聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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檀香 伽羅~序章 2
第四部"for PARENTS" (略して第四部"P")
こちらは、以前のHPで2006年02月19日にUPしたものです。第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
5話完結 act.2
冬の日差しが徐々に暖かくなり、積もっていた雪は解け始める。それと同時に、生命の息吹が感じられる季節。
例年ならば、そろそろ待ち詫びている花々を愛でて楽しむ時期なのだが…その年はそんな浮かれた気分など何処にもなかった。
一ヶ月程前、デーモンが生命をかけて産み落とした新たなる生命。
『エル』と名付けられたその小さな生命は、順調な成長を遂げている。けれど、その生命の誕生と同時に闇に落ちたデーモンの意識は、未だ戻らない。
それが、周囲を酷く不安にさせていた。
その日、デーモンの屋敷を訪れたエースの表情は、いつもと何か違っているように見えた。
「…どうか、されたのですか…?」
毎日同じように様子を見にやって来る。けれど、いつもと何かが違う。そんな些細な雰囲気にも心配になった使用魔に声をかけられ、エースは小さな溜め息を一つ吐き出す。
「…デーモンは…?」
「…えぇ、まだ…」
「…そう、か」
短く答え、再び溜め息を一つ。そして、階段を登り、デーモンの寝室へと向かう。
そこには、眠り続けるデーモンと、幼い我が子の姿。
「御帰りなさいませ」
エルをあやしながら眠らせていた使用魔がエースに気がつき、にこやかに声をかける。
生命の躍動を感じさせる我が子と、いつ消え果るかわからない生命の恋悪魔。その両極端の姿を見つめる度、エースの胸の中は穏やかではなかった。
どうして、こうなってしまったのだろう?
勿論、我が子の誕生を後悔している訳ではない。デーモンが子供を産みたいと言い出した時から、覚悟はしていたはずなのに。けれど、実際にデーモンが生命の危機に晒されている状況を目の前にして、冷静でいられることなど出来なかった。
----このままでは、我が子を恨んでしまう。
大きく溜め息を吐き出したエースは、使用魔の腕から徐ろにエルを抱き上げる。
「…エース様…?」
思いがけない行動に、使用魔の表情が僅かに不安げに変わる。勿論、エースもその変化には気がついていた。けれど、敢えて目を背ける。
腕の中には、小さな我が子。良く眠るその穏やかな寝顔は、普通ならば思わず表情が緩むくらい、可愛い。けれど…エースは、表情を緩めることが出来なかった。
「…エース様、一体……」
そう問いかける使用魔の声にも、不安の色が浮かぶ。その声を断ち切るかのように、エースはそのまま踵を返す。
そして。
「…悪いが…今日から、俺の屋敷に引き取る。今まで世話をして貰って、感謝している。有難う、な」
それだけ言い残すと、エースは足早にデーモンの寝室を出て行った。
その後姿を見送る使用魔の表情は、とても複雑で。
勿論、エースがずっと、苦しんでいたことは知っていた。けれど、エルが"ここ"にいるからこそ、デーモンが目覚めるのではないかと言う期待もずっと抱いていたのだから。
直属の主ではないが、主の伴侶同等の恋悪魔である以上、屋敷の使用魔と言う立場ではエースに逆らうことは出来ない。誰もが唇を噛み締めたまま、エルを連れて行くエースの背中を黙って見送った。
この屋敷の主が、一刻も早く目覚めてくれることを祈りながら。
エースがエルを自分の屋敷に連れ帰ったその翌日。彼の執務室に一名の仲魔の姿があった。
「…エルを、自分の屋敷に連れて行ったんだって…?」
咎めるでもなく、やんわりと問いかけた声。その声に、エースは背を向けていた。
「…あぁ。デーモンの屋敷では、使用魔も世話が大変だろう?デーモンはまだ目覚めないんだ。色々と、気を使わなければならないからな」
「…それだけじゃないでしょう?」
もう一度問いかけた声は、先程とは微妙に雰囲気が違う。
「このところずっと、エースは自分の屋敷に戻っていないんでしょう?職務が終わればデーモンの屋敷に様子を見に行って、そのまま殆ど一晩中デーモンの枕元にいるって聞いているよ。ロクに眠ってもいないのに、食事もきちんと取らずに職務で走り回って…随分痩せたじゃない。心配なのはわかるけれど…もう少し、自分の身体のことも心配して欲しいよ。エルのことだって、ずっとアイラたちに任せっきりだったのに、急に自分の屋敷に引き取るなんて…あからさまも良い所だよ」
一気にそう捲くし立てる声。けれど、エースは相変わらず、背中を向けていた。
もしも、自分の今の顔を相手に見られてしまったら…強制的に食事を取らされ、ベッドの中に放り込まれる。それは、エース自身にもわかっていた。それだけ、今のエースは精神的に追い詰められて、憔悴していたのだ。
「…後悔…しているの?」
再び、背中に声が届く。それは、親として…一番考えてはいけないこと。それを問いかけられる程…既に、正常な精神状態ではなかったのだろう。
大きな溜め息を吐き出したエース。それは、諦めにも似た溜め息。
「…夕べ一晩…エルが眠っているのを眺めていた。デーモンと同じ髪の色と、色濃くなって来る青色の紋様を見る度に…胸が苦しくなる。自分の生命を分け与えた子供だと言うことはわかっている。だが…あの子が生まれ、デーモンは眠りに落ちた。それを、どう納得しろと?勿論、覚悟はしていた。でもだからって、それを現実にすることはないだろう?デーモンの屋敷に行けば、エルがいる。デーモンは目覚めないのに、エルは日に日に大きくなる。そんな姿を見て、辛くないとでも?御前なら、平然とエルの成長を喜んで笑えるとでも?少なくとも、俺には出来ない。だから…俺が引き取った。ティムたちには面倒をかけるが…俺の屋敷で育てていれば、少しは気が楽になるんじゃないかと思ってな。エルを…憎んでしまう前に……デーモンから引き離したんだ。自分自身の精神状態を考慮した上で、尤も最善の処置だと思っている。御前が反対しようと…エルを、デーモンの屋敷に戻すつもりはないからな」
「…そう。わかった」
相手は、小さくそうつぶやいた。
勿論、エースの胸の内は痛い程わかっている。眠りに落ちたデーモンを引き戻すことが出来ない自分自身を責め、我が子を愛せない自分を責め…色々な感情に追い詰められ…そうして、エースの神経はぼろぼろになっている。それを紛らわせる為に、職務で忙しく走り回っていることも。
エースは、そう言う悪魔なのだ。そんなことは…昔から、わかっていたはずなのに。
改めて、自分に背を向けるエースを見つめる。
「…御免ね。俺が、無力だから…」
「…馬鹿言え。御前だって、自分の職務を熟しながらゼゼの心配をし、デーモンの診察をし、忙しく走り回っているじゃないか。御前がいなかったら、デーモンの生命だってここまで繋ぎ留められているかどうかもわからないんだ。御前を責めるつもりは毛頭ない。これは…俺自身の問題だから」
「…エース…」
ほんの少し、エースが振り返ったような気がした。
僅かに傾げられた頬は、酷く窶れている。
それでも…僅かに見えたその眼差しに浮かんでいるのは、鋭い光。
「俺は、諦めた訳じゃないんだ。デーモンの意識を、必ず取り戻してみせる。このまま、意識を取り戻さないなんて、俺は許さない。御前だって…今のままの現状を維持するだけの状況は納得がいかないだろうしな。だから…手を、貸してくれないか?デーモンの意識を…捜しに行く」
エースのその言葉は、当然と言えば当然の言葉。
大きく息を吐き出した相手は、改めて大きく息を吸い込むと、にっこりと笑って見せた。
「…御前なら、そう言うだろうと思っていたよ。ただ、今の御前の状態を見れば、引き留めることは必至だと思うけれどね。でも、俺のそんな制止は聞かないでしょう?だから、協力するよ。ただし、その前にちゃんと食事をして、少し眠ってくれると助かるな。体力を回復しておかないと、心配事が増えるからね」
「…ゼノン…」
まず、反対されると思っていた。素直に協力してくれるとは想像していなかったのだろう。驚きの表情と共に振り返ったエースは、目を丸くして相手を見つめる。その表情ににっこりと微笑み、相手…ゼノンは、両手を伸ばしてエースの頬を包み込む。
「何、その顔は。俺が、協力を拒むとでも思っていたの?」
くすくすと笑うゼノンを前に、エースの方が面喰らっている。
「…約束、したでしょう?デーモンの生命を護る為なら、俺はどんな協力でもする、って。デーモンを迎えに行くことは、御前が考えそうなことだもの。でも、そんな顔で、デーモンを迎えに行くつもり?それじゃ、かえって心配かけるだけでしょう?こんなに痩せて…そんな顔見せたら、デーモンだって驚くよ?今日はゆっくり休んで、体力を回復すること。良いね?」
「…あぁ…わかった…」
両の頬に当てられたゼノンの掌は、とても温かい。その温もりは、冷え切った心の中まで暖めてくれているようで。
「…一つだけ…約束、してくれる?」
ゆっくりとした口調で、ゼノンが小さく問いかける。
「…何だ?」
問い返したエースに、ゼノンは小さく呼吸を吐き出すと、エースの頭を引き寄せ、自分の額とエースの額を合わせる。
「…絶対…エルを蔑ろにしちゃいけないよ。彼女は、デーモンが生命を削って産み落とした、大切な生命だよ。だから…どんなことがあっても、御前たちが護って、倖せにしてあげなきゃいけない。それが、"親"としての、せめてもの役割だから、ね」
それは、"親"としての言葉。
「俺は、ゼゼやララの為に、たいしたことはしてやれていない。それは、自分でも認めているよ。情けないとは思う。でも…"親"としての立場を忘れたことはない。彼らが躓くようなことがあったら、自分の生命を削ってでも助けてやりたいと思っているもの。御前にも、それがわかる時が来ると思う。俺が大きなことを言えた立場ではないけれど…忘れないでいて欲しいんだ。"親"は、どんなことがあっても"親"なんだよ。子供たちにとっては、決して断ち切ることの出来ない絆で結ばれているんだと言うことを、肝に銘じて欲しい」
ゼノンのその言葉は、エースの胸に深く突き刺さる。
憎むなんて、一生あってはならないこと。だからこそ、そうなる手前にいたエースに、それだけは伝えたかったのだろう。
「…あぁ…わかった…肝に銘じる」
そうつぶやいた声を、心の中で繰り返す。
そう。決して忘れてはいけないのだ。自分自身が…"親"である以上。
エースの言葉に、ゼノンはふわりと微笑んだ。
「それじゃあ、今日はゆっくり休んでね。御前の体調を見て、調子が良ければ早速明日、決行するから。どうせ、のんびり待っているだなんてことは出来ないだろうからね」
「あぁ。頼むな。頼りは…御前だけ、だからな」
素直に頷いたエース。その言葉に、ゼノンは微笑みを返した。
昔に比べ、その性格は随分丸くなった。けれどその反面、自分自身に対しては無茶をすることも多くなったように思う。それがまるで、自ら身を滅ぼす方向へ向かっているように思えて…ゼノンも気が気ではないのだ。
ゼノンとて、医師として絶対ではない。その証拠に、この一ヶ月、どんな手段を使ってもデーモンは目覚めなかった。辛うじて生命を繋ぐ手立てしか施せない自分を、幾度無力だと思っただろう。
けれど、それでも。自分は、医師でなければならない。デーモンの生命を繋ぐ為に、精一杯の努力をすると誓ったのだから。今、その気力を失う訳にはいかないのだ。
それは、ゼノンの意地でもある。多分、エースもそれはわかっているはず。それでも尚、無理を言って頼らなければならない。
仲魔を追い詰め、それ以上に無力な自分をも追い詰める。この一ヶ月、誰もがそんな不安定な精神状態の中にいたのだ。
「…頑張ろうね」
そう発した言葉は…誰に対しての言葉だったのだろう。
全ては、明日にかかっている。
その日、エースは久し振りに定時に仕事を切り上げ、自分の屋敷に戻った。そして、使用魔にあやされ、御機嫌なエルを眺めながら、久し振りの休息を取ったのだった。
そして、その夜。エースの代わりにデーモンの屋敷を訪れたのは、医師たるゼノン。
「…明日、エースが迎えに行くって」
その枕元の椅子に腰を落とし、眠り続けるデーモンに向け、ゼノンはそう声をかける。
幾度、そうして声をかけただろう。それでも目覚めることのない仲魔の姿は、絶望すら感じさせた。
しかし、その生命はまだ途切れてはいない。デーモンもまた、必死に生きようとしているのだ。そんな姿が尚更のこと、エースには辛いのだろう。
小さな溜め息を吐き出し、言葉を続ける。
「…ねぇ、デーモン。聞こえて…いるんでしょう?俺たちの声。だったら…早く、戻って来てくれないかな。エースもそうだけれど…俺も、結構苦しいんだ。決して、希望がない訳じゃない。けれど、御前がそうして眠っている間は、誰もが不安に包まれているんだ。勿論、この俺だって。御前を助けたい気持ちは変わらないよ。でも…御前が、それを拒んでいるようにも感じるんだ。そんなことはないってわかっているけれど…不安、だよ…」
椅子に腰掛けたまま、身体を小さく丸め、両手で頭を抱えるゼノン。いつも通りの服装の為、パッと見はわからないが…彼もまた、この一ヶ月で随分痩せた。忙しさと不安に、ゆっくり休息を取れていないのはエースと同じ。その姿は、不安に苛まれている姿に他ならない。
他の誰にも見せることは許されない姿。眠ったままのデーモンの前だからこそ、そうして不安な心を晒け出すことが出来るのだ。
「…御免ね、こんな弱気な医者で。でも…精一杯のことはするよ。エースに…約束したんでしょう?待っていてくれ、って。だったら…戻って来ないと駄目だよ。エルだって…まだちゃんと抱いてないでしょう?もう随分成長しているよ。だから…早く、戻って来て…」
一筋、はらりと頬を伝った涙を掌で拭い、気持ちを落ち着かせるように大きく息を吐き出す。
弱音を吐き出すのは、もうこれでやめよう。そんな思いを込めて。
「…明日。待っていてよね。必ず、エースが行くから。必ず…見つけ出してあげるからね」
----そう、必ず。
ゼノンは、軽く微笑んだ。そしてデーモンの頭をそっと撫でると、踵を返して寝室を出て行く。
運命の朝は、もう直だった。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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