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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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INTO THE BLUE

第四部"for PARENTS" (略して第四部"P")

こちらは、以前のHPで2004年08月08日にUPしたものです。
第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;

拍手[1回]


◇◆◇

 それは、彼にとって運命の日、だった。

 執務室で机に向っていた彼は、次第に大きくなり始めたざわめきに顔を上げた。
 無意識に時計へと目を向けると、予定の時間の真っ最中。外から聞こえるざわめきを考えると、今頃パレードでもしているのではないだろうか。
 そんなことを考えながら、小さな溜め息を吐き出す。
 その日、彼は執務室から一歩も出ないことを決めていた。出てしまえば、きっと彼はその場に不適当な不穏の感情をその表情に浮かべてしまう。それだけは避けなければならなかったから。
 彼にとっての運命の日。その日は…恋悪魔の婚姻の儀、だった。


 日差しが傾き始めた頃、やっと外のざわめきも納まって、また静かな環境へと戻りつつあった。
「…やれやれ。やっと落ち着いたかな」
 溜め息を吐き出しつつ席を立ち、コーヒーを入れに歩き始める。
 すると、まるでそれを見越していたかのようなノックの音。そして、聞き慣れた声が聞こえた。
『ルーク、いるのか?』
「あぁ、いるよ。どうぞ」
 ドアに向けてそう声をかけると、開けられたドアから顔を見せたのは、正装の赤き悪魔、エース。
「終わったの?」
 コーヒーを入れながら声をかけると、エースは疲れた表情を浮かべてソファーへと腰を降ろした。
「何とか無事にな。デーモンとライデンはまだ拘束されてる。ゼノンはライデンの御付き合い。伴侶だからな、仕方ない。俺だけ先に抜け出して来た」
「そう。御苦労様。まぁ、一杯やってよ。コーヒーだけど」
 くすっと笑ってそう声をかけ、エースの前に淹れたばかりのコーヒーのカップを置く。
「御免ね、警備の責任者押しつけて」
「…ま、仕方ないさ。状況が状況だからな」
 そう。本来、婚姻の儀と戴冠の儀の警備責任者は、本来軍事局の総参謀長でもある彼の仕事。けれど、彼は仲魔たる情報局長官にその両方の役目を引き受けて欲しいと頼み込んだのだ。そして婚姻の儀は無事に終わった。未だ残る細々とした仕事を部下に振り分け、今回の大役をやり終えたエースが、今彼の目の前にいる訳である。
「…ダミ様、どうだった?」
 自分の分のカップを持ち、エースの前に腰を降ろす彼。そして躊躇いがちに問いかけた声に、エースはコーヒーで喉を潤し、小さな溜め息を吐き出す。
「嬉しい訳はないよな。まぁ、ダミアン様だから、表情に出しなしなかった。だが、穏やかじゃなかったことは間違いない。笑顔が固まっていた」
「…そう」
 彼は再び溜め息を吐き出す。すると、その姿を眺めていたエースも、小さな溜め息を吐き出す。
「こうなることは、覚悟していたんだろう?だったらもう、溜め息なんか吐くなよ」
「…そうだけどさぁ…」
「世継が生まれるまでの、暫くの辛抱、なんだろう?」
「……まぁ、ね。そう約束はしたから、そこまでは頑張らないとね」
 その声が心持ち沈んだ色を乗せていたことは、当然エースにも解ることだった。だがそれが、皇太子の恋悪魔であり続けることを選んだ彼に突き付けられた現実なのだ。
 必要以上の嫉妬の感情を抱かない為に、世継ぎが生まれるまでは仕事以外では皇太子には会わないことを決めた。そして、皇太子妃にも決して会わないことを心に決めた。けれど、何れ生まれて来るであろう世継に対してはそうはいかない。いつかは皇太子としての職務に付き、否応無しに彼の目に触れるところに出て来ることになるのだから。
 尤も、そこまで先のことになれば彼の感情ももう少し安定するだろう。だが今目の前にある感情は、覚悟は決めていたものの、やはりそう簡単に整理の付かない感情なのだ。
「でも、まだ暫く落ち着かない。王位継承の戴冠式ももう直だし。世継だって、直ぐに生まれる訳じゃないもの。あとどのくらい先になることか…」
 溜め息混じりの不服の声に、エースは再びコーヒーを口にする。
「ダミアン様だって、そこまで鈍感じゃない。御前を甘やかすことに関しては誰にも負けないからな。何かしらは仕掛けて来るだろうな。そう言う方だろう?」
「…確かにそれはそうかも知れないけど…」
 容易に想像は付く。あの皇太子なら、やり兼ねない。勿論、情事を迫って来ることはないだろうが…接点が増えれば増えるだけ、彼の感情がどうなるかは、彼自身にも解らない。
 大きな溜め息を吐き出す彼。そんな姿を、エースも溜め息と共に見つめていた。
「…とにかく、戴冠の儀の警備も任せておけ。まぁ、書類だけは揃えておいてくれよ」
 せめて、自分に出来ることは協力しよう。
 そうすることしか、今のエースには出来なかった。

 その日の夜も遅くなった頃。エースの屋敷を訪れた一名の姿。それは、遅くまで皇太子に付き合わされていた副大魔王。そして、エースの恋悪魔でもあるデーモン。
「あぁ、御苦労様」
 やって来たその姿に、エースは労いの声をかける。
「やっと解放された。ライデンも今頃はゼノンと一緒に彼奴の屋敷に行ってる頃だろうな」
 デーモンは正装のマントを外し、礼服のボタンも外してソファーに凭れると、大きく息を吐き出す。
「で、ルークはどうだった?」
 ソファーに腰を降ろし、徐ろにそう問いかける。
「予想通り。かなりへこんでる。まぁ、仕方ないだろうな」
「そうか。やっぱりな」
 デーモンの相槌に、エースは小さな溜め息を吐き出した。
「見ている方が辛いな。彼奴がそれで良いと選んだ道だから、俺たちは手出しが出来ない。それが約束だ。彼奴がしっかりと歩き始めるまでは、多分まだあの顔は続くんだろうな」
 そう零すエースの表情も、かなり辛そうである。それだけ苦しそうな表情を、ルークはエースに向けていたのだと察することは出来た。
 デーモンはくすっと笑うと、エースと向かい合うようにその膝の上に座る。そして、その頭の上にそっと手を置いて、ぐしぐしと髪の毛を掻き混ぜた。
「おい…」
「大丈夫、大丈夫。ルークは自分で立ち直れるさ。今までだってそうだ。ルークは強いんだから。吾輩たちがどんなに無理だと思っていたって、彼奴はしっかり歩いて来たんだ。余計な心配ばかり背負い込むんじゃない。御前の悪い癖だぞ?」
 にっこりと微笑み、そのままエースの頭を引き寄せるデーモン。そして、その髪の毛にそっと口付けた。
「今日は疲れただろう?ゆっくり休もう。そうしたら、明日にはもう少し気分も晴れているだろうから」
「御前だって。ダミアン様の御機嫌取りで疲れてるんだろう?」
「まぁ、そうなんだが、それはそれでいつものことだしな。疲労度で言ったら、御前の方が圧倒的だろう?」
 そう言いながら、デーモンは目を細める。
「…だから…吾輩が、御前を癒してやろうか」
 デーモンはにっこりと微笑みを零す。そして羽織ったままの礼服を脱ぐと、頬を寄せる。
 それは、全てを背負い込まない為に、デーモンがエースに与えた暗示。そしてそれは、エースには尤も有効な暗示。
「…これじゃ、ゆっくり休めないな」
 くすっと笑いを零したエースは、頬を寄せたデーモンへと口付ける。
 その日の夜は、まだ終わらない。

◇◆◇

 それから一週間程の間、彼は悶々とした日々を過ごしていた。
 戴冠の儀は、一ヵ月後。それまでにまた、警備の配置と手配をしなければならない。その現実を前に、淡々と職務を熟す……つもりだった。けれど、彼の心はそう簡単に切り替えられなかった。
 極力執務室から出ず、溜まった書類を片付けることに専念していたが、それも本当は上辺だけ。職務に身が入っていないことは、なかなか片付かない書類を見れば一目瞭然、であった。
 日に幾度も溜め息を零し、コーヒーを淹れに立ち上がる。それを繰り返しているのだから、職務が進まなくて当然なのだ。
 その日は久し振りに雨。細かい霧のような雨が朝から降り続く中、幾度目かの溜め息とコーヒーを淹れていたその時、ふと呼び出し音が聞こえた。
「はいはい。ちょっと待ってよ~」
 慌ててコーヒーのカップを置き、コンピューターの画面を切りかえる。
『ルーク総参謀長、ダミアン様が御呼びです』
 枢密院の皇太子の側近からの呼び出しに、彼は溜め息を一つ。
「…はい。直ぐに参ります」
 事務的な答えを返し、回線を切る。まさに気が重い、と言う表情を浮かべながら、迷った末に左手に付けていたブレスレットと指輪を外し、机の引き出しにしまう。
 それらは、昔恋悪魔からプレゼントされたもの。だが、新婚である相手に、それを大事に身に付けている姿を見られることに細やか抵抗を覚えたのだ。
 再び小さな溜め息を吐き出し、彼は気合を入れるように両手でくしゃっと髪を掻き混ぜると、隣室にいる副官に声をかけ、執務室を後にした。

 通い慣れた枢密院の皇太子の執務室。そこは、彼が初めて恋悪魔と出会った場所。その日から、彼はこの場所に来ることがとても嬉しかった。
 自分が、ここにいても良いのだと教えてくれたのは…その恋悪魔だったから。
 それなのに、今日はどうも足が重い。
 それでも、何とか執務室の前までやって来ると、意を決したように大きく息を吐き出してドアをノックする。
「…ルークです」
『どうぞ』
 その声に促されるように、ゆっくりとドアを開ける。
 そこは、以前と何ら変わりはない。ただ…机に向い、書類に目を通している主が、ほんの少しだけ窶れたように見えただけで。
「…御呼びですか…?」
 控えめにそう問いかけると、主は書類から顔を上げた。そして、彼の姿を見つめ、軽く微笑んだ。
「久し振りだな。このところ忙しくて逢えなかったからね」
「…そうですね」
 まるで他悪魔事のように言って退ける主だが…根本の原因は、主の結婚だと言うのに。そんな思いで、彼は小さな溜め息を吐き出していた。
「…痩せたね」
 その言葉に、彼はふと顔を上げる。主の眼差しは、真っ直ぐに彼を見つめていた。
「…ダミ様こそ…」
 そう返した彼の言葉に、主はくすっと笑った。
「わたしのことは、心配しなくても良いよ。わたしは、御前の方が心配だね。この一週間、執務室から出なかったんだって?」
「…戴冠式の警備配置の手配がまだ…その書類が溜まっていたので…」
「書類を溜めてはいけないと、昔から言っていただろう?」
「…済みません…」
 仕事が手に付かなかったことは、今彼の目の前にいる存在の所為と言ってしまえばそれまでなのだが…まぁ、それを言ったところで、彼の気分が晴れる訳でもなく。だから、敢えてそれ以上の言い訳はしなかった。
 俯いた彼の姿を暫く見つめていた主は、ふと思い出したように机の引出しを開けた。
「…そうそう。御前を呼び出したのは他でもない。これを、御前に譲ろうと思ってね」
「…え?」
 主の言葉に、彼はふと顔を上げる。そして、机の上に置かれた古びた小さな箱に目を留めた。
「荷物の整理をしていたら出て来たんだ。わたし自身、もうすっかり忘れていたのだけれどね。折角だから、御前にあげるよ」
 にっこりと微笑む主の顔を見つめつつ、彼は怪訝そうに眉を潜めた。
「…何ですか?それは…」
「これはね、わたしが子供の頃に、教育係に貰った"御守り"だ。彼が任務に出て留守の間、わたしが寂しくないように、とね」
「…ダミ様の教育係、って…」
 思いがけない言葉に、彼は思わず目を丸くする。
 この執務室の主…皇太子の教育係と言えば、思い当たるのは一名しかいない。
 彼の父親。ルシフェル参謀長。
「あの時…わたしは、これを貰ってとても嬉しかったよ。だから今度は、それを御前に託そうと思ってね。御前も…寂しくないように」
「…ダミ様…」
 主は椅子から立ち上がり、小箱を持って彼の前へとやって来る。そして、彼の前でその小箱の蓋を開けた。
 柔らかいメロディー。それは、とても優しくて…暖かくて。微かな雨の音と混ざり合い、包み込まれるような感覚に…思わず、涙が出た。
 自分は…護られているのだと。この暖かな音色と…皇太子の想いと…そして、父親の想いに。
「…もう少し…待っていておくれ。そうしたら必ず、御前の元へ帰るから。それまでは、"彼"が御前を護っていてくれるよ」
 主はそう言って、腕を伸ばして彼を抱き締めた。
 報われない想いではない。必ず、この恋悪魔は戻って来てくれる。だから…恋悪魔を信じて、待っていなければ。
 それが、彼が今出来る、唯一のことだから。
「…待って…います。だから…もう、大丈夫です」
 彼は、涙を拭ってにっこりと微笑んで見せた。その姿に、主もにっこりと微笑む。
「約束だよ、ルーク。御前も…何処にも行くんじゃないよ?」
「勿論。俺が帰れる場所は、"ここ"しかないんですから」
「それなら、わたしも安心だ」
 くすっと笑いを零し、主はそっと顔を近づける。だが、約束を思い出し、その髪に口付けるだけに留まる。
「今が、我慢時だね」
「…はい」
 彼も、小さく笑いを零す。
 この先の未来が、平和であるを信じて。

◇◆◇

 数日後、軍事局の彼の執務室を訪れたのは、エース。
「どうだ?気分は?」
 そう問いかけた声に、その執務室の主はにっこりと微笑んでみせた。
「もう大丈夫。心配いらないよ」
 つい先日までとは全く違う表情を見せる彼に、エースは多少面食らった様子だった。けれど、何かを吹っ切ったような彼の微笑みの前、それ以上問いかける必要はないと思っていた。
「…なら、安心だな」
 くすっと、小さな笑いを零したエース。
 それで、良いのだ。
 迷いながらも、彼が必要とした…そして、選んだ道なのだから。

 空が晴れたら、気持ちも軽くなる。
 だから、晴れる日を待とう。
 そうしたら、きっと、一緒に空を眺めることが出来るから。

◇◆◇

 彼の心が晴れるのは、それから数年後。恋悪魔が父親の身位を継いで大魔王陛下となり、魔界が新たな力を得て動き始めようとしていた頃のことになる。
 けれど、再び歩き始めた彼らの行く先の未来は、彼らが歩いて来た道よりも、更に遠く険しい。
 彼らが進むべき道は、まだまだ長いのだから。
 それでも彼らは歩き続ける。
 倖せを、信じているから。
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がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
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