聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
[PR]
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
星彩 1
第四部"for CHILDREN" (略して第四部"C")
こちらは、以前のHPで2004年11月18日にUPしたものです。第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
4話完結 act.1
雷神界から、雷帝と魔界の文化局局長の血を分けた子供が魔界へと降りた頃。それは、魔界に新たな世継ぎが生まれてから、二百年を少し過ぎた頃だった。
その日、彼は大きな溜め息を吐き出していた。
その理由は、至極簡単。
彼は、新たな責務を背負うこととなったから、だった。
彼が呼ばれた所は、皇太子宮と呼ばれている所。そして彼を呼んだのは、魔界の大魔王陛下、だった。
「あぁ、いらっしゃい」
にこやかに出迎えた大魔王陛下。
「遅くなりました」
そう言葉を発し、彼は頭を下げ、挨拶をする。
「悪かったな、急に御前に頼んだりして。本来なら、御前に頼むべきことではなかったんだけれどね」
大魔王がそう言葉を零す理由を、彼はちゃんと知っていた。
本来なら、自分がこの場に立つべきではなかった。本来は彼の役割ではなく、歴代背負うのは他局の長なのだが…先日雷神界から魔界へ降りた仲魔の子供の件で、先に職務を押し付けられてしまった。それで彼に回って来た、と言う訳だった。
「…それで…殿下は…」
彼が呼ばれた部屋には、彼と、大魔王しかいない。もう一名、彼が関わるべき相手が足りないのだ。
「あぁ…部屋に閉じ籠もっているよ。ここに来てからずっとだ。案内しよう」
途端に浮かない表情を浮かべた大魔王。そして先に立って目的の部屋へと向かう。そして、一つのドアの前で立ち止まると、大きく息を吐き出してからドアをノックする。
「シリウス。いるんだろう?開けるぞ」
当然、中からの返事はなかった。けれど大魔王は徐ろにドアを開けると、中へ入って行く。彼もそれに習い、ゆっくりと部屋の中へと足を進めた。
薄いカーテンの引かれた部屋は、必要最小限の明るさを得ているだけで、十分な明るさではなかった。その部屋の隅の椅子に腰を下ろし、膝を抱えて本を見つめるその姿は、彼も初めて出会う生命だった。
「シリウス、御前に紹介しよう。本日付けで御前の教育係として就任した、情報局長官のエースだ」
大魔王がそう声をかけても、その視線はこちらを向かない。
「御前にも改めて紹介しよう。彼が、皇太子のシリウスだ」
そう言って、大魔王は彼の方をちらりと見た。そう紹介されてしまえば、彼も口を開かざるを得ない。
「…初めまして。情報局長官のエースです。シリウス様の教育係として命を受けました。宜しく御願い致します」
そう言って頭を下げても、その視線は本から離れなかった。
薄い金色の短い髪。そして、透き通るほど白い肌色の顔。その姿だけ見ていれば、人形か何かと思っても不思議はない程、表情のない姿だった。
小さな溜め息を吐き出した大魔王。そして、無言のまま彼を促すと、そっと部屋を出てリビングへと戻る。
「ダミアン様…」
小さく呼びかけた声に、大魔王は大きな溜め息を吐き出す。そして彼をソファーへと促すと、その向かいに腰を下ろした。
「あれが、我が子シリウスだ。ここへ連れて来られて怒っているようだ。誰とも口を利かない。勿論、わたしともね。一日あぁして部屋に閉じ籠っているよ」
そう言葉を零しながら、再び溜め息を吐き出す大魔王。
その大魔王とは、皇太子時代からの面識がある。個悪魔的にも任務を共にしたり、色々と付き合いのあった彼から見れば、この日の大魔王の姿はまるで別悪魔のようで。これ程表情を曇らせる姿を見たのも初めてであれば、これ程溜め息を吐き出す姿も初めてなのだ。
どう言葉を返して良いのかわからず、口を噤んだ彼は、心の中で大きな溜め息を吐き出していた。
----皇太子の教育係なんか、受けるんじゃなかった…
流石の彼も、先程見たあの姿をそう簡単に変えられる自信もなければ、今目の前で溜め息を零す大魔王の姿を見ているのも楽しいことではない。寧ろ、居た堪れなくなるのだ。
だがしかし。もしも彼ではなく、予定通りの"教育係"がこの場にいたとしたら。そう考えると、寧ろその方が重い気持ちになるのではないかと思う。
それは、ある意味当然のこと。
皇太子の教育係として、歴代の軍事局総参謀長が職務に当たって来たのは仕方がないとしても、現在の総参謀長である彼の仲魔は、大魔王の恋悪魔である。大魔王が世継ぎを残す為に他の相手と結婚することになった時にも、その世継ぎが生まれた時にも…どれだけ胸を痛めたか。それを知っているだけに、彼はこの場に"適役"がいなくて正解だったと思うしかないのだ。
「…時間をかけるしか、ありませんね。俺のやり方で、宜しいですか…?」
色々考えた末、彼は大魔王にそう問いかける。
「あぁ、御前に任せるよ」
それが、大魔王の思いの全てだったのだろう。彼も、事の重大さを改めて思い知らされていた。
その日の遅く、彼は恋悪魔たる副大魔王の私邸を訪れていた。
「…で?シリウス様はどんな方だった?」
興味本位で問いかける声の主は、当然この屋敷の主、デーモン。
皇太子であるシリウスには、生まれて間もない頃に一度贈り物をする為に顔を合わせた。その時は、本来の教育係であるルークも一緒にいた。けれどその頃はまだ赤ん坊である。今の様子は全くわからないのだ。
「…どんなも何も…親子であぁも違うものだとは思わなかったな」
小さな溜め息を吐き出しつつ、酒の入ったグラスに口を付けるのは、この屋敷を訪れた彼…エース。
「と言うと…?」
「多分、俺のことに興味はないんだろう。勿論、ダミアン様に対しても、父親として尊敬はしていないだろうな。大魔王陛下としてはどう思っているかは知らないが…少なくとも、崇めている様子は伺えない。全くの無視。表情もない。皇太子宮に移られてから、一言も言葉を発していないそうだ」
昼間の姿を思い出しながら、その口を突いて出たのはそんな言葉と溜め息。
「そうか。このところ、ダミ様の表情が浮かないのはその所為か…シリウス様が皇太子宮に移られて、やっとダミ様も落ち着かれたと思ったんだがな…」
「安泰までは長い道のりになりそうだぞ」
エースの表情も浮かない。魔界の未来が自分の手にかかっているのだとすれば、それは当然のことだろうが。
「じゃあ、ルークが行かなくて正解か?」
「だろうな。ルークが行っていれば、尚更心境は複雑だっただろうな。俺でさえ、何をどう始めて良いのやら…」
溜め息を吐き出しつつ、エースは目を閉じる。
現大魔王であるダミアンは、幼少の頃から常に微笑を絶やさなかったと聞く。勿論、エースが知り合ってからも、彼(か)の方は常に微笑んでいた。そして、その微笑こそがダミアンの芯の強さであり、温かさの象徴だと思っていた。
だがしかし。その血を受け継いでいるはずの皇太子たるシリウスの表情を目の当たりにしたエースは、その無表情さが気になって仕方がない。
彼の皇太子は…果たして、どんな声で話し、どんな顔で笑うのだろうと。
「…昔の自分を見た気分だな…」
ふと、呟きを零す。
エースの脳裏には、若き日の自分の姿が甦っていた。無粋で本心を表さない、仮面を被って自分を守ろうとしていた、若かりし頃。今にして思えば、それはエース自身が育って行く為に必要なものだったにしろ、周囲はやはり今の自分のように気が重かったのではないかと。
「近づき難かったぞ、御前も」
くすくすと笑うデーモンはエースの隣に腰を下ろし、同じように目を閉じる。
「吾輩も、どうやって御前の心を溶かして良いのかわからなかったな。ゼノンやライデンの前で御前が笑う度、羨ましくて仕方がなかった。どうやったら、吾輩の前で笑ってくれるんだろうと、そればかり考えていたな」
昔を思い出し、デーモンは苦笑する。
憎まれていた頃の自分。そして、その想いの果てに愛された自分。何かが変わったとすれば…自分も、素直に気持ちを吐き出せるようになったことぐらいだろうか。
「まぁ、御前なら何とかなるだろう。持久戦になったとしても、一生誰とも口を利かない訳には行かないのだから」
エースは目を開けて、隣のデーモンを軽く睨む。
「…御前は気楽だよな…」
「そうでもないぞ?これでも、多忙なんだから」
再び、くすくすと笑い出したデーモン。勿論、楽観している訳ではない。だがエースは、子育ての素人ではない。行きがかり上とは言え、二名の子供を育てた実績があるのだから。
「ま、頑張れよ」
まるで他悪魔事のようなデーモンの言葉に、エースは深い深い溜め息を吐き出していた。
翌日。エースは、情報局へ顔を出して簡単に職務を終えてから、皇太子宮へと向かっていた。
出迎えの執事に案内されて訪れたのは、昨日と同じシリウスの自室。そして、ドアをノックしても返って来る声はない。
「…エースです。失礼致します」
そう言って、エースはドアを開ける。そしてその部屋の中で、昨日と同じように部屋の隅の椅子に座り、本を読み耽る主を見つけた。
「…シリウス様、御時間ですが」
そう声をかけても、シリウスの表情も動作も変化はない。
小さな溜め息を吐き出したエースは、シリウスの前へとテーブルを移動させると、そのテーブルの上に持参して来た紙を置く。
「…暫くの間、これを使って進めて行きます。わたしに興味がなくとも、話したくなくとも結構。ただ、これに目を通して下さい」
そう言うと、シリウスの眼差しが僅かに動き、目の前に置かれたテーブルの上の紙へと向いたようだった。
エースはその紙の隣にペンを置くと、身を翻す。そして、もう一脚の椅子を持って、部屋の中の、シリウスが座っている位置から正反対の出入り口のドアの直ぐ傍の隅へとその椅子を移動させると、自分はそこに腰を下ろし、持参して来た本を開いた。
無言のままのシリウス。そして、同じように無言で本に目を落とすエース。ただ、ページをめくる音と、呼吸の音だけが部屋の中に響き、外から聞こえる鳥の囀りの声さえ、異様に大きく聞こえた。
エースはただ、様子を見ていた。
無理に、声を聞こうとは思わなかった。話したくない気持ちは、わからないでもない。全てを拒否したいと思っている気持ちも、察していた。だからこそ、無理矢理の行動はやめようと思ったのだ。けれどだからと言って、抛りっぱなしと言う訳でもない。課題を与えてみて、どう反応するかを見てみたかったのだ。
暫し、御互いに何の行動も起こさない。ただ、本に目を落とすだけ。
そうしている間に、その日の職務時間は終わっていた。
「…では、本日はこれで失礼致します。明日、この用紙を回収いたしますので、それまでに仕上げて置いて下さい。質問があれば、裏にでも記入していただければ良いですから」
夕闇の中、エースはシリウスに頭を下げ、部屋を出て行く。
その後姿を密かに横目で追い、廊下の気配も完全になくなると、シリウスは小さな溜め息を吐き出していた。
そして。
「…ばっかじゃないの…」
小さくつぶやいた声は、当然、エースには届いていなかった。
「どうだった?」
情報局へと戻って来たエースを出迎えたのは、様子を見に来ていた恋悪魔たるデーモンの、興味深げなそんな問いかけだった。
「どうって…別に。昨日と変わらない」
そう吐き出された言葉と共に、小さな溜め息も零れる。
「今日も無言か」
「まぁな。だが、目線は動いたぞ。これに手をつけるかつけないかは別として、ちょっとした興味は引いたらしいな」
そう言って、エースは机の引き出しを開け、シリウスに与えて来たのと同じ紙を机の上に置く。
その紙には、帝王学では一番の基本となる、簡単な課題が記されている。
「一日これを?」
「そう。置いたっきり。手も出さない」
「御前は?」
「本を読んでいたさ。シリウス様と同じように」
「……へぇ」
思い切った行動に出たエースに、デーモンは小さく笑いを零す。
「教育係となったからと言って、必ず職務終了時間まで勉強を教えていなければならない、と言う決まりはないんだ。ダミアン様は、俺のやり方で良いと許可を出したんだ。俺のやり方でやらせて貰うさ」
まるで、文句があるかと言わんばかりの表情でコーヒーを淹れるエース。その姿を、デーモンはくすくすと笑いながら眺めていた。
「まぁ、良いんじゃないか?少しでも興味を引いたなら」
「気長に行くさ。今は、勉強を教えるだけが全てではないしな」
エースはデーモンの分のカップも用意し、コーヒーを注ぐ。そして、ソファーに座るデーモンの前に、カップを一つ置くと、もう一つは執務机の上に置き、自分はその机に向かう椅子に腰を下ろす。
「さて、もう一仕事。御前は?」
「あぁ、吾輩はもう終了。今日は帰る。ゼノンに呼ばれているんだ」
「…ゼノン?」
「この間の健康診断の結果で、気になる所があるんだと。まぁ、たいした事はないさ。この通り、別に変わったところもないしな」
「なら良いだが…」
健康診断の結果で気になるところがあるなど聞いてしまえば、エースも落ち着かないのだが…まぁ、当悪魔がぴんぴんしているのだから、然程たいした心配でもないのかも知れない。尤も、そうでないと困るのだが。
「じゃあ、気を付けてな。ゼノンに何か指示されたら、文句言うなよ」
「わかっているって。吾輩一名の生命じゃないしな」
デーモンは相変わらず、くすくすと笑っている。
デーモンにもしものことがあれば、その時はエースも共にする約束を交わしている。だから、それはエースにも関わることなのだ。
「じゃあ、な」
エースが淹れてくれたコーヒーを飲み干すと、デーモンはにこやかに執務室を後にする。
当然、残されたエースは、心配そうな表情を露わにしていたことは言うまでもない。
さて、その翌日のこと。エースはこの日も自分の職務を簡単に片付けて皇太子宮へと向かった。
そして、執事に案内されて訪れた昨日と同じ部屋の中は、昨日とまるで同じ。シリウスは部屋の隅の椅子に座ったまま本を読んでいる。だが、そのテーブルに置かれたままの紙は、きちんと課題を終わらせてあったのだ。
エースはその紙を手に取ると、ざっと目を走らせる。
課題の答えは全て正解、だった。裏面に質問もない。
「…良く出来ました」
軽く微笑んで、エースは持って来た別の紙と交換する。
「今日はこちらです。明日までに、仕上げて下さい」
そして、昨日と同じ場所へ向かうと、椅子に腰を下ろして持って来た本に目を落とす。
シリウスは、この日も全く動く気配はなかった。ただ、時折視線だけが本を離れ、エースへと向いていたことを、当然エースは察知していた。
少しずつ、自分の行動に興味を抱いて来ている皇太子。それをどう受け取っているかは別として、何処かに心を開くきっかけを持てればと思っていた。
それから数日間、エースとシリウスは同じことの繰り返しをしていた。
朝、エースが皇太子宮にやって来てからは、課題を終えた紙をエースが回収して新たな課題を出し、御互いずっと夕方まで本を読んでいる。そして、翌朝にはまた同じことを繰り返す。一度も質問を書いて来たことはなかったが、予習はきちんと出来ているようだった。
そうやって行く中で、エースはシリウスの視線をしばしば感じるようになった。
モノ言いたげな視線を感じ、エースが顔を上げると、相手はふっと視線を落とす。その繰り返し。だがそれでも、エースには十分だった。
そんなある日のこと。この日も、エースとシリウスの日常は変わらなかった。けれど、不意に届いた連絡が、その日常を破ったのだった。
朝置いた課題に見向きもせず、本を読み耽っているシリウス。その様子を部屋の隅から眺めつつ、こちらも本に目を落とすエース。けれど、その穏やかに過ぎていた時間を遮ったのは、ドアをノックする音、だった。
「…はい」
動かないシリウスに代わり、エースが声をかける。すると、ドアの向こうから執事の声が聞こえた。
『シリウス様に、御面会の方がいらしておりますが…』
「面会…?」
その声に、エースはシリウスへと視線を向ける。けれど、シリウスの表情も動きもない。仕方なく、エースは席を立ちあがってドアへと向かうと、そっと押し開けた。
すると、そこに立っていたのは。
「…奥方様…」
執事の後ろに立つ姿に、思わず息を飲んだエース。
「エース長官…ですね?御無沙汰しておりました。シリウスが御世話になっているそうで…」
大魔王妃とエースと顔を合わせたのは、婚姻の儀の一度だけ。だが、見覚えのあるその姿は、にっこりとエースに微笑んだ。
魔界貴族の一人娘として育てられたと言う大魔王妃は、その身位に相応の礼儀と美しさを兼ね備えていた。
だがしかし。大魔王たるダミアンは、世継ぎを残す為だけの婚姻としか見ていなかった。そして大魔王妃もまた、生まれ育った生家での生活を望み、婚姻から直ぐに別居状態となっていた。それから今まで、一度として王都に戻って来たことはなかったはず。それを知っていたエースだからこそ、思いがけない登場に驚きを隠し切れなかったのだ。
そして、廊下から聞こえた大魔王妃の声に反応したのは、今まで動くことのなかったシリウス。
徐ろに椅子から立ち上がると、ドアへと歩み寄って来る。
「…母様…」
初めて聞いた、シリウスの声。それは、幼い頃のダミアンの声と良く似ていた。
けれど…決して、感情を露にはしない。驚いたような表情を僅かに浮かべていたものの、喜びが溢れている訳でもない。ただ冷静に、その姿を見つめていた。
----…何だ…?
一種、異様な光景。その状況を目の当たりにし、流石のエースも言葉を放つことも出来ず、ただその様子を見つめているだけだった。
すると、更にその奥から声が聞こえた。
「…どう言う風の吹き回しだね?貴女がここへ来るなんて。何の報告も聞いていないけれど…?」
そこにいたのは、大魔王たるダミアン。
「…陛下…」
驚いたように、声を上げた大魔王妃。そして、小さく息を飲んだシリウス。
「…申し訳ありません。用事があって王都へ参りましたの。王都まで来たのだから、シリウスの顔を見て帰ろうと思いまして…」
その一言で、ダミアンと大魔王妃の連絡が密になっていないことがわかった。そんな状況を知っているシリウスは…恐らく、他に何か思うところがあるのだろう。王都に連れて来られたことに闇雲に怒っている訳ではないのかも知れない。エースはそう考えていた。
ダミアンは小さな溜め息を一つ。その姿をじっと見つめるシリウスと、不安げな表情を浮かべる大魔王妃。勿論、エースもダミアンがどんな反応をするのかを見守っていた。
「…まぁ、来てしまったからには仕方がない。少し、シリウスと話しでもしていると良い」
ダミアンはそう言い残すと、エースに小さな目配せをして踵を返す。
「…では、わたしも退散致します。どうぞ、ごゆっくり」
エースは軽く微笑んで大魔王妃にそう言い、一礼をすると、ダミアンを追って部屋を後にする。
その背中に、ドアの閉まる小さな音。
そして、エースその背中に感じたのは…今までここで感じたこともない、緊張感、だった。
ダミアンを追いかけてエースがやって来たのは、書斎だった。
「…初めて、シリウス様の声を聞きました」
そう口を開いたエースに、ダミアンは苦笑する。
「わたしも、久し振りに声を聞いたよ。まさか、彼女が来るとは思ってもいなかった。どう言う風の吹き回しだろうね」
大きな溜め息を吐き出しつつ、エースをソファーへと促す。
「ダミアン様は、何故ここに?何か、用事でもあったのでは?」
普段は皇太子宮にはやって来ないダミアンが来た理由を問いかけたエースの声に、ダミアンは首を横に振った。
「いや、別に用はない。ただ、様子を見に来ただけだからね。おかげで、思わぬところで彼女に出会ったが」
その表情を、エースはどう受け取って良いのかわからなかったと言うのが、正直な所だった。
久し振りに会ったはずの"妻"の存在は、ダミアンにとっては困惑そのものだったのだろうか。その答えが、恐らく幾度となく吐き出される溜め息なのだろう。
この大魔王陛下に、憂い顔など似合わない。それが、彼の大魔王陛下を古くから知っている"仲魔"たちの思いなのだ。
「…今日は多分、これ以上何も出来ないだろう。もう帰っても良いよ。たまにはのんびりするのも良いだろう」
「…有難うございます」
エースは、ダミアンのその提案を素直に受けることにした。
そして、大魔王妃が帰るまで皇太子宮に残ると言ったダミアンを残し、エースは情報局へと戻って行ったのであった。
PR
COMMENT
プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
カレンダー
カテゴリー
最新記事
(06/23)
(10/08)
(10/08)
(09/30)
(09/10)
(09/10)
(08/06)
(08/06)
(07/09)
(07/09)
アーカイブ
ブログ内検索