聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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檀香 伽羅~眩耀(前半) 後編
ステージの上。眩しいスポットライトを浴びて、声高らかに歌い上げる。
それが、彼らの任務。それが、当たり前だった。けれど…全てが終わってしまえば、その時間が特別だったのだと…改めて、思う。
あの頃のように…その声を、聴くことが出来たら。
それは…夢、なのだろうか。
ふと、意識が戻る。
ゆっくりと目を開けてみれば、そこはデーモン屋敷の寝室。だがそのベッドの上には…デーモンではなく、小さな我が子が眠っていた。
「…デーモン?」
問いかける声に、答える声はない。ただ、安らかな寝息が聞こえるだけ。
座ったまま眠っていた椅子から立ち上がり、辺りを見回す。すると、微かに歌う声が聞こえた。
「…歌…」
まるで、歌に誘われるかのように…テラスへと出る窓を開ける。すると、昔よりは随分セーブされてはいるが、それでもまだまだ現役の歌声が部屋に届く。
流石に眠っている子を起こし兼ねない為、テラスへと出ると慌てて窓を閉める。その物音に、振り返ったのはデーモン。
「あぁ、エース。起きたのか?」
「悪い…つい、眠っちまった…」
「疲れているんだから、たまにはゆっくりしないと」
くすくすと笑いながら、傍へとやって来たエースの頬へと手を伸ばしたデーモン。
「…吾輩のところは、毎日来なくても大丈夫だぞ?」
触れたその手が、とても温かい。
「大丈夫。御前の顔見れば元気になるから」
そう言いながら、頬に触れられた手に自分の手を重ねる。
「久し振りに…歌声を、聞いたな…」
「高々子守歌だろう?大げさだな」
くすくすと笑う姿。このところ、体調が優れなかった割に、今日はとても調子が良いようだった。
だがしかし。デーモンはふっと笑いを収めると、エースの頬から手を離し、顔を伏せた。
「…だが…流石に昔のようには歌えないな。それは、吾輩が一番良くわかっている。言霊師として…そろそろ、限界なのかも知れないな…エルを寝かしつけるので精一杯だ」
「…デーモン…」
歌声だけを聞いているのなら、まだまだ十分現役で行ける。だが、言霊師としての能力は…デーモンにしかわからない。
小さな溜め息を一つ吐き出したエース。
「…御免な…」
思わず零れたデーモンの言葉。その声に、エースはハッとしてデーモンへと視線を向けた。
「謝るな。御前が悪い訳じゃない。俺がもっと…」
「違う、そうじゃない。これ以上、御前の負担を増やす訳にもいかない。エルのことだってそうだ。このところずっと…起きているエルには会っていないんだろう…?朝早くから、夜遅くまで…仕事と吾輩のこととエルの寝顔を見るだけで、自分のことに使う時間もない。ゆっくり眠ることも出来ない。吾輩が…これ以上、御前の負担を増やせない」
「だから、そうじゃない!」
エースは思わず声を上げる。その拍子に部屋の中からエルの泣き声が聞こえた。
「…エルが起きたな」
デーモンはそう言うと、窓を開けて部屋の中へと戻る。その背中を見つめていたエースは、その場から動けなかった。
ベッドの上に起き上がって泣く我が子。けれど、その泣き声よりも…折角のデーモンとの時間が、こんな拗れ方をしていることが気がかりで。
「デーモン、俺は…」
「エルの前、だ。今は、やめてくれ」
「………」
エルを抱き上げ、あやす背中。その肩越しに見えたのは…泣き止んで、真っ直ぐに自分を見つめる、幼子の眼差し。言葉にならないその眼差しは…何処までも透明で…純粋で…エースの胸に突き刺さる。
デーモンは、少しエースを振り返ってその姿を視界の端に置く。項垂れて手摺に凭れかかる姿は…明らかに、自分の言葉で傷ついている。そう認識しながら、デーモンはドアへと向かった。
「…ちょっと待っていろ。今、アイラにエルを預けて来るから」
そう言い残し、部屋を出て行く。一名きりで残されたエースは、大きな溜め息を吐き出すと、ポケットから取り出した煙草を銜えて火をつける。
ゆっくりと紫煙を燻らせていると、間もなくデーモンが戻って来た。
「…悪かった…」
小さく零し、煙草を携帯灰皿へと放り込む。
その姿を見つめながら、デーモンはベッドに腰かけて溜め息を一つ吐き出した。
「吾輩は…精一杯生きて、エルを護らなければならないと思っているんだ。そこには…吾輩だけじゃない。御前も勿論必要だ。だが御前が、吾輩の体調で振り回されていることは良くわかっている。エルが、その犠牲になっていることも。具合が悪ければ、御前がここにいる時間が長くなる。そうすれば必然的に、エルと会う時間が減る。減らさないようにするには、御前の睡眠時間を削るしかない。それは…どう考えても、最善じゃない。そうだろう?そんなことは…誰も、倖せじゃない」
ゆっくりと、そう言葉を紡ぐ。その声の重さに…エースは、口を噤むことしか出来なかった。
「勿論、御前を責めている訳じゃない。今の吾輩は、御前の生命エネルギーに支えられているようなものだ。だがそれだって、本来は御前の生命も縮めかねない。ゼノンが御前の体調の管理も気にかけてくれているから保てているようなものだ。そんな無謀なことをし続けなければ…吾輩は、"今"を保てない。情けないが…この先、ずっとそれが変わらないのなら…もう少し何か、考えなければならないんじゃないかと思うんだ…」
「…どう言うことだ…?」
流石に、デーモンの言葉の意味が否定的になって来たことに、エースは口を開く。
「…心配するな。別に、否定的なことを考えている訳じゃない」
顔色を変えたエースに、デーモンもその胸の内を察したようだ。再び吐き出した溜め息と共に、そう言葉を放つ。
「なら、何を…」
デーモンの傍へと歩み寄ったエースに、デーモンはそっと手を伸ばす。そして、その手を取った。
「少しの間で良い。エルを…預からせてくれ」
「…エルを?」
怪訝そうに眉を寄せるエースを、デーモンは自分の隣へと促す。そしてエースがベッドに腰かけると、しっかりとその手を握った。
「エルの生命エネルギーの大きさは、御前もわかっているだろう?生まれて直ぐにもかかわらず、一ヶ月も吾輩を護ってくれていたのはエルだからな。別に、エルからエネルギーを奪おうと言う訳じゃないが…エルと一緒にいることで、少しだが元気になるような気がするんだ。勿論、吾輩の調子の良い間だけでも良い。面倒を見てくれていたティムたちにも申し訳ないとは思っているんだが…御前が納得出来る間だけ…エルを、ここに置いて欲しい」
懇願するように見つめられ、咄嗟に言葉を返せない。
元々は、当然産んだデーモンがエルを育てるつもりでいたのだ。ただ、産んだ直後に意識が落ち、一ヶ月も意識が戻らなかったデーモンの姿と、元気一杯のエルの姿を同じ屋敷で見ることが苦痛だったエースが、自分の屋敷へ引き取っただけのこと。意識が戻った後も、そのままエースの屋敷で面倒を見ていたが…デーモンにしてみれば、エルがエースの屋敷にいることも心配な要因の一つ。エルの存在が、エースの負担を増やしていることも十分承知しているが故の申し出だった。
「子供を育てることが…御前の負担になるんじゃないか…?」
今一つ納得出来ないエースは、そう問いかける。
「まぁ…吾輩が一から十まで世話をしている訳ではない。殆どは、アイラたちが分担してやってくれている。それでも色々、負担はあるだろう。だがそれ以上に、"得るもの"も大きいんじゃないかと思うんだ。だから名前も"エル"なんだ」
くすっと笑ったデーモン。別にエースは駄洒落で付けたと思ってはいなかったのだが…そう捉えることも出来るのだと、エースも改めて思ったりもした。
「…そうか。"得る"、だったか…」
「そうだ。吾輩が子供を産みたいとごねた時に…御前が言っただろう?『未来ある"子供"と一緒に…生きていてくれ』と。吾輩は…ずっと、その言葉を御守りにして来たんだ。吾輩は、あの子と一緒に生きるのだと。御前と共に、生きる為に。その時間を"得る"為に。そして我々も含めてだが…あの子自身も、倖せを"得る"為に。"エル"と言う名は…吾輩の願いを託した名前なんだ」
初めて聞いた、名前の由来。デーモンの意識が落ちている間に、アイラからデーモンが考えた名を預かっていると言われ、素直にその名を付けた。エースにとっては、ただそれだけの名だったのだが…デーモンには、深い思い入れあった。それを、今初めて知った。
「育った時間は、御前の屋敷の方が断然長い。けれど、エルはここで生まれ、ティムたちが頻繁に連れて来てくれていたから、初めての場所でもない。勿論、ここにいる間に、ティムたちが遊びに来て貰っても構わない。寧ろ、その方が交流が途絶えなくて良い。だから…」
「…もう、結構計画的じゃないかよ…」
溜め息を一つ吐き出したエースは、そのままベッドへと寝転がる。
「…良いだろうか…?」
エースの顔を覗き込み、改めてそう問いかけるデーモン。
その顔を暫く眺めていたエースは…諦めたように小さな笑いを零した。
「ここで俺が拒否したら…御前はまた、"エルを寄越せ"としつこくごねるんだろう?」
「…ごねるだなんて失礼だな…」
ちょっと顔をしかめるデーモンを笑いながら、エースは腕を伸ばし、デーモンの身体を引き寄せた。
温かい温もりと、その身体の重さが、確かな生命を感じさせる。
共に生きる時間を"得る"為に。そして、倖せを"得る"為に。あちこち居住地を移すのは申し訳ないとは思うが、今それが最善の策ならば。いつか…エルも、わかってくれるだろう。
「わかった。取り敢えず…急な話だから今日は連れて帰るが、またウチの使用魔たちを説得してから改めて連れて来るから。ただし、無茶はするなよ。御前が調子の良い時に限って、だ。体調を崩したら、またウチだからな」
「エース…」
顔を上げ、エースの顔を見つめる。
先ほどまでと違って、穏やかな表情。デーモンに向けた眼差しも、とても柔らかい。
「…一緒に…生きような」
そう言って、そっと口付ける。
「…生きるから。必ず…」
デーモンもまた、穏やかに笑う。
悲愴な未来は、望まない。希望はただ一つ。みんなで…倖せに、生きること。
「…エルは…アイラが見てくれているんだよな…?」
ふと問いかけた声に、その意を察したデーモンがくすっと笑う。
「あぁ。寝て起きたから、今頃は御機嫌で遊んでいるはずだ。暫くは、大丈…んっ」
その言葉が終わるか終わらないかの内に、エースに口付けられる。深く唇を重ね、デーモンの負担が少ないように身体の向きを変え、エースが組み敷くカタチになる。
「久し振りだが…大丈夫か?」
気持ちは急いているのだが、やはり完全ではない体調が気になる。心配そうに問いかけるエースに、デーモンは腕を伸ばして自らエースを引き寄せた。
「心配するな。御前に抱かれるぐらいで参っていられるか。寧ろ…こうしてくれた方が、吾輩は満たされて嬉しいんだが…?」
くすっと笑うその顔に、エースも小さく笑いを零す。
「俺は毎日だって良いんだぞ?御前に無理をさせないように遠慮して……」
言葉が終わらないうちに、今度はデーモンが口付けてその言葉を遮る。
「…早く」
「…慌てるなよ」
久し振りに、身体を満たす快楽。甘い声と吐息が零れ、高まる快感に身悶える。
それは、デーモンだけではなく、エースにとってもとても満たされる時間だった。
「…あぁ…窓、締め忘れた…」
共にベッドに横になり、余韻に浸りつつ…ふと視線を向けた先には、全開の窓。当然…その声も、漏れてはいただろう。
「今更何を。もうみんな知ってるだろうが」
「いや、だからって…流石にそこまでオープンなのはどうかと思うんだが…」
予想以上に堂々としているデーモンに反し、エースの方が気が引ける。
まぁ、デーモンは屋敷の主だからなのだろうが…現在、病気療養中と言うことで休職している上に自分たちの子供を使用魔に預けている手前、昼間から盛っているのはどうかと思うのだが…まぁ、致してから後悔しても遅いのだが。
先にベッドから起き上がり、脱ぎ捨てた服を着ながら、エースは溜め息を一つ。
「エルは…どのくらいまで小さい頃の記憶があると思う…?」
ふと、デーモンにそう問いかける。
エース自身は自然発生だった為、基本的に発生直後からの記憶はある。だが、赤ん坊として生まれた場合、どの程度まで記憶が残っているものか…そう思ってデーモンに問いかけたのだが、デーモンは小さく首を横に振った。
「さぁな…吾輩は、ロクに覚えていないから…何ともな」
「そう、か…悪かったな、変なこと聞いて…」
デーモンの過去に関しては…本魔が触れられたくはないこと。なので、深入りしてはいけない。そうわかっていたはずなのだが…今のこの状況をいつまでも覚えているのなら…それは親として、申し訳ないこと。エースも、それを気にしていたのだ。勿論、デーモンもエースのそんな想いはわかっていた。
デーモンも起き上がり、エースから渡された服を着ながらゆっくりと言葉を紡ぐ。
「もしも…吾輩の体調のことや、御前が忙しくしていて同じ屋敷にいてもほとんど会えなかったことを、大きくなっても覚えているようなら…きちんと状況を伝えるつもりではいる。親だからと言って、この状況を蔑ろにすることは出来ないだろう…?」
「…そうだな…」
着替え終えたエースはベッドに腰かけ、再び小さな溜め息を吐き出す。
「昔な…ほら、紫苑を保護して間もなくの頃…ルークに会わせた時に、彼奴が言ってたんだ。『振り回されるのは、いつも子供だ。誰だって、望んで生まれて来た訳じゃない』って。確かに…そうなんだよな。自然発生なら、自力で生きて行かなきゃいけないって言う本能が備わっているから、誰かに頼ろうとは思わない。だが、赤ん坊で産まれて来たからには、やはり親を頼らなければ生きていけない。結局は、親の都合で振り回される。今のエルが、そうだろう?」
「確かにな。だが、生きていく為には…きっとそれも必要なこと、だ。吾輩だって…望んで士官学校に入った訳ではないし…外堀を固められて、仕方なく枢密院に入ったようなものだ。振り回すのは、親だけじゃない。その状況で、どう生き抜くか…それを、きちんと教えれば良いのだと思う。ルークだって…そうだったはずだ」
「…そう、か…」
確かに、デーモンの言う通り。ルークが魔界に降りたばかりでも軍事局へ入局出来たのは、そこに基礎があったから。士官学校には通っていなかったとはいえ、学力も実技も、申し分なかった。だからこそ、すんなりと馴染むことも出来た。オトナに振り回されたとは言え…それは偏に…将来を考えて鍛え上げた、"育ての親"のおかげなのだ。
「まぁ、今直ぐどうの…と言うことじゃない。女の子だしな。どんな道へ進むか…将来のことは、まだ考えていない。この先どうするべきか…まだもう少し…何も考えずに、穏やかに過ごせれば…それで良いんじゃないか?」
先のことは、正直まだ何もわからない。その答えが見えるのは…きっと、エルが大きくなってから。だからこそ…今を、大切に生きる。
「…ま、なるようにしかならない。やってみて、無理だったら修正していくしかないんだ。我々だって…まだまだ、親としては初心者だからな」
そう言って笑うデーモンに、エースもその表情を和らげる。
確かに…なるようにしかならない。いつか、エルに批判されようとも…今は、これが精一杯なのだから。
「さ、また色々大変だぞ」
大変なことは、重々承知。けれど、前へ進む為に。
あくまでも前向きな言葉。だからこそ、デーモンもくすっと笑いを零した。
「頑張ろうな」
手を伸ばし、エースはデーモンの頭をクシャっと掻き混ぜる。
「あぁ」
こちらも前向きに。デーモンの笑う顔に、悲観の色はない。それが、エースにとっても救いだった。
数日後。エースに説得されたティムたちは、後ろ髪を引かれる思いを抱きつつも、主たちの決断に口出しすることもなく、エルを連れてデーモンの屋敷を訪れた。
せめてもの救いは…エルが、どちらの屋敷でも嫌がる姿を見せなかったこと。そして、どちらの屋敷の使用魔たちにも、良く懐いていたこと。そして、いつでも会いに行ける状況があること。
「遠慮はしなくても良い。いつでも会いに来てくれ。吾輩の体調如何では、またエースの屋敷に行くことになるだろうし…共に、育てていければと思うんだ」
デーモンのその言葉に、エースも頷く。
真っ直ぐに彼らに向けられた、エルの眼差し。琥珀色の…エースと同じ色のその眼差しの前では、慌てて何かを取り繕っても無駄なこと。
"親たち"がそれに気付くのは…もう少し先。エルが、自分の言葉で、自分の心の中の想いを伝えられるようになるまでは、"親"として見守ることしか出来ない。
今はまだ…スタート地点に立ったばかり、だった。
"親"も、"子"も。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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