聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
[PR]
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ひかりのしずく 2
第四部"for EXTRA" (略して第四部"E")
こちらは、本日UPの新作です。第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
3話完結 act.2
ガブリエルが一時王都へ戻って来てから数日。
頼まれていた精霊の森に関して調べていたラファエルは、その報告書を手に溜め息を吐き出していた。
その姿を不穏気に見つめるのは、その報告書を持って来た側近たるレイ。
「…取り敢えず…ガブリエルのところへ行って来ます。直接話をする方が良いでしょうから…」
溜め息を吐き出しつつ、そう零したラファエル。
「…御供致しましょうか…?」
その報告を聞けば、ガブリエルがどんな反応をするか。それは、レイには想像出来た。だからこそそう問いかけたレイだったが、ラファエルは首を横に振った。
「大丈夫です。わたし一人で行きます。多分、その方が…彼女には良いでしょうから。向こうで…少し、相談をして来ます」
溜め息と共にそう言葉を零し、椅子から立ち上がる。
「留守を頼みます」
「…御意に。行ってらっしゃいませ…」
頭を下げるレイに、ラファエルは報告書を手に、執務室を後にした。
当然…その背中を見送ったレイは、心配そうな眼差しを隠せずにいた。
天界の郊外にある、一軒の屋敷。ガブリエルは、その屋敷でラファエルが持って来た報告書を見つめていた。
「…これは…事実なの…?」
重い溜め息と共に吐き出した言葉に、ラファエルも溜め息を吐き出す。
「…我々が入手した情報では、それが真実のようです」
そう言って、ガブリエルが握っている報告書へと視線を向ける。
そこに書かれていたのは…妖精の森の伐採を指示したのは、ガブリエル本人。その任務を命じた書類もしっかり残っていた。
だが、しかし。
「…一つ、言っておくわ。この書類のサインは、私のモノじゃない。日付も、私が王都を出てからのモノだもの」
「えぇ、それはわかっています。貴女の指示ではないことも。ただ…こんなことをしたのは一体誰なのか。それもまだわかりません…」
報告書には、もう一つ見慣れない名前があった。
"リシア"。その名前の誰かが、偽装されたガブリエルのサインを入れた書類を持って、森の伐採の責任者として森を訪れたのだと。
「"リシア"について、もう少し調べてはみますが…誰かが、貴女に罪を着せようとしているのは確かです。ですから…貴女も十分、気をつけて…」
「…ラファエル…」
言わんとすることは、十分わかっている。だからこそ…思わぬ方向に向かう現実に、気が重い。
吐き出された溜め息は、その心の重さを表していた。
ガブリエルの件で"リシア"のことを調べていたラファエルだったが、調べれば調べるだけ、狐に摘まれたような奇妙な感覚を覚えていた。
「"リシア"のこと…ですか?」
奇妙な顔をするラファエルに、レイが声をかける。
「えぇ…まぁ。"彼女"は…いつから、ガブリエルの軍にいたんですかね…」
それは、ラファエルが調べた現実。
"リシア"は、ガブリエルがまだ王都にいた頃から、その軍に在籍していることになっている。それも、直接任務を受けて動く立場にあるくらい上位に。けれど、ラファエルも…そしてガブリエル自身も、一度もその姿を見たことはなく、名前も聞いたことはなかった。
だがしかし。確かに、在籍の書類はある。そして、現在…ガブリエルが残した軍の上位に、"彼女"がいる。偽装された書類に従い、ガブリエルが護ろうとしてるモノを壊そうとしている。
"彼女"は…何を、企んでいるのか。
「…まず、直接話を聞いてみた方が良さそうですね」
溜め息を吐き出しながら零した言葉に、レイも小さく息を吐き出す。
「…声はかけてあります。直にこちらへ訪ねて来ると思います」
仕事の速いレイらしく、予め手は打ってあった。
その仕事っぷりに関心しつつ。今は、彼女の来訪を待つしかなかった。
一時間ほどが過ぎただろうか。漸く、執務室のドアをノックしている音が聞こえた。
返事を返すと、そっとドアが開き、入って来た姿。
「…貴女が…"リシア"、ですか?」
「はい、ラファエル様。私がリシアですが…どのような御用件でしょうか…」
そう答える姿。色薄の金色の短い髪に薄い碧色の瞳。すらっとした身体。どちらかと言えば、戦士には見えない。尤も、それを言ってしまえばラファエルもガブリエルもそうなのだが。
他軍のラファエルに呼ばれ、当然その表情はとても強張っている。ラファエルの背後にレイも立っているのだから、更に緊張は高まる。
「ちょっと、貴女に聞きたいことがありましてね。貴女が先日担当した森の伐採について」
切り出したラファエルの言葉に、更にその表情が硬くなる。
「貴女にその任務を依頼したのはどなたですか?」
問いかけた言葉に、リシアはちょっと困惑した表情を浮かべた。
「…任務の依頼…ですか?正式な執務命令はガブリエル様からと聞いていますが…」
「そうですね。その書類はわたしも拝見しました。ですが、どう考えても納得出来ないのですよ」
そう言いながら、ラファエルは数日前にレイが持って来た書類を差し出す。
「貴女が受け取った執務命令の勅書はこれですね?」
差し出された書類を受け取り、目を通すリシア。
「…そうです。ですが、これが何か…」
怪訝そうに眉を寄せる。その姿をじっと見つめながら、ラファエルは口を開く。
「書類そのものが偽りです。ガブリエルのサインも。つまり、貴女が引き受けた任務は、ガブリエルの意図ではない、と言うことです」
「…そんなまさか…ですが、サインまで偽物だと言う証拠は…?」
驚いた表情を浮かべつつ、リシアも簡単には引かなかった。
「日付、ですよ。そのサインを入れた日には、もうガブリエルは王都にはいませんでした。それに、その書類にサインをしていないことも、その書類自体ガブリエルが関与していないことも、本人に確認済みです」
「………」
口を噤んで、静かに息を飲む。その表情は…騙されていた、と思っているのか…はたまた、彼女もそこに加担していたことを黙っていようと言うことなのか…そこまでは読み取れなかった。
「…それで、です。貴女はその書類を、誰から受け取りました?」
静かにそう問いかける声に、リシアは一つ間を置いてから口を開く。
「…わかりません。朝登庁しましたら、机の上に置いてありましたので…上司に問いかけると、何処からか回って来た任務だと。ガブリエル様の名前が入っておりましたので、何の疑いもなくそのまま受けたのですが…」
「…そうですか…」
パッと見、偽りを言っているようには見えない。けれど、その全てを信用する訳にはいかない。
「では、もう一つ御聞きします。貴女は…いつから、ガブリエルの軍に…?彼女は、貴女と会ったことはないと言っていましたが…書類上では、貴女はガブリエルが在籍していた時から、彼女と顔を合わせるはずの身位にいたはずです。それについて、説明していただけますか?」
再び口を開くラファエルに、リシアはじっとラファエルを見つめた。
そして。
「…あの…信じていただけるかどうかはわからないのですが…私、記憶喪失で…以前の記憶がないのです…」
「…はい?」
思いがけない言葉に、ラファエルだけではなく、一緒に聞いていたレイもまた、怪訝そうに眉を寄せた。
「記憶喪失…って…いつから、ですか?」
「それが…良くわからないのです。一番古い記憶は、つい半年ほど前で…それ以前の事は、良く覚えていないのです」
「………」
その言葉には、ラファエルとレイの方が口を噤むしかなかった。
「…では…どうして、今の役職に?記憶がないと言いながら、何故軍で働いているのです?」
溜め息を吐き出すラファエルを横目に、レイの方がリシアに問いかけた。
「…私を保護してくれた方がいます。暫く休職だったようなのですが、その方が…私の在籍を調べてくださり、復職を手伝ってくださいました」
「…その、貴女を保護したと言うのはどなたですか?」
「…私も数回しか御会いしていないので、はっきりとは…名前も良く覚えていないのですが…ただ、濃い茶色の、短い髪の方でした」
「…濃茶色の髪…ですか…天界には余りいない髪の色ですね…因みに、目の色は?」
問いかけたラファエルの声に、リシアは少し考えてから…眉を寄せた。
「目の色は…覚えていません。ですが、髭はありました」
「覚えていない…」
それが、引っかかる。そして、数回とは言え顔を合わせているにも関わらず、髪の色と髭の記憶以外、名前もわからないとは。
もしかしたら…それは一種の封印なのかも知れない。そう思いつつ、それならばこれ以上問いかけたところでどうにもならない。
「…わかりました。何か思い出したら連絡してください」
ラファエルは諦めたようにそう声をかけ、リシアを解放する。
その姿が執務室からいなくなると、ラファエルは大きな溜め息を吐き出す。
「謎だらけですね。結局、黒幕はわからずじまい…ですか。まぁ、天界には滅多にいない髪の色みたいなので、見かければ記憶に残るでしょうが…」
「一応、各局の名簿から検索をかけてみましょうか。"濃茶色の髪と髭を持つ者"を」
そんなことを話しながら…ふと、過ぎった記憶。
「…そう言えば…」
「…ラファエル様?」
何かを思い出したように、古い書類のファイルから何かを探し始めたラファエル。その姿を怪訝に思いながら、レイも何か思い当たる節はあったかと記憶を辿る。
先に目的の"それ"に辿り着いたのは、ラファエルだった。
「…これを」
そう言ってレイに差し出したのは、以前…丁度、ガブリエルとミカエルが王都から姿を消したその頃に、魔界から届いた報告書、だった。
「…そう言えば、ありましたね。こんな話が…」
その報告書に目を通しながら、レイはそう言葉を零す。
魔界の上層部を大きく震撼させたと言う"魔界防衛軍"について。元々、皇太子たるダミアンの隠密使であったその首謀者たる悪魔が、天界にも手を伸ばしている可能性がある、と。
「首謀者の容姿は、濃茶色の髪と、同色の瞳。それ以外は誰も覚えていない…そして名前も、幾つか持っている…」
「アナグラム、でしたね。本名は"ソウェル=ラヴォイ"。ですが、"魔界防衛軍"の黒幕としての名は"オズウェル"…ダミアン殿下の隠密使としての名は"ウェスロー"…全て、文字の入れ替えですね。そう考えると、魔界で使っていた名前が全てではないでしょうね…」
ラファエルは溜め息を吐き出しつつ、先ほど聞いたことを思い出す。
「リシアも言っていましたね。髪の色と髭以外、何も覚えていない…となると、"魔界防衛軍"の黒幕が天界に潜んでいる可能性もかなり高いかも知れませんね」
そう考えれば…辻褄は合う。
リシアを保護したのは、"魔界防衛軍"の首謀者。そして彼女が記憶をなくしているのを良いことに、主のいなくなったガブリエル軍へと潜り込ませる。そして彼女を操るかのように、ガブリエルの大切な森の伐採の指示を出した。そうすることで、ガブリエルを追い詰める為に。
そして…ミカエルもガブリエルもいない今が、一番暗躍しやすい時なのではないか、と。
「…気をつけた方が良いですね。"オズウェル"もそうですが…リシアに関しても」
そう吐き出したラファエルの言葉は重い。
報告書にはもう一つ…"オズウェル"は、"アリス"と言う名の仮面師を一名、連れ去っている、と。その容姿が、リシアととても良く似ていたのだ。
「色薄の金色の髪に薄い碧色の瞳…リシアと同じ髪と目の色ですよね。もし彼女が"アリス"だったとしても、仮面師は元来紋様を持たないようですから、天界に溶け込むことは簡単でしょう。ですが…連れ去られた"アリス"は、右腕がないと記されていますよね。リシアにはちゃんと右腕はありました。けれど、わたしが書類を差し出した時…彼女は左手で受け取っています。その後右手はちゃんと添えられていたので、左利きだと言われればそれまでですが…」
どうにもすんなりと受け止められない。そんな思いは、ラファエルだけではなく、レイもまた同じだった。
「とにかく、彼女の動きには十分注意しながら、様子を見ましょうか。まずはそれからですかね」
吐き出す溜め息は、得体の知れない未来への不安、だった。
ラファエルがガブリエルから精霊の森の伐採の相談を受けてから数ヶ月。時々様子を見に行っていたラファエルだったが、その後、森の伐採に関してもリシアに関しても、大きな動きはないようだった。
しかし、そんなある日。突然飛び込んで来たその連絡は、全く予期していなかった。
その日。側近たるレイと共にガブリエルの元を訪ねて行ったラファエルであったが、その屋敷に向かう途中で奇妙な臭いを感じた。
それは、何かが燃えているような煙の臭い。
「……?」
嫌な予感がする。そう思いながら、背中に翼を構えて臭いを辿って飛び立った。が、空に上がった直後、煙と炎が立ち上っているのが見えた。
それは…あの、精霊の森。
「ちょっ……っ!?」
何が起こっているのか、良くわからない。けれど今は、そこへ向かわなければ。
そんな思いで、二名は火の手へと向かっていた。
辿り着いたその場所は、もう殆ど炎は消えていた。けれど、まだ燻っている煙と、僅かに残っている炎が赤く見えていた。
そしてその場所で、ただ呆然としたままその状況を見つめている姿。
「ガブリエル…っ!」
彼女の元へ駆け寄ったラファエルであったが、呆然とした眼差しは真っ直ぐに燃え燻っている森を見つめていた。
火を消しているのは、森の精霊たち。
「…消火を手伝います!」
ぼんやり眺めている場合ではない。そう察したレイは、一足先に動き出す。
レイが駆け出したその途端、呆然としていたガブリエルが崩れ落ちる。
「ガブリエル!」
慌てて手を差し伸べたラファエル。抱き留めたその姿は、完全に意識を手放していた。
「こちらは頼みます!わたしは、ガブリエルを連れて戻ります!」
ラファエルの声に足を止めて振り返ったレイにそう声をかけると、レイは一つ頷いて再び駆け出していた。
その背中を見送り、ラファエルはガブリエルを抱き上げて彼女の屋敷へと向かっていた。
数時間後。森の消火を終えてガブリエルの屋敷へとやって来たレイ。その身体は煤で汚れ、疲れ切った表情を浮かべていた。
「ガブリエル様は…」
手渡されたタオルで顔と手を拭い、そう問いかけたレイの声。その心配そうな声に、ラファエルは小さな溜め息を吐き出していた。
「今は眠っています。確かもう産み月のはずですから…精神的なショックを考慮して、彼女が信頼する医師を呼んであります。どうなるかは、わたしにはわかりませんが…」
その表情は、酷く不安そうで。
「森の方はどうなりました?」
リビングへと通され、そのソファーに腰を下ろしながら問いかけたラファエルの声に、今度はレイが溜め息を吐き出す。
「それが…わたしが辿り着いた時には、森の半分ほどは既に焼け落ちてしまっていました。最終的に燃えずに残ったのはごく僅かです。グレインの一族は大半は生き残ったようですが…消火活動の際に、かなりの人数が巻き込まれて亡くなっているようです。聞いた話ですと…どうやら、その中にグレインもいたようで……」
「…亡くなったのですか?グレインが…?」
思いがけないその言葉に、ラファエルは息を飲む。小さく頷いたレイもまた、神妙な表情のまま大きく息を吐き出していた。
「グレインは、長の末の息子だったようで…ガブリエル様に対して、長はかなり憤慨しています。ガブリエル様の所為で森が燃え、グレインが亡くなったのだと…」
「それはどう言う…」
森の火災が、ガブリエルの仕業であるはずはない。それなのに、ガブリエルの所為だと言われるのは心外なのだが…一族の長の見解をまず聞かなければ。
そんなラファエルの思いを察し、レイは言葉を続けた。
「話をしてくれたのは…グレインの兄、と言う精霊でした。彼の話では…森に火をつけたのは、ガブリエル様だと…目撃者が何人もいるのだと言っていました。勿論、ガブリエル様に限って、そんなことは有り得ないと反論したのですが…余所者のわたしの言葉など、当然受け入れては貰えません。憤慨している長よりは話を聞いては貰えましたが…それでも、最初から敵として認識されていますから…」
「…そうですか…」
再び、溜め息が零れる。
「グレインのことは…ガブリエルは知っているんでしょうか…」
零した言葉に、レイは小さく首を横に振る。
「それは、わたしにはわかりませんが…可能性はあるかと……」
そう零し、暫しの沈黙。
ガブリエルの姿を見るに、確かにその可能性はあるだろう。
今度こそ…倖せになれると、そう思っていたはずなのに。再び、その想いが断ち切られてしまった。せめてもの救いは、彼女が身籠っているグレインの血を分けた子供の存在。けれど、この状況ではそれもかなり危うい状態であるはず。
大きな溜め息を吐き出した時、呼んでいた医師が到着した。そして直ぐにガブリエルの寝室へと消えて行く。
その場に立ち会うことは出来なかったが…戻って来た医師の話では、御腹の子供に心配はない、とのことだった。けれど、彼女自身がかなりショックを受けている為、暫く安静にした方が良い、との話であった。
医師が帰った後、残されたラファエルとレイは、ガブリエルの寝室のドアをノックする。
『…どうぞ』
中から聞こえた彼女の声に、ラファエルがそのドアを開ける。
「入っても良いですか…?」
小さく問いかけた声に頷くガブリエル。その返事に、ラファエルはレイと共に寝室へと足を踏み入れた。
ベッドの中で、上体だけを起こしているガブリエル。その表情はとても沈んでいて…現実に困惑しているのは良くわかった。
「話を…聞いても良いですか…?」
ゆっくりと問いかけると、その視線がラファエルへと向かう。
「貴女は…あの森に、何かしましたか…?」
問いかけた声に、溜め息が零れる。
「…私が火をつけたとでも…?貴方がそう言う言い方をしていると言うことは、私が疑われているのね」
「…ガブリエル…」
再び、溜め息を吐き出すガブリエル。けれどその眼差しはしっかりとしていて、既に森の手前で見かけた時のように呆然とはしていなかった。
「私は、何もしていない。誰がそれを信じてくれるかわからないけれど…多分、誰も受け入れてはくれないでしょうね。私はこの屋敷にいて、異臭を感じて外に出たら、あの森が燃えていたの。だから慌てて見に行ったら……最早、私の手には負えなかった…そのうちに、貴方たちが来て……」
「そう、ですか…」
ガブリエルが、森に火をつける理由はない。それは、ラファエルとレイにはわかっていた。けれど…精霊たちの誰がそれを受け入れてくれるか。それはガブリエルの言う通り、難しいことなのだろう。
溜め息を吐き出した時、ドアがノックされる。
「わたしが…」
レイがそう言ってドアを開けると、その向こうに使用人の姿。
「あの…ガブリエル様に御会いしたいと、尋ねて来た方がおりますが…如何致しましょうか…」
「客人…ですか?」
この状況で、尋常ではない。そう思うのは、彼らだけだっただろうか。
思わずガブリエルを振り返ったレイだったが、ガブリエルは何かを察していたのだろう。小さな溜め息を吐き出し、頷きを返した。
その様子に、使用人は小さく頭を下げて踵を返す。そして暫しの後…一名の男性を連れ、戻って来た。
「話がある」
そう切り出したその声は、グレインに良く似ていた。
「…どなたですか…?」
誰ともわからない相手にラファエルが問いかけると、彼はその視線をラファエルへと向けた。
「俺はヴィニー。あの森の精霊だ。この人が滅ぼそうとしたあの森の…一族の長の後取りの長兄だ。あんたは?」
真っ直ぐにラファエルへと向けられたその眼差しは、怒りの炎を宿らせていた。
「…わたしはラファエル。入り口にいるのはわたしの側近のレイ。彼女の…ガブリエルの、昔からの友人です」
冷静にそう答えたラファエルに、彼…ヴィニーは小さく息を吐き出した。
「そうか。あんたがラファエルか。グレインから話は聞いた。あんたが…ガブリエルとの橋渡しをしたそうだな。全く…余計なことを」
吐き捨てるような言葉に、ガブリエルとグレインの関係はあの精霊の一族には受け入れられていなかったのだと痛感した。
「彼女に何の用です…?」
問いかけた声に、ヴィニーは改めてその視線をガブリエルへと向けた。
「どう責任を取ってくれるつもりだ?あの森は、あんたの所為で壊滅状態だ。残ったのは、僅かな木々だけだ。その状態で、俺たちにどうやって生きて行けと?」
「ちょっと待ってください。彼女は関係ないでしょう?ガブリエルは、あの森に何も手は出していない。寧ろ、あの森を助けようと…」
「証拠は何処にある?前にも、あの森を伐採しようと指示を出したのはガブリエルだろう?そして今回、あの森に火をつけたのもガブリエルだ」
「ガブリエルは何もしていません。以前の伐採に関しても、あの指示書はガブリエルが出したものではないことはわたしが良く知っています。誰かが、ガブリエルの名を語って偽装した。それは明らかです。今回の事も、彼女は火が上がるまで、森には近付いていません」
「だが目撃者がいる。森に火の手が上がる前に、ガブリエルの姿を見た者が何人も。それはどう説明するんだ?」
「それは……」
二の句が告げない。
ラファエルとレイが森へ辿り着いた時には、ガブリエルはそこにいた。だが、火の手が上がる前のことは何の確証もないのだ。ただ、ガブリエルがそう言っているだけで。
勿論、ガブリエルが偽りを言っているとは思わない。森がなくなることは、彼女が疑われるだけで、利益に繋がることは何もないのだから。
そんな彼らのやりとりを聞いていたガブリエルは、大きく息を吐き出す。そして、ゆっくりとその口を開いた。
「…わたしは何もしていない。誰が見ていようが…それは、わたしではありません。どうしてわたしが…グレインの大事な森を奪わなければならないのですか?どうして…大事なグレインの生命を、奪わなければならないのですか…?」
「…ガブリエル…」
真っ直ぐにヴィニーを見つめた眼差し。ガブリエルは…知っていたのだ。グレインの死を。それでも、取り乱すことなく…。
「…誰かが、彼女に罪を着せようとしています。我々は、それを調べている途中です。ですから…もう一度、森で彼女を見た、と言う方の話を聞いていただけませんか?もしかしたら…誰かが成りすましているのかも知れない。ですから、確認をしていただきたいのです。彼らが見たと言う、彼女の容姿を。仕草を」
大きく息を吐き出したラファエルは、そう言ってヴィニーを見つめた。そのヴァイオレッドの眼差しを前に、ヴィニーは大きく息を吐き出した。
「……あんたたちの言い分はわかった。だが、俺たちはあんたたちを許した訳じゃない。それを忘れるな」
ヴィニーはそう言い残すと、踵を返して部屋を出て行った。
その背中を見送り、大きく息を吐き出したのは…その場にいた全員。
「…御免なさい。貴方たちを巻き込んで…」
小さく零したその言葉に、ラファエルは再び、大きく息を吐く。
「そんなこと…気にする必要はありません。今は、安静にと言われています。ですから…ゆっくりと休んでください」
にっこりと笑いを残し、ラファエルはレイを促して寝室を出る。そして、ガブリエルの屋敷を後にする。
「…捜しますよ。偽者を」
真っ直ぐに前を向いたまま、そう零したラファエルの声。
「…御意」
大きく息を吐き出し、レイも答える。
今必要なのは…諦めない想い、だった。
PR
COMMENT
プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
カレンダー
カテゴリー
最新記事
(06/23)
(10/08)
(10/08)
(09/30)
(09/10)
(09/10)
(08/06)
(08/06)
(07/09)
(07/09)
アーカイブ
ブログ内検索