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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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春光 2

第四部"for PARENTS" (略して第四部"P")

こちらは、本日UPの新作です。
第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
4話完結 act.2

拍手[1回]


◇◆◇

 婚姻の儀の当日。その日は夜中からとても冷え込んでいた。
 雪こそ降ってはいないものの、空気はとても冷たく、季節が逆戻りしたかのようなその日。
 朝早く、ゼノンの部屋のドアが叩かれた。
「…はい?」
 まだ半分寝ている感覚で返事を返したゼノンは、薄暗い部屋の中、時計へと目を向ける。
 まだ日は昇らない時間。けれど再度ドアが叩かれた音は、確かに呼んでいる。
 ベッドから出てガウンを羽織ると、ドアを開ける。するとそこには、ライデン付きの官吏、フィードの姿があった。
「…御休みのところ、申し訳ありません…」
 ゼノンの顔を見るなり、フィードはそう言って頭を下げた。
「…何かあったの?」
 皇太子宮付きの官吏であるフィードは、余程のことがない限り王宮に立ち入ることはない。入れないことはないので必要とあれば立ち入ることもあるが、微妙な派閥がそこにある為、立場上余り自由に歩き回ることはなかった。
 けれど、今ここにいると言う現実。そしてその神妙な表情を前に、ゼノンは思わずそう問いかける。
「…実は、若様が体調を崩されまして…ゼノン様に診ていただきたいと…」
「……そう…着替えて来るから、ちょっとだけ待ってて」
 まさか、この大事な日に具合が悪くなるとは。多分、誰もがそう思うだろう。
 フィードを廊下に待たせ、部屋で着替えながら小さな溜め息を吐き出したゼノン。当然、ゼノンもそう思った一名だった。
「御待たせ。それで、どんな症状?」
 ゼノンはフィードと共に皇太子宮へと向かいながらそう尋ねる。
「頭が痛いとおっしゃられて…微熱もあるようで…こんな日ですから、早めに見ていただきたいと…」
「…そう。わかった」
 足早に辿り着いた皇太子宮のライデンの自室へやって来ると、ドアを開けたフィードに中へ促される。
 ベッドの中には、身体を丸めているライデンの姿。
「…ライデン、大丈夫?」
 小さく問いかけると身体がぴくっと動き、頭を動かして顔を覗かせた。
「…ゼノン…頭痛い…」
「そう。もうちょっとだけ我慢してね」
 枕元のライトを付け、その顔を覗き込む。痛みに顔を歪めたその顔色も、酷く悪い。
 身を屈め、仰向けにしたその胸に耳を当てて胸の音を聞いたり、口の中を見てから、顔を上げる。
「熱、測らせてね」
 そう言って、額にそっと触れる。フィードの言う通り、高熱と言う訳ではないようだが、頭痛の方が辛いのだろう。ライデンはきつく目を閉じてじっとしている。
「熱は今のところ大丈夫そうだけど、薬はちゃんと飲んだ方が良いね。あとは大丈夫?」
「…ちょっと寒い…」
「微熱があるからね。薬飲んだら落ち着くから」
 そう言うと、ゼノンは紙に診察内容と薬の処方箋を記してサインをする。そして、ドアの前で心配そうに見つめていたフィードに、それを渡した。
「これを医務局に届けてくれるように、伝達してくれる?早いから迷惑かも知れないけど…雷帝陛下の為だからね、きっと動いてくれるよ」
 小さく笑うと、フィードも少し安心したように小さな吐息を吐き出し、頭を下げて部屋を出て行く。
「今、薬頼んだからね。もう少しの辛抱。傍にいるからね」
「…うん…」
 上掛けをかけ直し、枕元の椅子に腰を下ろしたゼノンは、上掛けの隙間からそっと差し伸べられたライデンの手を握り締めた。
「…御免ね…叩き起こしちゃって…」
 小さくつぶやいた、ライデン。その眼差しはとても辛そうに見える。
「俺のことは大丈夫だから。それより、後で上皇様には話は通しておくけど…延期は難しいんでしょ?本当は、無理しない方が良いんだけど…」
 出来ることなら、安静に過ごして貰いたいところなのだが…結婚の儀を延期する訳にもいかないのが現状だろう。そう思いながら問いかけると、案の定の答えが返って来る。
「…多分無理だね。招待してるヒトがいるからね。薬が効いてくれれば何とか持つかな…」
 そう言いながら、辛そうに息を吐き出して目を閉じる。
「薬が来るまでもう少しかかるから、眠ってて良いよ」
「…うん…」
 気休めに…と、ゼノンは空いている方の手で、ライデンの頭をそっと撫でる。そうしている間に、眉間に寄せられていた皺が消え、表情も多少穏やかになり、眠りに落ちたようだった。
 その姿を前に、ゼノンは大きく息を吐き出す。
 この二日、一切顔を見なかった。そしてやっと顔を見ることが出来たと思ったら、この状態である。様子から察するに…ちゃんと眠れていなかったのではないか。そして夜中からのこの寒さに、一気に体調を崩してしまったのだろう。
 そんなことを考えながら、暫くその寝顔を眺めていた。
 穏やかに眠るその顔は、昔と変わらない。今はまだ、恋悪魔であり、婚約者であるが…数時間後には、伴侶と名を変える。正直に言えば、その実感はまだない。
 実のところ…ライデンが雷帝を継いだ、と言う実感も、正直に言えば怪しいところだった。それは、ゼノンが継承式にいなかったからかも知れないが。
「…いつになったら、実感が湧くかな…?」
 思わず、苦笑する。
 実感が湧く頃には…自分は、雷神界に受け入れて貰えているだろうか…?
 そんなことをぼんやりと考えていると、ドアがノックされる音が聞こえた。
「…はい」
 ライデンを起こさないように立ち上がると、そっとそのドアを開ける。そこには、心配そうな表情を浮かべるフィードの姿。
「遅くなって申し訳ありません。薬を御持ちしました」
「あぁ、有難う。御免ね、まだ夜明け前だから、大変だったでしょう…?」
 急いで往復をしたのだろう。フィードはいつも通りの落ち着いた表情を見せてはいるが、その呼吸はいつもよりも荒かった。
「いえ。宮廷の官吏も、医務局も、若様が体調を崩されることには慣れておりますから。それよりも、若様の容態は…」
 心配そうな眼差しを向けられ、ゼノンは小さく微笑む。
「眠っちゃったんだけどね。薬は飲ませるよ。それでゆっくり休めば良いんだけどね。後で、上皇様には事情を説明して、なるべく負担が軽くなるように相談はして来るから」
「…わかりました。申し訳ありません。わたくしが付いていながら…こんな大事な日に、体調を崩されるなど…」
 申し訳なさそうに頭を下げるフィードの頭を、ゼノンはそっと撫でた。
「フィードの所為じゃないから、そんな顔しないで。夜中に随分冷え込んだからね、無理もないよ。それなりに緊張とか、心配とかあったんだろうし。こうなってしまった以上、少しでも良くなるように協力頼むね」
「…はい…」
 すっかり落ち込んでしまったフィードを宥めるかのように、ゼノンは笑ってみせる。
「大丈夫だから」
 フィードはその声に、大きく息を吐き出す。そして、気持ちを切り替えるかのようににっこりと微笑んでみせた。
「わかりました。ゼノン様も、まだ時間はありますので、このままこちらで御休み下さい」
「うん、有難うね。ライデンに薬を飲ませたら、休ませて貰うから」
 フィードは頭を下げ、部屋から出て行く。
 ゼノンは薬を持ってライデンの傍へと戻ると、そっと声をかけた。
「ライ、薬来たから飲んでから寝ようか」
「…うん…」
 声は返って来たものの、その目は閉じられたまま開く気配はない。
「…しょうがないな…」
 小さく溜め息を吐き出したゼノンは、薬を取り出すと、ライデンの頭をそっと持ち上げる。そしてグラスの水を自分の口に含むと、薬をライデンの口へと落としてから唇を合わせて口移しで水を流し込む。
 ライデンがちゃんと薬を飲み込んだことを確かめてから、再びベッドに寝かしつけ、上掛けを直す。そして、溜め息を一つ。
「…さて、どうしようか…」
 カーテンを開け、窓の外に目を向けてみても、まだそこには闇がある。夜明けまではまだまだありそうだった。ここで…とフィードには言われたが、具合の悪いライデンの横で眠るのは申し訳ない。
「…しょうがない。ここで寝るか…」
 小さくそうつぶやき、ソファーで横になろうか…と思ったのも束の間。
「…入る…?」
「…ライ?」
 視線を向けてみれば、横になったままうっすらと目は開いていた。
「…寒いでしょ?こっち来ない…?」
「…でも…」
 この状況で、ライデンに他意がないことはわかっている。でも相手は病魔だし…と思いを巡らせていると、ライデンはくすっと小さく笑った。
「一緒に寝た方が温かいよ?あんたがいてくれた方が、俺も良く眠れるし」
「…じゃあ…」
 誘われるままに、ライデンのベッドへと潜り込む。
「…ゼノンの匂いがする…」
「そりゃあ、俺だからね…」
 その胸元に顔を摺り寄せて来るライデンに苦笑しながら、ゼノンもその手をそっと背中へと回す。
「今の内にちゃんと眠ってね。日が昇ってからは忙しくなりそうだから」
「…うん…」
 返事をしながら、もうその目は閉じている。返事も漫ろな感じから、もう眠りに落ちかけているのだろう。
「…御休み」
 耳元で囁き、その髪にそっと口付ける。すると、その顔が笑顔になる。そしてそのまま、完全に眠りに落ちたようだった。
 小さく息を吐き出し、ゼノンも目を閉じる。
 温かい体温と、ライデンの匂い。それは、ゼノンにとっても安定剤となる訳で…こちらも、あっさりと眠りに落ちていた。

 どのくらい眠っていただろうか。再びドアをノックする音で目を覚ましたのはゼノン。
 もう、部屋の中はかなり明るい。慌てて時計に目を向けると、そろそろ準備を始めなければならない時間だった。
「…拙い、寝過ごした…」
 ライデンへと視線を向けると、まだぐっすりと眠っている。
 起こさないようにそっとベッドを抜け出し、ドアを開けた。
 そこには、フィードの姿。
「御免ね、寝過ごした…」
「いえ、まだ大丈夫ですからご心配なく。若様は如何ですか…?」
 心配そうに問いかけられたゼノンは、少しだけ後ろを振り返った。
「あれからずっと眠ってるよ。つられて俺も眠っちゃったけど…もう上皇様も起きてらっしゃるよね?ちょっと、話に行って来るから。ライデンを頼むね」
「畏まりました。宜しく御願い致します」
 頭を下げるフィードと入れ替わり、ゼノンはライデンの部屋を出て行く。そして一旦自分が宛がわれている部屋へと戻り顔を洗ってから正装でもあるいつもの制服に着替えて上皇のいる部屋へと向かった。
 そしてそのドアをノックすると、中から上皇の返事が返って来た。
『はい?』
「ゼノンです。朝早く申し訳ありません…」
『どうぞ』
 促されてドアを開けると、そこには上皇ともう一名。ダミアンの姿もあった。
「おはよう、ゼノン」
 にっこりと微笑み、ゼノンにそう声をかけたダミアンに、ゼノンは驚きつつも頭を下げた。
「おはようございます」
「どうした?まだ随分早いようだが?」
 早々と訪ねて来たゼノンに問いかけた上皇の声に、ゼノンは小さな溜め息を一つ吐き出す。
「…実は、今朝方…まだ日も昇る前ですが…ライデンが…陛下が、体調を崩したとフィードから連絡がありまして…」
「…体調を崩した?」
 その言葉には、上皇もダミアンと顔を見合わせ、小さな溜め息を吐き出した。
「…全く、何をやっておるのやら…で、容態は?」
「頭痛を訴えておりましたが、今のところ微熱程度ですが、悪寒も訴えてはおりましたので、薬を飲んで今は眠っております。フィードに、なるべく休ませるように頼んではありますが…もし可能であれば、少し余裕のあるスケジュールに…と思ったのですが…」
「まぁ…仕方あるまい。その分、そなたに頑張って貰わなければならんが…大丈夫か?」
「わたしで代わりが勤まるのなら…」
 まぁ、それも仕方のないこと。
「式は彼奴がいなければ話にならないのだから、頑張って貰うより仕方ない。その後列席者たちを招いての宴の予定があるのだが、こちらは要はゼノン殿の御披露目だからな。そなたがおれば、ライデンが不在でもまぁ何とかなるだろう」
「はぁ…」
 自身の御披露目だと言われてしまえば、出るしかない訳で。
「心配いらないよ。わたしもデーモンも、出席するからね。全く知らない顔ばかりじゃないから」
 くすくすと笑うダミアンに、ゼノンも小さく息を吐き出す。
「ラングレーとロシュにも、事情は説明しておかねばな。準備にも色々と変更が出るだろうからな。まぁ、こちら側のことは気にするな。そなたは自身の準備に向かうが良いぞ」
「…宜しく御願い致します…」
 苦笑しながらそう言われ、ゼノンは頭を下げて踵を返した。
 その背中を追いかけるように、ダミアンも上皇の部屋を後にして、一緒に歩き始めた。
「…随分早い御着きでしたね?」
 ダミアンにそう問いかけたゼノン。
「あぁ、上皇に御前の事を十分に頼んでおこうと思ってね。朝なら時間が取れるかと思って、昨日の内にデーモンに頼んでおいたんだ。一応、御前の上司であり、親代わりでもあり、魔界側の責任者でもあるからね」
「…そうですか。色々有難うございます」
 自然発生であるゼノンにしてみれば、ダミアンは親代わりと言うことになるのだろう。一応、正式な儀式である訳なので、その辺りは立会魔として必要不可欠な存在ではあった。勿論、ゼノンもダミアンに頼んではあったが、こんなに早く来るとは思ってもいなかったのだ。
「デーモンからも連絡は受けているよ。早くも別居状態だったとね」
「…それに関しては、まぁ色々ありまして…」
 不可抗力で決められてしまったことなのだから、ゼノンもどう説明して良いのかはわからない。それに、のんびり説明している時間もない。
 そんな話をしているうちに、ゼノンが宛がわれている部屋の前までやって来ていた。
「わたしはこれからライデンの様子を見て、デーモンと合流するから。エースとルークも後から来てくれるよ。その後は、わたしは宴の後魔界に戻る予定だ。ゆっくり話をする時間はないだろうから…今の内に言って置くよ」
 ダミアンはゼノンに向けてそう言葉を放つ。そしてにっこりと微笑むと、更に言葉を続けた。
「結婚、おめでとう。御前たちの結婚と、政治的な背景を重ねてしまうことは申し訳ないと思うけれど…それは仕方ないと諦めてくれ。まぁ、御前たちなら、その辺りのことは重々承知だと思ってはいるけれどね」
「…それは勿論、承知しています」
 それは、結婚を決めた時から必然的に関わって来る問題でもあった。
 ゼノンと結婚する以上、ライデンは…雷神界は、魔界との結びつきが強くなる。中立を護る以上、それは天界側にも理解を求めなければならないことでもあった。そして、魔界側とだけ繋がりが強くなりすぎないよう、今後も調整が必要だと言うことも。
「それでも、ここまでちゃんと辿り着けたのは、御前たちがきちんと周囲の理解を得ての結果だと思う。勿論、全ての負担を御前に背負わす訳じゃない。何かあれば、ちゃんと話をしにおいで。わたしは、いつでも御前たちの味方でいるからね」
「…ダミアン様…」
 にっこりと微笑むダミアンは、そっとゼノンを抱き寄せた。そして、その背中を軽くポンポンと叩く。
「倖せに、なるんだよ」
 それは、精一杯のエール。
「…はい。有難うございます」
 その想いに、胸が一杯になる。
 微かに震える吐息を吐き出したゼノンに、ダミアンは笑って頭を撫でる。
「ほら、今からそんな顔をしない。ライデンの分も、今日は忙しいよ?」
「…そうですね。頑張ります」
 そう。今から感極まっていては仕方がない。
 再び大きく息を吐き出し、にっこりと笑ってみせる。その笑顔に、ダミアンも目を細めて笑った。
「御前なら大丈夫。しっかりね」
「はい」
 しっかりと気持ちを切り替えなければ。まだ、今日は何も始まっていないのだから。
「これから、ライデンの顔を見に行って来るよ。じゃあ、また後でな」
 ダミアンはそう言うと、踵を返して廊下を戻って行った。
 その背中に向け、ゼノンは深く頭を下げる。
 そして、自室へと戻り、準備に取り掛かった。

 遠くで、自分を呼ぶ声が聞こえる。
「……様。そろそろ起きていただかないと…」
「……ん?」
 ぼんやりと目を開けると、自分の顔を覗き込む視線に気が付いた。
「…フィード?」
「おはようございます、若様。そろそろ起きて支度をしていただきませんと…」
 改めてそう声をかけられ、ゆっくりと頭を上げる。その途端、ズキンとこめかみが痛む。
「…頭痛ぇ…」
「大丈夫ですか…?」
 心配そうに声をかけるフィードに、大きな溜め息を一つ吐き出して身体を起こす。
「…大丈夫じゃなくたって、動かなきゃいけないじゃん…」
 愚痴を零しながら、ベッドを降りる。
「ゼノンは?」
 寝付く前まで一緒にいたはずの姿が見えないことに、そう問いかける。
「もう準備を始めていらっしゃるはずです。上皇様にも事情を御話下さるとの事ですから、少しは負担が軽くなるかと思いますよ」
「…そう」
 溜め息を吐き出しながら、フィードが用意した御茶を口にする。
「何か召し上がりますか?」
「…いや、いらない。頭痛くて食欲ないし…」
 気分は最悪。零れるのは溜め息ばかり。こんな時に、ゼノンが傍にいればまた違うのだが…と思いつつ、やらなければならないことがあるのだから仕方がない。
 再び溜め息が零れた時、ドアがノックされた。
「はい」
 フィードがドアを開けると、その向こうにはダミアンの姿があった。
「これはダミアン殿下。おはようございます」
「おはよう、フィード。ライデンは起きている?」
「はい、只今」
 フィードの促されて部屋の中へ入ると、ソファーにぐったりと座り込むライデンの姿が見えた。
「おはよう、ライデン。体調はどうだい?」
「…ダミ様…済みません、朝早くから…」
 ソファーから立ち上がろうとするライデンを制し、ダミアンはライデンの傍へと歩み寄った。
「上皇様に挨拶に行った時にゼノンと会ってね、御前の具合が悪いことは聞いているよ。こんな日に…と思うかも知れないが、雷神界側にしてみれば、早速ゼノンの力量を試せる良いチャンスなのかも知れない。まぁ、彼奴に任せて置けば大丈夫だよ。勿論、わたしもデーモンも、ちゃんとフォローするからね」
 そう言ってにっこりと笑うダミアンに、ライデンは小さな吐息を吐き出した。
「でも…情けないです。自分の体調を管理出来なかっただけじゃなくて…みんなに迷惑かけて…折角、時間かけて準備してくれたのに…予定もみんな狂っちゃうし…」
「まぁ、そう落ち込むな。それを如何にフォロー出来るかで、御前の部下たちがどのくらい臨機応変に動けるかがわかると言うものだ。御前も今日の主役だからね、必要最低限は頑張らねばならないが、その後はゆっくり休めば良い。支え合って行くのが、伴侶だろう?ゼノンもそれはわかっているはずだよ」
 そう言って、そっとライデンの頭を撫でるダミアン。その手の温もりに、頭痛も一時忘れることが出来た。
「…さっき、ゼノンにも話はしたんだがね…宴が終わったら、わたしは魔界へ帰らなければならない。ゆっくり御前と話をする時間は、多分今だけだろうから…今の内に言っておくよ」
 そう前置きをすると、ダミアンは床に跪き、ソファーに座るライデンと視線を合わせると、その両手を握った。
 そして、にっこりと微笑むと、その言葉を口にした。
「結婚、おめでとう。ゼノンを婿に出す側として、御前に話しておく。この雷神界で、ゼノンが何処まで受け入れて貰えるかは御前次第だと思う。ゼノンも仕事を続けていく意思があるようだから、身の置き方も考えなければならないだろう。彼奴も頑固だからね、苦労するかも知れないが…彼奴は、御前の倖せをちゃんと考えているから。ゼノンを信じて…護ってやってくれ」
「…勿論です。俺は、ゼノンを信じてますから。大丈夫です」
「そうだね、御前なら大丈夫だ。だから…倖せにね」
 そう案じてくれるダミアンの想いは、痛いほど伝わる。
 皇太子と言う同じ立場で出会っていながら、現況は正反対。それが、ずっとライデンの心の奥に引っかかっていることでもあった。
「…俺は…倖せになります。だから…ダミ様も…倖せになって下さい」
 そう、つぶやいたライデン。その顔は、今にも泣き出しそうで。
「俺は…一度他のヒトと婚約を決めておきながら、結局俺の我侭を通して婚約を解消し、ゼノンを選びました。彼女も周りも結構あっさり受け入れてくれて、何事もなかったかのように話は進みましたけど…俺は、彼女に対しても周りに対しても、申し訳ない気持ちで一杯でした。そして、こんな俺に着いて来てくれるみんなに、本当に感謝しています。俺とダミ様は、同じ皇太子と言う立場で育っても…俺は好きなヒトと一緒になれるのに、ダミ様はそうじゃない。勿論、引き継ぐ国の規模も違うし、ルークが子を宿せない以上、仕方のないことだとはわかっています。でも…俺は、ルークの笑顔が好きです。だから…せめて、あの笑顔を消さないで下さい。貴方たちが選んだ道に、文句は言いません。でも…必ず、ダミ様もルークも…倖せだと、思えるように…」
 はらりと零れた涙を指先で拭い、ダミアンはにっこりと笑った。
「御前は、自分の結婚式だと言うのに何の心配をしているんだい?わたしたちのことは心配しなくて良い。少なくとも…わたしもルークも現状を悲観していないし、その笑顔を護るつもりでいるよ。だから、大丈夫だよ」
 そう言って、そっとその身体を抱き寄せる。
「御互い、頑張ろうな」
 小さく囁き、その背中をポンポンと叩く。
「…はい」
 改めて話をすると照れ臭いけれど、本当に伝えたい気持ち。その思いが少しでも伝わってくれれば嬉しいと思う。
「さ、そろそろわたしも行かないとね」
「忙しいところ有難うございました」
 涙を拭い、顔を上げたライデンの頭を軽く撫で、ダミアンは立ち上がる。そして、笑いながら部屋を出て行った。
「…いつ御会いしても、御優しくて、御強い方ですね」
 一部始終を見つめていたフィードは、ライデンにそっと声をかける。
「…ホント、凄いよね。俺なんか足元にも及ばないし」
 苦笑するライデンに、フィードは小さく笑う。
「そんなことありませんよ。若様も、御立派になられましたよ。少なくともわたくしは、尊敬しておりますから」
「…有難うな、フィード。これからも…頼むね」
「はい、勿論」
 にっこりと微笑むフィードに、ライデンも小さく笑いを零していた。
「…じゃ、支度するか」
 ソファーから立ち上がったライデンは、漸く準備に取り掛かったのだった。
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プロフィール
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
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非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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