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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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檀香 伽羅~序章 4

第四部"for PARENTS" (略して第四部"P")

こちらは、以前のHPで2006年04月02日にUPしたものです。
第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
5話完結 act.4

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◇◆◇

 その夜。その屋敷の中はしんと寝静まり、物音一つ聞こえない。
 その闇に紛れるように、静かに廊下を進む姿。それは、この屋敷の主に他ならない。
 目的の部屋の前へ辿り着くと、気配を殺しながらそっとそのドアを開ける。そして、自分が通り抜けられるだけの隙間を作ると、身体を滑り込ませ、後手にドアを閉めた。
 闇の中に差し込む月明かり。その僅かな光で、その部屋に眠る姿を確認する。
 主は、ぐっすりと眠る姿に手を伸ばし、その掌を額に押し当てる。そして、目を閉じると、そっと意識を同調させ始めた。
 そこに、必ず何かがある。それは、最早想像ではなく、確信だった。
 ゆっくりと、意識を合わせる。そして、その意識に自分の意識を溶け込ませる。見えるものは、漆黒の闇。けれど、その中で何か小さな声が聞こえた。
 誰かが、泣いているような…ほんの、微かな囁き。
----…誰、だ…?
 主は、その泣き声の主を探す為に、更に意識を鋭く尖らせる。
 微かに感じるのは、不確かな波動。そして、それに連動するような泣き声。それは、以前感じた、あの何かを訴えるような、呼びかけに近い。
----…エル…か?……いや、違うな…
 我が子に呼ばれた時のような感覚に近いものの、それだけではない何かがある。
 主は、その波動が発せられる方へと、意識を飛ばす。波動の感覚が近くなるにつれ、泣き声もはっきりと聞こえるようになる。
 そして、辿り着いたのは…漆黒の闇の中に、大きく聳える壁。その壁の向こうから、例の波動と泣き声は流れて来る。ぐるりと回ってみると聳え立つ壁は箱のように四方と上部まで囲まれており、主の意識はどうしてもその壁を越えることは出来ない。
----…封印壁の箱…?
 我が子の意識の中に、何故こんな壁が聳え立っているのかはわからない。そして、その向こうに何があるのかも。
 主は、改めて闇に閉ざされた意識の中でぐるりと周囲に気を張り巡らせる。
 他に、捕らえられるモノは何もない。それはある種、奇妙でもある。
 眠っているとは言え…我が子の意識が、闇に落ちているのだから。
 それは…昼間見た、最愛の恋悪魔の意識と同じ。意識のない状態で、我が子は眠っているのだ。以前から、夜は良く眠って全く起きないと聞いてはいたが…道理で、夜は目覚めない訳だ。
----何だ…これは…
 全てが、可笑しかった。通常有り得ない感覚は、主の意識を混乱させていた。
 朝になれば、我が子はいつもの通りに目を覚ますのだろう。目が覚めた時に…この壁は、どうなっているのだろうか?
 答えは、一つも見つからない。けれど、そこに何かがあることだけは確かだった。

◇◆◇

 翌朝早く。エースは、雷神界にやって来ていた。
「…どうしたの?こんなに早くに…」
 欠伸を噛み殺すように言葉を発するのは、雷帝たるライデン。執務室ではなく、王宮の自室に訪ねて来ているのだから、そんな無防備な姿を見せられても不思議はない。
 確かに、まだ職務が始まる時間までかなりある。尤もエース自身、昨夜は一睡もしていないのだから、その辺りの感覚は多少ずれてきているのだろう。
「あぁ…ちょっと、相談があってな」
「相談…?」
 こんなに朝早く、わざわざ雷神界に訪ねて来てまでの相談とは、尋常ではない。自然と、ライデンの表情も引き締まる。
「…協力、して貰いたいことがあるんだ」
 そう切り出したエースに、ライデンは僅かに首を傾げる。
「それは…情報局の長官として?それとも…あんた、個悪魔として…?」
 魔界からの直接的な協力であるならば、考慮しなくてはならないことが沢山あるのだから、簡単に答えを出すことは出来ない。けれど、エース個悪魔としての頼みごとならば、話は違う。仲魔として、自分に出来ることならば手を貸してやることぐらいは簡単なのだから。
「あぁ…俺個悪魔として。魔界は関係ない」
 エースも、ライデンの意向がわかったのだろう。小さな溜め息を吐き出すと、そう付け加える。
 そして、改めてライデンと向かい合った。
「…御前、封印の解除は出来るよな…?」
「はい?封印の解除?そりゃ、出来るけど…何で?」
 思いがけない言葉に、ライデンは眉根を寄せて首を傾げる。
 封印の解除ぐらいなら、エースでも出来るのではないだろうか?それに、もし、エース自身が絡むことで、自分で出来なくても、魔界にはルークもゼノンもいるはずなのに。どうして、わざわざ雷神界まで足を運んだのだろう?
 そんな疑問が、その表情でエースにも伝わったのだろう。再び溜め息を吐き出すと、言葉を続けた。
「ルークは、シリウス様の教育係で忙しい。ゼノンは…精神的に参っている。だから、今は無茶をさせたくない。俺が関わることだから、俺自身の手では封印解除が出来ない。だから、御前に頼みに来た」
「…ゼノン、また参ってるの…?」
 目一杯まで追い詰められて、初めて表面上に現れて他悪魔に指摘される。そこまで、自分を隠し通す伴侶の姿は相変わらずであるが…以前も同じことが起こり、その後、想像もしていなかった手段を取った伴侶に、不安の色を隠し切れないライデン。けれど、エースは小さく首を横に振った。
「参っていることは参っているが、今回は彼奴が罪を背負うようなことはない。だから、前回のようにはならないはずだ。勿論、そんなことが繰り返されないよう、俺も気をつけるつもりでもあるし、何より…ゼゼや、御前たちを置いて、何処へも行けないだろう?だから、そんなに心配しなくても大丈夫だと思う。ただ、今無理をさせたくないだけだ」
「…なら、良いけど…」
 そうは言われても、不安に越したことはない。ゼノンをそこまで追い詰める原因を解消させない以上、何の解決にもならないことは目に見えている。
「…で、何の封印を解除するつもりなの…?」
 まずそれを聞かないことには、自分一名の力量に合うかどうかもわからない。わざわざここまで頼みに来る理由の一つも、そこにあるのではないか。そう思いつつ、怪訝そうに問いかけてみる。
 すると、エースの表情が僅かに変わった。
「…この間から、夜中になると何かに呼ばれているような気がしていたんだ。夕べ、エルの意識を探ってみた。そうしたら、その意識は…全くの闇、だった。その中でたった一つ見えたものが、封印壁の箱、だ。そこに、何かがある。だから、解封してみようと思ったんだ。他に協力を頼めるヤツもいないから、ここまで足を運んだ」
 その表情は、真剣そのもの。何かの確証を得ていることに、間違いはなさそうである。
「理由はわかったけど…それって、本当に、解封して良いものなの?」
 心配そうに問いかけるライデンに、エースは小さく吐息を吐き出して、首を横に振る。
「あの封印壁の箱を壊してしまって良いものかは、俺にも正確にはわからない。ただ…泣いて、いるんだ。封印壁に囲まれた意識の中で。呼ばれているのもわかっている。それが、エルなのか、他の第三者なのか…それはわからないが、産まれて間もないエルの中に、見知らぬ第三者がいるとは、到底思えない。もし、いるとしたら……」
「…デーさん…?」
「…その可能性は高いんじゃないかと思う。何より…俺も知らなかったことだが…アイラが、自分にもしものことがあったらエルに託して欲しいと、デーモンから指輪を預かっていたらしい。エルは、デーモンの意識が落ちてからずっと、その指輪が入った御守りを首からぶら下げていた。デーモンの肉体の中に、彼奴の意識を見つけられなかった。そして、エルもまた…夜、泣くことが全くなかった。御前も知っているだろうが、生まれたばかりの赤ん坊なら、通常はそんなことはないはずだ。つまり、エルも…夜だけだが、意識が落ちているということだ。本能なのかどうかはわからないが…多分、抱え込んだモノを護る為に、それが最善策だったんだろう。今なら、その理由もわかる気がする。全部、辻褄が合う」
 そう言ったエースの表情は、やっと辿り着いた、と言う思いで一杯だった。
 確かに、エースの言う通り、産まれてから外部と接していないエルの中に、見知らぬ第三者がいるとは考えられない。とすれば、可能性は限られて来るのだから。
「…ゼノンには、そのことは話したの?」
「いや。俺も封印壁の箱に気がついたのは夕べだったしな。休息を与えたのに、わざわざ奪う必要もないだろう?ダミアン様には、雷神界に来る必要性があるから、簡単に説明はした。他には、傍近くにいる使用魔たちにも誰にも話してはいない。全く、俺の独断だ」
「そう…」
 ライデンも、デーモンのことに対しての、エースの判断が間違っているとは思わない。ただ…本当にそれでデーモンが目覚めることが出来るのかどうかの不安は、払拭することが出来ずにいた。
「…いつ、決行するつもり?」
 そう、問いかけてみる。
「出来るなら、なるべく早く」
 エースにしてみれば、それは当然の答え。
「ねぇ…ゼノンに話しちゃダメ…?」
「ライデン…」
 当然、エースは眉を顰める。それでもライデンは、譲れない想いがあったのだ。
「御免。あんたの言いたいことはわかるよ。追い詰められて、疲れ果てたゼノを巻き込みたくないって想いは、俺だって同じだもの。でもさ…俺の解封が上手くいかなかったり、もし俺たちの想像もしないことがあってからじゃ、遅いでしょう?約束通り、儀式は俺がやるよ。ただ、それを見届ける役割として、ゼノンの参加は必要不可欠だと思う。自由に動けるヤツが一名ぐらいいないと……。ルークでも良いけど、多分ゼノンの預かり知らないところでそんなことをやろうものなら、きっと怒るよ。デーさんのことは、ゼノンもずっと関わって来た訳でしょう?なのに、いきなり蚊帳の外、っていうのは納得いかないだろうしさ……。ね?見届けるだけの役割だからさ。絶対無茶させないから…っ」
 それは、本来ならば当然の処置のはず。まだ産まれて間もないエルが関わる以上、危険を伴う可能性もある。医師として、また、術師としてのゼノンが立ち会うべきなのだ。
 勿論、ゼノンに休息を、と願うエースの気持ちも、ライデンには痛い程わかる。ゼノンはライデンの最愛の伴侶なのだから、そう願うことは尚更のこと。
 けれど、事が事だけに、やはりある程度の保障も必要なのだ。
 そう思うようになったのは…彼が、一国の主として、成長しているから。
 大きな溜め息を吐き出したエース。けれど、迷っている時間は勿体無い。一刻も早くと望んだのは…誰よりも、自分自身なのだから。
「…わかった。御前の言う通りにしよう」
 それが苦艱(くかん)の決断だったことには間違いない。だが、何よりも安全を考えるならば、ライデンの言うことは尤もなのだから仕方がない。
「御免ね…?」
 眉根を寄せたエースの表情に、ライデンは申し訳なさそうに声をかける。勿論、だからと言って引くつもりはないが。
「いや…頭の何処かでは、わかってはいたんだ。その気になりさえすれば、俺一名だって出来ないことはなかったのかも知れない。それを、御前に頼んでいる時点で、俺も少しでも安全な方を選んだのだからな」
「エース…」
 エースが焦っている気持ちは、とても良くわかる。だから尚更…申し訳ない気分になる。
 僅かにそんな表情の覗いたライデンを見て、エースは小さな笑いを零した。
「…そんな顔するなよ。御前が言っている事の方が正しい。俺が、焦り過ぎた。ゼノンの様子を見て、出直して来る」
 大きく息を吐き出し、気持ちを整える。
 そう。焦り過ぎた自分がいけない。ゼノンの回復を待ってからでも、遅くはなかったはず。だから、ライデンの言う通り。それで良いのだ。
 幾度も、心の中でそう繰り返す。そうして、自分自身の気持ちの整理をする。
 そんなエースの姿を見つめつつ、ライデンは小さく溜め息を吐き出した。
 無理にゼノンの協力を要請したものの…尚更、エースを追い詰めてはいないだろうか。
 そんな思いもなくはない。ただ…最悪の事態だけは、免れなければと言う思いで一杯だった。
「…ねぇ、エース…」
 こちらも大きく息を吐き出したライデンは、精一杯の笑顔を見せる。
「あんたも、休んで行きなよ。雷神界は、魔界みたいに色んなものはないけど…良い景色もあるし、のんびり出来るよ。あんたも、寝てないんでしょう?だったら…ここで、休憩して行きなよ。ね?」
「…ライデン…」
 にっこりと微笑んだ笑顔の中に、ライデンの精一杯の思いを感じ取ることは出来る。
 自分にも、休息が必要なのかも知れない。多分、この間ゼノンに言われた通り…こんな疲れた顔では、デーモンに心配をかけるだけ。
「…あぁ…そうしようかな」
 ほんの少し、張り詰めていた気を解放してやろう。そうすれば…きっと、上手く行くから。
 そんな思いで零した、小さな微笑み。その顔に、安堵の表情を浮かべたライデン。
「直ぐ、部屋用意させるね。のんびりして行って」
「あぁ。有難う」
 慌てて踵を返すライデンの背中を見送り、エースは大きく息を吐き出す。
 ここに来たのは、間違いではなかった。
 微やかな休息は、彼らに鋭気を甦らせた。
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