも前向きな父王も…その言葉を胸に生きてきたのなら。自分にも…叶うかも知れない。
「…と…う…さま…」
 未だ掠れる声で呼びかけるゼフィーに、ゼノンは首を傾げる。
「何?」
 問いかけるゼノンに、ゼフィーは一旦大きく息を吐き出す。そして、その言葉を、ゆっくりと口にする。
 満面の、笑みと共に。
「…あ…りがとう……と…うさま……」
 その言葉に、ゼノンもにっこりと微笑みを返すと、しっかりとその腕に小さな身体を抱き締めた。
 ゼフィーは、一つの壁を越えた。

 ゼノンはゼフィーを連れてライデンがいるはずのデーモンの寝室へやって来ていた。
「落ち着いたか?」
 今度はちゃんと顔を上げ、デーモンを見つめているゼフィーに、デーモンはくすっと小さな笑いを零す。すると、ゼフィーは僅かに顔を赤らめ、再びゼノンの後ろに隠れてしまう。尤も、今度は先程までのように力一杯隠れている訳ではないが。
「…ね?」
 くすっと笑うライデンに、デーモンも安堵の笑いを零す。その姿に、ゼノンも何かを察したのだろう。にっこりと微笑み、ゼフィーをそっとデーモンの前へと促した。
 そして。
「…デーモンの御腹、触ってごらん」
 そう、声をかけた。
 ライデンから、そこにもう一つの生命が存在していることは聞いた。けれど、以前と何の変わりもないのだから、そこは不思議でしかない。
 触っても良いのだろうか?そんな眼差しを向けると、デーモンは小さく笑った。
「良いぞ。ほら」
 笑いながら、デーモンはゼフィーの手を取って自分の御腹へと乗せる。
 そこから感じるのは、微かな波動。それはまさに、"生命の波動"、だった。
「あと、半年ぐらいかな。春になる頃に生まれるんだよ」
 ゼノンが後ろからそう教えてくれる。
 掌から感じる"生命の波動"は、不思議な感覚。
 自分もそうやって、ライデンの中で存在していたのだ。
 生まれ出でるまで、"核"は親の生命力を糧にして生きている。自分の生命を削って育む生命。だからこそ、生命をかけて護れる存在なのだ。
 ゼフィーは、デーモンの姿にそれを感じ取った。
 みんなそうして親になるのだと。
「…あ…りが…とう…ござい…ます…」
 懸命に言葉を紡ぐゼフィー。
 生命を削って産んでくれた親に対して、子供が応えるべきこと。
 それは…精一杯生きること。
 それを教えてくれたことに対しての御礼、だった。
「…頑張ろうな」
 デーモンは手を伸ばし、ゼフィーの頭をそっと撫でる。
 暖かな温もりは、とても安心出来た。
 にっこりと微笑むゼフィー。それが、何よりの答えであるかのように。

◇◆◇

 大魔王たるダミアンと皇太子たるシリウスにももう一度挨拶をして、彼らがゼノンの屋敷に戻って来たのはもう日が暮れてからだった。
 すっかり草臥れ果てたゼフィーは、夕食を取る間もなくベッドへと倒れ込み、そのまま眠ってしまった。
 ゼノンとライデンはのんびりと夕食を取ると、ゼノンの自室へとやって来る。
「…ゼゼ、もう大丈夫そうだね」
 安心したようにそう零すライデンに、ゼノンは小さくと息を吐き出す。
「でも、まだ声が出ただけだもの。これから、復学に向けてリハビリしていかないと。多分…トラウマは残っていると思うよ」
「…そう、か…」
 それは、俗に言う心的外傷後ストレス障害…PTSDと言うもの。
 外見上は普通に戻ったとしても、その胸の中は未だ傷を負ったまま。またいつ声が出なくならないとも限らないのだから。それを癒してこそ、やっと元の生活に戻れるのだ。
「そうなると、まだ時間はかかるね。まぁ、無理に復学しても、また辛いことを思い出して声が出なくなるかも知れないからね。復学しても大丈夫なくらい、安定してからの方が良いよね」
 ライデンも小さく溜め息を吐きながらそう答える。
「ゼゼが、自分から士官学校に戻ろうと思うまで、無理はしないつもりだよ。ここでも勉強は出来るし、その気になればレプリカが着いていてくれるからね、武術の訓練だって出来る。それで良いと思うんだ」
 ゼノンがゆっくりとそう答える。医師として、それは当然の判断。
「そうそう。無理することはないんだよね。ゼゼが納得することが一番、だよね」
 自身も、そうやって少しずつ壁を乗り越えて来た。それを思い出しながら、小さな笑いを零すライデン。
「ね、ゼノン。今更ながらに思うけど…大人になる、って言うことは、大変なことだったんだね。自分の時は今を生きることが精一杯で、周りを見る余裕なんかなくてさ…自分の置かれている状況も良くわからない時もあったけど…親として、子供の成長を見てると、改めて大変なことなんだな~って思うよ」
「…そうだね」
 小さく答えを返し、ゼノンも昔を思い出す。
 真っ直ぐではなかった道。そこには、幾つもの壁があり、ぶつかりながらも"今"を生きることに精一杯だった頃。あの頃感じた葛藤や躓き、挫折などの苦汁を味わった思い出も全部、今となれば笑って話せる。
 ゼフィーにも、そうであって欲しい。
 いつか…この苦しみが、笑い話として話せるようになるように。
 それがいつになるかはわからない。けれど、それは親としての微やか願い。
「ゼゼもララも…倖せになれるよね?」
 小さく首を傾げて問いかけるライデンに、ゼノンはにっこりと微笑む。
「勿論。俺たちの子供だもの」
「うん」
 多くは望まない。ただ、これからの未来、子供たちが無事でいられるように。倖せを、自分の手で、捕まえることが出来るように。
 親として、微やかながらの応援は、見守ってやること。
 それを実感出来ることは、彼らもまた親として成長した証拠だった。
「よし!じゃあ、ここからはオトナの時間!暫く振りだもんね~」
 そう言いながら、ゼノンの首へと腕を回すライデン。
「目一杯、癒してあげるからね」
 そう言いながら、ゼノンへと頬を寄せる。
「じゃあ…期待しようかな」
 ゼノンも笑いながらライデンの腰へと手を回し、そっと引き寄せる。
 久し振りの甘い時間。今は、ただそこにある欲望に忠実に。
 いつになく穏やかなそんな時間を堪能しながら、ほんの少しだけ前へ進めたことへの安堵感に満たされ、ゼノンもまた、ぐっすりと眠りに落ちていた。


 子供たちの未来には、まだまだ壁が沢山ある。
 けれど、それを乗り越えて行く力を身に付けながら、彼らもまた大人になって行くのだった。
 その未来が、倖せであるように。それは、親なら誰もが願う想い、だった。
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趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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