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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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かがやきのめ 4

第四部"for CHILDREN" (略して第四部"C")

こちらは、以前のHPで2004年09月25日にUPしたものです。
第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
4話完結 act.4

拍手[1回]


◇◆◇

 その日の夕方。
 自室に戻って来た彼は、ベッドに座りこんで膝を抱えている片割れの姿に気が付いた。
「…ララ?どうしたの?」
 明らかに、いつもとは様子の違う姿にそう問いかけると、片割れはゆっくりと顔を上げ、彼を見つめた。
「…何処にいたの?」
「…え?」
「…朝起きた時から、ずっといなかった…僕を置いて、何処かへ行ってしまったのかと思った…」
 多分、ずっと泣いていたのだろう。泣き腫らした瞳は、もう零れる涙もなくなってしまったかのようで。ただ、赤くなったその瞳が、真っ直ぐに彼を見つめていた。
「…御免ね…」
 そうつぶやいたものの、そこから先の言葉が出て来ない。
 自分が魔界へ降りれば…片割れはいつもこうやって、涙が涸れるまで泣き続けるのだろうか?
 否、そんなことはない。その環境に慣れてしまえば、いつかは涙も止まるはず。
 ならば…魔界へ降りた自分も、きっとその環境に慣れてしまえば…恐怖感も寂しさも、感じずに済むのではないだろうか…?
 そんな思いを抱きながら、彼は片割れの隣へと腰を降ろした。
「…御爺様に…会ったよ」
 会話が見つからず、思い出したようにそう口にした彼。
 けれど、片割れは口を開かない。
「…一緒に…会いに行こうか…?」
 そう問いかけると、その首が弱々しく横に振られた。
「どうして?」
 拒絶を意味する仕草に、彼は片割れの顔を覗き込むように見つめた。
「…知らないヒト、だもん…」
「…ララ…」
 そう。片割れは、自分以上に初めての環境に弱い。それどころか、彼と同じ部屋にいて、姿が見えていなければ、ひたすら泣いているだけの片割れ。
 夕べ、父王から、この国の世継はこの泣き虫で弱虫の片割れだと言う話を聞いた。
 いつでも片割れを慰めるのは彼の役目だった。彼が、片割れを護って来たのだ。
 もし…自分が魔界へ降りても良いかと、片割れに相談したら…その答えは一つ。確実に否定、だろう。
 溜め息を一つ吐き出した彼は、手を伸ばして片割れの手を握り締めた。
 そして、有無を言わさず立ち上がらせると、廊下へと引き摺り出す。
「ちょっ…ゼゼったら、止めてよ…っ」
「止めない。一緒に行くよ」
「ヤダったら…っ!」
「駄目っ!」
「ゼゼの意地悪~~っ!!」
「意地悪じゃないのっ!」
「ヤダ~~っ!!」
 幾ら片割れが拒否しようと、彼は片割れの手を掴んだまま、黙々と廊下を進む。勿論、騒ぎを聞きつけた使用魔や官吏たちが顔を覗かせようとも、彼の徒ならぬ気迫に押され、誰も留めることはなかった。
 そして、王宮の最奥まで辿りついた頃には、片割れの声はすっかり涸れ、諦めにも似た姿に変わっていた。
「ゼフィーです」
 ドアをノックし、返事を待つ。
 けれど、返事よりも前にドアが開かれ、そこから顔を覗かせたのは、父王。
「…御前たち、どうしたの…?」
「父上~~~っ!!」
 思いがけない登場に驚いた彼が、力を緩めた一瞬に、片割れは彼の手を振り切って、父王の腕の中に飛び込む。
「…ゼゼ、これは一体どう言うこと…?」
 いつも穏やかな彼に似付かない姿に、父王は当然目を丸くする。
「…御爺様に…会わせようと思って…」
「…親父に?無理やり?」
「…だって…ララが嫌がるから…」
 どう見ても、彼の方が不利な状況。怒られることを覚悟して、その声は小さくなる。
 けれど返って来たのは、父王の溜め息、だった。
「…まぁ…気持ちはわかるけどさぁ…とにかく、入ったら?」
 父王に促され、彼は再び、部屋の中へと足を踏み入れた。
 ベッドには、朝と変わらない姿でいる上皇。その瞳は、真っ直ぐに彼を見つめていた。
「…御免なさい…」
 彼は、そう言葉を紡ぐことしか出来なかった。
 項垂れ、咎めの言葉を待つ。けれど、そんな彼に向けられたのは…小さな笑い声、だった。
「やっぱり、御前の子供だな」
「…親父…」
 くすくすと笑う声に、彼は思わず顔を上げる。そしてそこに、目を細めて笑う上皇の姿を見た。
 当然、父王に抱かれた片割れも、訳がわからないと言った表情で上皇を見つめていた。 「ワシに。話があるのか?」
 笑いを収めた上皇は、彼を見つめた。
「……はい…」
 どう答えようかと迷った挙句、彼は小さくつぶやく。そして、その眼差しを伏せた。
 正直、もう一度会いたいと思ったことには間違いない。けれど、何を話して良いのかはわからなかった。ただ、会いたかっただけで。
 俯いたまま、口を噤んでしまった彼の姿を見て、父王は上皇を振り返った。
「ラライは…また後でゆっくりと。取り敢えず、一旦皇太子宮に戻ります。ごゆっくり」
「あぁ」
 父王はそのまま、片割れを連れて部屋を出て行った。
 残されたのは、彼と、上皇。
「…あの…」
 奇妙な緊張感を感じた彼がゆっくりと顔を上げ、困った末に紡ぎかけた言葉を、上皇は笑って制した。
「焦らずとも、時間は十分ある。気にせずとも良いぞ」
「…はい…」
 そう言われては、それに続く言葉はない。
 上皇はゆっくりとベッドから降りる。その身体は父王よりももっと大きかった。
「おいで、ゼフィー」
 彼は促されるままに上皇の傍へと行くと、徐ろにその身体を抱き上げられた。
 彼を肩の上に乗せたまま、上皇は窓辺とへ歩み寄る。そしてその窓の向こうに見える景色へと目を向けた。
 そこに見えたのは、彼が見たことのなかった大きな城下町。皇太子宮とは正反対の向きにあるこの寝室からは、彼の知らない景色が広がっていた。
「…凄い…」
 思わず零した言葉に、上皇は小さく笑った。
「昔…ライデンがそなたと同じくらいの頃、良くこうして外を見ておったな。ここがいつか、御前が護るべき地なのだと良く話した覚えがある」
「……」
 それは…彼には叶わない願い。それを彼に教える意味がわからなかった。けれど上皇はそのままゆっくりと言葉を続けた。
「この景色を護りたいと思うか、自分には無縁だと思うか…それは、そなた次第だ」
「…でも…僕は、ここにはいられないんでしょう…?だったら…ここを護ることは…」
 言葉の意味が良くわからず、困惑の表情を浮かべた彼。
「確かに、現実はそうかも知れん。だが、全く無縁、と言う訳ではあるまい?そなたがこれから学ぶことを…得た知識をどう活用するか、と言うことだ。魔界は閉鎖された地ではない。雷神界とも、天界とも、共存していく必要があるのだ。必要な時に手を取り合って生きて行く。それは、何処の世界でも必要なことだ。そして、そこには、そこで生きている民かいる。その証が、この城下町だ」
「………」
 彼にはまだ理解するもの難しいこと。そしてそれは、中立を護る雷神界だからこその思想だと言うことも、上皇にはわかっていた。だが、これから彼が生きていかなければいけない世界は、決して生温い世界ではない。生きて行く為の取捨選択は、彼自身に託されていくのだ。
「そなたが、この世界のことを知らなくても生きてはいけるだろう。だが、知っておいて損をするものでもない。いつかまた、こうしてここへ来て、同じ景色を見ることはきっと出来る。それまで、覚えておくと良い。そなたの片割れがどれだけ頑張っているかの確認も出来るだろう?」
「…ララに…頑張れる?」
 心配そうに問いかけた言葉にも、上皇は小さく笑いを零した。
「出来ないと思っておるのか?そなたと同じ血を分けた兄弟だと言うのに」
「…だって…」
 今までの姿では、とても心配だった。引き離された後…片割れは、どうなってしまうのだろう。自分のことも不安だが、片割れのことも心配で仕方がない。彼の表情は、そう言っていた。
「…まぁ…気持ちはわからんでもないな。まだ…ライデンが皇太子だった頃、ワシも心配で仕方がなかった。彼奴はなかなかのやんちゃでな。護衛もつけずに一名で王宮を抜け出して森にばかり行っておってな。皇太子としての自覚があるのかどうかもわからず、無茶ばかりして、ワシは一時も気が休まらなかった」
「…父上が…?」
 思いがけない言葉に、彼は上皇の横顔を見つめた。
 上皇は、彼の方を向いてはいなかった。眼下を眺めながら目を細める姿は、昔を思い出しているのだろう。その口元には、微かな微笑が浮かんでいる。
「ゼノン殿もあぁ見えて頑固者での、一筋縄ではいかない男だったな。時々、思いがけないことをやって退ける。幾度も驚かされたものだ」
 くすくすと笑う上皇。彼の知らない父親たちの姿を、この上皇は見つめて来たのだ。  父親としての、眼差しで。
「…ゼフィーを見て、昔を思い出した。やはり、奴らの子供だな。やはり、同じ道を通っておる。沢山悩んで、迷っておったが…きちんと自分たちの足で歩いて来たのだ。そなただけではない。きっとラライも、自分の足で歩いて行けるぞ」
「…父上も…父様も…沢山悩んだのですか…?」
 そう問いかけると、上皇は僅かに彼の方へと視線を向けた。
「あぁ、沢山な。ワシも良く相談されたものだ。ライデンが魔界へ修行に出る前もな、同じように暫く悩んでおった。ゼノン殿と出会った後も、一緒にいるべきなのかどうかもな。だが、ワシはライデンのことも、ゼノン殿のことも信じておった。どんなことがあったとしても、それは親として当たり前のこと。ライデンもゼノン殿も…そなたや、ラライを信じておるはずだ」
「…わかって…います。父上も父様も、僕のことをちゃんと見ていてくれる。それが僕の勇気になるんだ、って。だから、僕は…ララにも、それを教えてあげたかった。僕は…父様と一緒に、魔界へ降ります。だから、残されるララにも…強くなって欲しかった…」
 ぽろりと、彼の頬を伝った涙。上皇は彼を肩から下ろすと、そのまましっかりと抱き締めた。
「大丈夫だ。今はまだ幼いが、ラライも立派な雷神界の後継ぎだからな。必ず強くなれる。それに…」
----ライデンも、泣き虫だったからな。
 くすくすと笑いながらそう言った上皇に、彼は思わず瞳を丸くする。
 彼にとっては、偉大な父王。その父王も、昔は泣き虫の子供だったのだと。
「そなたも、強くなれるぞ。ライデンとゼノン殿の血を引いておるのだから」
「…はい」
 彼は、にっこりと微笑んだ。
 強くなろう。その為に…魔界へ修行に行くのだと。
 彼の気持ちは固まった。後は、それを行動に移すだけだった。
「…御爺様。また…会えますか?」
 そう問いかけたのは、どうしてだっただろう。
「さぁな。ライデンに叩き起こされれば…また会えるだろうな」
 にっこりと微笑む上皇。
 自分が生まれ育ったこの場所。そこには、大好きな彼の父王と、片割れがいる。そして…暖かい祖父もいてくれる。それが、確かな勇気となった。
「…いつか…強くなって、帰って来ます。だから…そうしたら、また僕と会って下さい」
「あぁ、待っておるぞ」
 彼は上皇から離れると、にっこりと笑って握手を交わした。
 それが、彼と上皇の最後の面会だった。

◇◆◇

 皇太子宮へと戻って来た彼は、自室へとやって来た。そこには、先程と同じように、ベッドに座る片割れの姿。そして、その隣には、父王ともう一名の父親の姿もあった。
「御帰り」
 軽く微笑み、彼を迎えてくれた父王。もう一名の父親も、同じように微笑んでいる。ただ一名、彼の片割れだけは、無粋な表情のままであったが。
「…僕…魔界へ行くよ」
 ゆっくりと呟いた声。それは、彼を見つめる者たちに対して発した言葉。そして、自分自身にも言い聞かせた言葉。
「駄目…っ!!」
 咄嗟に叫んだのは、片割れだった。彼が想像していた通り、その表情は悲痛に歪んでいる。
「何処にも行かないで…っ!」
「…ララ…」
 彼の元へと走り寄って来た姿を、父王の腕がそっと包み込んだ。
「御免ね、ララ。でも僕は…」
「嫌だっ!何処にも行かないで…っ!!」
 必死に彼の服を掴む片割れの手。けれど、その手を父王の手がそっと包み込み、やんわりと引き離した。
「ララ。御前も、独り立ちしないとね」
「父上…っ!」
 身を屈め、片割れの身体を抱き締める父王。そして、その眼差しは真っ直ぐに彼へと向けていた。
「タイミングは悪かったのかも知れないけれど…御前にも…そして俺たちにも、良いきっかけだったんだと思う。魔界は良いところだよ。大魔王陛下も、副大魔王閣下も、情報局の長官も、軍事局の総参謀長も…みんな俺やゼノンの大事な仲魔だから。きっと、御前のことも護ってくれる。だから、心配しないで行っておいで。ここで…待っているからね」
 にっこりと微笑む姿は、上皇の微笑みと同じだった。
 暖かくて…頼もしい、父親の眼差し。それが今は、とても嬉しかった。
「きっと…強くなって、帰って来るから。だから…待ってて」
 彼は、不安そうな眼差しで自分を見つめる片割れに、微笑みながらそう声をかけた。
 それは、自らの足で歩き出すことを決めた彼の、一世一代の勇気。
「ゼゼ…」
 ぽろぽろと涙を零す片割れ。けれど、彼はもう躊躇わなかった。

◇◆◇

 翌日、彼は魔界へと旅立って行った。
 その傍らには、ゼノンの姿。
 彼は、ゼノンの手をしっかりと握り締め、振り返ることはなかった。
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趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
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