聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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春光 1
第四部"for PARENTS" (略して第四部"P")
こちらは、本日UPの新作です。第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
4話完結 act.1
それは、彼らが正式に婚約してから幾度か季節が回った頃。まだ僅かに雪の残った季節。
一時期頭を悩ませていた"魔界防衛軍"は一時天界でも疑いがあったもののはっきりはせず、その後すっかり影を潜めていた。どちらの世界でも警戒はしているものの、何事もなく穏やかに時間は過ぎていた。
そして雷神界では、雷帝の婚姻の儀を前に、慌しい準備が進んでいた。
式を三日後に控えたその日の夜遅く。雷神界にやって来たのは、今回の主役の一名でもあるゼノン。
「御免ね。もっと早く来ようと思ったんだけど…意外と仕事が片付かなくて…」
この後一ヶ月程休暇に入る予定だった為、仕事を残しておくことが出来ずに何とか片付けて来たものの、準備を考えればぎりぎりの日数だった。
けれど、彼を出迎えた伴侶は、にっこりと笑いを零す。
「別に、そんなに慌てなくても良いのに。忙しく準備しているのは周りであって、俺も別にやることないから通常業務だし。当日の流れがわかれば大丈夫だよ」
「…それを呑気と言うんだよ。御前だからそう感じるのであって、実際は、そんなに簡単じゃないと思うよ…?」
「そうかなぁ?」
まぁ、実際に一番の主役である彼が一番大変な役割なのだが…それよりも忙しそうな準備の様子を見るからに、自分の役割など当日だけなのだから申し訳なくも思う。だが、雷帝自ら準備も片付けも手伝えるはずもなく。一切手出し出来ないのだから、確かにやることは何もないのだ。
「王位継承式と戴冠式の慌しさに比べたら、気楽なもんだよ。何せ…あんたがいるしね」
「……その節は御迷惑を…」
思わずそう零したゼノンに、彼はくすっと笑って歩み寄る。そして、その首にそっと両腕を回す。
「別に責めてる訳じゃないんだから、そんな顔しないで。ま、過ぎたことだしね。あんたがちゃんと戻って来てくれたから、俺はそれで文句ないし。でも今度は…ちゃんと、"ここ"にいてね」
「それは勿論。逃げも隠れもしないから。無事に終わらないと、俺は、正式に雷神界に受け入れて貰えないからね」
「今更…だけどね」
思わずそんな言葉と共に笑いを零したライデン。
もう、どれくらい一緒にいただろうか。出逢ったのは、ライデンが魔界へ修行に行ってから間もなくだったはず。そのあと人間界に任務で出かけたり、帰って来てからも色々あったはず。そう考えると、本当に今更なのだが…まだ、あくまでもゼノンは"来客"であって、ただの婚約者の一名に過ぎない。無事に婚姻の儀が終わらない限り、正式には受け入れられていないのだ。
大きく息を吐き出したゼノン。その表情には、多少の不安が見える。
「…大丈夫?」
問いかけた彼の声に、ゼノンは小さく笑った。
「大丈夫。まぁ…緊張はするけどね。ライデンも…上皇様も、付いていてくれるから。それに、当日は魔界からみんなも来てくれるしね。頑張りますよ」
「ま、一番必要なのは忍耐力だから、あんたなら大丈夫だよ」
くすくすと笑いを零す。そして、軽く口付ける。
「さ、もう夜も遅いしね、そろそろ寝ようか。明日も…周りが慌しいから落ち着かないよ」
「そうだろうね」
小さな笑いを零したゼノン。
その夜は、ゼノンの疲れもあって、二名ともぐっすり眠ったのだった。
翌日。
ダイニングで食事を済ませた二名は、それぞれの仕事へと向かっていた。
ライデンは、朝から通常業務。そしてゼノンは、婚姻の儀の責任者から諸々の説明を受けたり、当日の流れの確認、衣装合わせがあったりと、やはり微妙に忙しかった。
だがしかし。奇妙な気配に気が付いたのは…夕方になってから。
そろそろライデンの仕事も終わるだろうと思っていた頃。ゼノンはライデンのいる皇太子宮ではなく、王宮の客間へと案内された。
「本日より御式の日まで、こちらの部屋を御使い下さい」
宮廷官吏から、そう言葉をかけられ…一瞬、何のことかと考え込む。
「…えっと……?」
夕べまでは、何も言われなかったばっかりに、突然客間を与えられた意味がわからなかった。
「…これは、どう言う…」
問いかけた声に、宮廷官吏は申し訳なさそうに視線を伏せる。
「御式が済むまでは、こちらで過ごしていただけるようにと…御食事も、陛下とは別にするようにと、指示を受けておりますので…」
「…それは、どなたから…?」
思いがけない言葉に、ゼノンはほんの少しだけ表情を変えた。
ライデンや上皇が今更そんなことを言い出すとは思えない。だとすれば、考えられるのは…老主たちか、軍部の上層部か。
そんな考えが頭の中を過ぎったその直後、宮廷官吏は少し眉を寄せる。
「ラングレー総統を始め上層部の方々からの指示でございまして…婚姻の儀を迎えておられない状態で、陛下と寝所を共にするのはいかがなものか、と…」
「…そうですか…」
夕べの話ではないが、今更…と言う気がしなくもない。
ふと、ラングレー総統の姿を思い出す。
ライデンよりも随分年上で、どちらかと言えば上皇の方に年は近かったはず。そして上皇が雷帝として君臨していた時代から、政権の一端を担っていたラングレー。上皇の遠縁だと聞いた記憶があり、現在に至っても未だその権力は健在である。
勿論、その発言に一番権力を持っているのは雷帝たるライデンであるが、古い仕来りの多い王宮の中では、新米の雷帝よりも総統であるラングレーの方が権力を持っているようにも思う。
そうなると当然、今の状態で歯向かうのはどうかと思う訳で…ここは、素直に従うしかなかった。
「…申し訳ありません…」
宮廷官吏も、今までの状態をわかっているが故に、実に申し訳なさそうに頭を下げる。
「あぁ、大丈夫だから…心配しないで」
苦笑しながら、ゼノンは宮廷官吏を解放した。
そして、独りになった部屋の中で…大きな溜め息を一つ。
やはり。ここは雷神界なのだから…自分の扱いが未だに客扱いなのは致し方ない。それも、実質政権を握っているラングレー総統からそう言われてしまえば…下手に逆らえば、当然今後の立場も悪くなる。それはゼノンだけでなく…ライデンもまた同じだろう。
寧ろ、ライデンがゼノンを選んだ、と言う結論が反感を買ってしまったら。当然、謀反を考える者も出て来るだろう。今は、ライデンが雷帝としてやっと周りに認められて来た状態なのだから、それが一番怖い結末になり兼ねない。
取り敢えず、式まで自分が文句を言わず黙っていればそれで安泰。当然、ゼノンの選択肢は一つしかないのだ。
「…一番必要なのは、忍耐力、ね」
夕べライデンから言われた言葉が、まさかこんな所で思い出す破目になるとは。
「…取り敢えず、明日一日…ね」
溜め息と共に吐き出された言葉を、聞いている者は誰もいなかった。
こちらは皇太子宮のライデンの部屋。
ライデンはそのベッドの上で、ぼんやりと天井を眺めながら溜め息を吐き出していた。
その溜め息の理由は明確。ゼノンがいない、と言うことだった。
「…なぁ…何で俺が、ラングレーに従わなきゃいけない訳…?」
それは、昼間ラングレー総統から直々に聞いた、ゼノンと寝所を別にしろ、と言う話。
「俺、雷帝だよ?雷神界の一番の権力者だよ?何で、フィアンセと一緒にいちゃいけない訳?」
「…わたくしにそう言われましても…現在、実権の大半を握っていらっしゃるのはラングレー総統ですよ?若様は、まだ雷帝としての実績はないに等しいのですから。ゼノン様の今後のことを考えましたら、ラングレー総統に逆らわない方が身の為だと思います。ゼノン様もそれをわかっていらっしゃるから、文句も言わずにいるのではないのですか?」
小さな溜め息と共にそう言葉を放ったフィード。子供の頃からライデン付きの官吏としてずっと傍にいるからこそ、はっきりと伝えることが出来た言葉。
全ては、主たるライデンの倖せを願うが故に。
「…わかってるよ…だから俺だって、面と向かって文句は言ってないじゃん。我慢すれば良いんでしょ?明日一日じゃん。明後日は当日だしね、もう会うな、なんて言われないし。ゼノンが頑張るなら俺も頑張る」
ライデンも、自分が夕べゼノンに言った言葉を、ぼんやりと思い出した。
「…忍耐、ね」
「若様…」
溜め息を吐き出すと、フィードに向け、にっと笑うライデン。
その、気丈な姿がかえって寂しそうに見えてならなかった。
翌日も、ライデンとゼノンは完全に別行動を取ることになっていた。
式は翌日。ほぼ準備は終わっているとは言え、まだまだ慌しい。
そんな中、午後になって一足先にやって来た来客があった。
「ライデン陛下、魔界より副大魔王閣下がいらしておりますが…如何致しますか…?」
側近たるロシュに声をかけられたライデンは、書類からふと顔を上げる。
「デーさん?明日来るんじゃなかったっけ…?」
「はい。そう伺っておりましたが、一名様でいらっしゃっております。ダミアン殿下の遣いであるとか…」
「…そう。まぁ、会えばわかるか。良いよ」
そう声をかけると、ロシュは頭を下げて執務室を出て行く。そして暫くすると、ノックの音が届いた。
「はい、どうぞ」
そう声をかけると、ドアが開いてロシュが顔を出す。
「デーモン閣下を御連れ致しました」
そしてその後ろに、懐かしい顔が見えた。
「デーさんいらっしゃい~」
執務室に入って来た懐かしい仲魔の姿に、ライデンは思わず走り寄ってその身体に抱き付いた。
「ちょっ…こら、ライデン…」
「…陛下」
窘めるようなロシュの声に恨めしそうな視線を送りつつ、ライデンは苦笑するデーモンから離れた。そして溜め息を吐き出しつつ、デーモンをソファーへと促し、自分も向かいに座る。
ロシュが御茶の準備をしてから執務室を出て行くと、ライデンは再び溜め息を一つ。
「どうした?そんな顔して。明日の主役だろう?」
くすくすと笑うデーモンに、ライデンはカップを持ちながら相変わらず苦渋顔である。
「何かね~。今更ながらにすっごい面倒…」
「おいおい…」
溜め息を吐き出すライデンに、デーモンは心配そうな表情を浮かべる。
「大丈夫か?」
「…まぁ…大丈夫っちゃ大丈夫なんだけどさぁ…結婚式するのは良いんだよ。でも、今が面倒。すっごいゼノン不足……」
「…は?ゼノン不足って…一昨日の夜から来てるだろう?」
「来てるんだけどさ…昨日の朝会ったっきりなんだよね。ラングレーから、まだ結婚してないんだから、寝所は別にしなさいって言われてさぁ…ゼノンも波風立てなくないみたいで何にも言わないから、一日半、顔も見てないし」
「…そう言う事か…」
デーモンの口元から、思わず小さな笑いが零れる。
「笑い事じゃないんだからね?」
「まぁ、御前には笑い事ではないな。だが、顔を見られないのもたった二日だろう?今までもっと会わない日が続いていたのに、何を今更。明日からは堂々と一緒にいられるんだぞ?今まで何も言われなかっただけ有難いじゃないか」
「…そうなんだけどさぁ…直ぐ近くにいるのに会うのを制限される、ってのはねぇ…」
確かに。今まで幾度ゼノンが泊まりに来ても、客間に通されたのは最初の一度だけ。
婚約をしてからも公には誰からの否定もなかっただけに、今回たった二日間、会うことを禁じられただけでイライラしてしまった。
「…器が小さいのかな、俺…」
小さな溜め息と共に吐き出されれた言葉に、デーモンは再び笑いを零す。
「そんなことはないさ」
「そうかなぁ…」
すっきりしない表情を浮かべながらも、少しはその気持ちも晴れたようだ。ほんの少しだけ、纏う気も穏やかになる。
「…で、どうしたの?明日来る予定だったでしょ?ダミ様の遣いって聞いたけど…?」
当初の目的を思い出したライデンは、デーモンにそう問いかける。
「あぁ、そのことなんだけどな…ダミアン様もちょっと心配していてな。一足先に行って様子を見て来い、ってな。ダミアン様とルークとエースは、明日予定通りに来るから」
「そうなんだ。やっぱり俺、そんなに心配されてる訳…?」
ソファーにぐったりと沈み込むライデン。
「そう言う訳じゃないだろう。ほら、我々の誰も経験のないことだろう?まぁ、半分は偵察だな。それに、ゼノンもあぁ見えて緊張するだろうからってな」
ライデンを宥めるようにそう言った言葉に、再び溜め息が一つ。
「まぁ…あともう少しだしね。俺は腹を括ったけど、ゼノンの様子は俺にはわからないから。デーさんが顔見せれば安心かもね。王宮の方の客間にいるらしいから、案内させるね」
そう言ってソファーから立ち上がると、ロシュを呼ぶ。
「デーさんをゼノンのところに案内してくれる?それから、フィードに部屋の用意を頼んでおいて」
「畏まりました」
「じゃあデーさん、ゼノンを頼むね」
「あぁ。御前もしっかりな」
その言葉に、ライデンは小さく笑う。
そして、ロシュと一緒に執務室を出て行くデーモンの背中を黙って見送っていた。
ロシュの背中について王宮内にある客間までやって来たデーモン。一つのドアの前でロシュが足を止めると、デーモンも足を止め、顔を上げた。
「こちらです」
言葉少なにそう伝えると、ロシュは一礼をして踵を返す。
デーモンは咄嗟に、その背中に声をかけた。
「御忙しいところわざわざ案内していただいて申し訳なかった」
すると、ロシュは足を止めて僅かにデーモンを振り返った。
「いえ。陛下の指示ですので」
一言、そう言葉を放つ。そして僅かに間を置くと、改めてデーモンに向き合った。
「…一足先に陛下を訪ねて来ていただいて、有難うございます。何分…我々も、ラングレー総統に意見する訳にもいきませんので…」
「まぁ…そうでしょう。ライデン陛下とゼノン博士の今後のことを考えれば…誰も、反対は出来ないでしょうから」
デーモンがそう答えると、ロシュは小さく頷いた。
「我々は…陛下に倖せでいていただきたいだけです。それは…ラングレー総統も同じ気持ちであると思っております。ゼノン殿との関係が御有りでも、天界との関係を良好に保てる陛下のおかげで、我々は無駄な争いをせず、安心してこの国を護って行けるのです。この地を護ろうと願う陛下の御気持ちは、我々も良く存じ上げております。ですから…陛下が平穏に過ごせるように願うのみです」
大きな感情は、その表情には表れない。それが側近としてのロシュの勤め。けれど、何よりもライデンを想う気持ちは昔から変わらないのだ。
その姿に、デーモンはにっこりと微笑んだ。
「ここの上層部は、本当に陛下想いでいらっしゃる。ライデン陛下も安心して職務を熟せるのでしょう。ラングレー総統も、陛下の今後を思っての指示だと、吾輩は思っております」
その言葉に、ロシュは僅かに目を細め、頭を下げる。そして、再び踵を返した。
その背中を見送ってから、デーモンはゼノンがいる部屋のドアをノックした。
聞こえたノックの音に、ハッとして顔を上げる。
「…はい…?」
答えた声に、開いたドアの隙間から顔を出したのは、彼の仲魔だった。
「…よぉ」
「…デーモン。どうしたの…?来るのは明日じゃなかったの?」
「あぁ、まぁな。ダミアン様から一足先に行って、様子を見て来いと言われてな」
小さく笑って入って来たデーモンに、ゼノンは大きく息を吐き出す。
多分、それは…安堵の溜め息。
「早くも別居生活だって?」
くすくすと笑いながらそう言ったデーモンをソファーへと促し、ゼノンは御茶を入れる為に準備をする。
「ライデンに会ったの?」
「あぁ、ここへ来る前にな。散々愚痴られたぞ」
「…だろうね」
小さな溜め息と共に、デーモンの前へと御茶のカップを置くと、自分ももう一つのカップを持ったままソファーへと座る。
「ライデン、大丈夫そう?」
「あぁ、問題ない。御前が頑張ってるから、自分も頑張る、ってな」
「…そう」
「御前の方こそ、大丈夫か?」
目の前の表情は優れない。だからこそ、問いかけた言葉。するとゼノンは、再び溜め息を吐き出す。
「もうね、今日は流れを覚える以外には何にもやることないから溜め息しか出ないよ。朝からずっとこの部屋にいるしね。下手に出歩くと、また何を言われるかわからないから大人しくしてるんだけど…そうすると、余計なことばっかり考えちゃってね…」
「…余計なこと?」
「そう。余計なこと。結局俺は、ここではこの先いつまで経っても"来客"扱いなんだろうな、ってね」
「ゼノン…」
パッと見は余りわからないが、それなりにストレスが溜まっているのだろう。発想のネガティブさが輪をかけている…。
「あんまり馬鹿なことを言うな?御前は、ライデンの伴侶になるんだぞ?来客の訳ないだろうが」
眉を潜め、そう口を開いたデーモン。けれどゼノンは小さく首を横に振る。
「ここに来るとわかるでしょう?ここにいる誰もが、ライデンを好きなんだよ。雷帝として、沢山の者に慕われているんだ。ライデンにとって、それはとても素晴らしいことだと思うよ。でもだからこそ…外部の俺が入って来ることを、すんなり受け入れられないんだと思う。悪い方向にライデンを唆すかも知れないしね」
「…おい…」
「ラングレー総統が、俺とライデンを別々の部屋にさせたのは、強ち間違ってないと思った。昔からの顔見知りの官吏はそれでも気を使って様子を見に来てくれたりするけど、それ以外は俺はもう空気だもの。ここにいるからそれで落ち着いているのであって、ライデンの傍をうろうろしていたら、寧ろ目障りなんだろうね。だから、今後のことを考えて…ってなったんだと思う。色々…覚悟を背負って来たつもりだったけどね…何だか、目の前で全部ぽっきり折られた感じ」
溜め息と共に吐き出される言葉はとても重く、デーモンを顔を顰めるしかなかった。
ゼノンの気持ちは、わからなくもない。
魔界に比べ、雷神界の規模は小さい。けれど、だからこそ魔界よりもその結束が固いのかも知れない。
つまりは、外部の者を受け入れる器が、魔界よりも小さいのだ。だからこそ、外部から来れば孤立してしまうのかも知れない。特に、雷帝の伴侶であれば尚更。
「まぁ…じっくり馴染んで行くしかないだろう?確かに、雷神界は魔界よりもシュールだとは思う。だが、御前がここで実権を握ろうって言うんじゃないんだ。害を及ぼさないとわかれば、今よりも対応は柔らかくなるんじゃないのか?」
「何にせよ…すんなりとは行かないよ。だからね…考えてたんだ。本当は、休暇中にライデンとゆっくり考えようと思っていたんだけど…俺はやっぱり、魔界にいた方が良い、ってね」
「ちょっ…ゼノン?明日結婚するヤツが、何を…」
ゼノンの言葉に慌てたデーモンが声を上げると、ゼノンは小さく笑った。
「変な意味じゃないよ。結婚はちゃんとするし、伴侶としての勤めはきちんと果たすつもりでいるよ。でも、魔界での仕事も辞めない。つまりは、今までの延長ってこと。頻繁に行き来することになるだろうけど…その方が、こっちも安心なんじゃないかなってね」
「そう言う事ならわかるが…」
それでもデーモンの表情は困惑気味である。
「そりゃぁね…今まで散々迷惑かけたから、また面倒なことを…って思ってるだろうけど…でも、それが一番良い方法だと思うんだ。俺も仕事が出来るし、ライデンも周りをそんなに気にしなくて済むでしょう?」
そう言って真っ直ぐにデーモンを見つめたゼノンの眼差し。それは、迷っている色ではなかった。ゼノンの中で既に決定事項であるなら、反論しても仕方がない。それに、反論のしようもないほど、正論だとは思う。
小さな溜め息を吐き出したデーモン。
「結局のところ…一番影響を受けるのは御前だからな。ライデンとちゃんと話し合って、納得出来る結論なら、我々は文句は言わん。御前たちが倖せでいてくれれば、それに越したことはないんだ。それは、ここでライデンの倖せを願う奴らと変わらんからな」
「大丈夫だよ。ちゃんと話はするし…俺たちは、ちゃんと倖せになるから」
それだけは、揺ぎ無い想い。そのぶれない想いには、デーモンも笑いを零した。
「やっと…ここまで来たんだもんな」
「そう…ね。でも、俺たちだけじゃないよ。御前たちだって、ちゃんと…倖せになってよね」
「他悪魔の心配ばっかりしなくて良いから。吾輩とエースは大丈夫だし、ルークだって…彼奴なりに出した答えなんだ。自分で納得出来ているんだから、きっと大丈夫だ」
そう言って笑うデーモン。
このところ随分穏やかに笑うようになった。それだけ、エースとの関係も平穏に続いているのが明らかで。だからこそのその穏やかな笑顔に、ゼノンも笑いを零した。
「…来てくれて有難うね。御前と話せて良かった。明日まで、一悪魔で悶々とするところだったよ」
「ダミアン様はそれを見越していたんだろうな。吾輩に先に行けと言ったのは正解だったんだろうな。吾輩も、御前たちとゆっくり話も出来たしな。明日だったら、慌しくてロクに話も出来なかっただろうからな」
「まさに的確だったね。感謝してるよ」
ゼノンにしてみれば、本当に良いタイミングでデーモンが来てくれたと、感謝しかない訳で。
この、まったりとした空気も、今はとても心地良かった。
暫くして、デーモンは部屋の準備が出来たと呼びに来たフィードと共に、ゼノンの部屋を出て行った。
そして、ゼノンはまた一名で、明日を迎えることとなった。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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