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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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Craving 3

第四部"for PARENTS" (略して第四部"P")

こちらは、本日UPの新作です。
第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
3話完結 act.3

拍手[1回]


◇◆◇

 口を噤んだまま、枢密院のデーモンの執務室へと戻って来た二名。
 ソファーに腰を下ろすと、そこで漸く、ルークは大きく息を吐き出した。
「御疲れ」
 こちらも緊張から解き放たれたのか、礼服の上着を脱ぐと、大きく息を吐き出してコーヒーを淹れに立つ。そしてコーヒーのカップを両手に、ソファーへと腰を下ろしたデーモン。
「あれだけ拒んでいたクセに、自分から奥方様に会いに来るだなんて…一体どう言う風の吹き回しだ?」
 ルークにコーヒーを手渡しながら問いかける声に、ルークはカップを両手で持ったまま、ソファーの背凭れへと深く背を凭れた。
「俺に発破をかけたのはデーさんじゃん。あの"言霊"に俺が気付かないとでも?」
「…何だ、気付いたのか」
 苦笑するデーモンに、ルークは溜め息を一つ。
「ったく…自分で撒いといて、良く言うよね~」
 そう零すものの…その表情は、出かける前とは随分変わっていた。
 何かを吹っ切ったような…ある意味、清々しい。
「顔を…覚えているか?」
「誰の?」
 コーヒーを飲みながら問い返す。
「誰の、って…奥方様に決まっているだろう?」
「……あぁ……」
 数時間前を思い出すものの…霞がかかったように、その顔を思い出すことが出来ない。
「…何でだろう…覚えてないな……シリウス殿下の顔ならわかるんだけど…ダミ様に良く似ていたし」
 そう零したルークに、デーモンは溜め息を一つ。
「奥方様の顔、全然見てなかっただろう?吾輩は御前の背中越しだったが、御前の目が奥方様に向いてないことぐらいわかったぞ?気付かれないように微笑みを顔に貼り付けて、無意識に見ないようにしていたんじゃないのか?」
「…そうかもね…」
 デーモンの言う通り。勿論、顔を向けていたのだから、見ていたはず。けれど、その意識は全く王妃へと向いていなかった。
 見ているようで見ていない。それを見透かされないように、にっこりと微笑んでいた。それが、あの微笑みの真実。
「でもね…行って良かった。強引だけど、誘ってくれたデーさんに感謝しないとね」
「ルーク…」
 コーヒーのカップをテーブルに戻したルークは、漸く安堵の表情を浮かべた。
「エースやゼノンに、奥方様と同じ土俵で戦おうと思うな、って言われてさ…頭ではわかってはいたんだけど、イマイチ腑に落ちなかったんだよね。それで嫉妬を昇華出来るのか、って。でも、あの場所に行って…奥方様と若様に会って…何か、すっと落ちたんだよね。やっぱり俺は奥方様と同じにはなれない。子供を産むことも出来ないし、あんな風に…何処かに愛情はあるのかも知れないけど、政略結婚だと割り切った生活をすることは俺には無理。そう考えたらさ、急に悩むのが馬鹿みたいに思えたんだ。奥方様には申し訳ないけど、俺は、俺が出来ることをしよう、って。それは…精一杯、ダミ様を愛すること。あのヒトの、力になること。それが…俺なんだ、ってね」
「そう、か。御前が納得出来たなら、それで良いんだ」
 晴れ晴れとしたルークの表情に、デーモンもホッとしたような笑いを零した。
「エースもゼノンも、御前の気持ちをわかっているから、尚更どうしたら良いのかと悩んでいてな。勿論、吾輩も同じだが…ダミアン様の顔を見るに絶えなくてな。強引だとは思ったが、御前が付いて来てくれて良かった。ダミアン様を元気に出来るのは…やっぱり、御前だけなんだ」
「デーさん…」
 やはり…片腕として、傍に付いて来ただけある。副大魔王付きの参謀となってから今までの間に、辛いことも苦しいことも、幾度もあった。けれど、共にそれを乗り越えて来た。ルークにとってデーモンは誰よりも信じられる上司であり、誰よりもルークのことを理解してくれている。そう感じられることがどれだけ倖せか。
「これから先も…緩やかな道ではないだろう。まだまだ大変なことも沢山あるとは思うが…御前がダミアン様を信じているのなら、きっと大丈夫だ。吾輩はそう思う。だから…ダミアン様を、頼むな」
 デーモンにとってのダミアンの存在は、ルークにとってのダミアンの存在とはまた違う。けれど、大事な仲魔であることには変わりない。
「さ、ダミアン様はまだ執務室にいるから行って来い。気が変わらないうちに…な」
 笑いながらソファーから立ち上がり、ルークの頭をくしゃっと混ぜる。
「了解。じゃあ俺も…頑張って来ようかな」
 くすくすと笑いながら、ルークもソファーから立ち上がる。そして、デーモンに向け、深々と頭を下げた。
「有難うございました」
「頑張れよ」
 笑いながら見送るデーモンに背を向け、ルークはその執務室を後にした。
 そして、隣のダミアンの執務室のドアの前へと立つ。
 デーモンの前では笑っていたものの…やはり、ダミアンに向かい合うとなると緊張する。
 散々迷った結果を…本当に受け止めてもらえるのかどうか。
 大きく息を吐き出し、ささやかながら緊張を解す。そして意を決してそのドアを叩いた。
『どうぞ』
 中から聞こえた声に、もう一度小さく息を吐き出すと、そのドアを開けた。
「…失礼します」
「…あぁ、ルークか…」
 以前より…幾分、低い声。そんな気がした。
 視線を上げると、真っ直ぐに自分を見つめる眼差しと行き合う。
「御時間…良いですか?」
「あぁ、良いよ」
 職務ではない。それは、多分その言い回しで感じ取っただろう。小さな吐息と共に、ルークはその執務机の前まで歩いて行く。そして、更に大きく息を吐き出すと、改めてダミアンに視線を向けた。
 真っ直ぐで透明な、蒼い眼差し。その面差しは、先ほど見た皇太子と良く似ていた。
 親子の絆。それは…この先、ルークにどう影響するか。それはまだわからない。けれど、今は…
「…済みませんでした…」
 深く、頭を下げる。その答えを…ダミアンは、どう受け取るか。
「それは…どう言う意味で?」
 ふと、問いかけられた声。その声に、ルークは僅かに顔を上げた。
 ダミアンの言葉で、これではまるで別れ話をしに来たようだと…自分の言葉の方向性が間違っていると、はっと気が付いた。
「あの…奥方様と若様に…会って来ました…」
 姿勢を正し、そう言葉を切り出す。
「…会って来た?今日、デーモンが行くとは聞いていたけれど…御前も同行したと…?」
「はい。デーさんに誘われて…最初は、ただの従者のつもりで行ったんですけど…デーさんの歌を聞いているうちに、これじゃ駄目だと思って…意を決して、会ってみようと。でも…若様の…シリウス殿下の御顔は覚えていますが、奥方様の御顔は…正直、覚えていません。デーさんにも、無意識に見ないように…それを悟られないように、ずっと笑顔を貼り付けていたといわれるくらいでしたけど…」
「そう、か。それで…わたしのところに来たと言うことは…答えが出たのか?」
 その言葉に、僅かに緊張が走る。
「…はい」
 小さく言葉を零し、一呼吸置く。そして。
「…色々、考えました。でも、前にも言った通り、ダミ様への想いは変わりません。問題なのは、自分の嫉妬であって…それをどうするか。それを迷っていましたけど…奥方様と若様に御会いして、急に腑に落ちたんです。言い方は良くないですが…俺には、こんな家庭は作れない。なら俺は…俺が出来ることをするべきだ、と。どう頑張ったって、俺には子供を産むことは出来ないし…ダミ様と結婚出来る訳でもない。でも、俺は…貴方を、精一杯愛することが出来る。この王都で、貴方を支えることが出来る。馬鹿みたいに根拠のない自信ですけど…俺には、それしか出来ないから…」
 その途端、ダミアンから大きな吐息が零れた。そして徐ろに椅子から立ち上がると、そのままルークの傍へとやって来て、きつく抱き締められた。
「……わかった…」
「…ダミ様…」
「…良かった…」
 まるで縋りつくように、ルークの肩に顔を埋めたダミアン。つぶやいた声が、ほんの少し、震えているようで。
「…何処にも…行きませんよ?遠慮もしません。俺の、精一杯の愛を捧げますから……貴方の傍に…いても良いですよね…?」
 その身体にそっと腕を回し…耳元でそう囁く。
「…滅法男前だね、御前は。まるでプロポーズじゃないか…」
 くすくすと笑う声。
「当たり前じゃないですか。結構な覚悟を決めたんですから。これで引っ込み思案じゃ、悩む意味なんかないじゃないですか」
「それもそうだね」
 漸く気持ちの落ち着いたダミアンは、そっと身体を離す。そして改めて、ルークの黒曜石を見つめた。
「では…愛していると、抱き締めても良いかい?」
 微笑むように、細められた眼差し。その顔に、ルークはにっこりと微笑んだ。
「駄目です」
「おい…」
 思いがけない拒否に、思わず眉を寄せる。けれど、にっこりと笑ったままのルークは、その両手でダミアンの頬を軽く挟むと、言葉を続けた。
「今は…俺が、プロポーズしたんですから。俺から…ですよ?」
 そして、すっと笑いを納める。真剣な表情の中、潤んだ黒曜石は…じっと見つめるダミアンの顔を映していた。
「…御免なさい。貴方が、この国の王でも…貴方に妻子がいても…俺が一生、貴方の伴侶とはなれなくても…それでもやっぱり俺は…貴方じゃなきゃ駄目なんです。だから……」
 胸が一杯で…それ以上、言葉が続かない。
 けれど、誰よりも愛おしい。その眼差しが、そう語っていた。
「……愛して、います」
 甘い声。その声を、精一杯の想いを、分かち合えるように。頬を寄せ、そっと唇を重ねた。
 はらりと零れた涙。
「…泣かないで」
 くすっと零れた小さな笑いに、大きく息を吸い込む。そしてその肩口に再び顔を埋める。
「貴方が結婚する時から今まで…ずっと張り詰めていた貴方のココロを、ちゃんと癒してあげますから。だから、大丈夫ですよ」
 宥めるように、片手でその背を抱き締め、もう片方の手でそっとその髪を撫でる。そして、抱き寄せた金色の髪に軽く口付けた。
「さ、帰りましょう。一緒に」
「…やっぱり、男前だね、御前は」
 もう一度大きく息を吐き出して顔を上げると、そこには微笑む恋悪魔の顔。
 ずっと…初めて出逢ったあの瞬間からずっと。変わらないのは、その強い心。
 支えられていたのは…その笑顔があったから。
 それは、御互いに。
「…帰ろう、か」
「はい」
 にっこりと微笑み、その手をしっかりと握る。
「じゃ、一刻も早く」
「ちょっと落ち着け、ルーク」
 手を引っ張るルークに苦笑しながら、ダミアンはまるで引き摺られるように執務室を後にする。
 そこから先は…暫しの恋悪魔同士の時間。
 久方ぶりに…ココロと身体が満たされる。
 それは、御互いに。

◇◆◇

「…で?そのべらぼうに蕩けた顔は何とかならないのか?」
 デーモンから、昨日の話を聞いたエースがルークの執務室を訪ねてみると、そこにすっかり蕩けた表情のルークに出迎えられた。
「だってさ?しょうがないじゃん?」
 昨日、デーモンの執務室から出てダミアンの執務室に行った後のことは…流石に、エースも言及はしない。まぁ聞かなくても、その顔を見ればわかるのだが。
「…まぁ、な。御前が納得したならそれで良いんだ。ダミアン様だって、それで良いと言うことなんだろうし。俺たちがどうこう言うことじゃないしな」
 ソファーに腰を下ろしながら、溜め息と共に吐き出した言葉。その苦渋の表情で…エースの心の中がすっかり読める訳で。
「…御免ね、結局あんたには心配ばっかりかけちゃってさ」
 流石にいつまでもにやけているのは申し訳ないと思ったのだろう。ルークは表情を引き締めると、コーヒーを淹れに立つ。そしてカップを二つ持って戻って来ると、その一つをエースの前に置いた。
「色々考えたんだけどね…やっぱり俺には、行動あるのみ、だったみたいね。やっぱりデーさんだもんね…ホント、強引」
 くすっと小さく笑いを零すと、エースは小さな溜め息を一つ。
「まぁ、彼奴ならやりかねないよな。俺たちが腫れ物扱うみたいに神経すり減らしてたって言うのに、よりによって奥方様のところにあっさり連れて行くんだからな…」
「俺だって、行ってどうなるモンでもないと思ってたんだけどさ。上手いこと乗せられた、って言うか…歌に言霊乗せて来るとは思わなかったからさぁ…」
「で、あっさり洗脳された、と」
「言霊師を侮っちゃいけないね」
 ソファーに深く背を凭れながら、思わずルークも苦笑する。
 だがしかし。エースの方は、相変わらずの表情。
「…なぁ…その慶祝の歌…他に、何か言霊は乗せてなかったのか…?」
「…他に?」
 エースの言わんとすることが読み取れず、眉を潜めるルーク。
「ホントに…御前だけが気付いたのか?他に、奥方様に何か送った言霊があったんじゃないか…?」
「…どう言うこと…?」
 奇妙な緊張感が走る。
「どう考えても…ただそれだけの為に、奥方様のところへ御前を連れて行くか?彼奴が強引なのは良くわかってる。だが、奥方様だって、御前の噂は聞いているんだろう?それは何処までの噂だ?御前が軍事局のトップで、副大魔王付きの有能な参謀だって言うことか?ダミアン様の御気に入りだって言うことは?自分は王妃だから…世継ぎを産んだから、何事もなかったかのように黙って見過ごすか?」
「ちょっと待ってよ!何だよ、急に!何が気に入らないって言うのさ…っ」
「気に入らないに決まってるだろう!?彼奴がもし何か仕掛けたのなら…それが、もし露呈するようなことがあったら?全部、ぶちまけられるぞ」
 その心の中は、既に穏やかではない。
 エースの言わんとしていることが、何となくわかって来た。
 黙ってルークを受け入れたのは…デーモンが何か、仕掛けたからではないか?そして…それが表立ってしまったら…何もかも、暴露されるのではないか。
「……俺は…デーさんが奥方様に送った慶祝の歌に、奥方様に対しての言霊が乗せてあったかどうかはわからない。俺が聞いた言霊が、奥方様に届いているのかもわからない。奥方様が、それを読み取ったのかもわからない。でも…もし仮に言霊を乗せていたにしても、デーさんだもの。そこまで簡単に見破られるような言霊は送らないよ。魔界随一の実力を持つ言霊師だよ?俺たち何年、デーさんの傍にいると思ってるの?」
「馬鹿だな。魔界随一も何も…言霊師は彼奴独りしかいないだろうが…」
 溜め息が零れる。けれど、何処まで深追いするべきかはエースにもわからなかった。
「デーモンの禍歌は、御前の言う通り簡単に見破られる訳はない。そんなこと、俺だってわかってるよ。デーモンが歌ったのを聞いたのは御前だけだ。御前の"耳"を、信用していない訳じゃない。御前がわからないなら…多分、そこには何もない。彼奴のことも…信用していない訳じゃないからな。そこまでの無謀なことはしないと思ってる。でも、これだけは忘れるな。奥方様は、御前を知ってる。御前の顔も、御前がダミアン様の傍にいることも。いつか、それが刃となるかも知れない。それを肝に銘じろ」
「…エース…」
「…一つ、問題を解決すれば、また新たな問題が出て来る。そんなことは当たり前なのかも知れない。だが、それを当たり前だと思うな。浮かれて、気を抜くな。俺が言いたいことは…そう言うこと、だ」
 溜め息を吐き出すと、エースはそのままソファーから立ち上がった。
「悪かったな。御前が幸福の絶頂だって言うのに邪魔して」
「…悪気があった訳じゃないことぐらい、俺だってわかってるよ。御免ね、何から何まで至らない相棒で」
 心配してくれるエースの気持ちは良くわかる。だからこそ…どんなにぶつかっても、仲魔として今までやって来ることが出来たのだから。
 小さく笑いを零したルークに、エースもやっと表情を和らげる。そして立ち上がって見送るルークの頭を一撫でする。
「ダミアン様と、仲良くな」
「勿論。見本がいますから?」
「…ゼノンとライデンか?」
 その言葉に、ルークはくすっと笑う。
「あんたと、デーさんも。でしょ?あんたが一番心配なのは、デーさんの安全じゃないのさ」
「……ばーか」
 くすっと笑ったエースは、そのまま執務室を出て行く。
「…図星、じゃん」
 何よりも、愛しい。そんな気持ちは、口にしなくても伝わっていた。
 そしてルークもまた、エースと同じ。

 迷う気持ちは…もう、そこにはなかった。
 進むべき道は、ただ一つ。それは、険しい棘道。
 けれど、それでも。
「…進むしかないじゃん」
 笑うその笑顔に、憂いはなかった。
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