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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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春光 3

第四部"for PARENTS" (略して第四部"P")

こちらは、本日UPの新作です。
第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
4話完結 act.3

拍手[1回]


◇◆◇

 婚姻の儀の開始を目前に控え、緊張した空気が回りを包み込み始めた頃。
 ゼノンの控え室のドアをノックする音が聞こえた。
「…はい」
 その声の後、開いたドアから顔を覗かせたのは、正装のデーモンとエース、ルークの三名。
「準備は出来たか?」
 問いかけられた声に、小さな笑いが零れた。
「まぁ、ね。俺はもうやることはないし…」
 そう言って、視線を下に向け、自分の服装を改めて確認する。
 彼の正装たるいつもの文化局の制服ではなく、今日は雷神界仕様の正装。見慣れないのは本魔を含め誰もが同じだったが、流石に王族の正装である。気品はいつもよりも随分増している。
「良く似合うぞ、婿殿。おめでとうな」
「有難う…」
 改めてそう言われると、何だか照れ臭い。
「後は、ライデンの体調が持ってくれれば良いんだけどね」
「あぁ…体調崩したんだって?流石ライデンだよね。しっかり記憶に残るわ」
 苦笑するルーク。まぁ、ここまで来たら、もう全てを受け入れるしかない訳で。今更何を言っても仕方がないのだ。
「我々も、顔を出そうと思ったんだけどな。少しでも休ませてやろうと思って、遠慮したんだ」
「懸命だと思うよ。たいしたことがなければ良いんだけど、さっきちょっと覗いてくれたフィードの話では、頭痛が治まらないらしくてね。薬は飲ませたんだけど、今日はあんまり効かないみたいで」
「一番の安定剤が傍にいないんじゃ、仕方ないだろう。かなりストレスも溜まっていたしな。まぁ、式だけでも終われば、後は何とかなるだろう?御前もいることだし」
 ダミアンから話は聞いていたのだろう。デーモンもそう言って小さく笑った。
「もぉ…他悪魔事だと思って…」
「馬鹿言うな。吾輩もダミアン様も、御前に付き合うんだぞ?他悪魔事の訳ないじゃないか」
「しょうがないよな。魔界の大御所だから」
 エースもそう言って小さく笑う。
 いつもと何も変わらない雰囲気。それが、緊張していた心を静めてくれる。ゼノンは、そんな風に感じていた。
「…あぁ、そうだ。これ、レプリカから預かって来たぞ」
 思い出したように、エースがゼノンに向けて小さい紙袋を渡す。
「有難う。間に合って良かった」
 エースから紙袋を受け取ると、そっと中を確認し、ホッとしたように小さく息を吐き出す。
「…何頼んでたの?」
 興味津々で問いかけるルークに、ゼノンは小さく笑う。
「後での御楽しみ」
「…エースは知ってるの?」
「…秘密」
「もぉ~。教えてくれたって良いじゃん~」
「駄目駄目。後でね」
「…ヤラシイな…」
 笑って誤魔化すゼノンに、ルークも笑いを零す。
「…まぁ、ルーク。そのくらいにしておけ。吾輩も、その紙袋の中身は知らないんだ。後の楽しみにしておこう。さ、我々もそろそろ行かないとな。じゃあ、ゼノン。後は頑張れよ」
 時計に目を向けたデーモンがそう切り出すと、ゼノンの表情が変わった。
 引き締めたその表情は、緊張しながらも倖せそうだった。
「顔見せに来てくれて有難うね。おかげで頑張れるよ」
「しっかりな」
 独り独りと握手をして、控え室を出て行く背中を見送った。

 間もなく、婚姻の儀が始まる。

◇◆◇

 厳粛な空気が漂う中、婚姻の儀は始まった。
 開いた扉の先。大きなステンドグラスの下、祭壇の前で待つのは、彼の父たる上皇。そして、最愛の伴侶。
 柔らかな微笑みを浮かべる伴侶の顔を見つめながら、しんと静まった空気の中、一歩ずつ歩み寄って行く。
 やがて伴侶の隣に立つと、そっとその手が繋がれた。
「…大丈夫?」
 囁くような、小さな声。その声に小さく頷き返すと、真っ直ぐに前を見つめた。
 そこで共に誓約の言葉を唱え、書類にサインをする。これで、正式に婚姻が認められたことになる。
「おめでとう」
 上皇の声に、にっこりと微笑みを零す。そして振り返った彼らを迎えたのは、列席者の盛大な拍手。
 見慣れた顔が、幾つも並んでいる。
 それは、仲魔であったり、老主たちや自分の部下たちだったり。
 誰もが、彼らの婚姻を祝ってくれている。その光景に、胸が一杯になる。
「…みんな、待ってるよ」
 声をかけられて横を見れば、にっこりと微笑む伴侶の姿。
 手を引かれ、列席者の間を抜けてテラスへと向かう。外から聞こえるのは、大きな歓声。
 テラスの下には、大勢の民が待っていた。
 誰もが、雷帝の婚姻を喜んでくれている。それを目の当たりにして…思わず、涙が零れた。
 倖せで、倖せで……意識が、遠くなる……。

 ゆらゆらと揺られているような感覚。
 それは、恋悪魔に抱き上げられて運ばれている感覚に、良く似ていた。
----良く頑張ったね。
 小さな囁きに、ほんの少し、口元が綻ぶ。
 その額に押し当てられた唇の感覚。それがとても、心地良い。
----後は俺に任せて、ゆっくり休んで。
 そんな囁きが聞こえ、半ば無意識に頷く。
 落ちて行く意識の中…抱き締められ温もりが、何よりも倖せだった。

◇◆◇

 ふと目を開けてみれば、見慣れた自室の天井だった。
「…今のは……夢…?」
 それが夢であれば…とても、倖せな夢。思わず…えへへ、と笑いが零れた。
「…あ、気が付いた?」
 聞き慣れた声が届き、ハッとして顔を向ければ、少し離れたところで椅子に座って本を読んでいた仲魔の姿。正装の彼を見たのは、自分の継承式以来だっただろうか。
「…何で、あんたが…?」
 笑った声を聞かれ、ちょっとだけ恥ずかしかったが…それよりも、どうして彼がそこにいるのかがわからなかった。
「ゼノンが抜けられないからね、俺が代わりに傍に付いてたんだ。…ってか、覚えてない?」
 そう問いかけられても、ピンと来ない。
「…何した?俺…」
 思わず問いかけた声に、その手が額に触れた。
 ひんやりとした感触が、とても心地良い。
「式の後倒れたんだよ」
「……じゃあ…さっきのは夢じゃなくて…?」
「夢?」
「…そう。俺たちの婚姻の儀を、みんな喜んでくれて…祝ってくれて…嬉しくて、あんまり嬉しくて、そのまま意識がフェードアウトした…」
「夢じゃなくて現実よ、それ。ゼノンがここまで運んで来たんだけど、流石に主役だから戻って行ったけどね。倒れた時、まぁ予測はしてたんだろうね。みんな冷静に対処してて、流石だと思ったね。今も現に熱あるしね。興奮した所為かな?」
 くすくすと笑う声。そして、冷たい水で絞ったタオルを額の上に置いた。
「ルーアン医師が、暫く安静に、ってさ」
「…そっか…で、フィードは…?」
 いつも近くにいるはずの官吏の姿が見えないことが気になってそう問いかける。
「あぁ、今宴の真っ最中でね。手が足りないから、フィードも借り出されてる。俺は元々来賓の方だしね、手伝うこともないから、あんたに付いてただけ。流石にダミ様とデーさんは離れられないけど、もう少ししたらエースも来てくれるし」
「…そっか…御免ね、ルーク…」
「何を今更」
 くすくすと笑いを零し、彼の髪をくしゃっと混ぜる。
 その笑顔が、とてもホッとする。
「…そうだ」
 ふと思い出したようにベッドから身体を起こす。
「どうしたの?急に」
「うん、ちょっと…」
 そう零すと、ぐるっと部屋の中を見回す。そして、自身が倒れるまで着ていた上着が壁にかけてあるのを見つけた。
「…ライデン?」
 怪訝そうに眉を潜めるルーク。だが、そんな視線を気にすることもなく、そっとベッドから降りると、その上着へと歩み寄る。そしてその胸元につけてあった綺麗な花のコサージュを手に取って半分に分けると、それを持って戻って来た。
「…これ、半分ルークにあげるね」
「…はい?」
 意味が良くわからず、首を傾げるルーク。
 そんなルークに構わず、ライデンは少しだけ考えた末にルークの片方の耳にかかる髪を掻き上げ、その耳に花を飾る。そして、満足そうににっこり笑った。
「良く似合うよ」
「…何なの?急に…」
 思わず問い返した声に、くすっと小さな笑いが零れた。
「花嫁のブーケトスじゃないけど…あんたにも、倖せを分けたいと思って」
「…ライデン…」
 自身が数時間前にダミアンに言った言葉。それを、ふと思い出したのだ。
「…倖せになって。あんたも…ダミ様も。後の半分は、デーさんとエースにね。ささやかだけど…俺の気持ち」
 そう言われ、ルークも言葉に詰まる。
 真っ直ぐに自分を見つめる眼差しは、涙で潤んでいて。
「あんたとダミ様のことは、何も言わない。俺はただ、あんたに笑っていて貰いたいだけ。好きなヒトと一緒にいて…倖せだと思って貰いたいだけ。俺は…倖せになるよ。だから…あんたも…そうであって貰いたい…」
 思うところは沢山ある。ただ、その全ては言葉には出来ない。
 だから…せめて、その願いを花に託して。
「…有難うね。心配してくれて」
 大きく息を吐き出したルークは、そう言葉を零す。
「まぁ…この先は大変だろうけどね。でも俺は、ダミ様を信じているし…簡単に諦められないことはわかってるし。だから、大丈夫よ。俺は、俺なりに…ちゃんと、倖せでいるから」
 にっこりと笑い、ライデンをそっと抱き締めた。
「…有難う」
 改めて、そう口にすると、胸が一杯になる。
 未来を決断したあの時、ばっさりと短くした髪は、背中の真ん中あたりまで伸び、きちんと整えられていた。そうやって落ち着くまでの時間、多分ずっと心の底にその想いを抱えていたんだろうと思う。そしてそのままではこの先もずっと、自分とダミアンの状況を重ねるだろう。けれど、みんなそこで立ち止まっている訳じゃない。
 ちゃんと、歩いて行く道はあるから。
 大きく息を吐き出したルークは、ライデンの身体を離すとにっこりと笑った。
「でも、そんなにヒトの心配ばっかりしなくて良いから。確かに、誇れるようなものじゃないかも知れないけど、俺は胸を張って生きていけるよ?だって、俺の大好きなヒトたちがみんな受け止めてくれているんだもん。だから、大丈夫」
「…ルーク…」
「…今まで誰にも言ったことないけど…天界にいた頃の昔の俺は、禁忌の関係を結んでいたこともある。誰も、それはいけないことなんだって教えてもくれなかったのもあるけど…何にも知らない俺を誘った相手も相手だよね。何を思ってそうしていたのかは、今となってはもうわからないけど…ホント、幾ら子供だったとは言え、それに流されてしまった自分自身も最悪だったと思うよ。そう考えれば、周りに心配をかけたあの時の穢れた時間に比べたら、今はずっとマトモだと思ってる。だって、あんたたちみんな、こんな関係はやめろ、って咎めないでしょ?勿論、結果的に妾みたいなもんだし、王妃様になる方のことを考えたら良いことじゃないのはわかってるよ。でも…俺の気持ちはちゃんと汲んでくれたじゃない。倖せになってくれって、祈ってくれるじゃない。だから、俺は笑っていられるの。大っぴらに出来なくたって、愛されているのはわかっているし、俺も…誰よりも、愛していられるから」
 その記憶の中に過ぎったのは…遠い記憶。あの時は、色々な想いを抱えて、笑っていることも出来なかった。そう考えれば、今はちゃんと心から笑っていられる。
 それが何よりも、倖せなのだと思えるから。
「今の話は誰にも内緒だよ。ダミ様にも言ったことないんだからね」
 軽くウインクして笑うルークの姿に、ライデンは小さく笑った。
「…言わないよ、そんなこと。昔の話、でしょ?」
「そ。昔の…戯言。あんたはそう言うところは口が固いもんね。助かるよ。だから、全部忘れてね」
 色々な想いを抱えて、辿り着いた場所だから。それは、ルークだけではない。ライデンも、同じこと。
「わかった。もう全部忘れた~」
 大きく息を吐き出したライデンは、にっこりと笑った。その顔を見て、ルークも笑みを零す。
「さ、そろそろベッド戻りなよ。また熱上がるよ?」
「うん。でも、結構調子良いんだけど」
 そう。熱があると言われたが、頭痛が治まった分、朝よりはずっと調子が良かったりするのだが…。
「でも気を抜いちゃ駄目だよ。酷くなったら、折角の結婚休暇が短くなるんだから」
「…まぁ…そうなんだけど…」
 確かに。ゼノンの休暇に合わせて、ライデンも一ヶ月は休みを取るつもりでいるのだ。勿論、前々から周囲にはそう宣言してはいるが、緊急に何かが起これば話は別であるし、結局は状況を見て…と言うことになってしまうのは雷帝としての立場上、否めないのだが。
 これ以上心配をかける訳にも…と、ライデンは渋々ベッドへと戻る。
 と、その時。ドアをノックする音が聞こえた。
「はい?」
 ルークが答えると、開いたドアからエースが顔を出した。
「悪い、遅くなった……どうした?その花…」
 ルークを見るなり、そう問いかけるエース。それが、耳の上に飾られた花だと気付いたルークは、小さく笑う。
「ライデンから貰ったの。似合う?」
「…まぁな。流石御前、って感じだよな。で、ライデンは起きたのか?」
 小さく笑ったエース。
「うん、起きたよ。熱はあるけどね。調子は戻って来たみたい」
「そうか。なら、丁度良かった」
 エースがそう言いながら部屋の中へ入って来ると、その後ろから続いてぞろぞろと姿を現す。
「あれ?もうみんな来たの?早くない?」
 戻って来るのは、エースだけだったはず。けれど、エースに続いてデーモン、ダミアン。そして主役たるゼノンと、借り出されていたフィードまで勢揃いしている。その状況に、ルークは首を傾げて時計を見た。
「あぁ、上皇様の計らいでな。予定より少し早いが、解放してくれたんだ。だから、ダミアン様も少しだけ時間が取れたんだ」
 そう言われて目を向ければ、にっこりと微笑むダミアンと目が合う。
「ルーク、その花飾り、良く似合うよ」
「…有難うございます」
 最愛の悪魔に褒められ、ルークも照れ臭そうに笑いを零した。
「…主役を差し置いてイチャイチャしてないでください。時間は余りないから、始めますよ」
 エースは苦笑しながら楽しそうな二名にそう言うと、未だ遠くにいるゼノンを、ライデンの傍まで促す。
「ほら、本日の主役」
「…うん」
 照れ臭そうにベッドの傍へやって来たゼノンは、ベッドに押し込まれているライデンの額に手を置いた。
「…熱はまだ下がってないけど…少し、起きられる…?」
「…うん、全然平気」
 いつになく緊張しているその姿を思わず笑いつつ、ライデンは身体を起こした。そしてゼノンに手を取られるままに、ベッドから降りて向かい合うように立つ。
「…えっと……?」
 みんなに見つめられている状況に、流石に何か奇妙な違和感を感じる。すると、くすくすと笑いながらダミアンが傍へとやって来た。
「今こうしてみんな集まったのは…ゼノンの要望でね」
「…要望?」
 その言葉に、怪訝そうに眉を寄せたライデン。
「そう。式は滞りなく終わって、御前たちは無事に伴侶として認められた訳だけれど…どうしてもやりたいことがあるから、立ち会って欲しいと頼まれてね。ルークは初耳だろうが、我々も先程頼まれたものでね」
「…はぁ…」
 未だに表情を曇らせているライデンと同様に、何も知らされていないルークも、怪訝そうな表情を見せる。
 デーモンはそんな二名の姿を見てくすくすと笑いながら、壁にかけてあったライデンの礼服の上着を取ると、ライデンの肩に羽織らせた。
「ほら。これ着て」
「…うん…」
 言われるままに上着に袖を通すと、デーモンが首にタイを締めてくれる。流石にルークもズボンは脱がさずにそのままだったので、多少ズボンに皺はあるが、再び正装へと戻ったライデン。
「じゃあ、始めようか。なぁ、ゼノン、エース」
「御意に」
 エースは小さく答えると、ゼノンが持って来た紙袋を受け取る。そしてその中から小さな箱を取り出すと、ダミアンの傍らに立つ。
「…何が始まるの…?」
 デーモンに寄り添うように立つルークも、訳がわからずデーモンにそう囁く。
「…まぁ、見てろ」
 くすくすと笑うデーモン。その嬉しそうな笑顔は、まぁ悪いことではないのだろうと察することが出来た。
「誓いの言葉は、さっきもやったから省略するよ」
 ダミアンのその声に、エースは苦笑しながらその小箱を開けた。そして、ゼノンとライデンの前に差し出す。
 その箱に入っていたのは…小さな水晶が埋め込まれた、揃いの指輪。
「…これ…」
 その意味を察したライデンは、真っ直ぐにゼノンを見つめた。ゼノンはにっこりと微笑むと、そっと口を開く。
「黙ってて御免ね。でも、流石に流れの決まっている儀式には押し込めなくてね」
「…言ってくれれば良いのに…」
「言ったらサプライズにならないでしょ?」
「…もぉ…」
 小さく頬を膨らませたライデンだが、赤くなったその頬は、怒りのものではないことは明確だった。
「さ、指輪の交換を」
 ダミアンの声に促され、ゼノンはその指輪を一つ手に取り、ライデンの左手の薬指へと填め込んだ。
 ライデンもゼノンに習い、手に取った指輪をゼノンの左の薬指へと填め込んだ。
「では、誓いのキスを」
 そう言ったダミアンの声に、ゼノンとライデンは互いに視線を合わせる。
 小さく笑うゼノン。その顔に、ライデンも笑いを零す。
「…倖せに、なろうね」
「勿論」
 にっこりと笑い合い、頬を寄せるとそっと唇を合わせる。
「おめでとう。我々がちゃんと見届けたからね。倖せになるんだよ」
 拍手と共に、ダミアンにそう声をかけられる。
 デーモンもエースもルークも、誰もが笑って拍手を送る。
「…有難う」
 思わぬサプライズに、ライデンは感極まって泣く寸前。それでも、笑ってみせた顔はとても倖せそうだった。
「…ゼノンも…有難うね」
 にっこりと笑い、しっかりと手を握った伴侶。
「…じゃあ、吾輩からも、御前たちの為に一曲…」
 デーモンはそう言って小さく咳払いをすると、ゆっくりと歌いだした。
 それは、慶祝の歌。彼らが、倖せであるように。その、想いを込めて。
 久し振りに聞いたデーモンの歌声は、全員の心にじんと染み入る。それが、とても心地良かった。
 歌が終わると、再び拍手が溢れた。
「吾輩に拍手はいらないから」
 流石にちょっと照れたようにそう言ったデーモンに、ライデンはふと思い出したように自分の胸元から半分になったコサージュの花を取ると、デーモンへと歩み寄った。そして、にっこりと微笑む。
「これ、御返しじゃないけど…デーさんにあげる」
 そう言って、デーモンの胸元に飾る。
 良く見れば、それはルークの耳に飾ってあるのと同じ花。
「ライ…?」
「花嫁のブーケトスの代わり。ルークと半分ずつになっちゃったけど…エースと、倖せにね」
 そう言ってその身体に腕を回し、しっかりと抱き締めた。
「…有難うね」
 小さくつぶやいたライデンの声に、デーモンは笑ってその背中を軽く叩いた。
「こちらこそ、有難う。御前の気持ちは、大事にするからな」
 その言葉に、ライデンはにっこりと微笑む。そしてエースへと歩み寄ると、エースの身体にも腕を回した。
「…色々有難うね。デーさんを御願いね」
「…あぁ。具合悪いのに、良く頑張ったな。良い一日だったよ、有難う。御前こそ、ゼノンを頼むな」
 エースも笑いながら、ライデンの背中をポンポンと叩く。
 身体を離したライデンは、笑って自分たちを見つめているダミアンへと歩み寄ると、ちょっと躊躇った後…同じように、腕を伸ばしてダミアンを抱き締めた。
「今日は朝早くから有難うございました。ルークを…御願いします」
「あぁ。有難う」
 ダミアンも笑って、ライデンの背中を抱き返した。もう、それ以上の言葉は何もいらない。気持ちは、ちゃんと伝わっているから。
 そして、端の方で目に涙を一杯に溜めたフィードへと歩み寄り、にっこり笑ってその身体を抱き締める。
「今までずっと、心配してくれて有難うな。これからも宜しくね」
「…勿体無い御言葉です……これからも、精一杯尽くさせていただきます。宜しく御願い致します」
 顔を真っ赤にして頭を下げるフィードに、ライデンは笑いながらその頭をポンポンと叩く。
「御前が泣いたら、俺が泣けないじゃん」
「…済みません…」
 慌てて涙を拭うフィードに、ライデンは笑いを零した。それからやっとゼノンへと向き合う。そして、笑いながら両手を広げるゼノンの腕の中に笑いながら飛び込んで行く。
 雷帝としてしっかりして来たとは言え、そんな無邪気な姿は昔と何も変わらない。だからこそ、誰もがその倖せを願うのだった。
 一国の王である前に、彼自身が倖せであるように。
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プロフィール
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
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非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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