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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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春光 4

第四部"for PARENTS" (略して第四部"P")

こちらは、本日UPの新作です。
第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
4話完結 act.4

拍手[1回]


◇◆◇

 ダミアンとルークは魔界へ戻り、デーモンとエースはもう一泊する予定で部屋へと戻って行った。
 フィードも片づけが残っているからと、一足先に部屋を出て行っている。
 残されたのは、やっと二名きりになれたゼノンとライデン。しかしゼノンは、着替えて来ると言って一旦部屋から出て行っている。
 独り残されたライデンも夜着に着替えてベッドに寝転びながら、左手の薬指に填まった指輪をぼんやりと眺めていた。
 そこから微かに感じたのは…懐かしい気。
「…これって、もしかして…」
 その懐かしい気に、何となく心当たりがあった。
 と、その時。小さなノックの音と共に、声が聞こえた。
『ゼノンだけど。入るよ?』
「どうぞ」
 声を返すと、夜着にガウンを羽織った姿でゼノンが顔を出した。
「…その格好で王宮から歩いて来たの?」
 どう考えても、王宮にはまだ来客も残っているはず。その王宮の客間から歩いて来られる格好ではない。もしそれが出来るなら、ゼノンは余程強靭なメンタルの持ち主だとしか思えないが…到底、ゼノンがそんなことをする訳もない。
 そんな思いでそう声をかけると、ゼノンはくすくすと笑った。
「俺の部屋、隣ね。御前が昔使っていた部屋だってね。もう全部改装も終わってたけど。俺も式が終わってから聞いたんだけど、その時にはもう俺の荷物も運び込まれてたみたいだし」
「…ホントに?知らなかった…」
 思わずベッドから降り、隣の部屋を覗きに行く。確かにそこには、きちんと整えられた部屋が出来上がっていた。
 皇太子宮には客間の他に、ライデンの自室の隣に幾分狭いが確かにもう一つ部屋はあった。だが、子供の頃に遊び部屋として使っていただけで、今は全く使っていなかった。そこがいつの間にかゼノンの部屋として改装されていたなど、隣にいたライデンですら、全く気付いていなかったのは、驚きでしかない。
「フィードの話だとね、御前の執務中にやってたみたいだよ。ベッドも机も本棚もあるし、トイレもシャワーも全部あるから一通り生活出来るよ。ライデンの部屋より狭くて申し訳ないって言われたけど、別にそんなに気にするほど狭くはないしね。これでいつでも別居可能だね」
 くすくすと笑いながらベッドに戻ったライデンの傍に座ったゼノンに、ライデンは僅かに眉を潜める。
「また別居の話かよ…もぉ、聞きたくないね」
 溜め息を一つ。その別居騒動のおかげで大事な式の当日に体調を崩したと言っても、多分過言ではないだろうから…気持ちはわからなくはない。
「…じゃあ、今日は何処で寝るの…?」
 念の為問いかけた言葉。まぁ、夜着でやって来ているのだから、普通に考えたらライデンの部屋なのだろうが…何せ、調子が良いとは言え、まだ熱は下がっていない。ゼノンのことだから、今日はゆっくり休ませるだろうと想像もつく訳で。
 すると、その質問の意味を察したゼノンは、ライデンの額にそっと手を置いた。
「…まだ熱は下がらないんだけどね…一応新婚だし、今日は一緒にいたいんだけど…流石に、何もしないけど。どうかな…?」
「…どうかな、って…俺が拒否したことあります?」
「…ないですね」
 笑いながら、そう答える。
 ライデンは上掛けを持ち上げてゼノンを促すと、ベッドサイドの灯りを残し、他の灯りを落としたゼノンがそこからベッドの中へと潜り込んで来た。
「やっぱり、あんたといると温かい」
「御前の身体は熱いくらいだけどね…」
 苦笑するゼノンに、ライデンも小さく笑う。
「俺熱あるもんね。忘れがちだけど」
「そうだよね」
 ゼノンはくすくすと笑いながら、ベッドサイドにある洗面器に入っていたタオルを絞って、ライデンの額に乗せた。
「暫く休暇でしょ?ゆっくり休んで」
「うん」
 そう言いながらも、まだまだ寝る気はないようだ。
「ねぇ、ゼノン。この指輪についてる水晶ってさぁ…もしかして…"あの時"の?」
 再び、指輪を眺めてそう問いかけたライデンに、ゼノンは小さく笑いを零した。
「わかった?」
「うん。何か、懐かしいな~と思って。何年も身に付けてたんだもん、覚えてるよ」
 そう。それは、ゼノンが失踪している間、ライデンが身につけていた水晶のペンダント。けれど、その水晶には二つに割れてしまい、鎖も切れてしまって、もうペンダントとして身につけることは出来なくなっていたのだった。
「…俺とライデンを繋いでいてくれたモノだからね。何とか出来ないかな、と思って…レプリカに頼んでたんだ。一破片ずつで作ったから、一つ一つは小さくなってしまったけど…俺にとっても、御前にとっても、大事なモノだと思ったから」
 ゼノンも、自分の左手を目の前に翳しながらそう言葉を紡ぐ。
「そっか。でも良かった。あんたに渡したまま、結局どうなったのか聞きそびれてたから。あんたのことだから、捨てることはないとは思ってたんだけど……そっか…指輪にね…」
 指輪を眺めながら、笑いを零すライデン。その横顔を眺めながら…ゼノンは、小さな吐息を一つ。そして、ゆっくりと口を開いた。
「…あのね、ライデン…話があるんだけど…」
「…話…?」
 神妙な表情を浮かべているゼノンに気が付き、ライデンの表情からもすっと笑いが消えた。
「…うん。本当は、休暇中に話せば良いことなんだけど…先延ばしにして、もやもやしているのは嫌だから…先に話してしまうね。今後の…俺の、居場所のこと」
「……居場所…?」
 その言葉に、ふとダミアンと話したことを思い出した。
----ゼノンを信じて…護ってやってくれ。
 ダミアンは…ゼノンが何を考えているのか、知っていたのだろうか?それはダミアンに聞いてみなければわからないことなのだろうが…。
「…俺ね、魔界での仕事はこのまま続けようと思う。さっき話した別居の話じゃないけど…俺はやっぱり、今まで通り魔界に籍を置こうと思う」
「…ゼノン…」
 まさか、この日に…この時に、そんな話をされるとは思わなかったが…ゼノンが仕事を続けるつもりがあることはわかっていたことであるし、ずっと雷神界で暮らすとは思っていなかったのは事実。
「…御免ね。こんな日に言わなくても…って思ってるよね。でも…昨日、一昨日と…ずっと考えてたんだ。御前が幾ら頑張ってくれても、ここにいる誰もにとって俺が余所者であることには変わりないんだ。ラングレー総統が、結婚前に俺たちを別々の部屋に置いたのは、間違いじゃないと思った。結局のところ、現状を変えられたくはないんだ。だったら、それで良い。俺も、雷神界のことに手も口も出すつもりはないしね。変に居座って、御前を唆すんじゃないか、変に政権に手を出すんじゃないかとあらぬ警戒をされ続けるよりは、俺は時々来る呑気者の婿さんで良い。その方が、御前の立場的にも、俺の立場的にも一番良いんじゃないかと思うんだ」
 そう言葉を紡ぐその顔をじっと見つめたまま、ライデンはどんな顔をしていたのだろう。それは…自分ではわからなかった。
「…御前の配下の者たちを、信じていない訳じゃない。でも、幾ら俺が信じたところで…向こうがどれだけ俺を信じてくれるかは、俺にはわからない。俺が、御前の伴侶と言う存在になった以上…多分、本心は明かしてはくれないよ。だから…」
「…わかった。もう良いよ」
 ライデンはベッドから身体を起こす。そして、額から落ちた濡れタオルを手に、その視線を手元へと落としていた。
「…あんたの気持ちは、わかってる。俺は…何も言わない。あんたが、それで良いと決めたなら」
「…ライ…」
「朝ね…ダミ様に言われたんだ。あんたは、俺の倖せをちゃんと考えてくれてる、って。だから、あんたを信じて…護ってやってくれ、って。勿論、俺はあんたを信じてるし…ここでのあんたの立場を、ちゃんと護りたいと思う。だから、あんたが魔界に籍を置いたままにするって言うなら、俺はあんたのその考えをちゃんと受け留める。俺は雷帝と言う立場だから、仕事を蔑ろには出来ない。あんただって局長だし、医師としても頼りにされてるんだもん。御互い、仕事は大事にしなきゃいけない。だったら、今まで通りが一番良い。それはわかってる。だから、それに関しては文句は何もない」
「…じゃあ…何でそんなに不安そうな顔してるの?」
 そう言われ、ライデンはやっと、自分がどんな顔をしているのかがわかった。
 一番の不安は…離れて暮らすことで、疎遠になること。ただ、それだけ。
「…不安なのは…仕事に熱中し過ぎて、あんたの足が遠退くかも知れないって言うことだけ。あんたは研究とか嵌っちゃうと、ロクに休みも取らないで夢中になるでしょ?だから…休みになったら、ちゃんとここへ来て?俺の望みはそれだけだから…」
「…ライ…」
 大きく息を吐き出したライデンは、ふとあることを思い出し、ふっと表情が緩んだ。
「あ、そうだ。あと……」
「あと…何?」
 とても楽しそうな表情に変わったその姿。それは、先程までの不安そうな表情とは一転していた。
「…二名でイチャイチャしてるのも良いんだけどさ…子供も欲しいな、って…」
「…そりゃ、勿論…」
「でもそれが義務だと思わないでね?」
「……」
 まるで釘を刺すような言葉に、一瞬ゼノンは口を噤む。
「…それはわかってるよ。でも、雷神界から求められる俺の役割はそれしかないんだよね。あんまりのんびりしてると、御前もプレッシャーかけられるんじゃないの…?」
「まぁ、早く世継ぎを、とは言われるだろうけどね。でも俺は、義務感に駆られて…ってのは好きじゃない。だって、子供って愛の結晶、でしょ?あんたと俺の気持ちがちゃんと向かい合っていれば、慌てなくたって、ちゃんとタイミングを見計らって産まれてくれるよ」
「…流石、御前らしい考えだね」
 くすっと、ゼノンの顔にも笑みが浮かんだ。
 勿論ライデンも、子供はコウノトリが運んで来てくれる…だなんてことを信じている訳でもないし、同性間ならではの理屈も、十分わかっていることはゼノンも理解している。けれどそんな無垢な言葉で言われてしまったら、義務だの何だのと考えているのが馬鹿みたいで。
 随分しっかりしたとは言え…言うこともやることも、時に驚くほど大胆だったりもするけれど、その根本は幾つになっても純粋で無垢なこの雷帝だからこそ、平和で長閑な国の雰囲気を保ってもいられるのだろう。
 ライデンが、ここでの自分の立場を護ってくれるのなら…自分は、ライデンのその心を、穢さないようにしなければ。護って、いかなければ。それは、ゼノンが密かに抱いた想いであった。
 その為には…まず、きちんとしなければ。
「仕事はちゃんと予定立てて熟すし、休みもきちんと取る。こまめに来るようにする。来られない時も、ちゃんと連絡するから。約束するよ」
「…ゼノン…」
「一緒に…倖せになるんだもんね?」
 にっこりと微笑むゼノンを前に、ライデンも小さく笑いを零す。
「そうだね。みんなの前で誓ったんだもんね」
 そう言うと、ゼノンの手をしっかりと握り締めた。そして、その耳元でそっと囁く。
「…大好き。愛してるよ」
「……今、そう言う事言われるとね……」
 ちょっと赤くなった顔で、溜め息を一つ吐き出したゼノン。
「何?」
 にやりと笑ったライデン。その顔は…確信犯。
「…病魔の自覚、ないでしょ…」
「…御免ね、ないや」
 くすくすと笑うライデンに、ゼノンも苦笑する。
 そして、諦めたように小さく息を吐く。
「…キスして良い?」
「だから、俺はあんたの要望に拒否したことないでしょ?ってば」
「…そうだね。本当は、医者としては…断固回避したい状況なんだけど…今日は、俺が、駄目だ」
 そう言って再び苦笑する。そして、そっと頬を寄せる。
「…俺も大好きだよ」
 ゼノンもそっと囁き、唇を重ねる。その口の中がとても熱い。
「熱上がってない?」
 思わずそう問いかけた声に、ライデンはくすっと笑った。
「大丈夫。外身より中身の方が体温高いのは当たり前じゃん。あんたの方が知ってるでしょ?医者なんだから。心配し過ぎ。大丈夫だから…」
----……あんたを頂戴…
 両手を広げ、ゼノンの身体を抱き締める。
「…ライ…」
「今更だけど、新婚初夜でしょ?」
 笑うライデンに、ゼノンも小さく笑いを零す。
 再び、重ね合わせた唇。そして、いつもよりも熱い身体。何よりも、それが現実で。
「愛してるよ」
 紡ぎだす声も、甘い吐息も、蕩けた顔も。抱き締める腕の強さも、全部。全部、愛おしい。
「…うん、俺も」
 そう答えられることが、何よりも倖せだった。

◇◆◇

 明るい日差しが眩しくて目を開けてみれば、しんとした部屋には誰の姿もなかった。
「…ゼノン?」
 いるはずの姿がない。ベッドの隣にも、部屋の中にも。
 一瞬…全てが夢だったのではないかと思った。
 本当は、結婚などしていなくて…恋悪魔も、いなかったのではないかと。
 けれど、ふと上掛けを握り締めたその左手に見えた指輪に、それが夢ではなかったのだと安堵の溜め息を吐き出す。
「…あ、起きた?御免ね、庭を散歩してたんだ。体調はどう?」
 ふとそう声が届き、顔をあげればテラスから顔を覗かせている最愛の伴侶の姿が笑っていた。
「…ゼノ…っ」
 思わずあげた声に、首を傾げながらベッドサイドへと歩み寄って来た。
「どうした?まだ体調悪い…?」
 そう言いながら、ライデンの額へと手を当てる。
「…熱は下がったみたいだけど…また頭痛い?」
 問いかけられ、ライデンは首を横に振る。
「…体調は大丈夫。何ともない。ただ、一瞬…夢かと思ったの。全部。結婚したことも…あんたのこと、も」
「…ライ…」
 思わぬ言葉に、心配そうに眉を寄せ、ベッドの端へと腰を下ろしたゼノン。そして、ライデンの手をそっと握る。
「大丈夫、俺はちゃんといるよ」
「…うん。指輪見て、現実だってわかったから、もう大丈夫。目が覚めて、誰もいないことがあんまりないから…ちょっと混乱したみたい。いつもはフィードがいるからね」
 大きく息を吐き出し、気持ちを宥めたライデンは、小さく笑いを零した。
「そう。なら良かった。フィードは俺が起きてから一回来たんだけど、新婚だって言うことでちょっと遠慮気味でね、直ぐに出て行っちゃったんだよね。近くにはいると思うけど…」
「そっか。今更気にすることないのにね。あ、でもあんたは気になる…?」
 ライデンにとっては、フィードは傍にいて当たり前の存在であるが、ゼノンにとってはライデン付きの官吏に過ぎない。結婚前も朝は多少遠慮はしていたようだが、今日ほどあからさまではなかった。ゼノンにとってもフィードのとっても、まだ御互いの距離感がわからないのだ。
「俺もそう言ったんだけどね。別に今更だし…俺もいても困らないんだけど…と言うより、この先のことを考えると、変に気を使われるよりも、今まで通りにしていて貰った方が良いよね?」
「まぁね。後で言って置くよ」
 苦笑するライデン。まぁ、フィードはフィードなりに、主の為に気を回したのだろうが…寧ろいないことに慣れていない、と言う現状まではわかっていなかったのだろう。
「そう言えば、俺たち二名とも、上皇様から声がかかってるらしいよ」
「親父が?わかった。じゃあ、御飯の前に顔見て来ようか」
 そう言って大きな伸びをしながら欠伸を一つすると、ベッドから立ち上がった。そしてドアを開け、廊下に顔を出す。
「フィード!何処にいる~?」
 声を張り上げ、暫しの間。その後、パタパタと廊下を走って来る足音が聞こえると、遠くからフィードが戻って来た。
「おはようございます。何か、御用ですか?」
 いつもと変わらずにっこりと微笑んだフィード。けれど、何処かよそよそしい。
「御用があるから呼んだの。駄目じゃん、どっか行っちゃ」
 服を着替えながらちょっと頬を膨らませてそう言ったライデンを手伝いながら、フィードはちょっと表情を変えた。
「…申し訳ありません。ですが…ゼノン様もいらっしゃいますし…今まで通り、わたくしがここにずっとおりますのもどうかと思いますが…」
「…まぁ、ね。まだ初日だし、距離感が掴めないのはわかるけどさ。出来れば今まで通りいてくれない?ゼノンも、ずっとここに住む訳じゃないし…」
 ライデンのその言葉に、フィードは困ったように眉を寄せた。
「…御住まいになられないのですか?」
「あ~…っと…後で説明する。先に、親父のところに行って来るから。帰って来たら食事するから、その時にちゃんと話す。ね、ゼノン?」
 フィードの不安そうな顔に、思わずゼノンに助けを求めてしまったライデン。そのやりとりの一部始終を、ソファーに座って眺めていたゼノンは、小さく笑いを零した。
「そうだね。でも、変に心配しなくて良いから」
 くすくすと笑うゼノンの姿に、フィードの不安も僅かに落ち着いたのだろう。その表情が少し、柔らかくなる。
「じゃあ、行って来るから」
 慌しく準備をして、ライデンとゼノンはライデンの父たる上皇の部屋へと向かった。

 上皇の自室の前にやって来たライデンとゼノンは、そのドアをノックする。
『どうぞ』
 帰って来た声にドアを開け、中へと入って行く。
「おはようございます」
 揃って頭を下げた後、ライデンは父たる上皇へと真っ直ぐに視線を向けた。
「御呼びですか?」
「あぁ、おはよう。具合はどうだ?まぁ、ここへ来られるくらいだから、落ち着いたのだろう?」
「はい。ゼノンがいましたので、もうすっかり。昨日は申し訳ありませんでした。大事な婚姻の儀でしたのに…」
「まぁ、過ぎてしまったことは仕方がない。これからは、ゼノン殿にしっかり管理して貰えば良い」
 小さく笑いを零す上皇。その柔らかな表情に、ライデンもやっと小さな笑いを零した。
「それで…我々を呼んだ理由は…?」
 一歩後ろにいるゼノンを振り返りながら問いかけたライデンの声に、上皇は再び笑いを零す。
「緊張しなくて良い。今日は雷帝としてではなく、ライデンとゼノン殿に話をしようと思ったまでのこと。いつも通りで構わんよ」
 そう言われ、ライデンは大きく息を吐き出した。どうやら、雷帝として呼ばれているのだと緊張していたようだった。
「じゃあ…話って何?」
「…いやいや、変わり過ぎでしょう…」
 いつものライデンと言えばそうなのだが、途端に変わった口調に、思わずゼノンが突っ込みを入れてしまった。その素の掛け合いを笑って見ている上皇は、とても楽しそうにも見える。
「まぁ、話と言うのは何だ。昨日、ダミアン殿下からも少し聞いたのだが…ゼノン殿の仕事のことでな」
 名指しで言われ、ゼノンの方がドキッとして顔をあげた。
「ダミアン殿下は、ゼノン殿は魔界で仕事を続ける意思があると申していた。勿論、わしもその思いに反対している訳ではない。だが、そなたの口からも、きちんと聞いておこうと思ってな。きちんと結論が出ていなくても良い。どう思っているのかだけでも、聞かせてくれないか?」
 柔らかい口調でそう問いかけられ、ゼノンはほんの少しだけ口を噤む。そして、小さく息を吐き出すと、上皇を真っ直ぐに見つめた。
「ライデンには…夕べ、話をしました。わたしは、今まで通り魔界に籍を置いて、魔界で働きたいと思っています。勿論、伴侶としての勤めは出来得る限り果たします。きちんと休みを取り、雷神界へ戻って来ることも約束します。ですから…わたしたちの婚姻は、そう言うものであると…上皇様には、御理解いただきたいと…」
 ゼノンのその言葉を聞きながら、ライデンも心配そうに上皇の顔を見つめていた。
 緊張した空気の中、上皇はその口元に小さな笑いを浮かべる。
「それは、そなたたちが決めることであろう?わしは、ただライデンの父である、と言うだけのこと。最早、この国はライデンに託したのでな。御前がしっかりしておれば、誰も文句は言わないだろう。認められるだけの姿を、きちんと見せていけば良い。わしは、そなたたちを信じておるから、何の心配もしとらんが?ただ、考えだけでも聞いておこうと思っただけでな」
「上皇様…」
「そなたたちが、これで良いと思った道を進めば良い。わしは、ずっとそなたたちの味方でいるのだから」
「…はい。有難うございます」
 それは、今までもずっと言われて来た言葉。その変わらない想いが、何よりも嬉しい。
 そっと、ゼノンの手を包み込んだライデンの掌。にっこりと微笑むその姿に、ゼノンも笑みを零す。
「…倖せに、なりますから」
 そう言い切ったライデンの言葉に、上皇もまた、微笑みを零していた。

◇◆◇

 二名がライデンの部屋へと戻って来ると、そこには食事の準備と共にデーモンとエースの姿もあった。
「あぁ、おはよう。御免ね、放置だった」
「全くだ」
 すっかり忘れていた、と言えばそれまでなのだが…魔界へ帰る前に、と顔を覗かせたところを、主不在のまま返す訳には行かない、とフィードに捕まったようだ。
「まぁ、丁度良いよ。フィードに話をするついでに御前たちにも聞いて貰いたいんだけど…」
 席に着いたゼノンは、そう言って心配そうな表情を浮かべているフィードに小さく笑うと、その口を開いた。それは、ライデンにも上皇にも…そして、いち早くデーモンにも説明したこと。勿論、その気持ちはぶれることはない。
 黙って聞いていたエースとフィード。
「…御前は、それで良いのか?」
 問いかけたエースの声は、ライデンへと向いていた。
「俺は良いよ。今までそうして来たんだし…いつも一緒にいるのも良いけど、たまに会う方が、会えた時に嬉しさ倍増じゃない?」
 くすっと笑ってそう言うライデンに、デーモンは小さく笑う。
「非常に前向きなのは御前らしいな。まぁ、御前たちが決めたことなら、我々が口を挟む必要はないだろう。暫くそうしてみて、そこに不安が出来たらまた考えれば良いんじゃないか?そのうち、子供も産まれるだろうしな。そうしたらまた環境も変わるだろう?」
「まぁね。だから、フィードも今まで通りで頼むよ。変に遠慮しないで良いから」
 にっこりと微笑む主に、フィードも小さく息を吐き出す。
「…本当に…宜しいんですか?」
「宜しいんだよ。別に、身の回りのことぐらい自分で出来るけど、子供の頃から今までずっと近くにいて当たり前だったのにさ。急にいなくなられても、俺が困る」
「若様…」
「俺からも頼むよ、フィード」
 ゼノンにもそう言われ、流石にフィードも小さく笑いを零した。
 主に必要とされることが、何よりも倖せだと思える。忠誠を誓って今まで尽くしてたのだから、それはある意味当然だった。
「わかりました。では、遠慮は致しません。今まで通り御世話させていただきます」
 にっこりと微笑むその顔に、ライデンも安心したように笑いを零す。
 今は、それで良い。新たな門出を迎えた二名を、見守っていよう。
 誰もがそんな想いを抱く中、彼らは歩き出したのだった。

 そして、新たな道が開かれた。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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