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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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サロメは還って 前編
こちらは、以前のHPで2001年04月22日にUPしたものです

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◇◆◇

 十万年も、昔のこと。
 魔界は一名の天使によって、恐怖と混乱に陥れられた。
 身位を持たない天使であったが、その能力は図り知れず、たった一つの首を求めて、一名で魔界に乗り込んで来たのだ。そして、魔界は中枢部を中心に、膨大な被害を被った。
 その天使は"奇異の天使"と呼ばれ、今は石像に封じられている。

◇◆◇

 突然皇太子であるダミアンに呼び出されたエースは、ダミアンに促されるままに、彼の警護の名目を受けて魔界の鬼門たる魔封じの塔を訪れていた。

 塔の中央にある石畳の廊下を、ブーツの音を立てて進んでいたダミアンの背後を追いながら、エースはふと、その疑問を投げかける。
「…一体、ここに何の用です?」
 塔の地下には幽閉用の牢屋があるものの、地上にはさして役目を遂げるモノはない。従って、訪れる理由もほとんどない。だが、エースの前を歩くダミアンは、何かの目的があって歩みを進めているようで。
 エースの記憶が確かならば、この先には一つの石像があるだけで、他に目的となるものはないはずであった。
 案の定、ダミアンがやっと歩みを止めたのは、その石像の前、だった。
「…御覧、エース」
 ダミアンが視線を向ける先は、やはり石像、だった。
 天使の身なりをした石像は何処か生々しく、今にもその手に握られた剣が振り下ろされそうな気迫さえある。
「…この石像が、何か…」
 エースとて、気になってはいたのだ。魔封じの塔に天使の石像があること自体、尋常ではない。何故、天使なのだろうと。
 エースの疑問には答えず、ダミアンは目を細めてその石像を見つめていた。
「…先の調査で、この魔封じの塔自体の封印の能力に陰りが見え始めたとの報告が出たのは知ってるね?」
「えぇ、聞いてます」
「そろそろ…だとは思っていたんだよ。もう、十万年も前に封じたのだから、そろそろ封印が解けても可笑しくはないとね」
「…あの…」
 ダミアンの言わんとしていることがわからず、エースは眉を潜めていた。
「見事、だろ?」
 くすくすと笑いを零しながら、ダミアンは石像に手を触れる。
「まだ、生きているんだ。こんな状態になっても…ね」
「…まさか」
 エースは思わず息を飲んだ。
 石像が生きているなど。聞いたことのない事実だった。


 王都に戻って来たダミアンは、己の執務室に帰ってしまい、役目を終えたエースはその足でデーモンの執務室を訪れていた。
「…魔封じの塔の石像?」
 先程のことをデーモンに話して聞かせたエースの耳に、返って来たのは怪訝そうなデーモンの声だった。
「塔自体の封印がそろそろ解けても可笑しくはないと…そう、言ったのか?ダミ様が?」
「あぁ…だけどそれがどうしたんだ?石像と、何か関係があるのか?」
 訳のわからないと言った表情を浮かべるエースに、デーモンは溜め息を一つ。
「…現在、あの塔の封印は、石像にかけられている封印にかけられているモノただ一つだ。それが、あの塔の全ての封じているんだ」
「…どう言うことだ?そんな話、聞いたことないぞ」
「当たり前だ。一般に公表出来る訳ないだろうが。あの石像の封印を一つ解くだけで、あの塔の封印は全て解かれるのだから。ただし、故意にそんなことをすれば、この魔界自体…とんでもないことになるけどな」
「御前…何で、そんなこと知ってるんだ…?」
 情報局にさえ入っていない情報に、エースが戸惑わないはずはない。
「吾輩は昔、ダミ様から直接聞いたんだ。情報局にさえ、内密なことだ」
「……」
 気に入らない。と言う表情があからさまなエースの肩を軽く叩き、デーモンは席を立って窓辺へと移動する。
「覚えてるか?十万年前の、"奇異の天使"のこと」
 不意に、デーモンが昔を語り始めた。
「十万年前…あぁ、話には聞いたことがあるが…俺は丁度士官学校に入ったばかりだったから、その頃は寮にいた。だから、直接体験した訳じゃない」
 遙か昔を思い出すように、エースは言葉を紡いでいた。
 士官学校の寮と言えば警備が厳重で、例え魔界全土が戦乱に巻き込まれたとしても、大魔王、皇太子の居住宮の次に守られると噂される程、安全な場所である。
「吾輩はまだ寮に入る前だったから、その断片ぐらいは体験したんだが…あの引き金となったのは、たった一名の天使による襲来だ。後に語られた"奇異の天使"そのものだがな」
 エースが口を閉ざしているのを幸いにと、デーモンは話を続けた。
「天界軍を引き連れず、たった一名で乗り込んで来た"奇異の天使"によって魔界中はかつてない程の動揺を覚え、恐怖すら感じた。ある一つの首を求めて、奴は狂気の沙汰とも言える攻撃を仕掛けていたんだ」
 デーモンの話を要約すると、次のようになる。
 今から十万年程前、たった一名で魔界に乗り込んで来た"奇異の天使"は、一つの首を取る為に魔界中を恐怖と混乱に陥れた。だが、その天使の暴走を留めた悪魔がいたのだ。
 暴走する天使に何ら躊躇いもなく挑んだ悪魔は、計り知れない能力と共に、"奇異の天使"を石像として封じ、最後にその天使を討ち取った場所に封印の塔を立てた。だから、塔の封印の根本は石像にあるのだと。
「…で、その封印した悪魔ってのは…」
 魔界中を震撼させた程の天使を封じたのだから、当然只者ではない。そんな話題の中心にいたのなら、出世頭として有名であるはずなのだが、特にそんな話は聞いたことがない。だからこそ、エースはそれを問いかけた。
 その問いかけに、デーモンは一つ呼吸を置く。
「…まぁ、当然と考えれば当然なのかも知れないが…意外と言えば意外なんだが…」
「だから、誰なんだよ」
 曖昧に逃れようとするデーモンに、エースは痺れを切らし、問い詰めるように身体を寄せる。
 諦めたデーモンは、溜め息を一つ。そして、その言葉を紡ぐ。
「…本魔、だよ。狙われた首の持ち主。そして、御前に封印の話を持ちかけた…な」
「…と、言うことは…」
「そう。ダミアンこと、サタン四十五世。魔界の皇太子殿下だ。狙われたのは中枢部だが、本来の目的は大魔王宮と皇太子宮だった。そして、狙うべき相手は、ダミアン様ただ一名だった」
「……」
 デーモンの答えに、エースは思わず目を丸くする。
「そりゃ…中枢部が狙われたと言うことは聞いているが…だが…十万年前と言ったら、ダミアン様だってまだ子供だろう!?首を狙われるのはともかく、何処に、暴走した天使を留める能力が…」
「それが出来ること自体、既に皇太子殿下なんだ。勿論、ダミアン様にはルシフェル参謀が付いていたが、最終的に"奇異の天使"を抑えたのはダミアン様だ。昔から並外れた能力を持っていたんだろう。その頃のことは吾輩も聞いただけなので詳しくは知らないのだがな」
 溜め息交じりのデーモンの声は、ダミアンの圧倒的な能力を物語っていた。
 その顔に微笑みを称え、穏やかに時間を過ごして来たダミアンの、そんな話を聞いたのは初めてだった。ダミアンにそんな一面があったことすら、エースは知らなかったのだから、無理もないことなのだが。
「もし塔の封印が解けたら…"奇異の天使"は再び息を吹き替えし、ダミ様の首を狙うだろう。それを気にしていたんじゃないのか?だから、御前を連れて行ったのでは?」
 問いかけるデーモンに、エースは首を横に振る。
「不安を表わしている表情ではなかった。むしろ、何かを待っているような…」
 石像を前にしたダミアンは、確かに笑っていた。何かを待つかのように。ただ、エースにはそれが何かはわからない。
「ダミ様が、魔界の危機を待っているはずはないし…かと言って、恐れている訳でもない…か。全くわからないな、あの方のことばかりは」
 士官学校を卒業して直ぐにダミアンの補佐として、ずっと傍近くにいたデーモンでさえ、ダミアンの深層心理ばかりは察することが出来ないのであった。
 今はとにかく、溜め息を吐くしかない二名であった。

◇◆◇

 今から十万年前。
 初めて逢った天使は、狂っていた。
 狂っていたからこそ、殺すことが出来ず、封じたのだ。
 殺さなかったのは…
 殺せなかったのは。
 魅せられて、いたのだ。彼の、狂った天使に。

 執務室に籠もっているダミアンは、その窓辺で頬杖を付き、ぼんやりと外を見ていた。
 先程届けられた数々の書類は、既に机の上の雑多なモノでしかない。それ程までに、心許ないダミアンである。
「…もうすぐ逢えるね。ティアナ」
 小さく零したその笑いの意味は、ダミアンだけが知っていた。

◇◆◇

 それから数日後。
 情報局の廊下を、足早に駆けて来る姿があった。
「エース、入るからねっ!」
 ノックもままならず、返って来る答えを聞きもせずにドアを開けたのは、軍事局の顔、ルークだった。
「何だよ。別に俺は何処に隠れようってんじゃないんだから…」
「そんな、呑気なこと言ってる場合じゃないよっ!」
 息を荒立てるルークに尋常ではないことを察し、エースはすっとその表情を引き締める。
「何があった?」
 問いかけた声に、ルークは僅かに目を伏せる。
「…ダミ様がいなくなった」
「何だと?いつからだ?」
「朝はいつも通りに登庁して来たはずなんだ。それが、いつの間にか、いなくなってた…」
「…冗談じゃないぞ」
 只事ではないその報告に、エースが顔色を変えたのも束の間。
 時を同じくして、上層部に宛てて、魔封じの塔に異変が起こり始めたとの報告が届いていた。

 エースとルークの二名が魔封じの塔にやって来た時、丁度その結界が崩れる場面に遭遇した。
 幸いにもこの時地下の幽閉牢には誰も捕われておらず、表だった被害はないように思われた。
 あくまでも、表だった被害は…だが。
「ルーク、急げ!早くしないと、あの石像が…っ」
 デーモンの言ったことが本当なら、今頃石像の結界は解けているはずである。そうなれば、十万年前の繰り返しになってしまうのだから。ともなれば、ダミアンの首も、再び狙われることになる。
 しかし。エースとルークが石像の前にやって来ると…それを出迎えた姿があった。
「やぁ。早かったね、エースにルーク」
「…ダミアン様…」
 にっこりと二名を出迎えたのは、他の誰でもない。行方不明になったと大騒ぎの当魔、ダミアンである。
 そして、その隣には。
 手に握っていたはずの剣は腰の鞘に納まり、石像の立っていた台座に腰を降ろしている姿。呑気に足を組んで寛ぎ、やって来たエースとルークを見下ろしている。
「…御前たちが、情報局長官と軍事局参謀…か」
 低い、声。思わずびくっと身体を固くしたのは、誰だったのだろう。
「今、御前たちの噂をしていたんだよ。もう直、有望な二名の部下が来るだろうってね」
 にっこり微笑むダミアンは、エースとルークを見定めると、再びその眼差しを彼に向ける。
 それは、正しく"奇異の天使"。
 魔界で一、二を競える美しい巻毛のダミアンが隣にいるにも関わらず、彼の腰までの緩いウエーブを描いて落ちる金色の髪は、美しく輝いている。
 少々きつさはあるものの整った顔立ち。冷たく輝く淡い碧色の二つの眼差しは、真っ直に二名を見下ろしていた。
 背中に構えた真白き翼は、まさに天使だった。
 そんな姿の彼を、誰が"奇異の天使"だと思うだろう。
 かつて、ダミアンの首を狙っていたはずなのに、今目の前にいる存在には、圧倒的な気は感じるものの、敵意がまるで感じられないのだ。
 エースもルークも、そう思ったのは事実だった。ただ、ダミアンが余りにもいつもと変わらずにいるものだから…
「あの…ダミアン様。隣にいるのが"奇異の天使"…ですか?」
 思わず問いかけたのは、エース。その気持ちは、わからないでもない。
 先の説明不足がたたってか、ルークの方はと言うと、まるで訳がわからずに、途方に暮れた顔をしている。何せ、この塔の封印の理由と石像の正体について、ルークは何も知らなかったのだから。無理もない。
 そんな、相対する二名に視線を向けたダミアンは、再びにっこりと微笑む。
「そう。紹介しよう。元一級天使のティアナ…あぁ、御前たちには、"奇異の天使"と言った方が正確だね」
「…はぁ…」
 小さなつぶやきが漏れた瞬間、ティアナの眼差しが一際強く輝いたような。そんな気がして、視線を受けていた両名の背中に、冷たいモノが流れて行く。
 物凄い威圧感があるにも関わらず、ダミアンにはそれが全く苦ではないようである。
 怪訝そうに首を傾げる二名をよそに、ダミアンは不意に笑いを納めると、隣の"奇異の天使"…ティアナを見上げた。
「さて。わたしの部下に紹介もおわったからね。それでは本題に入ろうか」
「あぁ、良いだろう」
 そう答えたティアナの眼差しは、ダミアンのみに注がれた。
 勿論、ダミアンの眼差しもティアナのみに、である。
 この状況になって初めて、エースもルークも、己たちの存在がまるで無視されるべきものであることを察した。つまりは、自分たちがここへ来る必要もなかったのだと。
 ティアナの冷たい眼差しを、ダミアンはやんわりと受け止め、口を開いた。
「また、わたしの首を狙うつもり?」
「だとしたら…どうする?」
 興味深げに尋ね返すティアナの眼差し。それに、ダミアンは小さな笑いを零した。
「決まってるだろう?残念ながら、この首はそう易々と渡せないものでね。貴方を封印させて貰うよ。あの時と、同じようにね」
 くすくすと笑いを零すダミアンを、ティアナはじっと見つめている。その眼差しは、物言いたげで。
「…何故、だ?御前の能力を以ってすれば、わたしを殺すことも容易いと言うのに」
 その問いかけに、ダミアンの笑いはすっとその表情から消えていた。
 そして、いつもとは違って、僅かに低いトーン。
「…確かに、ね。能力を以ってすれば、容易いことだね。でも…わたしには出来ないよ。十万年経った今でも、貴方はそれをわたしに問うつもり?二度も、同じことを言わせるなんて言うのは、なしにしよう」
 そこで一端言葉を切り、ダミアンは見据えるようにティアナを見つめた。
「殺せないよ。わたしには…ね。貴方も、わかっているだろう?それに、今のわたしはあの時の子供ではないよ。今でも、わたしの言葉が信用出来ないとでも?わたしの気持ちは、変わらないと言うのに」
 その答えに、ティアナは溜め息を一つ。
「…馬鹿な皇太子だ。何も、こんな狂った天使を相手に、そんな感情を向けなくとも良さそうなものを…」
「ある意味では、貴方が狂っていたから…だと思うよ。貴方が正常だったら、単身で魔界に乗り込んでは来なかっただろう?」
「…それもそうだ」
 ティアナは僅かに目を伏せ、小さな笑いを零していた。
「今回も…御前には負けたよ、ダミアン。封じるなり殺すなり、好きにするが良い」
 その言葉に、ダミアンは再びにっこりと微笑む。
「そうさせて貰うよ」
 そうつぶやくと、ふわりと浮かび上がり、ティアナと視線の高さを合わせる。そして、指先を伸ばしてティアナの頬に触れ、そのまま金色の髪に両手を埋める。
「一つ…聞かせてくれ」
 淡い碧色の眼差しをダミアンに向け、ティアナは口を開く。
「何?」
「わたしが再び目覚めた時も…今回のように、御前はわたしの傍にいるのか…?」
 その問いかけに、ダミアンはにっこりと微笑む。
「勿論。それが、約束だろう?今回だって、ちゃんと来ただろう?」
「…そうか。それだけ、聞きたかったんだ」
 諦めたように目を閉じたティアナに、ダミアンは頬を傾け、唇を合わせる。
 その姿がとても美しくて…エースもルークも、思わず息を呑んで見つめていた。
「…御休み、ティアナ」
 唇を離した後、ダミアンは小さくつぶやく。
「…あぁ、またな。ダミアン」
 ティアナが答えた直後、彼はダミアンによって、再び石像として封印された。
「…さて、帰ろうか」
 茫然としたままのエースとルークを振り返り、ダミアンはにっこりと微笑みを浮かべた。それは、いつもと何ら変わりはない。
「あ…あの…」
 ハッと我に返ったルークは、その顔を真っ赤に染めている。それの問わんとすることを、ダミアンはわかっているだろう。
「あぁ、そうだ。すっかり忘れていた」
 不意に思い出したように、ダミアンは腰の鞘から短剣を抜き取ると、己の指先に小さな傷を作る。目を伏せ、小さく呪文をつぶやく声に従い、溢れ出た血は空に魔法陣を描く。
 瞬間。
「…っ!」
 溢れる魔力を感じ、エースもルークも己を護っていた。
 ダミアンの施した呪文は、今まで見たこともない封印。それも自らの血によって封じるモノ。
「…よし、完成。さ、行こうか」
 溢れ出た魔力は、魔封じの塔に再び封印をかけた。そして、再び平穏が訪れる。
 ダミアンは血の溢れる指先を銜え、さっさと歩き出していた。
 その後を追いながら、ルークはエースに一言。
「…結局、俺たち何しに来た訳…?」
「…さぁ…」
 満足行かない表情は、エースも同じである。
 満足しているのは、ダミアンただ一名…
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
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がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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