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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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優しい悪魔
こちらは、以前のHPで2005年07月24日にUPしたものです

拍手[1回]


◇◆◇

 それは、ある日の仕事帰りの時のことであった。
 すっかり暗くなった宵闇の中の屋敷の前に、独りの少女が座りこんでいた。
「…あれ?誰かいる」
 思わず零したルークの言葉に、少女ははっとしたように顔を上げた。だが辺りは薄暗くて、その顔までははっきりと見えない。わかったのは、慌てて駆け出した少女の後姿だけであった。
「…何だ?今のは…」
 全く訳がわからず、首を傾げたのはデーモン。
「さぁ…?それよりも、メシ、メシ」
 あっさりとそう言い放つルークの声に、同調したライデンが声を上げる。
「メシ~~~!石川くん、早く~っ!」
「…はいはい」
 溜め息を吐き出しつつ、ゼノンがそう答える。
 何はともあれ、空腹には勝てず。そそくさと屋敷の中に入って行く姿が続く中、エースだけは宵闇の中、少女が消えた道をじっと見つめていた。
「…どうした?」
 デーモンに声をかけられ、ふと我に返ったエース。
「…いや、別に…」
 怪訝そうな表情を見せるデーモンを横目に、エースはさっさと屋敷の中へと入って行くのであった。

◇◆◇

 翌日の夕方。
「…あ…れ?」
 まだ残っていると思っていた煙草が、いつの間にか空っぽになっている。
「ライデン、煙草の買い置きあるか?」
 リビングで一心不乱にテレビゲームに齧りついているライデンに声をかけるエースだが、ライデンはその画面から目を離さない。
「テーブルの上!そこになけりゃ、上着のポケットっ!」
 画面と流れて来る音楽からして、どうやら格闘ゲームらしい。エースに返って来た声さえ、必要以上に気合が入っているではないか。そして、その視線も相変わらず画面に釘付けのまま、である。
 だが、エースが捜してみても、テーブルの上の箱も空。上着のポケットにもその存在はない。
「…どっちにもないぞ?」
「じゃあわかんないっ!勝手に探してっ!」
「…あのなぁ…」
 ライデンのことだから、何処かに買い置きはあるのだろうが…今のライデンにそれを期待してはイケナイ…と察したエースは、溜め息を吐き出しつつ、自ら至るところを探し始めた。
 エースなら絶対置かないようなリビングの隅にある棚の中も、キッチンの戸棚の中も勿論、ライデンの部屋のクローゼットの中まで(一応声はかけて許可は貰ってある)探してみたものの、買い置きの煙草は一箱もなかった。
「…ったく…こんな時に限って…」
 こんな時でもどんな時でもないのだが…どうやら、諦めはつかなかったらしい。
「仕方ない。買って来るか」
 身支度をして溜め息と共に階下へと降りて来ると、丁度廊下へと出て来たゼノンと顔を合わせる。
「煙草買って来る」
「買い置きなくなったの?」
 ゼノンにそう声をかけられ、小さく頷く。
「あぁ、俺のは。ライデンのも見付からないし」
「…あの調子じゃ、あっても教えてくれないからね」
 リビングから聞こえて来るゲームの音に、ゼノンはくすくすと笑いを零す。そして、ふと思いついたように、手に持っていた紙切れをエースに手渡す。
「じゃあ、ついでにこれお願いね」
「…わかったよ」
 間の悪い時にゼノンと会ってしまったと後悔しつつも、エースは諦めたようにメモを持って買い物に出かけることとなった。

◇◆◇

 買い物に行く途中の公園で、エースは強烈な意識に引き込まれていた。
『助ケテ』
 助けを求めるその意識は、まだ若い。と言うことは、恐らく15~6歳ぐらいであろう。そう思いつつ視線を巡らせると、ベンチに夕べの少女が座っていた。
「…御指名って訳、か?」
 歩み寄った先の少女は、エースのその声に顔を上げる。
「何を助けて貰いたいんだ?」
 興味本位で尋ねた声に、少女はわずかに顔を伏せた。
「…学校に、行けなくて…周りの視線が、怖くて…」
 そう答えた声は、消え入りそうなくらいか細い。
「何だ、登校拒否か?そんなもん、気にしないで適当にやっておけば……」
 眉を潜め、溜め息混じりに吐き出したその言葉が終わらないうちに、それを遮る声が届く。
「なぁに、親切そうな顔して、冷たいこと言ってんだよ。あんたは…」
「…ルーク?」
 いつの間に来ていたのかもわからないくらい、ルークの登場は唐突だった。おまけにその表情は、珍しく酷く不機嫌そうである。
「エースさぁ…未成年ナンパしてる暇があったら、さっさと買い物行って来てくれない?喰い盛りが一名、待ちきれないって叫んでるんだけど」
「だぁれがナンパなんかするかよっ!ったく…万年欠食児は待たせて置けよ。今はそれどころじゃなくてだな…」
「万年欠食児は待ちきれないって叫んで煩いから、俺が直訴しに来たんじゃないの。それから、万年欠食児の煙草の買い置きは、ベッドの下の箱の中。覚えときな」
「…それは屋敷にいる時に言えよ…」
 それは明らかにライデンを指している。けれど、今の問題はそんなことではない。
 ルークはぷいっとエースから視線を背け、不安そうに彼らを見上げている少女へと視線を移す。
「…冷たいようだけどさ…」
 少女に向け、そう言葉を紡ぎ始めたルーク。
「俺たちは、あんたの為に特別な何かをしてやることは出来ないんだよ。幾らあんたがエースを引き込んだところで、協力は得られない。俺たちは…悪魔なんだから」
「おい、ルーク…幾ら何でも、そんな良い方しなくても…」
 いつにないルークの冷めた口調に、エースの方が抗議の声を上げかけた。けれど、その言葉も最後までは発せなかった。
「わかって…います」
 顔を伏せ、少女が言葉を紡ぐ。
 ルークは相も変わらずの表情のまま、少女を見つめている。
「…これで、最後にしよう。これ以上"ここ"にいたら、あんただって帰れなくなっちゃうから」
「…はい…」
 素直に頷いた少女に、ルークはやっと柔らかな微笑を零す。そしてその腕を伸ばして、少女の身体を優しく抱き締めた。
「もう、お帰り。送ってやるから」
 それは、悪魔らしからぬ優しさ。
 ルークの腕の中でうつむいた少女の表情が、僅かに微笑んだように見えた。
「…有難う。もう、二度と来なくても良いくらい…暖かい…」
「そっか。良かったな」
 くすっと笑いを零したルークの声に、少女は小さく頷いた。そしてその身体は、降り始めた闇に融けて消えて行った。

◇◆◇

 ルークと共に買い物を済ませたエースは、帰り道に買ったばかりの煙草で一服しながら、ルークからその話を聞いた。
 あの少女は、数ヶ月前に亡くなったのだと。霊界に昇れず、この辺りをずっと彷徨っていたのだと…。

「…そうか。もう、だいぶ前から…」
 ルークの話を聞いて、エースは小さな溜め息を零す。
「そう。俺も、呼び留められたクチだったんだけどね。寂しかったんだよ、彼女は。でも、いつまでも俺たちを頼りにされても、どうにも出来ないじゃない?その気にならなければ、霊界(うえ)へは昇れないんだもの」
 そう答えたルークの表情は、いつもとまるで変わりがない。ただ、その表情の奥には…恐らく、違う表情が隠れているのだろうが。
「まぁ、実体のない魂に温もりを与えてやれるのは、俺たち悪魔か天使ぐらいだからな。頼られても不思議じゃないが…良くお前が面倒見てやる気になったな?お前だって、未成年は管轄外だろう?」
 興味本位で尋ねた声に、ルークはくすっと笑いを零した。
「そりゃ…ね。でも、たまには俺が、"優しい悪魔"になったって良いでしょ?」
 くすくすと笑う声に、エースは、それが昔己が言った言葉であったことを思い出した。
「良いだろう?"優しい悪魔"で何が悪いっ」
「でしょ?それに、あの娘ね…」
----ルーク宗だよ。
 ルークのその声に、エースは途端に笑い出す。
「そうじゃないかと思ったよ。最初にお前を呼んだくらいだからな」
「そう言うこと。穢れなき少女の魂って、綺麗なモンじゃない」
 そう返したルークに、エースは小さな溜め息を一つ。
「実体には執着がないクセに。このロマンチストが」
「ロマンチストなら、あんたの方が数段上手でしょうが」
 くすくすと笑いながら、家路を急ぐ二名。
 すっかり闇の降りた時間なのだから、屋敷の万年欠食児は待ち草臥れているだろうか。
 そんなことを考えながら、エースはくすくすと笑いを零していた。
 少女の魂は、きっと満足して霊界に行けたに違いない。
 この、心清き"優しい悪魔"のおかげで。
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がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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