聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
[PR]
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
檀香 伽羅~序章 1
第四部"for PARENTS" (略して第四部"P")
こちらは、以前のHPで2006年01月08日にUPしたものです。第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
5話完結 act.1
春はまだ遠い。
例年なら、そろそろ植物たちが芽吹き始めても可笑しくはない頃。けれどその年は、未だ深く雪が積もったまま。暖かくなる気配さえ、まだ感じられなかった。
幾度となく繰り返される、炎の爆ぜる音。暖炉から聞こえるそれをぼんやりと聞きながら、視線を落としていた本から顔を上げる。
ベッドに上体を起こした状態で本を読んでいた彼は、読みかけのそのページに栞を挟むと、ゆっくりと身体を動かしてベッドから立ち上がると雪が降り続く窓辺へと歩み寄り、窓から外を覗いた。
窓硝子に吸い寄せられるかのように落ちて来る小さな結晶は、室内の暖かさで硝子に触れると直ぐに溶けてしまう。けれど、それが何ともロマンティックに思える。
彼は、こんな雪の日が嫌いではない。けれど今は…ちょっと鬱陶しく思える。
そっと手が触れたのは、彼の腹部。そこに、新たな生命が宿っているはずである。
かつていた世界のように、実際に子供が彼の肉体の中で大きくなっている訳ではない。生命の核が彼の中に存在し、彼の"生命力"を糧に成長している。だから、目に見える肉体の変貌はない。
しかしながら、"生命力"を糧にされているのだから、彼の"生命力"が削られているのは間違いない。つまり、彼は日に日に衰えていると言うことになるのだ。
出生の日までは勤めて安静に。医師たる仲魔からはそう宣言されている。だが、動くな、とは言われていないのだから、体力の維持も兼ねて屋敷の中を歩いている。尤も、それくらいしか今の彼に出来る"運動"はないのだが。
「…あと、一ヶ月、か…」
それが、新たな生命が誕生するまでの時間。そして、そこから先の時間を彼がどれだけ生きられるかはまだわからない。
小さな吐息を吐き出す。そして、再び手を触れた腹部をポンポンと軽く叩く。
「…まぁ、頑張らないとな。吾輩だけの生命ではないんだし…御前と、エースと…一緒に生き存えなければ、な」
小さな生命の波動を掌に感じ、彼はくすっと笑いを零した。
自分の中に宿る小さな命。それは、この先の未来を生きていく生命。だから…大切にしなければならない。一分、一秒でも…この生命と、エースの為に大切に生きなければ。
今は、ただそれだけを胸に、気力を保つのが精一杯だった。
翌日は、とても冷え込んでいた。
目が覚めてから、どうも体調が芳しくない。身体が冷える上に眩暈がして、ベッドから起き上がれない程。そして何より…御腹が痛い。
「……大丈夫か?」
前日の夜から泊まりに来ていた恋悪魔たるエースが、ベッドから起き上がれない彼…デーモンに向け、そう声をかける。
「…大丈夫…じゃない……悪いがゼノンに、連絡…入れて、くれるか…?」
そう答える声も、途切れ途切れになる。それくらい、言葉を発することも辛い。
「あぁ、今連絡を入れた。直に来るから」
ベッドの端に腰を降ろし、デーモンの御腹やら背中やらをゆっくりと摩ってやる。
その掌に感じるデーモンの魔力は、以前よりもずっと衰えている。そして何より、体力も生命力も落ち込んでいる。それが、デーモンの中に宿っている"核"の影響であることは重々承知。だからこそ、出来るだけ毎日顔を見に屋敷に寄り、自分の能力を…生命エネルギーを、分け与えている。少しでもそれが生命の足しになるのならと、デーモンも了承した結果だった。だが…今になっても、自分たちの下した決断が正しかったのか、迷っているところもある。
「頑張れよ」
そう声をかけてデーモンの身体を摩りながら、生命エネルギーと共に拒絶反応を起こさない程度に少しずつ自分の魔力も送り込む。
それが、今のエースにしてやれるせめてもの手助け。そして、そんなことしかしてやれない自分に、腹立たしささえ覚えていた。
「…御免な…」
思わずつぶやいた声に、デーモンがうっすらと目を開けた。そして、エースを見上げる。
「…どう…した?」
体調が悪い中でも、エースを気遣うことも忘れない。それを忘れてしまうことが、何よりも彼を傷つける結果になってしまうとわかっているから。
「…いや…何でもない。ゼノンが来るまで、もう少しの辛抱、な」
そう言いながら、何とか小さく微笑んで見せる。そうすることでしか、デーモンの不安を和らげてやることが出来ないとわかっているから。
御互いの心の中に蟠っている不安。御互いにそれを口にすることが出来ないまま、時間だけが過ぎてしまっていたのだ。
そっと、デーモンに触れるエースの掌。その温もりだけが、確かな繋がりだった。
それからどのくらいの時間が経っただろうか。やっと、待ち兼ねていた医師たるゼノンが、屋敷へとやって来た。
「御免ね。転移して来たんだけど、医局に寄って来たから、時間がかかって…」
そう言いながら、デーモンの傍へとやって来るゼノン。
「朝から、腹が痛いって…寒気と眩暈もして、起き上がれないんだ」
デーモンの傍をゼノンに譲りながら、エースはそう捕捉する。その表情はとても心配そうだ。
「ちょっと診せてね」
そう言うと、ゼノンはデーモンが包まっている上掛けの端から中へとそっと手を差し入れる。そして、デーモンの御腹に触れ、その波動を確かめる。
「…どうだ?」
思わず問いかけたエースの声に、ゼノンは暫く感覚を探っていたが、やがて小さな溜息を吐き出した。
「"核"の波動がかなり強くなって来てる。多分…もう直ぐ、生まれるよ」
「生まれる?だって、予定日はまだ先だろう?!」
当初のゼノンの診断では、予定日はまだあと一ヶ月も先だったはず。それなのに、急にもう直ぐ生まれると言われれば、エースとて心の準備が出来ていないのは当然のこと。
けれど、のんびりしていられる余裕はないのだ。
「確かに、最初の予定はまだあと一ヶ月近く先だったけれど…デーモンの生命力と魔力を考えると、これ以上伸ばすことは危険だよ。それに何より…"核"がカタチを持ちたがっているんだよ。自分から、世に出ようとしている。だから、このチャンスを逃す訳にはいかないよ」
些か強引な提案ではあるが、それがデーモンの生命を考えると最善の方法なのだ。
多分…"核"も、これ以上デーモンの生命を削る訳にはいかないと判断したのだろう。デーモンの生命に一番近いところにいる"核"だからこそ、自ら生まれ出ることを決めたのだろう。
「とにかく、準備を始めるから手伝ってくれる?」
唖然としているエースにそう声をかけ、ベッドを囲むように医療結界を張る。
「…何を、手伝えば良いんだ?」
思わず問いかけたエースに、ゼノンは小さく息を吐き出すと、エースの目を見つめ、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「多分、今のデーモンでは、出産には耐えられない。ライデンですら、雷神界の上層部の協力者を集めて能力を分けて貰ったんだ。だから、今回も大勢の協力が必要になる。ルークでもダミアン様でも良いから、とにかく沢山の仲魔を集めて。それまで俺が支えるから。みんなで協力して、デーモンを助けるから」
「…わ…わかった!」
ゼノンの表情と、その言葉の緊急性を察したエースは、息を飲むと直ぐに踵を返す。そして、コンピューターがある部屋に駆け込むと、片っ端から通信を飛ばした。
誰でも良い。とにかく、デーモンを助けて欲しい。その一念で。
数時間後。デーモンの屋敷のリビングには、エースの呼びかけに応じて集まった仲魔たちの姿があった。
大魔王ダミアン、皇太子シリウス、ルーク、雷帝たるライデン、ゼノンの屋敷で療養中のゼフィーと、付き添いのレプリカ。そして、エース、ゼノン、ルーク、ダミアン、シリウスの屋敷の使用魔たちと、デーモンの屋敷の使用魔全員。誰もが皆、デーモンの状況を知っている者たちだった。
そして、集まった仲魔たちの能力を取り込む為に、彼らを含む屋敷の全てが結界に包まれている。
「…デーさん、大丈夫かな…」
自身も同じ経験をしたライデンが、心配そうな表情で言葉を零す。己の職務を放り出してまで駆けつけたライデンは、唯一その大変さを経験している。けれど、今デーモンが置かれている状況は、自身の時の何倍も危険な状況なのだ。だからこそ、職務放棄を咎められようとも、駆けつけずにはいられなかったのだ。
「…大丈夫だよ。俺たちみんなが集まったんだから。デーさんと、子供の生命力を信じなきゃ」
そう、言葉を返したのはルーク。けれど、その表情も不安で一杯だった。
その表情は、誰もが同じ。
そして、そんな大人たちの不安そうな表情を見つめるシリウスとゼフィーもまた、新たな生命の誕生と言う場に立ち会うことになったのだから、落ち着かないのは当然。違う意味で不安そうな表情を浮かべていた。
自分たちは、何の為に呼ばれたのだろう。
初めて立ち会う場なのだから、そんな表情を浮かべていても不思議はない。
勿論、他に呼ばれている者たちとて、同じような場に立ち会ったことはない。ライデンは自分が当事者だったから、傍観者としての立場とはまた違う。ダミアンは、シリウスの出産に立ち会っていないのだから、状況もまた違うのだ。そして他の者たちにとっては全く初めての場。誰もが不安な心持ちだった。
「…まぁ…ゼノンに任せるしかないだろうね。ライデンが子供たちを産んだ時に経験しているのだから、我々よりも状況を理解しているだろうからね」
場の空気を落ち着かせるように、ダミアンがそう口を開く。
今は、じっと時を待つしかない。
そうして、どのくらいの時間が過ぎただろう。リビングで落ち着かない気持ちで待っている彼らの元に、浮かない表情のゼノンが現れた。
「ゼノン…デーさん、どう?」
そう問いかけたルークの声に、ゼノンは小さな溜息を一つ吐き出した。
「準備は出来ているんだ。ただ、デーモンの魔力と生命力がかなり低下していてね。今、応急処置でエースが支えてくれているけれど…まだ足りない。だから…みんなに協力して貰おうと思うんだけど…」
自分たちが呼ばれた理由を察した彼らは、御互いに顔を見合わせると、誰からともなく頷いて見せた。
「俺たち、その為に来てるんだろう?今更、遠慮なんかしなくて良いんだよ。デーさんの為になるなら、どんな事だってするからさ。ね?」
「うん。そうそう」
にっこりと顔を見合わせる彼らに、ゼノンの表情もほんの少し柔らかくなった。
「…ありがとう。じゃあ、早速なんだけど…手伝ってくれる?みんなで手を繋いで、魔力を集めたいんだ。拒絶反応を起こすと大変だから、直接デーモンに送り込むことは出来ないけれど、エースが自分の魔力と融合させてから送ってくれるから、出来るだけゆっくりと魔力を高めてくれる?」
「了解!」
ゼノンの言葉に、その場にいたみんなが、手を繋いで大きな輪を作った。そして、ゆっくりと魔力を高め始める。
当然、そんな経験をしたことのないのは、ゼフィー一名。けれど、隣に立ち、ゼフィーの手をしっかりと握ったシリウスが、真っ直ぐに前を向いたまま、ゼフィーにだけ聞こえるように小さく囁いた。
「…ゆっくり、イメージするんだ。自分の魔力を、両手に集めるイメージだ」
「…はい…」
シリウスに言われるままに、ゼフィーもゆっくりと魔力を両手に集めるようイメージする。微力だが、それは確かに魔力の糧となる。
集まって来る魔力を感じながら、ゼノンは呪を唱えていた。そして集まった魔力は、ゆっくりと天井へ向けて昇って行く。
「…ちょうどこの真上に、デーモンとエースがいるんだ。俺はそっちに回るけれど…もう少し、このまま魔力をキープして貰えるかな?」
「あぁ、任せておけ。ここは、わたしが預かろう」
その場で尤も強大な能力を持つダミアンの声に、ゼノンは小さく頷いた。そして、足早にリビングを出て行く。その背中を見送りながら、ただただ、デーモンの無事を祈るしかなかった。
リビングの真上にある客間では、デーモンをしっかりと抱きかかえたエースが、ゼノンの敷いた魔法陣の中央に座り込んでいた。
床の下から感じるのは、沢山の魔力。それは、温もりを感じられる程暖かいものだった。
「…御待たせ。今、みんなが協力してくれているから、デーモンの魔力と生命力も何とか保てると思う。後は、デーモンと子供の生命力を信じるだけだよ」
「…あぁ…」
デーモンを抱きかかえているエースの表情は、不安で一杯である。そして、エースに抱えられているデーモンは、朝からの不調で限界ぎりぎりだった。
「…エー…ス……吾輩は…大丈…夫……だから……」
「…デーモン…」
喘ぎながら零すデーモンの声。それでも、頑張って笑おうとして見せる姿に、エースもゼノンも胸が一杯になる。
何としてでも、デーモンを助けなければ。そして…デーモンが生命を削って育て続けた子供の生命も。
「…それじゃあ、行くよ」
ゼノンの声に、エースはしっかりとデーモンを抱き締めた。そして、目を閉じると、床の下から感じる仲魔たちの魔力を自分の中に引き込み、自分の魔力と融合させてから生命エネルギーとしての能力としてゆっくりとデーモンに送り込む。勿論それは、エースにとっても楽な仕事ではない。けれど、送られて来る魔力が膨大なだけに、自分が媒体にならなければ仲魔が送ってくれた魔力をデーモンに与えることが出来ないのだから。
少しずつ、身体が楽になっていく感覚。それは、錯覚だろうか。そんなことをぼんやりと感じながら、デーモンはゆっくりと目を開けてみる。
自分を包み込むように、エースがいる。目を閉じたその表情は、苦悶の表情にも見える。
「…エース…」
小さく、呼びかける。うっすらと目を開けたエースに、デーモンは小さく笑った。
「…愛してる…から…な……ずっと……だから…待っていて、くれよな…」
囁きにも似た言葉。それは、自分のこれからを察知しての言葉だったのだろうか。
「…頑張れ…よ…」
身体の中を駆け巡る膨大な魔力を制御しながら言葉を紡ぐことは、エースにも大変なことだった。けれど、それを伝えなければならない。
未来を、繋ぐ為に。
「…行くよ!」
遠くで、ゼノンの声を聞いたような気がした。
その瞬間、デーモンの身体の中から眩い光の核がゆっくりと舞い上がる。
聞こえたのは、微かな泣き声。それは、新たな生命に他ならない。
「…産まれた…」
光の核がゆっくりと小さな肉体へと変貌を遂げていく。その様子を、息を飲み、目を見張って見つめるエース。
「エース!まだ気を緩めないで!」
ゼノンのその声にエースはハッとして気を集中させると、再びデーモンへと魔力を送り込む。
「…吾輩たちの…子供……」
掠れる声を零し、デーモンは必死に腕を伸ばし、光に包まれた身体を抱き寄せる。
腕の中にすっぽりと包まれてしまう程の小さな生命。胸が一杯で…思わず、涙が零れた。
「…良かっ…た……」
小さな生命の誕生を実感し、安堵の言葉を零したデーモン。けれどその意識を保つことは、もう無理だった。
エースに抱かれたまま、そして、生まれたばかりの子供を抱き締めたまま、デーモンの意識は深い闇に落ちて行った。
ぐったりとしたデーモンを抱えたまま、エースはゼノンの呪が終わるのをじっと待っていた。
鼓動は、感じる。呼吸もある。大丈夫。最愛の恋悪魔は、生きている。
生きている証を感じながら、無事に儀式は終わる。
新たな生命は、小さいながらもしっかりと泣き声を上げている。
「…御苦労様」
憔悴の表情を浮かべながらも、にっこりと微笑むのはゼノン。そしてエースもまた、ぐったりとした表情のまま、デーモンが抱きかかえている小さな子供を見つめていた。
「…女の子、だね」
「…そう、みたいだな。将来が大変だ」
小さな姿を見つめながら、自然と零れる微笑み。
デーモンが自分の生命を削ってまでも残そうとした、新たな生命。
今まで、成り行きとは言え数名の子供を育てたエースであったが、自分と最愛の恋悪魔の生命を分け与えた生命が、これ程までに愛しいとは思わなかった。
デーモンの言った通り。この子を残しては死ねない。
自分も…デーモンも。
「…さ、みんなにも伝えて来ないと。デーモンの意識が戻ったら、御祝いだね」
「あぁ。そうだな」
エースは、子供を抱きかかえたままのデーモンを抱き上げ、寝室へと運ぶ。そして、デーモンをベッドの上にそっと下ろすと、その腕から小さな子供を抱き上げた。
護らなければならないモノが、また一つ増えた。
それを実感しながら、エースは小さな微笑みを零していた。
一足先にリビングに戻って来たゼノンは、そこで待ち構えていた仲魔たちに、無事に女の子が生まれたことを伝えた。
歓声が沸きあがる中、ふと脳裏を過ぎった言葉。
----…待っていて、くれよな…
デーモンが零したあの言葉は、何を意味していたのだろう?
一瞬、そんな疑問が浮かんだが、頭を振ってその不安を追い払う。
今は、共に倖せを分かち合おう。
そう思い、ゼノンも愛しい伴侶と我が子の傍へと歩み寄る。
皆が、倖せでいられるように。
それは…微やかな願い、だった。
新たな生命が誕生して、既に一ヶ月が経っていた。
子供の名は『エル』と名付けられ、順調に育っている。
けれど……エースと共に、その成長を喜ぶべきであるデーモンは……まだ目覚めてはいなかった。
PR
COMMENT
プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
カレンダー
カテゴリー
最新記事
(06/23)
(10/08)
(10/08)
(09/30)
(09/10)
(09/10)
(08/06)
(08/06)
(07/09)
(07/09)
アーカイブ
ブログ内検索