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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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檀香 伽羅~序章 3

第四部"for PARENTS" (略して第四部"P")

こちらは、以前のHPで2006年02月26日にUPしたものです。
第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
5話完結 act.3

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◇◆◇

 その日の朝早く。まだ、日も昇らないそんな時間に、エースはふと目を覚ました。
 誰かに、呼ばれているような感覚。勿論、声が聞こえる訳ではない。ただ、そんな感覚があるだけで。
 目を伏せ、耳を澄まし、その感覚の発信源を探る。
 最初は、デーモンが呼んでいるのかと思った。けれど、微妙に何かが違うのだ。他の誰かが、エースを呼んでいるのだ。
 身動ぎもせず、感覚を研ぎ澄ませて意識を飛ばす。すると、屋敷の中に引っかかる"何か"を見つけた。
「…誰、だ…?」
 今まで感じたことのない感覚。それも、消えてしまいそうなくらいか細い。
「…まさか…」
 エースはそっとベッドを抜け出すと、そのか細い感覚を探りながらドアを開ける。そして薄暗い廊下へ出ると、再びその感覚を探る。そして、辿りついた先は…。
「…エル…?」
 そこは、エースの自室の隣…エルの部屋として用意した場所。そしてそこにいるのは、我が子たるエルに他ならないのだ。
 そっとドアを開けて部屋に入り、ベッドでぐっすりと眠っている我が子に視線を落とす。
「…御前…なのか…?」
 問いかけた声に、帰って来る言葉はない。けれど、確証はあった。
 エルが、何かを訴えている。それが何かはわからないが…何かがあるような気がして。
 奇妙な感覚は、ずっとエースの意識に纏わりついていた。

◇◆◇

 日が高くなり、エースはゼノンから連絡があった通りの時間に、デーモンの屋敷を訪れていた。
「おはよう。顔色はだいぶ良いね」
 エースより先に来ていたゼノンは、エースの顔を見るなりにっこりと微笑む。
「一応な。御前に言われた通り、昨日は定時で上がってゆっくり休んだからな。久し振りに自分のベッドで眠ったな」
 小さな笑いが零れるのも久し振り。いつもよりも、ほんの少し気持ちが楽になったと思えたのは…もう直ぐ、デーモンに会えるかも知れないと言う希望からか。
 そんなエースの姿は、ゼノンに安心感も与えていた。
 これなら、何とかなるかも知れない。きっと…デーモンの意識を、見つけて来てくれるだろう、と。
「…じゃあ、御前の体調も良さそうだし…そろそろ始めようか」
 そう声をかけると、エースの表情がすっと引き締まる。
「…あぁ」
 短く返事を返し、大きく息を吐き出して呼吸を整える。そして、ゼノンと共にデーモンの寝室へと向かう。
 そこには、いつもと変わらずに眠り続ける最愛の姿。
 未だ閉ざされたままの瞳が、開く気配は全くない。けれど、それも今日までだと自分に言い聞かせ、エースはすっとデーモンの傍へと歩み寄る。
「一応、気を保つ為に結界を張るよ。御前は、デーモンの意識に同調して貰う。まぁ、そうは言っても、デーモンの意識自体が落ちてしまっているから、暗闇の中に落とされるようなものだと思うけれど。その中で、デーモンの意識を探せる?」
 自分自身の気を高めながら、簡単に方法を説明するゼノン。そして、最後に問いかけた声に、エースが頷く。
「見つけてみせるさ」
 力強いその言葉に、ゼノンは小さく頷いた。
「わかった。じゃあ、御前に託すから。でも、あくまでも他悪魔の意識の中、だからね。御前の気力がいつまで持つかわからないけれど…あまり長い時間がかかって、俺の判断上もう無理だと思ったら、力尽くでも引き戻すよ。良いね?」
「…あぁ。その時は、な」
「それじゃ、準備をしようか」
 もしもの時の手段の了解を得ると、ゼノンは再び気を高め、呪を口にする。
 結界が張られ、その中でエースは静かに眼を閉じた。
 もう直ぐ、最愛の恋悪魔に会える。それだけを、信じて。
「念の為、御前の意識に命綱を付けるよ」
 結界を張り終えると、ゼノンは用意していた針で自分の指を刺し、溢れて来た血でエースの額に血印を結んだ。こうしておけば、いざと言う時にその血印が命綱となってくれるのだ。
「さ、準備は終わったよ。後は、御前に任せる。頑張って、見つけ出して来て」
「了解」
 にっこりと微笑むゼノンに見送られ、エースは再び目を閉じる。そして、デーモンの額に手を置くと、デーモンに同調するようにゆっくりと意識を合わせて行く。
 そして、エースの意識がデーモンの意識に完全に溶け込んだのを確認すると、ゼノンも目を閉じ、己が結んだ血印を追うかのように気を高める。
 何事もなく、デーモンの意識が見つかれば良いが。
 そう願いながら、ゼノンは自分の役割を果たすしかなかった。

 デーモンの意識の中は、予想通り真っ暗だった。
「…この闇の何処かに…いるのか?」
 目を開けていても閉じていても同じくらいの漆黒。その中で、エースは肌を刺すような鋭い気を感じつつ、目を閉じてデーモンの気配を探した。
 当然、そこはデーモンの意識の中である。辺りは全てデーモンの気配と言っても過言ではない。けれど、エースが探しているのは唯一つ。
 現世に戻りたいと言う、デーモンの"想い"、だった。
 どのくらいの時間が経っただろう。それすらも全くわからない中、エースは気を飛ばし続けた。けれど、目的の気配は見つからない。
「…戻りたくないと…言うつもりか?」
 呼吸が苦しくなり始め、大きく息を吐き出して目を開ける。闇の中には何も見えない。その暗闇が…デーモンの"想い"なのだとしたら。初めから…現世に戻るつもりなどなかったのだとしたら。それは、当然存在しないもの。幾ら懸命に探したところで、当然見つかるものでもない。
 けれど…そうは信じたくなかった。待っていてくれ、と言った以上…デーモンは必ず、現世に戻ろうと願っていたはず。自分の元へ…そして、生まれたばかりの我が子の元へ、帰ろうとしていたはず。
 ならば、何故その"想い"が見つからないのだろうか?
「…デーモン…何処にいるんだ…?」
 予想外の展開に心が乱れ、呼吸は更に苦しくなる。そして、自分を包んでいる意識がどんどん冷たくなって来るような感覚。当然、エースの身体も熱を奪われているようで、背筋を伝う汗が酷く冷たい。
「…おい…答えろよ……御前は……何処にいるんだ……?デーモン……」
 つぶやく声も、闇に溶けて行く。
 最早、それ以上探し出せる気力は、エースには残っていなかった。
『…エース……戻すよ…』
 遠くで、聞き慣れた声が響く。その瞬間、エースは有無を言わさず現世へと引き戻されていた。
 そして、暖かな現世の気に触れた瞬間、エースの意識も闇に落ちていた。

 エースの気力が尽きる寸前で現世に引き戻したゼノンは、戻って来た瞬間にエースの意識が落ちたことはわかっていた。けれど、今のデーモンの状況とは違うことはわかった。
「…やっぱり…見つからなかったか…」
 小さな溜め息を吐き出したゼノンは、横たわるデーモンの上に折り重なるように意識を失ったエースを抱えあげると、近くの客間のベッドへと運ぶ。そして、悲痛そうな表情を浮かべたまま意識を失ったエースの顔を眺めつつ、再び溜め息を吐き出した。
 実のところ…エースには言っていないが…ゼノン自身も、幾度かデーモンの意識を探しには行っている。その度に見つけることが出来ずに戻って来ていたが、エースなら自分が見つけられなかったデーモンの意識を見つけることが出来るのではないかと、そんな些細な期待を抱いていたのだ。
 けれど、その期待も無残に打ち砕かれた。
 デーモンの意識は、肉体には残っていない。最早、それは確証とも言えた。そうでなければ…エースが、見つけられないはずはない。
 がっくりと肩を項垂れ、枕元に置いた椅子に腰を落とすゼノン。
「…何処に…いるんだろう……生命は尽きていないんだから、何処かで存在しているはずなのに…」
 大きく溜め息を吐き出しつつ、両手で顔を覆う。
 デーモンの鼓動は、確かに生命の存在を示している。けれど、その意識が戻らない限り、"生きている"ことの意味さえわからなくなるのだ。
 事に、デーモンの存在を尤も必要としているエースの憔悴さを目の当たりにする度に、一刻も早い目覚めを望んでいるのに。それを足蹴にされた気分で、ゼノンの落ち込みも相当なものだった。
 ゼノンの気力も、もう、限界だった。


 どのくらいの時間が過ぎただろう。エースが目を開けると、既に夕闇が迫って来た部屋の中は薄暗くなっていた。
「…ゼノン…?」
 頭を巡らせると、枕元にゼノンの姿がある。薄暗い部屋の中、俯いているゼノンの表情は良く見えない。けれど…尋常ではないような気がして。
「…おい、大丈夫か…?」
 自分のことは扠置き、不安に駆られたエースは、ベッドから上体を起こしてそう声をかける。その声に、ゼノンは小さく微笑んだようだった。
「…大…丈夫…」
 そう返したものの、その声は酷く沈んでいる。
「大丈夫って声じゃないぞ。御前も少し休んだ方が…」
 けれど、ゼノンはその声に首を横に振った。
「休んでいる場合じゃないもの。デーモンを、捜さないと……」
「ゼノンっ!」
 ゼノンの声を遮るように、エースは声を上げ、その腕を掴む。
 驚くほど痩せたその腕。その現実に気づき、真っ直ぐに見つめた視線の先には…今にも泣き出しそうな表情のゼノンがいる。
 エースは大きな溜め息を吐き出すと、きつく唇を噛み締めるゼノンを見つめたまま、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「…何してんだよ、御前は……医者の不養生にも程がある。昔も…こんなことがあったな。御前は、全ての責任を、全部自分で背負い込もうとする。御前の責任じゃなくても、医師として、何とかしなければって思い込む。それが、御前の悪い癖だ。デーモンが見つからなくても、それが御前の責任か?違うだろう?御前には、何の責任もない。俺たちに無断で、勝手に出歩いているデーモンがいけないんだ。意識はなくても、身体はちゃんと生きている。慌てなくて良い。俺も、大丈夫だ。だから…御前もゆっくり休まないと」
「…エース…」
「俺は、希望を捨てた訳じゃない。必ず見つけ出す。そう、誓ったんだ。彼奴だって、戻って来ると約束したんだ。だから…御前はもう自分の屋敷に戻れ。昨日、俺に言っただろう?御前がそんな顔をしていたら、かえってデーモンに心配をかけるだけだ。ゼゼだって、不安になる。だから、今日は早く休むこと。良いな?」
 小さく微笑み、エースはゼノンの頭をポンポンと軽く叩いた。
 不安で一杯なのは、エースも同じ事。けれど、今のゼノンの前では、エースも見栄を張らざるを得ない。
 疲れが溜まっているのは、ゼノンも同じこと。医師としての責任と焦りの板挟みで、その精神力は、恐らくエース以上に憔悴しているはず。その上、魔界に降りて士官学校に入ったはずの子供も、精神的なダメージから今は休学してゼノンの屋敷で療養しているはず。
 だからこそ、これ以上巻き込んではいけない。
「…さ、帰ろう。デーモンのことは、使用魔たちがちゃんと見ていてくれる。俺も屋敷に戻るから、御前も真っ直ぐ帰るんだぞ」
「……わかったよ…」
 小さな溜め息を吐き出し、ゼノンも屋敷に帰ることを了承した。
 自分の精神力を保つ為に。他悪魔に言われなければ、気づかないふりをして、限界以上に走り回ろうとする。それは、エースだけではなく、ゼノンも同じことだった。
 エースはベッドから起き上がると、手を引いてゼノンを椅子から立ち上がらせる。そしてそのまま、客間を出て行く。
「…大丈夫でらっしゃいますか…?」
 心配した使用魔の声に、エースは小さく微笑みを返した。
「…大丈夫。俺たちのことは心配しなくても良い。だから、デーモンのこと…頼むな。今日はまだ目覚めなかったが…また必ず、起こしに来るから。デーモンの奴、寝起きが悪くていけないな」
「…エース様…」
 いつになく、気丈な姿。それは、使用魔たちにとっても支えとなった。
 必ず、目覚めるはず。誰もがそう信じていた。

◇◆◇

 ゼノンが寄り道をしないように、屋敷まで送り届けたエースは、そのまま自分の屋敷へと戻って来ていた。
「御帰りなさいませ」
 使用魔はエルを抱きかかえ、にこやかに出迎える。
 と、エルのその首元に何かが見えたような気がした。
「…何だ…それ?」
 手を伸ばし、エルの首元に触れる。
 それは、ネックレスの鎖、だった。
「御守りのようですよ。首に絡まっては危ないかと、念の為アイラ様に聞いてみたのですが、閣下から頼まれていたのだとか。自分に何かがあったら、産まれて来る我が子の御守りとして肌身離さずにいるように、と…」
「…御守り?」
 怪訝そうに眉を顰め、エースはその鎖を手繰り寄せた。
 鎖の先には、小さな布袋がぶら下がっている。正に御守袋そのもの。その中には、何か固いものが入っているようだった。
「…まさか…」
 袋の外側から手で触った感触に、エースは小さく息を飲んだ。
 そして、エルの首からそのネックレスを外すと袋を開け、中身を自分の掌の上に落とした。
「…それは、閣下の…」
 エースの手元を見つめていた使用魔も、その存在に息を飲む。
 当然、エースも目を見開いて自分の掌を見つめていた。
 そこにあったのは、エースがデーモンに送った指輪。デーモンが御守りとして、生まれ出る我が子に託したものだった。
「…一ヶ月もの間…気付かなかったとはな……俺も馬鹿だな…」
 大きな溜め息を吐き出し、エースはデーモンの指輪を握り締める。
 デーモンが、エルに大切な指輪を託した理由。それが、ぼんやりとだがエースにもわかりかけていた。
 誰の為の"御守り"なのか。"それ"を肌身離さず身に着ける意味を…ここに来て、初めて気が付いた。
 もっと早く、それに気がついていれば。そうすれば、自分も、ゼノンも、ここまで追い詰められてはいなかっただろう。
 全ては、エルに近付かなかった自分の責任。
 エースは再び大きな溜め息を吐き出すと、指輪を元の通りに袋に入れ、エルの首にかけた。
「…御免な…エル…」
 小さくつぶやき、エルの頭にそっと手を乗せる。
 僅かに歪んだエースの表情を、エルは首を傾げ、不思議そうに見つめていた。

 その夜は、エースは一睡も出来なかった。
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趣味は妄想のおバカな物書きです。
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