聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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かがやきのつぼみ~R~ 後編
翌朝。ノックの音で目覚めた上皇は、未だに隣でぐっすりと眠るラライを横目にベッドから降りると、そのドアをそっと開けた。
するとそこにはにっこりと微笑むライデンと、ラライの官吏たるマーティが不安そうな表情のまま立っていた。
「おはようございます。ララは…ちゃんと寝た?」
部屋の中が静かなのを確認しながら、問いかけたライデンの声。その声に、上皇は苦笑する。
「御前、わかっていて置いて行ったんだろうが。まぁ、ちゃんと眠ったぞ。御前が子供の頃を思い出したな」
「良かった。じゃあ、もう安心だね」
まさに、ライデンの想像通り。ここで一晩ちゃんと眠れれば、少しはラライの気持ちも変わっているだろう。まぁ、実際は起きてみなければわからないが、上皇の表情を見る限りでは問題はなさそうだった。
「じゃあ…マーティ、部屋まで連れて行ってやって。向こうでフィードが待ってるから。俺は少し、親父と話してから行くから、宜しくね」
「…はい…」
ライデンの後ろで、未だ表情の優れないマーティ。ライデンに指示されてしまったのだから、そうせざるを得ない訳で…渋々、と言う感じで、ライデンに促されて上皇の部屋へと足を踏み入れる。そしてライデンに手伝って貰い、ラライを背中へと背負う。だが、その状態でも未だラライは起きることがない。
「気持ち良さそうに眠っちゃって。爆睡だね」
久し振りに見た我が子の爆睡ぶりを笑いながら、頭を下げて部屋へと戻って行くマーティの背中を見送る。
「良いのか?御前が付いて行かなくて」
その一部始終を黙って見守っていた上皇だったが、ライデンはそれを一笑する。
「大丈夫。多分…もう、マーティとも"仲直り"出来るだろうから」
「なら良いのだが…」
ソファーへと腰を下ろした上皇の前に同じように腰を下ろしたライデンは、すっと表情を引き締める。そして、徐ろに頭を深く下げた。
「有難うございました」
「…何を改まって」
苦笑する上皇に、ライデンは小さな吐息を一つ吐き出す。
「俺が何を言っても、今は通じないと思ったからさ。親父なら…きっと、上手く話してくれるんじゃないかと思って。ゼゼもそうだったでしょ?勿論…俺が親として不甲斐ないのは重々承知」
そう言いながらも、ライデンは父たる上皇の偉大さを改めて実感していた。
ライデンは窓辺へと歩み寄ると、その窓から外の景色へと目を向けた。
そこに広がっているのは、大きな城下町。子供の頃から知っているその景色を改めて見つめながら、言葉を続けた。
「子供の頃は…この国の大きさなんて、あの城下町と、裏の森ぐらいなモンだと思ってたんだよね。でも大きくなるにつれ…この国を実際に護ってみて、大きかったことに驚いた。親父は、この国の中立を…平和を、ずっと護って来たんだ、って言うこと。俺がこの国を継ぐまで、護り切ってみせる。俺が子供の頃…魔界に修行に行く前に、親父はそう言ったよね?俺も…今、そう思ってる。ララが、この国をちゃんと護れるようになるまで…俺がちゃんと、護ってなきゃいけないって思ってる。今が、その第一歩。ララにとっても…ゼゼにとっても」
そう言った横顔が…酷く、苦しそうにも見えた。
上皇はライデンの隣まで歩いて行くと、同じようにその景色へと目を向けながら、その手をライデンの頭の上にそっと置いた。
「心配するな。御前の子供だろう?しっかり信じてやれ。ワシも…信じておるから。御前の事も、ゼノン殿のことも、な」
「…親父…」
大きな手。それは、今でもライデンが越えられない父の姿。
「御前には頼れる伴侶がおるのだから、独りで気張る必要はないのだ。御前たちが持っておる信頼関係と深い愛情は、彼らにもきっと見えておる。彼らにとって、御前は偉大な父王だ。勿論、ゼノン殿もな。それに関しては、何ら心配は要らない。マーティとのことも、仲直り出来たなら、大丈夫だ。ラライのことは彼に任せ、黙って見守っておれば良いのだ。御前はどんと構えておれ」
その言葉に、ライデンは大きく息を吐き出す。
自分の後ろで、しっかりと見守っていてくれる。しっかりと、支えていてくれる。それは、ずっと変わらない。その親としての無償の愛情を、自分もずっと持っていられるように。
「…頑張るから…ゼノンと一緒に、親父が安心していられるように、頑張るから…」
いつまでこうしていられるかはわからない。眠りに着いていた上皇を強引に起こしてしまったと言う負い目もあるが…それでもまた親子一緒にいられる時間は、ライデンにとっては貴重だった。
「…泣く奴があるか。御前の心配はもうしてはおらんぞ?ゼノン殿もおることだし、ワシは十分、安心しておるからな」
笑いながら、その頭を大きく撫でる。その温もりを感じながら、ライデンは袖で目元を拭うと、笑いを零した。
「うん」
にっこりと笑うその顔も、昔から同じ。そんな我が子の姿を懐かしいと思う。
本来なら…自分はもう、この場にはいない。その現実を、彼は何処までわかっているのやら。
「さぁ、御前も仕事の時間になるぞ。一国の王たる者、遅刻など以ての外、だぞ?」
「…仕事行って来ます…」
苦笑するライデン。上皇の傍を離れてドアに向かって歩いて行く。そしてそのドアを開けたものの…ふと思い出したように、上皇を振り返った。
「…あのさぁ、親父…」
振り返った視線の先に…その姿は、まだあった。
「どうした?」
当たり前のように返って来る返事。
「俺が、仕事から戻って来ても…まだ、いる…?」
漠然とした不安が、その表情に浮かんでいた。
強引に起こしてしまった手前…いつまでいてくれるのかわからない。ある時突然、消えてしまうかも知れない。
けれど、そんな不安そうな表情のライデンへ向け、上皇は小さな笑いを零した。
「心配するな。ちゃんとここにおるからな」
「うん。わかった」
安心した笑みを浮かべたライデンは、今度こそそのドアの向こうへと姿を消した。
「…やれやれ。これでは、いつになったらゆっくり休めることやら…」
思わず苦笑しつつも、すっかり父親となったその姿を見送った上皇は、満足そうな表情を浮かべていた。
こちらは、憂鬱な表情を浮かべているマーティ。
王宮の一室(前雷帝の寝室、と聞いていた)から皇太子宮へと戻るその背中には、未だ爆睡中のラライの姿。
ラライを背負ったままその自室へと戻って来たマーティを待っていたのは、フィード。
「ただいま戻りました…」
幾ら小柄なラライとは言え、マーティもラライより多少大きい、と言うくらいの体躯である。王宮のほぼ最奥とも言える雷帝の寝室から、正反対の位置にある皇太子宮のこの部屋まではかなりの距離がある。その上、相手は爆睡中。完全に脱力されている状態は、かなり重く感じる訳で。当然、マーティには相当な重労働である。
それでも、主である以上…文句は言えない。
「御帰りなさい」
勤めて冷静にそう言葉をかけたフィードであったが、爆睡のラライの姿にはホッとしたように小さく息を吐き出した。
「…あの…ベッドへと御運びしたいのですが…手伝っていただけますか…?」
ベッドの前まで来たものの、まだ官吏になって二日目。経験の浅いマーティには、その後どうやってラライを寝かせたら良いか、と言う想像がつかないのも当然。
困惑した表情でフィードへと訴えるような姿に、フィードは小さく笑いを零す。
「良いですよ」
フィードはマーティの背中から、未だ眠っているラライの身体を抱き上げる。そしてそのままそっと、ベッドへと下ろした。
「貴方の主ですからね、これからは自分で何とかしなければいけませんよ」
成体たるフィードにしてみれば、まだまだ子供のラライの身体など簡単に運べるもの。安全にラライをベッドへ下ろすには、マーティ一名では難しいことはフィードもわかっていた。
勿論、手伝うことに異論はない。けれど、簡単に手伝ってしまっては、マーティの主だと意識付けることは難しい。だからこそ、一言苦言を呈したのだ。
「…済みません…」
しゅんとしたような姿を見せたマーティ。その頭の上にそっと手を置いたフィードは、表情を和らげた。
「大丈夫ですよ。まだ官吏になったばかりですから、何もかも貴方に背負わせるつもりではありません。ライデン様もそれは重々承知されています。これからの話、ですよ。これから先、貴方が若様の信頼を得ること。そして、誰よりも…若様の、味方になって下さいね。それが、貴方の務めです」
「…フィード様…」
自分も、そうして過ごして来た。誰よりもライデンの傍で、何があってもライデンの味方でいる為に。それが、官吏である自分の役目であると背負って。
ただ一つ、昔の自分とマーティと違うのは…初見の主に、どれだけ受け入れて貰えたか、と言うこと。
同じ年頃の友達のいなかったライデンは、自分と同年代のフィードの存在を嬉しく思っていた。けれどラライは、完全にマーティを拒否していた。
片割れへの依存心が強かったラライは、簡単にヒトを受け入れられないだろう。それは、ライデンがマーティをラライの官吏へと決めた時から、ずっと心配していたことでもある。
けれど、だからこそ…の想いが、フィードにはあった。
「…貴方が…強くなりなさい。しっかりとした心を持って、真っ直ぐに向かい合いなさい。そうすればきっと、若様は貴方をわかってくれます」
「…はい」
小さな返事を返し、マーティはベッドで眠るラライへと視線を向けた。
官吏として、精一杯主に仕える。その為に…強くならなければ。
それは、マーティが胸に刻んだ言葉だった。
フィードも職務に戻ってしまい、マーティは一名でラライの部屋に残っていた。
主は、未だ眠っている。その顔をそっと覗き込むと…昨日とは打って変わって、とても穏やかで…何処か倖せそうな寝顔。それが本来のラライなのだろうと思いつつ…いつになったら、その穏やかな表情を自分に向けてくれるのだろうか、と言う不安は、未だ付き纏う。
小さな溜め息を一つ、吐き出す。すると、まるでその溜め息が聞こえたかのように…ラライの目蓋が小さく動き、やがてその眠りから目覚めた。
「あ…の……おはようございます…」
未だぼんやりとしているラライに向け、そう声をかける。その瞬間、パッと開いたその眼差しが、真っ直ぐにマーティへと向けられた。
驚いたような…一瞬、怯えたような、そんな色。
「…何で…僕、ここに…?」
上皇の部屋で寝ていたはずだったが、目を覚ますと自分の部屋にいる。一体誰が連れて来たのか、それすらもわからない。
「あの…わたくしが、背負って参りました…ライデン陛下に頼まれましたので…」
「………」
大きな溜め息が、一つ。
「……済みません…」
思わず口から零れた言葉。その言葉に、更に小さな溜め息が零れた。
「…謝らないで……御免なさい…」
ベッドから身体を起こし、目を伏せたラライ。けれど、その言葉は続いていた。
「…僕が、いけない。父様にも…御爺様にも言われた。マーティは、僕の"腹心"だから…仲良くしないといけない、って…」
「…若様…」
"腹心"の意味は、正直ラライにもまだわからない。でも、今まで何でも相談出来た片割れが、恐らくその役割をしてくれていたのだろうと言うことはわかった。つまり…マーティは、片割れの代わりとして考えれば良いのだろうか、と言うところまでは思考が辿り着いていた。
何より…今まで、とても良い夢を見ていた。だれかに背負われて、ゆらゆらと揺られている感覚は何となく覚えていた。それがとても心地良くて、更なる眠気を誘ったのだ。
その正体がマーティならば…きっとまた、良い夢が見られるだろうか。
「…御免ね、マーティ……仲良く…してくれる…?」
顔を伏せたまま、視線だけを上げる。上目遣いでマーティを見上げたラライに…マーティは思わず、小さく笑いを零した。
「謝らないで下さい。わたくしも…まだ慣れないもので、若様も不安だとは思いますが…精一杯、御仕えさせていただきます。どうぞ、宜しく御願い致します」
深々と、頭を下げるマーティ。そして顔を上げ、にっこりと笑って見せた。
不安が和らいだ、とても穏やかな笑顔。それは何処か…片割れの笑顔と似ている気がした。
「…うん、宜しくね」
ラライもまた、表情を和らげる。まだ、満面の笑み、とはいかないものの…はにかんだその顔は、ライデンにも…そして、先日官吏になることが決まったばかりの時に一度会っただけではあるが、もう一名の父親たるゼノンにも良く似ていると、マーティは感じていた。
いつか、立派な雷帝になる為に。
その為に、ラライとマーティの両名が、一歩を踏み出したのだった。
季節は順調に過ぎて行く。
魔界の様子など、何も彼には届かない。否…敢えて誰も伝えはしなかった。
彼が、きちんと自分の足で歩いて行く為に。片割れから離れても、きちんと生きていけるように。
その願いは…果たして、叶うのか否か。
それは、まだ誰にもわからなかった。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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