聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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キミノユメ
遠く…遙か、遠くまで、飛んでみたかった。ただ、それだけの夢。
初めて有翼種を見たのは、まだ士官学校に通っていた頃。
仲魔の背中に見えた漆黒の翼に、胸をときめかせたものだ。
いつか、自分の背中にも、同じように翼が生えてくるのではないかと。
けれど、その夢は無情にも打ち砕かれた。
彼は、有翼種ではなかった。だから、待てど暮らせど、翼など生えて来ないのだと。
勿論、魔力を使えば、空を飛ぶことも可能である。彼の魔力を持ってすれば、それは容易いことだった。けれど、それでは意味がないのだ。
翼をはためかせて、空を飛びたい。
叶わぬが故に、それは彼にとって永遠の夢であった。
それは、ある戦でのこと。
ふと、目の前を過ったのは、漆黒の翼。
「…あ…れ?」
一瞬のうちに消え去った翼の後を追った視線が、その姿を追いかけた。
「…誰だ?今の…」
見慣れない姿。けれど、何処かで見覚えのある翼。
思わず口にした声に答えたのは、軍指揮官の一名でもあるルーク。
「え?あぁ、あの悪魔(ひと)ね。クルアール司令官でしょう?久し振りに王都に復任したんだって」
「…クルアール…?」
「あれ?知ってるの?」
「あぁ…」
ふと、蘇った記憶。
通りで見覚えがあったはずだ。
あの時の…あの翼。
「…そう、か…戻って、来たのか」
くすっと、小さな笑いが零れた。
その意味深な笑いの意味がわからないルークは、当然首を傾げていた。
戦が終了したある日のこと、ルークは軍事局でとある姿を見かけた。
「クルアール司令官」
「…?あぁ、ルーク総参謀長。どうなさいました?前回の戦の報告書なら、先程届けましたが…?」
不意に呼び止められたことを怪訝に思ったのか、問いかける司令官に、ルークはにっこりと微笑んでみせた。
「あぁ、それは受け取ってあります。それよりも…ちょっと、宜しいですか?」
「えぇ、良いですよ」
ルークは、司令官と共に己の執務室へと向かった。
「一体、何の御用でしょうか?」
執務室に入るなり、そう問いかける司令官。そんな彼をソファーに促し、紅茶のカップを目の前のテーブルにそっと置いた。
「デーさ…いや、閣下を、ご存じですか?」
「は?」
「いや、この前の戦で貴殿を見かけて、閣下の方は貴殿を知っているようだったから」
「…そう、ですか」
ふと、司令官の表情が変わったような気がした。
「閣下とは…同級生、ですよ。士官学校時代の」
「そう…なんですか」
「そう。それだけですよ」
----では、わたしはこれで。
司令官はそう言い残すと、出された紅茶のカップには手も付けず、そそくさとルークの執務室を後にした。
「…ふぅ~ん。それだけ、ねぇ…」
かつての、彼らを知っている訳ではない。だから、余計な詮索などしなければ、それまでのことであったはず。
けれど当然、ルークはそれで引くはずもなく……
にんまりと笑うルークの表情。けれど、その目論見を知っている者はない…。
翌日、デーモンの執務室にやって来たルーク。徐に、その質問を問いかける。
「ねぇ、デーさぁ~ん。クルアール司令官のことだけどぉ~」
「…んだよ。その言い方はぁ…」
明らかに何かを企んでいるその表情に、デーモンも呆れ顔である。
「同級生、だって~?」
「…ったく…何処から仕入れて来るんだろうなぁ、お前はぁ…」
「何処からって、本魔よぉ」
くすくすと笑うルーク。
「…で?他に何か聞いたのか?」
呆れた笑いを零しながら問いかけるデーモンの言葉に、ルークは途端に眉間に皺を寄せる。
「それがさぁ。『同級生ですよ、それだけです』って」
「だろうな。それだけだから」
くすっと笑うデーモン。
「ホントに?」
「ホント、ホント。詮索しても、何にも出て来ないからな」
「…ちぇっ。つまんないの~」
心底残念そうな表情を浮かべるルークに、デーモンはくすくすと笑いを零していた。
その日の夕方の終了時間も程ほどに過ぎた頃、軍事局の正門前に、隠れるようにそっと佇む姿が一つあった。
そしてその姿は、局から出て来る一名の姿を見つけると、にっこりと微笑んだ。
「クルアール司令官」
ふと、そう声をかけられたのは、赴任して間もない司令官、だった。
「…デー……閣下…?」
目を丸くする司令官にくすくすと笑いを零すのは、他でもない副大魔王閣下、デーモン。
「時間、ある?」
「え…あ…はぁ…」
困惑する司令官の腕を掴み、デーモンはすたすたと歩き始めていた。
当然、司令官はなすがまま…である。
程なくして、再び己の執務室に戻ってきたデーモン。そして、半ば無理矢理引き摺り込まれたのは司令官。
「…さて、ここなら誰も来ないだろう」
ソファーに腰を降ろし、一息付くデーモン。それとは対照的に、ぐったりと付かれた表情なのは司令官。
「…強引なのは、相変わらず…か」
「そう言うこと」
くすくすと笑うデーモンに、司令官も諦めたように小さな笑いを零した。
「…で。何の用?」
そう問いかけた司令官の声に、デーモンはすっと笑いを納めた。
「ルークが、随分しつこくしたみたいだな。悪かったな」
「あぁ、そのことか。なら、お前が謝る必要はないだろう。ルーク総参謀長も悪気が合った訳ではないだろうし」
「詮索好きなんだ」
くすくすと笑いを零しながら、デーモンは席を立って紅茶を淹れ始める。それを見つめている司令官は、当然のことながら目を丸くしていた。
「副大魔王自らお茶淹れか…?」
「あぁ、この方が気楽で良いんだ。それに、ダミアン様に付いていた頃から、お茶淹れは得意なんだ。それに、他の局の局長だって、殆ど自分で淹れるぞ?ルークもやっていただろう?」
「あぁ…そう言えば。まぁ…お前は昔からそう言うタイプだったけれどな。いつから王都全体がこんなに腰が低くなったんだか…」
呆れた溜め息を吐き出す目の前に紅茶が置かれ、デーモンも元の場所に腰を据えると、司令官は改めてデーモンに向かい合った。
「…で?わたしをここに呼んだ理由は、ルーク総参謀長のことを詫びる為だけではないだろう?ホントのところは、何の用なんだ?」
改めてそう問いかけられ、デーモンは紅茶のカップを持ったまま、小さく笑った。
「この前の戦で、久し振りに懐かしい翼を見たと思ってな。それを目敏く見つけたルークに話を聞いたら、"クルアール"だって言うじゃないか。吾輩はてっきり、"觜輝(しき)"のままだと思っていたんだがな」
「それで、ルーク総参謀長の興味をそそった訳か。名前に関しては、今の名前の方が使い易かっただけのことだ。軍事局に入局してから暫くして変えたんだ。一応、セカンドネームで持っていたしな」
「そうだったな。でも、"觜輝"の方が印象強かったんだな。吾輩は、そっちの方が好きなんだが」
かつてを思い出すように、ゆっくりと言葉を交わす。
士官学校で、唯一気を許した親友。デーモンが枢密院のダミアンのところに努めるようになり、觜輝が軍事局に入局してからは、顔を合わせることがなかった。けれど、こうして腰を据えれば、あの頃と少しの違いもない親友の姿。それが嬉しくて、デーモンも上機嫌であった。
「呼び名は変わっても、お前はあの頃とちっとも変わらないな。あの翼も、直ぐにわかったぞ」
「お前が憧れていた頃の翼と、か?」
くすくすと笑う司令官。彼もまた、かつてを思い出しているのは言うまでもない。
「そうそう。翼が生えると思っていたあの頃が懐かしいな」
あの頃、芽生えた想い。
それは、有翼種になって、その翼で空を飛びたいと言う夢。そのきっかけになったのは、"觜輝"の背中に生えた漆黒の翼、だった。
そして、それはある種、デーモンが抱いた恋心でもあった。
儚い想い。その胸の奥底には、忘れられない赤い色。だからこそ、デーモンは"觜輝"に対して、それ以上の想いを抱けなかったのかも知れない。
「あの夢は…まだ持ち続けているのか?」
思わず問いかけた声に、デーモンの笑いは止まった。そして、その眼差しをゆっくりと司令官へと向けた。
「いや…有翼種になるのは諦めた。そればっかりは、どうにもならないからな。けれど…もう一つの夢は、叶いそうだ」
「もう一つの夢?有翼種になりたいだけじゃなかったのか?」
「あぁ」
くすっと、小さな笑いが零れた。
そしてソファーから立ち上がると、執務机の前へ行き、その引き出しを開けて何かを取り出すと、再びソファーへと戻ってきた。
「…羽根?」
司令官が首を傾げるのも当然かも知れない。
デーモンが持っているのは、何の変哲もない一本の漆黒の羽根。ただ、それだけなのだから。
「ダミアン様が…吾輩にくれたんだ。吾輩の願いが、叶うように」
その想いが、能力を与える。それは、小さなきっかけに過ぎない。けれど、デーモンにはそれで十分だった。
いつか…大事な悪魔と、共に飛べるように。
微笑むデーモンに、司令官は何かを感じ取ったようだった。
すっと、その眼差しは真剣な色を見せた。
「お前の願いとは…あの時聞いた、"赤き悪魔"に関係するのか…?」
それは、かつてデーモンから打ち明けられた、想い悪魔。名前どころか、種族も何もわからない。わかっていることは、ただ、赤い紋様を戴いた悪魔だと言うこと。
あれから、どれくらいの時間が経って、デーモンがどれだけの悪魔と出会ったのかは、今の司令官にはわからない。だから、想う悪魔に巡り会えたのかどうかもわからない。
ただ一つ…副大魔王の片腕として名高き情報局長官が、赤い紋様を戴いた悪魔である、と言うこと以外は。
司令官の問いかけに、デーモンは何も言わなかった。ただ、小さく微笑んでみせる。
それが、全ての答えであるかのように。
「…成程な。確か…彼の情報局長官は、黒い翼を持っていたな。皇太子殿下から賜った黒き羽根が、お前の願いを叶えるのならば…あの時の想いは、成就したと考えて良いのか…?」
「…お前が考えるところの結論は、否定する必要はないな」
微笑みながら零したその言葉に、司令官の表情も柔らかくなる。
「そう…か。なら…その羽根は、大切にしなければな」
彼の副大魔王の倖せを、見届けていたいと思う。
その思いもまた、仄かな恋心だったのかも知れない。
打ち明けられない気持ちは、彼の副大魔王と同じ。彼の、想う相手を知っているから。
ただ、彼らが倖せならばそれで良い。悲しいながらも、選んだ決断だったから。
「…有り難う」
そう零したデーモンの言葉に、司令官はにっこりと微笑んだ。
それで、全てを納得させるように。
数日後、書類を手に副大魔王の執務室を訪れたのは、ルークだった。
「ねぇ、デーさん。何で、クルアール司令官は、また地方勤務を希望したのかな…?」
ルークが持って来たのは、クルアール司令官の地方勤務を告げる辞令書。聞くところによると、彼の司令官は、自ら進んで王都を後にしたと言う。
当然、理解不能、と言った表情で問いかけるルークに、デーモンは小さく微笑んで見せた。
「さぁ…な。だが…"彼奴"はそう言う奴だったのかも知れないな」
「そう言う奴、って…王都よりも、地方が好きだってこと?」
「…そうかもな」
くすくすと笑うデーモン。その真意は、彼にしかわからないが。
ただ…ルークにも、ほんの少しだけ理解出来るところはあった。
彼の司令官は、王都にいてはいけないと思ったこと。だからこそ、自ら進んで王都を後にしたのだと言うこと。勿論、その深いところの理由までは推測出来なかったが。
「また…戻って来るかな?クルアール司令官…」
ぽつりとつぶやいたルークの言葉に、デーモンは何も言わず、微笑んでいた。
そして、またいつもの日常が訪れた。
キミノユメハ、カナッタネ。
ダカラボクハ、ミヲヒコウ。
キミヲ、オモウガユエニ。
キミノ…シアワセノタメニ。
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COMMENT
プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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