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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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檀香 伽羅~眩耀(前半) 前編

第四部"for PARENTS" (略して第四部"P")

こちらは、本日UPの新作です。
第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;

拍手[2回]


◇◆◇

 琥珀色の、真っ直ぐな眼差し。
 その瞳には、何が見えているのだろう…?
 口数も少なく、滅多に表情を変えない。大人しい、と言えば聞こえは良い。だが言い方を変えれば…無口で、感情表現が乏しい。その顔を見て、感情が見えない。それは…子供としては、どうかと思う。
 そんな不安が過ぎるものの…片手間に出来るほど、育児は甘くはない。
 物言いたげな眼差しを背中に感じつつ…仕事に追われる日々は続いていた。

◇◆◇

「…ただいま」
「エース様、御帰りなさいませ」
 日付が変わってからの帰宅。玄関以外の明かりは控え目に、迎えに出る使用魔も一番の古株、使用魔長のティム一名のみ。
「御前も別に毎晩待っていなくても良いのに」
「そうはいきません。この屋敷の主ですから。他の者は先に休ませましたが、わたくしは御出迎え致しますよ」
 にっこりと笑ってそう言われ、主たるエースも苦笑いをするしかない。
 一日の報告を聞き流しながら、自室へと向かう。そして、自室までついて来たティムは、エースの着替えが終わるまでその報告を続け…そして、洗濯物を手に、頭を下げ、部屋を出て行った。
 漸く、一名になれた。そんな小さな溜め息を吐き出すと、一旦廊下へ出て隣の部屋へと向かう。
 薄暗い部屋の中。小さなヘッドライトの灯るベッドに眠る、まだ小さな我が子の姿。枕元の床に座り、ベッドに凭れるようにその顔を覗き込む。そして、そっとその柔らかな金色の髪へと手を触れた。
 このところ…起きている姿は殆ど見てはいなかった。朝は子供が起きる前に出かけ、夜は子供が寝てから屋敷に戻る。そして、ここでこうして暫くその寝顔を眺めてから微々たる睡眠を取る。自分の休息など…完全に後回し、だった。
 こんな生活が…どれくらい、続いているのだろう…?少なくとも…生まれたばかりの小さな赤子に物心がつき、独りで歩き、言葉を喋り始める。そこに至るまで、続いていた。
 だが、ここまで遅い帰りになったのは、ここ最近のこと。
 愛しい恋悪魔の、体調が優れない。
 少し体調を崩しただけ。最初は、そう言っていたはず。けれど、子供が生まれる前に判明した、恋悪魔が背負った運命。体力も気力も、今以上に満ちることはない。その寿命は…誰よりも、短いことがわかった。
 勿論、今直ぐに急変する訳ではない。けれど、体調を崩せば直ぐに危険が隣り合わせになる。如何に安定した体調を維持するか。それが、急降下を防ぐ為の最善策。
 常に気を付けていたにも関わらず、今…また、職務を休まなければならないくらいに体調を崩していた。子供を産んでからは、かなり不安定な体調が続いているのは確かだった。
 だからこそ、朝早くから登庁して職務を熟し、仕事を引き上げてから毎日必ず恋悪魔の顔を見に屋敷へ寄り、それからの帰宅。それでは当然、起きている子供の顔を見る余裕などない。だが、ここに帰って来れば…自分が寝付くまで、こうして寝顔は見ていられる。
 今は、それが精一杯。時間を最大限に有効活用するには…それしか、なかった。
「…御免な、エル…」
 小さな、手を握る。暖かな温もりは、愛しいと同時に…とても、申し訳ないと思う。
 仕事でなら、幾らでも上手く立ち回れる。今まで育てて来た子供たちも、言葉を喋り、理解も出来、自分で動ける子たちだったので、特別苦労はなかった。だが、こんなに小さな子供相手には…どうにも、不器用で仕方がないと実感している。そして、こんな自分が…本当に親になっても良かったのだろうか、と常に不安は過る。
 思考が暗い。流石に、疲れ溜まって来た証だろう。明日は、久し振りの休み。そう思ったら…不意に、睡魔が襲って来た。
 大きな、欠伸が零れた。そして、自然と瞼が下りる。
 ベッドに凭れたまま…束の間の休息へと、意識は落ちて行った。

 何か、暖かくて小さいものが、ペタリと頬に触れた感覚。そしてそれと同時に、遠くで、声が聞こえる。
「……と………ぉと…」
----…呼ばれて……
 途端、ハッとして目を開ける。辺りはすっかり明るくなり、慌てて顔を上げるとそこにはベッドの上で、真っ直ぐに自分を見つめる、琥珀色の透き通った眼差し。
「とぉと?」
「…エル…」
 色々なことを喋るようになったのは聞いていた。けれど、改めて考えてみると…呼びかけられたことは、なかった。
「…とぉと?」
 小さく首を傾げ、顔を覗き込む姿。そして再び、ペタペタと顔に触れる柔らかい掌。その愛らしい声も…そんな仕草も、初めて見た気がする。
 半ば茫然とその姿を見つめていると、小さなノックの音と共にそのドアが開かれた。
「エル様、おはようございます。エース様も。昨夜はこちらでしたか」
 くすくすと笑うティムは、ベッドの上でくるりと身を翻し、彼女に向けて手を差し出したエルを抱き上げる。
「エル様、今朝は御機嫌ですね。エース様も朝食の御用意が出来ておりますよ」
「あぁ…シャワー浴びたら行くから」
 先にエルを抱いて出て行く背中を見送り、大きな欠伸を一つ零したエース。
 思いがけない目覚めではあったが…悪い気はしない。
「…とぉと、か…」
 誰が教えたのかは知らないが…まさか、そんな風に呼ばれているとは思っておらず。喋れるようになってからどれくらい経っているのかすらわからない。
 親として…情けない限り。
 溜め息を零しつつ、エースはシャワーを浴びると階下へと降りて行った。
 ダイニングへ行くと、食事中のエルと、傍で見守る使用魔の姿。
 時々手伝いをされながらも、独りで上手に食べている。だが…時々エースの顔を見ながらも、ほぼ無言。
「先ほども申しましたけれど、今朝はとても御機嫌ですよ。エース様がいらっしゃるからですね」
 ぼんやりとその姿を眺めていたエースに、背後からティムが笑いながら声をかける。
「…そんなに違うのか?ちっとも喋らないが…」
 椅子に腰かけながら問いかけた声に、ティムはコーヒーのカップを置きながら、エルへと視線を向ける。
「今日は良く御食べになっていらっしゃいます。普段はもっと、食が細いのですよ。手伝っても残されることが多くて。食事中に限らず、言葉はだいぶ覚えて参りましたが、必要以外の御喋りは余り致しません。いつも、御報告しておりますよ?」
「…そう、か…」
 そう言えば、毎日帰って来ると玄関から自室まで、ずっとティムの報告が続いていた。疲れもあり、何気なく聞き流してしまっていたが…どうやら、エルに関しての報告だったようだ。食事の量を始め、どれだけ言葉を覚えただの、どれだけ歩けるようになっただの…日々、良く見ていてくれている。それを聞き流していたのは、エースの失態だった。
「そう言えば…朝、『とぉと』って呼ばれたんだが…誰が教えたんだ?」
 ふと思い出したことを問いかけてみると、ティムがにっこりと笑った。
「勿論、我々です。普段殆ど御会いになれませんが、顔を忘れてしまってはいけませんから。まだ"父様"とおっしゃるには難しいようで、『とぉと』になったようです。ちゃんと、エース様のことですよ?」
「………」
 ほんの少し…呼ばれ慣れない言葉に、エースが赤くなる。
 そんなエースの姿に、ティムは言葉を続けた。
「たまには…エル様と一緒に、御出かけなど如何ですか?折角の御休みですもの」
「出かける、って何処に…」
 折角の休みならば、屋敷でのんびり…といきたいところなのだが…と思いつつ、エルの姿に視線を向ける。
 食事はほぼ終わり、話がわかっているのかは不明だが…じっと、エースとティムの会話を聞いているようにも見える。
「デーモン様の御屋敷は如何ですか?少し体調が宜しくなったと伺いました。デーモン様も、エル様に御会いになりたいのでは?」
「…俺のいない時に、ちょいちょい連れて行ってるらしいじゃないか。アイラから聞いてるぞ?」
「当たり前です。デーモン様の御顔も忘れてしまっては大変ですから。デーモン様が動けないのであれば、こちらから出向くのは当然です。このところは、御身体が優れないようで遠慮しておりました。ですが、本来ならエース様が連れて行くべきでは?我々はあくまでも使用魔です。エル様の御世話もエース様の御世話も労を惜しみませんが、外へ連れて出るとなると、いざと言う時には柔い盾くらいにしかなりませんよ」
 流石、古株のティム。エースに諭すのも御手の物。
 エースの屋敷の使用魔は、それなりに魔力の高い者も多い。ティムも勿論、結界を扱うことは出来る。けれど、攻撃を返す、となると更に高い呪術も要求される。やれと言われて出来ないことはないだろうが…流石にエースもそこまで要求するつもりはない。
「わかったよ。俺が連れて行くから。たまにはみんなでゆっくり御茶でも飲んで、休んでくれ」
 その言葉に、ティムを筆頭にそこにいた使用魔たちが皆にっこりと笑顔になる。いつもそれだけ大変な思いをしているのか…と小さな溜め息を吐き出しつつ、エースも軽い食事を取り、支度をする。そしてエルを抱えると、エルの荷物一式もバックに詰められて渡される。
「わからないことがありましたら、あちらの使用魔に御尋ねになって下さい。皆様エル様のことは良くわかっていらっしゃいますので、何の心配もございませんよ」
 にっこりと笑ってそう言われ、エースは溜め息を一つ。
 我が子のことながら…流石にその世話はほぼほぼ使用魔に任せきり。昨夜、以前成り行き上二名の子供を育てたことがある、と思い出したとは言え…こんなに小さい子は初めて。外出時に大量の荷物を持たされることも知らなかった。それでも引き取られた時よりは随分成長しているのだが…エースにしてみれば大差はない。
 そしてエルの方も…エースには抱かれ慣れていないので、何処かぎこちない。それでもエースの顔をじっと見て不思議そうに首を傾げている。
「では、行ってらっしゃいませ。御気を付けて」
 その声に送られ、エースはエルと荷物を抱えて…溜め息と共に、デーモンの屋敷へと向かったのだった。

◇◆◇

「いらっしゃいませ。デーモン様も御待ちですよ」
 既に、こちらへ出向くことは伝わっていたのだろう。エースがデーモンの屋敷へとやって来ると、直ぐに使用魔が出迎えにやって来た。そしてエースからエルの荷物を預かると、中へと促す。
 エルを抱いたまま、階段を上ってデーモンの寝室へと向かう。そしてドアをノックすると、中から声が聞こえた。
『どうぞ』
 その声に促され、寝室のドアを開ける。
「おはよう」
 声をかけると、上体を起こしてベッドに収まっていたデーモンは、くすっと笑いを零す。
「ちゃんと御父さん、だな」
「…馬鹿にしてるだろう…」
 くすくすと笑うデーモンに、苦虫を噛みつぶしたようなエースの表情。その顔をきょろきょろと見比べていたエルは、やがてデーモンに向かって手を伸ばす。
「かぁか!」
 その言葉にぎょっとしつつ…エル抱えたままデーモンの傍へと歩み寄ったエース。そしてデーモンも手を差し伸べてエルを受け取ると、その顔をペタペタと触るエル。
「かぁか」
「あぁ、おはよう、エル」
 穏やかな声と表情。エースから見れば、デーモンの姿もまたちゃんと"父親"だった。
「…御前は、"かぁか"…なのか?」
 枕元の椅子へと腰を下ろしたエースは、思わずそう問いかける。
「あぁ、そう。アイラやティムたちが揃って教え込んだのは、本当は"閣下"と教えていたらしいんだがな。何故か"かぁか"になった。まぁ、産んだのは吾輩だからな。"かぁか"でも強ち間違ってないな」
 くすくすと笑いながら、エルの相手をするデーモン。
「…俺は"とぉと"だった…今朝、初めて聞いたよ…」
「そう、か。御前は"とぉと"だったか」
 すっかり御機嫌のデーモン。昨夜はここまで笑っていなかったことを考えると…エルの存在が良い癒しにもなっているのだろう。
「…親子三名揃うのは…随分久し振り、だな」
 一頻りエルと遊んだデーモンは、ぼんやりと見つめているエースに向け、そう言葉を零す。
「そう、だな…エルを産んだ後、御前が目覚めた時から…初めて、だな」
 記憶を辿りながら、ぽつりと答えたエース。
 エルを産んだ直後、一月ほど意識の戻らなかったデーモン。あの時の不安も、胸の痛みも…未だ、忘れはしない。その時にエルを自分の屋敷へと引き取ったものの…成長していく姿を見るのが辛く、ついつい使用魔たちに任せっきりにしてしまった。未だにそれが尾を引いていているのは…多分、間違いない。
 色々と、考え始めてしまったエース。組んだ足の上に頬杖を突き、顎を乗せたままぼんやりとエルの姿を眺めていた。
 そのうちに眠くなって来たのか、ぐずり始めたエル。そんなエルをしっかりと抱き締め、あやしながら子守歌を歌い始めるデーモン。そして暫し。すっかり落ち着いて眠ってしまったエル。そして…エースも椅子に凭れたまま、思わずうとうと…となる。
「…御前も、ゆっくり休んでくれな…」
 遠くの方で、囁くような声。まるで、その声に促されるように…エースもすっかり、眠りに落ちて行った。
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